長期継続契約と債務負担行為

当市では、一般廃棄物を収集する業務を民間企業に委託していますが、現在、委託初年度については、指名競争入札を行い、2年度目から5年度目までは随意契約で行っています。これを、来年度から5年間の長期継続契約として、契約を締結したいと計画していますが、次の点について教えて下さい。

一般廃棄物の収集委託契約は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律6条の2第2項に基づく公法上の契約と考えられますが、公法上の契約に、自治法234条から234条の3の規定を適用することに問題はありませんか。
一般廃棄物の収集委託契約を、長期継続契約により締結する場合には、債務負担行為を締結しなければいけないのでしょうか。

1 質問1について

公法上の契約

公法上の契約は、解釈論上の概念で、「公法的効果の発生を目的とする複数の対等当事者の反対方向の意思表示の合致によって成立する公法行為」(田中二郎「行政法(上)」112頁」、あるいは「行政契約とは、行政主体等が行政目的を達成するために締結する契約」(櫻井敬子、橋本博之「行政法(第二版)」124頁)とされています。ところで、廃棄物の処理及び清掃に関する法律6条の2第1項は、市町村に「一般廃棄物を生活環境の保全上支障が生じないうちに収集し、これを運搬し、及び処分」する義務を課し、同条第2項は「市町村が一般廃棄物の収集、運搬又は処分を市町村以外の者に委託する場合の基準は、政令で定める。」として、市町村以外の者に対する委託を認めています。この規定に基づき、一般廃棄物の収集業務を民間企業に委託する場合には、政令である「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」4条に規定する基準に従って、委託することとなります。これに対して、自治法234条は、一般競争入札を原則としていますから、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」4条に規定する基準に従う必要がある一般廃棄物収集業務の委託契約は、自治法234条以下の適用がないとも考える余地があります。しかしながら、自治法234条以下の規定は、地方公共団体が契約を締結する際の原則を規定したものですから、公法上の契約といえども、自治法234条以下の適用を受けることとなります。すなわち、一般廃棄物収集業務委託契約は、自治法施行令167条1号に規定する「その他の契約でその性質又は目的が一般競争入札に適しないもの」、あるいは自治法施行令167条の2第1項2号に規定する「その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないもの」に該当すると考えれば、自治法234条以下を適用することに何らの障害もないだけではなく、経済的、かつ透明性のある契約締結手続が確保されるからです。


2 質問2について

長期継続契約の対象の拡大

平成16年5月26日の自治法の一部を改正する法律(平成16年法律第57号)及びこの改正に伴う政令の改正により、リース契約や庁舎等の管理業務委託契約を長期継続契約とすることが可能となったことはご承知のとおりです。自治法施行令167条の17は「翌年度以降に渡り……役務の提供を受ける契約で、その契約の性質上翌年度以降にわたり契約を締結しなければ当該契約に係る事務の取扱に支障を及ぼすようなもののうち、条例で定めるもの」を長期継続契約の対象としました。この規定にある「役務の提供を受ける契約」として、立法担当者は、庁舎管理業務委託契約を想定していますが、一般廃棄物収集業務委託契約も対象となるものです。すなわち、庁舎管理業委託契約と同様に、年間を通して行われる業務であり、業務を受託した者は一定の設備投資が必要であり、その設備投資を回収するのに見合う期間業務委託を受けるのでなければ、採算をとることができない業務だからです。


債務負担行為との関係

平成16年の法律改正前においては、長期継続契約の対象となる契約を締結する場合に、契約締結時に、次年度以降の債務が確定するときは、債務負担行為が必要であるものと考えられていました。例えば、不動産を借りる場合には、一定期間の賃料を合意するのが通常です。そこで、不動産を借りる契約においては「翌年度以降において歳入歳出予算の当該金額について減額又は削除があった場合は、当該契約は解除する。」旨の条項を設けることにより、債務負担行為をしなくてもすむようにしていました(昭和40年9月1日自治行第108号)。

しかしながら、平成16年の法律改正前により、長期継続契約に対象とした契約は、リース契約や庁舎管理業務委託契約を想定したもので、いずれも、翌年度以降の債務が確定している上に、契約期間途中における契約解除ができない性質のものです。そのため、自治法施行令167条の17は、対象となる契約を条例で定めなければならないとしました。すなわち、原則論では債務負担行為で行うべき契約締結を、長限りで行えることとするのですから、予算議決権を有する議会の意思、さらには住民の意思の確認も必要だからです。

したがって、条例で長期継続契約の対象とした契約については、債務負担行為はいりません。ただし、債務負担行為としても、原則的予算措置をとるだけですから、違法ではありません。