「公共的団体」の解釈及び行政財産使用料条例の位置付けについて

当市では、海岸保全に資する公の施設を設置する条例を、平成31年3月議会で制定し、開設時期を令和2年4月としました。施設には、無料開放される屋外及び屋内から海岸を観察するスペースの外使用料を徴収する多目的室を2室設け、多目的室については環境保全に関する活動を行う団体その他市長が特に認める団体が利用することが可能となっています。ただし、既に海岸その他の水辺の環境保全活動をする団体が三つほどあり、各団体は法人格を有しない任意団体であり、実際にはこれらの団体が多目的室を利用する主な団体になると想定されています。
使用料については、公の施設を設置する条例第12条で次のような定めがされています。

(使用料の減免)
第12条 市長は、国又は地方公共団体若しくは公共的団体が別表に掲げる施設を公用又は公益を目的とする事業の用に供するため利用する場合で、相当の理由があると認めるときは、使用料を減額し、又は免除することができる。

 

「公共的団体」という言葉については、「……いやしくも公共的な活動を営むものはすべてこれ(公共的団体)に含まれ、法人たると否とを問わない」(括弧内は筆者補足)という昭和24年2月7日の行政実例もあり、法律上の明確な定義もないことから、自治体において個別に当該団体の公益性等を総合的に判断し、解釈しているものと思われ、当市においてもこれまで他の公の施設の条例においてこの言葉を用いて、個別に任意団体に対して使用料の減免を行ってきたところですが、前述のような海岸の環境保全に関する3団体は「公共的団体」に当たりますか。

(結論)
 公共的団体に該当する可能性は高いと思います。

(理由)
 公共的団体という言葉は、法律的には地方自治法第157条第1項、市町村の合併の特例に関する法律第16条第8項で用いられています。条例で特別な意味を持たせていない場合は、法律の意味と同じと考えることとなります。ご指摘の昭和24年2月7日の行政実例は、地方自治法第157条が施行されるよりはるか前のものですので、同条の解釈をあらかじめ述べたものとは位置付けられないとは思いますが、同条規定の文言の意味を、制定前に述べたものと考えることは可能だと思います。すなわち、地方自治法も、この行政実例と違う立場で立法されたわけではありませんし、また、『逐条地方自治法』も、この行政実例を引用しています。
 以上を踏まえると、ご指摘の三つの任意団体の活動が公共的なものと言える可能性が高いと思います。御市では、これらの団体に対し、指揮監督ないしは助言する立場にあるのでしょうか。そうであれば、問題なく公共的団体といえます。
 もし、指揮監督の対象となっていなければ、今後、指揮監督の対象とすればよいでしょう。
 そうすれば、当然に、公の施設設置条例第12条に該当します。

○地方自治法
(公共的団体等の監督)
第157条 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の区域内の公共的団体等の活動の綜合調整を図るため、これを指揮監督することができる。
2 前項の場合において必要があるときは、普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の区域内の公共的団体等をして事務の報告をさせ、書類及び帳簿を提出させ及び実地について事務を視察することができる。
3 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の区域内の公共的団体等の監督上必要な処分をし又は当該公共的団体等の監督官庁の措置を申請することができる。
4 前項の監督官庁は、普通地方公共団体の長の処分を取り消すことができる。
(使用料)
第225条 普通地方公共団体は、第238条の4第7項の規定による許可を受けてする行政財産の使用又は公の施設の利用につき使用料を徴収することができる。
(行政財産の管理及び処分)
第238条の4
1~6 略
7 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。
(公の施設)
第244条 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
2 普通地方公共団体(次条第3項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
3 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。

〇使用料条例
(使用料の減免)
第6条 市長は、次の各号の一に該当するときは、使用料を減額し、又は免除することができる。
(1号、2号省略)
(3)前2号に掲げるものの外、市長が特に必要があると認めるとき。

〇行政実例
(昭和24・2・7 九州各市議会事務局長会会長鹿児島市議会事務局長宛 自治課長回答)
問 第96条第1項第12号(現行法では第14号)による議決事項について
一 立法の根拠
二 その具体的内容
三 いかなる調整をするかその範囲
答一 略
二 本号の対象となる公共的団体とは、農業協同組合、森林組合、漁業会、林業会、生活協同組合、商工会議所等の産業経済団体、養老院、育児院、赤十字社、司法保護等の厚生社会事業団体、青年団、婦人会、教育会、体育会等の文化教育事業団体等いやしくも公共的な活動を営むものはすべてこれに含まれ、法人たると否とを問わない。
三 略