原処分を取り消し、再度処分をした場合における審査請求の取扱い

市民Aから市民税の減免の申請があり、これについて処分庁は、9月4日付けで減免の却下通知をしたところ、Aから同月9日付けで審査請求がなされました。ところがその後、処分庁が当該却下理由の通知に、却下の理由付記が不十分であることに気付き、同月25日付で当該却下決定を取り消す旨の通知と、改めて十分な却下理由を記載した減免の却下理由の通知を行いました。
Aは、この再度の処分について、審査請求はしていません。
この場合、審査庁としては、審査請求に対し、どのような取扱いをしたらよいでしょうか。

(結論)
 審査庁は、審査請求に対し、却下の裁決をすることになります。

(理由)
 審査請求の裁決としては、棄却、認容、却下の形式があります。このうち、棄却の裁決は、審査請求に理由がない場合にする裁決で、認容の裁決は審査請求に理由がある場合にする裁決です。いずれも、審査庁は処分の中身を判断するものです。
 これに対し、却下の裁決とは、審査請求が不適法である場合にするものです。不適法の理由としては、審査請求が処分の適法性・妥当性を争うものですから、まず、審査請求の対象が処分性を有することが必要です。また、審査請求には審査請求期間がありますので、その期間経過後に提出された審査請求も不適法な審査請求ということになります。そのほかにも、審査請求の適法性の問題があります。
 本件では、減免申請に対する却下処分の取消しを求めて審査請求したのですが、処分庁が自ら、理由付記に違法があったとして取り消し、再度の処分をしています。この場合、審査請求の対象たる処分が既に取り消されていることになり、取り消された処分に対する審査請求はその対象たる処分が存在しないことになります。そうしますと、審査請求人としては、審査請求をする法律的利益がないことになります。このような場合を、申立ての利益がないと言います。審査請求は、申立ての利益がなければ審査請求をする必要性がなくなりますので、不適法な審査請求ということになります。本件の場合、処分庁が一旦取り消したのですから、申立ての利益がないことを理由に審査請求を却下することになります。
 処分庁は、再度の処分をするときも、審査請求をすることができる旨を教示しなければなりませんから、処分を受けた相手としては、新たな処分に対する審査請求を速やかにする必要があります。それを、前に行った原処分に対する審査請求の裁決がないから、そのまま、審査請求が新たな処分にまでその対象となっていると誤解している可能性もありますので、原処分を取り消し、新たな処分を行った旨の報告が処分庁においてなされた場合には、審査庁は速やかに却下裁決をすることとなります。
 なお、この場合、審理委員の意見を聞く必要性はありません。