契約書を作成しない契約における支払期限

本市の契約規則では、1万円以下の随意契約の場合、契約書の作成を省略することができると定められています。このため、少額の物品購入等では契約書を作成しておりませんが、こうした場合の支払期限については、政府契約の支払遅延防止等に関する法律第1条で、契約書を締結しなかった場合の対価の支払時期は1日以内の日と定めたものとみなすとなっていることから、適法な支払請求を受けた日から1日以内に支払うよう努めています。しかし、他の自治体でも同様と思いますが、連休などがあった場合、手続上その支払期限に間に合わないことも多いようです。このため、契約書は作成しませんが、見積書又は請求書において同法第6条を根拠に業者に了解を得たうえ支払期限を3日以内と明記してもらうことで対応したいと考えておりますが、これは違法な取扱いとなるのでしょうか?

【政府契約の支払遅延防止等に関する法律】
第六条 第四条第二号の時期は、国が給付の完了の確認又は検査を終了した後相手方から適法な支払請求を受けた日から工事代金については四十日、その他の給付に対する対価については三十日(以下この規定又は第七条の規定により約定した期間を「約定期間」という。)以内の日としなければならない。
(2項省略)
第十条 政府契約の当事者が第四条ただし書の規定により、同条第一号から第三号までに掲げる事項を書面により明らかにしないときは、同条第一号の時期は、相手方が給付を終了し国がその旨の通知を受けた日から十日以内の日、同条第二号の時期は、相手方が支払請求をした日から十五日以内の日と定めたものとみなし、同条第三号中国が支払時期までに対価を支払わない場合の遅延利息の額は、第八条の計算の例に準じ同条第一項の財務大臣の決定する率をもつて計算した金額と定めたものとみなす。政府契約の当事者が第四条ただし書の場合を除き同条第一号から第三号までに掲げる事項を書面により明らかにしないときも同様とする。

政府契約の支払遅延防止等に関する法律(以下「法」という)は第14条において、地方公共団体のなす契約に準用されているところ、当該地方公共団体が法第4条但書により契約書作成を省略できる場合の支払期限については、法第10条が適用されることになります。

法第10条は支払期限について「相手方が支払請求をした日から15日以内の日と定めたものとみなし」と規定しており、「みなし」規定である以上、法第4条の書面によらない限り、法律上当然効力が生じ、当事者の合意だけで支払期限を変更することはできません。

もっとも、そもそも質問事項にある見積書を使用する場合には、業者からの見積書に対し、地方公共団体が特段異議を出さず承諾すれば、見積書の内容と同じ内容の契約が当事者間で締結されるので、見積書に法第4条の必要的内容事項が記載さえされていれば、見積書は同条の書面に該当することになります。従って、支払期限については法第6条が適用されるので、見積書に記載した上で、支払期限を30日として取り扱うことは適法です。

一方で、契約締結後の相手方の一方的な履行請求の意思を記載しているに過ぎない請求書を用いる場合は、それらが法第4条の書面に該当しない以上、相手方の合意があるとしても支払請求日から15日を過ぎての支払は法第10条に違反し遅延になります。

したがって、請求書のみの場合は、支払期限は支払請求日から15日になります。

ところで、法第1条は、法の趣旨について、支払遅延を防止し、国民経済の健全な運行に資すること等であると規定しています。すなわち、国ないし地方公共団体という圧倒的に力関係が上の存在と業者等が契約する中で、早期の支払を業者が望んでいても契約締結の際に国等から不利な支払期限を提示されて飲まざるを得なくなることを避けることが法の主眼となっています。

そこで法は第6条ないし第10条で、相手方からの支払請求があった場合は一定期間内に代金を支払うことを国等に義務づけています。第10条の場合、具体的には支払期限を決めていなかったところ、ある日突然業者から今日代金を払って下さいと言われたら、さすがに今日は無理かもしれないけど、15日以内には支払いなさいというのが法の趣旨になります。

そこで、実務的対応として、ご質問にあるような、請求書に支払期限を支払請求後30日以内と明記してもらう方法や、請求書の日付を後日にずらしてもらうことや日付を空欄にしてもらうことも考えられますが、いずれも、国等から不利な支払期限を提示されて飲まざるを得なくなることを避けるという法の趣旨に反します。

連休などが入った場合に、実質的に支払手続をすることができる時間が短くなり、担当者としては、厳しいのかもしれませんが、法で定められた期間ですから、これを遵守するのが、法律による行政の原理です。