2011年 冬

弁護士を非常勤職員として任用するときの留意点

Question

当市では、条例の立案、日常の行政運営上の法的問題を迅速に解決することを目的として、週に1日市役所内に常駐して市の法務に携わる弁護士を、非常勤職員として任用したいと考えています。しかし、前例のないことなので、どのような形で任用すべきか、また、非常勤職員としての立場と弁護士活動をどのように整理して良いのか悩んでいます。つきましては、次の点についてご教示願います。

(質問1)
弁護士を非常勤職員として任用する場合に、地公法17条に基づく、試験ないし選考を行う必要がありますか。
(質問2)
任用する弁護士は、現に弁護士として活動していることを前提としていますが、職務専念義務との関係で、兼業許可が必要ですか。
(質問3)
担当してもらう職務との関係で、秘密保持が必要となる場合が想定されますが、非常勤職員でも守秘義務を課すことができますか。

Answer

(質問1)

地公法3条3項3号の特別職非常勤職員は、特定の学識又は経験に基づいて任用される非常勤特別職です。このような特定の要件に基づかない者を臨時又は非常勤の職に任用しようとするときは、地公法22条2項に規定する臨時職員として任用すべきものとされています(「逐条地方公務員法」(第2次改訂版)、橋本勇著63頁)。したがって、弁護士の専門性に着目して、非常勤職員として任用するのですから、当然に地公法3条3項3号に規定する特別職公務員としての採用になります。

地公法4条2項は「この法律の規定は、法律に特別の定めがある場合をのぞく外、特別職に属する地方公務員には適用しない。」とされていますから、地公法17条も適用の余地はありません。したがって、任用する際には、人事委員会を置く地方公共団体であっても競争試験を行う必要はありません。

地公法3条3項3号該当の特別職を任用する場合に、任用方法に関する法的な制約はありませんので、任命権者において、適任者と判断した弁護士を特別非常勤職員として任用すれば良いこととなります。

ただ、専門職である弁護士の弁護士としての能力を、一般行政職の公務員や長(法曹資格も有するものを除く。)が適切に判断することは難しいと思われますので、選考に当たっては、顧問弁護士等の助力を得るのが適切と思います。


(質問2)

特別職非常勤職員として任用する以上、地公法の適用は原則としてありませんから、職務専念義務も発生しません。したがって、兼業許可も不要です。

特別職非常勤公務員であっても、従属労働者と評価される場合には、労働基準法が適用され、労働時間の限度(労基法32条以下)、休憩及び休日の保証(労基法34条、35条)の規定が適用されます。しかし、弁護士が週1日勤務する形態の特別職非常勤職員では、当該弁護士は自己の知識経験に従って意見を述べることが期待されているのですから、従属労働者と評価されることはないものと思います。

ただ、非常勤職員として、任用するのですから、勤務時間内における職務遂行に関しては、勤務時間等の基本的な取り決め、弁護士活動のため、勤務日に勤務できなかったときの代替勤務等に関しての取り決めは行うべきです。なお、この取り決めは、公法上の契約と位置づけるができると思います。


(質問3)

地公法上の守秘義務に関しても、特別職非常勤職員には適用はありません。

弁護士法23条は、弁護士に秘密保持の義務を課していますが、この義務は弁護士としての「職務上知り得た秘密」に関するものですから、特別職非常勤職員として知り得た秘密にまで及ぶかどうか疑問が残ります。弁護士として特別職非常勤職員に任用されたことを根拠に、「職務上知り得た秘密」に該当すると考えることもあり得ますが、この点については、判例も存在しません。したがって、秘密保持義務に関しても、任用に当たって、取り決めをしておくとよいでしょう。