指定管理者指定における双方代理について

指定管理者を指定するに当たり、指定する団体(株式会社及び一般社団法人)の代表者が首長である場合、民法第108条の双方代理の規定に抵触しますか。

(結論)
民法第108条の類推適用の余地はありません。

(理由)
地方公共団体における契約締結行為については、「普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表して行う契約締結行為であっても、長が相手方を代表又は代理することにより、私人間における双方代理行為等による契約と同様に、当該普通地方公共団体の利益が害されるおそれがある場合がある。そうすると、普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表して行う契約の締結には、民法108条が類推適用されると解するのが相当である」とするのが、最高裁の判例です(最高裁第三小法廷、平成16年7月13日判決、民集58巻5号1368頁、判例地方自治263号31頁)。
ところが、指定管理者の指定は、契約締結行為ではなく、「『法律に基づき、具体的な場合について、行政機関の単独の意志により権利を設定し、義務を命じ、その他法律上の効果を発生させる行為』に該当し、行政処分の一種とされています」と言われていますから(成田頼明監修『指定管理者制度のすべて』改訂版88頁)、契約締結行為には当たらないことは明らかです。
したがいまして、民法の双方代理の規定が類推適用されることはありません。
次に、地方自治法第142条は、首長の兼業禁止を規定していますが、指定管理者の指定は、議会の議決を経た上で指定するものですから、地方公共団体と指定管理者が一般的な取引関係に立つものではありませんから、兼業が禁止されている「請負」には当たりません。
したがいまして、首長が代表者を務める会社等も指定管理者として指定することに法律的には問題はありません。
「しかしながら、指定管理者の選定は、公の施設の設置の目的を効果的に達成する観点に立ち、公正になされなければならないことは当然であり、条例によって適切な選定の手続きが定められるべきものです」(前掲書109頁)とされています。
したがいまして、条例で、長(議員)及びその親族が代表者を務める会社等を指定管理者に指定することも可能ですが、そのような条例の規定がなければ、長が代表者となっている会社等を指定管理者として指定することも可能です。

○地方自治法
(公の施設の設置、管理及び廃止)
第244条の2 普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない。 
2 普通地方公共団体は、条例で定める重要な公の施設のうち条例で定める特に重要なものについて、これを廃止し、又は条例で定める長期かつ独占的な利用をさせようとするときは、議会において出席議員の三分の二以上の者の同意を得なければならない。 
3 普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であつて当該普通地方公共団体が指定するもの(以下本条及び第二百四十四条の四において「指定管理者」という。)に、当該公の施設の管理を行わせることができる。 
4 前項の条例には、指定管理者の指定の手続、指定管理者が行う管理の基準及び業務の範囲その他必要な事項を定めるものとする。 
5 指定管理者の指定は、期間を定めて行うものとする。 
6 普通地方公共団体は、指定管理者の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。 
7 指定管理者は、毎年度終了後、その管理する公の施設の管理の業務に関し事業報告書を作成し、当該公の施設を設置する普通地方公共団体に提出しなければならない。 
8 普通地方公共団体は、適当と認めるときは、指定管理者にその管理する公の施設の利用に係る料金(次項において「利用料金」という。)を当該指定管理者の収入として収受させることができる。 
9 前項の場合における利用料金は、公益上必要があると認める場合を除くほか、条例の定めるところにより、指定管理者が定めるものとする。この場合において、指定管理者は、あらかじめ当該利用料金について当該普通地方公共団体の承認を受けなければならない。 
10 普通地方公共団体の長又は委員会は、指定管理者の管理する公の施設の管理の適正を期するため、指定管理者に対して、当該管理の業務又は経理の状況に関し報告を求め、実地について調査し、又は必要な指示をすることができる。 
11 普通地方公共団体は、指定管理者が前項の指示に従わないときその他当該指定管理者による管理を継続することが適当でないと認めるときは、その指定を取り消し、又は期間を定めて管理の業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。