ケーブルテレビ使用料

当市では、ケーブルネットワーク施設条例を制定し、ケーブルテレビを運用しており、使用料を月額で納付する義務を加入者に課しています。この度、ケーブルテレビ使用料の徴収を私人に委託したいと考えています。そこで、次の事項を教えてください。

① ケーブルテレビの使用料は、私債権と考えてよいですか。

② 私債権とした場合、当市は、地方自治法第231条の3第2項及び当市収入金督促手数料及び延滞金徴収条例の規定に基づいて、ケーブルテレビ使用料の督促手数料を徴することは難しいでしょうか。

③ 当市がケーブルテレビ使用料の督促手数料を徴収することができる場合、督促手数料の徴収義務は、延滞金の徴収及び滞納処分とは異なるので、私人に委託することはできないでしょうか。

④ ケーブルテレビ使用料の徴収を私人に委託した場合、納入通知書兼領収書の発行者は私人と思いますが、当市自体が発行してもよろしいでしょうか。

① 公債権か私債権か

(回答)

私債権です。

 

(理由)

ケーブルネットワーク施設条例(以下「条例」といいます。)では、ケーブルテレビの使用料を定めていますので、形式的には、地方自治法上の使用料に当たります。
 そこで、使用料と規定されているものが、公債権か私債権かについては、別途考える必要があります。ただし、公債権と私債権の分類に関しては、いくつかの考え方がありますが、ここでは、最高裁昭和50年2月25日の判決(民集29巻2号143頁)に従って判断します。この最高裁判決は、①消滅時効期間について民商法等一般私法規定以外の特別規定があるものは公債権、②制定法の規定によって発生する国の債権(課徴金・収納金等)又は国に対する国民の債権(給付金等)であって当該法律が時効期間について特別の規定を置かなかったもの、言い換えれば、行政処分に基づき発生する債権で特別な規定を置かなかったものは公債権、③原則として民商法の規定によるが、例外として「特に行政上の便宜」を考慮する必要があるものは公債権としています。
 御質問のケーブルテレビ使用料は、「特に行政上の便宜」を考慮する必要があるか否かが問題となりますが、ケーブルテレビは、多くの場合私的な会社等の組織が運営していること、民商法と別な時効期間を考える必要がないこと等からすると、私債権と考えるのが自然です。
 なお、使用料と規定しながら、私債権として扱われている債権で、有名なものとしては、公営住宅の使用料、水道料金などがあります。ただし、公営住宅の使用料については、国の行政実例は従前からの行政実例を変更していません。


② 督促手数料の徴収

(回答)

督促手数料は徴収できません。

 

(理由)

ケーブルテレビ使用料は、前述したとおり、私債権ですから、地方自治法第240条が適用されます。そして、地方自治法施行令第171条は、私債権に関する督促を規定していますが、督促手数料に関する規定はありませんから、督促手数料を徴収することはできません。これに対し、地方自治法第231条の3は、公債権に適用される条文ですので、私債権たるケーブルテレビ使用料には、適用されません。


③ 私人に対する委託

(回答)

地方自治法第231条の3に基づく督促手数料は徴収できませんが、遅延損害金の徴収は委託できます。

 

(理由)

ケーブルテレビ使用料は、督促手数料を徴収することはできないことは前述したとおりですが、本体たる使用料は私債権ですので、その徴収を私人に委託することは可能です。この場合には、遅延損害金についての特別な定めが条例に規定されていれば、その利率による遅延損害金を、また、条例に定めがない場合には、民法所定の遅延損害金をそれぞれ徴収することができます。


④ 納入通知書兼領収書の発行

(回答)

可能です。

 

(理由)

私人への徴収委託は、地方自治法施行令第158条によることになります。この場合には、委託契約において、徴収事務又は収納義務の範囲を設定する際に、納入通知書兼領収書の発行権限を委託者たる地方公共団体におけばよいことです。