2012年 秋

児童の扶養義務者に課す負担金について父に対して費用決定通知書を送付していた時の母への請求

Question

当県は、児童養護施設への入所措置がされた児童(児童福祉法27条1項3号)について、その措置の費用徴収決定通知を世帯主である措置児童の父(以下「当該父」といいます。)あてに送付しました。当該父から納付期限までに納入されなかったため、2週間後に当該父あてに督促状を発しました。督促の1年後に当該父から費用の一部が納入はされましたが、その後残額について納入がないまま2年が経過しました。当該父は支払能力がないとしていますが、同居して共同親権を有する措置児童の母(以下「当該母」といいます。)名義の財産がありました。当該母に残額を請求することはできませんか。

Answer

費用決定通知書により具体的な納入義務が生じているのは、通知書に表示された当該父のみです。当該母に対して、具体的な納入義務を生じさせるには費用徴収決定通知を送付することが必要です。しかし、費用徴収決定通知は、負担金を課すことができるようになった日の翌日から起算して3年以内に行う必要がありますので(児童福祉法(以下「法」といいます。)56条10項、地方税法17条の5、6)、ご質問からは負担金を課すことができるようになった日からすでに3年経過していることが伺われ、当該母に通知することができません。

(理由)

法56条2項に基づく児童養護施設への入所措置(法27条1項3号)に要した費用(法50条7号)を措置児童の扶養義務者から、その負担能力に応じて、徴収しようとされているのですね。法にいう扶養義務者は、民法877条の定めに従って定まり、直系血族である父母はいずれも扶養義務者にあたります。また、この徴収しようとする費用は法56条10 項の規定によって「地方税の滞納処分の例により処分することができる」(強制徴収公債権)とされています。

当該父のみならず当該母を負担者とすることは、法56条2項の規定から可能ですが、同規定からは各々の納付義務は抽象的に発生しているのみで、具体的な債権が成立したと言えるためには、納入義務の相手方に対し、納入通知書を送付するという行政行為を行って、はじめて具体的な費用の負担義務が生じさせることができます。したがって、当該母に対する費用徴収決定通知が必要です。

この点、質問されているのは、日常家事の連帯債務(民法761条)や共同親権(民法818条1項)を根拠に当該母に対しても連帯して納付をさせることができないかという趣旨ですね。当該母が自発的に当該父を名宛人とする費用負担義務を履行することはもちろん問題ありません。しかし、法的には当該母に具体的な費用負担義務を発生させるために当該母に対する費用徴収決定通知を要しますから、滞納処分の例によって差押する前提としての督促も、通知がなされていることを前提に、当該母に対してなされた督促でなければなりません。

この費用徴収決定通知書の送付は、負担金を課すことができることとなった日の翌日から起算して、3年以内に行う必要があります(地方税法17 条の5第3項)。

そこで、当該父に対する費用徴収決定通知で負担義務の生じた債権については督促がなされていることや当該父から一部納付されている事実をもって、当該母に対する関係で時効中断等が認められないか検討します。その前提としては父母に連帯納入義務があることが想定されなければなりませんが、この負担金が強制徴収公債権である以上、連帯納入義務を課すなど納入者の不利益に納入義務を拡張するためには、必ず法律条例で定める必要があります。そのような規定がないこの負担金について通知を受けていない扶養義務者に納入義務を認めることはできないと言わざるを得ません。

具体的な事実関係から当初の費用徴収決定通知の名宛人を機械的に世帯主とすることが妥当かの検討や一定期間滞納があった場合に財産を有する扶養義務者に追加して納入義務を負わせる取扱も検討課題です。ただ連帯納入義務が法律条例で定められていない場合、父母各々に納入義務が課されても連帯納入義務ではなく分割債務と考えられることに注意が必要です。

なお、当該父に対する負担金債権は、この負担金の性格は地方自治法231条の3第3項に規定する「その他の地方公共団体の歳入」に当たるため、公法上の債権として同法236条の消滅時効の適用を受け、児童福祉法には特別の定めがないことから時効期間は5年間となります。地方自治法の規定に基づく督促あるいは一部納付の事実を承認とすればその後から5年間経過したものについては消滅します。この場合時効の援用も不要です。

本件では、法56条2項が扶養義務者に負担を求める理由、ご指摘の日常家事の連帯債務( 民法761条)及び共同親権(民法818条1項)の趣旨を当該母に対して説明説得して支払がなされるように促すことはできますが、当該父に対する債権の管理を十全に尽くしてください。