2013年 春

議会インターネット中継

Question

近時、多くの地方公共団体が議会の映像を録画して、これを編集した後、当該地方公共団体のウェブサイトにアップロードして、市民に公開しています(以下、「議会インターネット中継」と言います。)。議会を生で傍聴できない市民にとって大変便利なサービスであると思います。当市でも議会インターネット中継を始めようと考えておりますが、これには様々な権利が関わってくると思います。著作権法の観点からすると、どのような法律関係が生じるのでしょうか。

Answer

1 議会における質疑応答や答弁等について

議会においては、議案についての質疑応答や答弁等が行われますが、この質疑応答や答弁等のうち、創作性の認められるものについては、著作物として保護されます(創作性のないもの、たとえば一般的な開会の宣言などについては著作物として保護されることはありません。)。

そして、著作物としての質疑応答等は、その質疑応答等を行った者が著作者となり、その著作権及び著作者人格権は当該著作者に帰属する、というのが原則です。

たとえば、議員が行った質疑応答等であれば、その質疑応答等の著作者は当該議員であり、その著作権及び著作者人格権は当該議員に帰属すると考えられます。他方、地方公共団体の職員が行った答弁等については、例外的に職務著作(著作権法15条1項)として、当該地方公共団体が著作者となり、その著作権及び著作者人格権は当該地方公共団体に帰属すると考えられます。

なお、この点については、議員及び職員のいずれについても職務著作が成立するという考え方や、議員及び職員(地方公共団体)の共同著作物となるという考え方などもありうるところです。

2 議会の様子を録画して、これを編集したもの(議会中継映像)について

議会中継映像についても、創作性が認められる限り、著作物として保護されます。

一般に、議会中継映像は議会事務局の職員が作成していることが多いと思われます。このような場合には、議会事務局の職員は地方公共団体の職員ですから、職務著作として、当該地方公共団体が議会中継映像の著作者となり、その著作権及び著作者人格権は当該地方公共団体に帰属することになると考えられます。

ところで、議会中継映像にかかる著作権及び著作者人格権の帰属主体を議会と表示されている地方公共団体も多いように思われますが、議会は権利能力を有しないので(井上源三編『最新地方自治法講座5 議会』( ぎょうせい、2007)8頁)、議会に著作権や著作者人格権が帰属することはなく、これらの帰属主体は地方公共団体であると考えるべきかと思われます。

3 質疑応答や答弁等と議会中継映像との関係

質疑応答や答弁等にかかる著作物と議会中継映像の著作物は、それぞれ別個の著作物になると考えられます。議会中継映像においては、著作物としての質疑応答や答弁等が有形的に再生されることになりますので、議会中継映像を利用することは質疑応答や答弁等の著作物を複製(著作権法2条1項15号)することになります。

そうすると、議会中継映像を利用するためには、原則として、質疑応答や答弁について著作権を有する者の許諾が必要ということになりますが、その利用態様等に照らし、利用の許諾を得る必要がない場合もあります。たとえば、議会中継映像の著作者である地方公共団体が、当該地方公共団体の施設において、テレビなどで議会中継映像を放映する場合であれば、非営利目的の上映(著作権法38条1項)として、質疑応答や答弁について著作権を有する議員の許諾は必要ありません。

本件の場合についてみてみますと、本件における議会中継映像の利用態様は、これをウェブサイトにアップロードするというものです。まず、この行為は上映等には当たらないため、著作権法38条1項の適用はありません。次に、著作権法40条は政治上の演説等の利用に関する著作権の制限を定めた規定ですが、議会における質疑応答や答弁等については同条1項の適用はないという見解が有力です。また、同条2項は、議会における演説等は報道のために新聞等への掲載、放送等により利用することができるという規定ですが、ウェブサイトにアップロードする行為は、現状、ここに含まれておりません。そうすると、議会中継映像をウェブサイトにアップロードするためには、原則として、創作性のある質疑応答や答弁については、著作権を有する議員の許諾が必要ということになりますので、これから議会インターネット中継を行うというのであれば、議会の様子を録画した映像をウェブサイトにアップロードして公開することについて、予め議会で申し合わせをしておくなどしておくとよいでしょう。