損害賠償の額を定める議決

当市は、DV被害者である市民Aから、市民A以外の者に自らの住民票を発行しないように依頼を受け、当市では、住民票の発行を制限していましたが、職員が誤って市民A以外の者に対して市民Aの住民票等を交付してしまいました。
この事態を受け、当市では、市民Aをホテルに避難させる等の対応を講じましたが、市民Aから避難に伴う宿泊費等の諸経費の請求がなされました。当市は、当然にこの請求に応じようと考えていますが、当該諸経費の支払いが、地方自治法96条1項13号に規定する「法律上その義務に属する損害賠償の額を定めること。」に該当しますか。

(結論)

地方自治法96条1項13号に該当します。したがって、議会の議決が必要です。

(理由)
 地方自治法96条1項13号に規定する「法律上その義務に属する」こととは、普通地方公共団体が国家賠償法あるいは民法の規定により損害賠償責任を負う場合を指します。
 御質問では、職員の過失行為により、市民Aをホテルに避難させる必要が生じたもので、この避難に必要な諸経費は、国家賠償法上の損害に当たります。したがって、この損害賠償債務を履行するためには、議会の議決が必要となります。
 ただし、賠償額の決定は、個々具体的なものであり、あらかじめ一定の金額を限度としてその範囲内で市長に専決処分をする権限を与えることができます(地方自治法180条)。専決の権限を得ておけば、事後的に、議会に報告すれば足りることとなります。