分限休職処分と主治医の意見書

 現在、当市では、心身の故障中である職員について、当該職員の意向に基づき、主治医の診断書を取得してもらい、分限休職処分を行っております。ところが、職員Yの場合、心身が故障中であるにもかかわらず、主治医が「療養が必要である」旨の診断書を書いてくれません。そこで、当市としては、産業医2名の意見書をもって診断書の代替とし、本人の意に反する分限休職をする予定です。

(1) 手順としては、当市職員懲戒分限審査委員会の審査を経て、市長決裁後に、Y職員に発令通知書を交付する流れでよろしいでしょうか。また、審査委員会の審査を経ずに処分をすることは可能でしょうか。

(2) Y職員の意に反する休職処分を行った後に、3年満了年月日において、復職が難しいと判断された場合、分限免職は3年満了年月日をもってすることはできますか。

(3) (2)の場合、労働基準法の解雇予告との兼ね合いで、3年満了年月日の1か月後でないと免職させることができない場合、その間については、無給求職中で給料が支給されていない職員に給料の補償が必要でしょうか。

○甲市職員の分限に関する条例(昭和33年10月1日 条例第44号)(抄)
(降任、免職及び休職の手続)
第3条 任命権者は、法第28条第1項第1号または同条同項第3号の規定に該当するものとして、職員を降任または免職することができる場合は、勤務実績の良否またはその職に必要な適格性の有無を評定するに足ると認められる客観的事実に基き、勤務実績が不良なことまたはその職に必要な適格性を欠くことが明らかな場合とする。
2 法第28条第1項第2号の規定に該当する者として、職員を降任し若しくは免職する場合または、同条第2項第1号の規定に該当するものとして職員を休職する場合においては、指定医師をして、あらかじめ診断を行なわせなければならない。
3 法第28条第1項第3号の規定に該当する者として職員を降任または免職することができる場合は、その職員が現に有する適格性を必要とする他の職に転任させることができない場合とする。
4 職員の意に反する降任若しくは免職または休職の処分は、その旨を記載した書面を当該職員に交付して行なわなければならない。
(休職の期間)
第4条 法第28条第2項第1号又は第2条の規定に該当する場合における休職の期間は、3年を超えない範囲内において、個々の場合において、任命権者が定める。この休職の期間が3年に満たない場合においては、休職にした日から引き続き3年を超えない範囲内において、これを更新することができる。
2 法第28条第2項第2号の規定に該当する場合における休職の期間は、当該刑事事件が裁判所に係属する間とする。

○甲市職員懲戒分限審査委員会規程(昭和60年9月10日 訓令第10号)(抄)
(所掌事項)
第2条 審査委員会は、市長の諮問に応じ、一般職に属する甲市職員(以下「職員」という。)に対する次に掲げる処分について審査答申する。
(1) 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第29条に基づく懲戒処分
(2) 地方公務員法第28条に基づく職員の意に反する免職、休職、降任及び降給の処分

 分限休職は、職員に職を保有させたまま一定期間職務に従事させない処分をいいます。職員が心身の故障に陥った場合、職員の申し出により、休職にすることが多いのですが、Y職員のように、自ら休職をすることを拒否し、主治医にも、「療養が必要である」旨の診断書を提出しないように求めることがあります。このような場合には、分限休職処分をすることとなります。
 甲市職員の分限に関する条例第3条第2項は、「法第28条第1項第2号の規定に該当する者として、職員を降任し若しくは免職する場合または、同条第2項第1号の規定に該当するものとして職員を休職する場合においては、指定医師をして、あらかじめ診断を行わせなければならない。」と規定していますから、指定医師1名の診断をあらかじめ受けさせなければないこととされています。多くの条例は、指定医師2名の診断を受けることを要求していますから、2名の指定医師の診断を受けさせる措置はより妥当なものといえます。
 もし、Y職員が、指定医師の診断を受けることを拒否した場合には、その拒否が正当でないことが明らかである限り、医師の診断なしで分限処分をしても、手続上の瑕疵にはなりません(東京地裁平成5年3月30日判決、公務員関係判決速報229号7頁。最高裁平成6年2月10日判決、判例集未登載)。

(1) 分限休職処分にする際には、甲市では「甲市職員懲戒分限審査委員会規程」を定めていて、同規程第2条は、分限休職処分をするときは、「審査委員会は、市長の諮問に応じ、一般職に属する甲市職員(以下「職員」という。)に対する次に掲げる処分について審査答申する。」旨を規定していますので、審査会に諮問し、答申を得る必要があります。審査会の審査を経ずに処分することはできません。

(2) 甲市職員の分限に関する条例第4条は、「休職の期間は、3年を超えない範囲内において、個々の場合において、任命権者が定める。」と規定し、3年を限度としています。休職期間が3年を超えると、地方公務員法第28条第1項第2号に該当すると判断され、免職となります。したがって、3年満了年月日をもって免職処分とすることができます。

(3) 労働基準法の解雇予告の規定は、適用になりません。3年間を超えて休職にすることはできないからです。したがって、給料の補償も考える必要はありません。