借地権の存否

 当市では、防災センター用地である個人所有地を、賃貸借契約で借り受け、契約期間は、昭和61年6月1日から30年間としました。その結果、平成28年6月30日をもって、契約期間が満了することとなっています。賃貸人は、契約期間の満了に伴い契約を終了し、市による土地の買取を提案しています。
市としては、土地買取により施設運営を継続するか、また他の選択肢を選ぶかを検討した上で交渉に入りたいと考えています。
そこで、次の点を確認させてください。

・市に借地権がありますか。

・借地権がある場合、土地の買取額等の交渉に当たり、借地権割合をどの程度見込めばよろしいでしょうか。

(契約書の主な内容)
第3条 本契約の有効期間は、昭和61年6月1日から起算して30年間とする。ただし、契約期間満了日までに、甲・乙両者のうちいずれか別段の意思表示をした場合の外は引き続き同一条件をもって継続するものとする。
第9条 第3条の契約期間が満了のときは、乙は、本物件を原状に復した上、甲に返還しなければならない。

(結論)

(1)借地権があります。
(2)借地権割合は、相続税の路線価で定まっている借地権割合によるのが原則ですが、借地権割合は、第三者が当該土地を買い取る場合の売買代金の帰属する割合ですので、賃貸人が買取を求めてきたときには、賃借人に有利となります。

 

(理由)

(1)建物所有目的の土地の賃貸借契約ですから借地権は当然に発生します。
 また、定期借地権については、現行の借地借家法は平成3年の成立ですから、この賃貸借契約が締結された当時は、存在しません。したがいまして、賃貸契約書3条の規定により、賃貸人も意見を述べることができるとされていますが、旧借地法第11条により、第6条の規定に反する規定の効力は否定されていますので、既存の建物がある限り、契約書上、借地権が期間満了によってその効力が失われるような場合であっても、異議を述べることはできないとされていますから、この規定の効力はありません。
 したがいまして、契約期間が満了しても借地権は存続することとなります。
(2)借地権割合は、法律上定まっているものではありませんが、一般的に、相続税の評価において、国が定めた借地権割合を基準として、決められるものとされています。もちろん、相続税路線価に示された借地権割合が不満な場合は、裁判により借地権割合を決めることも可能です。
 したがいまして、土地を買い取る場合には、相続税路線価をみて、そこの借地権割合を基準とし、土地所有者が買い取ってほしいといっているのですから、相続税の借地権割合よりも、賃借人である市に有利な割合で取得できるものです。