予算上の措置がない条例又は規則の制定について

当市では、自然災害により住宅が全壊ないし半壊するなどの被害を受けた世帯に対し、支援金を支給するための条例又は規則の制定を考えています。
これについて、条例・規則を制定する時点では、予算上の措置をしていません。これは、いつ自然災害が発生するか予測することができないことによるものです。条例又は規則を制定した後に、災害が発生した時点で予備費や補正予算などによる予算上の措置を講ずることになります。
ところが、地方自治法第222条に、新たな条例・規則の制定・改正が、予算を伴うこととなる場合は、必要な予算措置が適確に講ぜられることとなるまでの間は制定・改正をすることができない旨の規定があります。この規定によれば、歳出の発生が予測不可能な場合、条例・規則の制定はしてはならないものでしょうか。

(結論)
 予算を伴う条例・規則であっても、御質問のケースの場合は制定することが可能です。ただし、規則のみの制定は避けるべきです。
(理由)
 まず、今回の質問では、「条例又は規則の制定」となっていますので、規則のみの制定も考えている可能性もあるものと判断しました。しかし、規則の場合ですと、職員を拘束しますが、議会及び住民は拘束されません。厳格な意味での法規性は有しません。したがって、条例の制定は不可欠と言えます。
 次に、条例及び規則の制定を考えましょう。条例を制定する場合、予算を伴うものについては、地方自治法第222条第1項の規定により「必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込みが得られるまでの間は、これを議会に提出してはならない。」という制約がかかります。
 しかし、歳出の原因とするものが、自然災害で住居が全壊又は半壊した時というものですから、毎年度予算に計上することとなれば、歳出の可能性が低いものを予算計上することとなります。これは極めて不合理です。地方自治法第222条第1項に規定される「予算を伴うこととなるもの」とは、必ず歳出することが予定されているものだけを意味します。ご質問の場合は、自然災害により住民の居宅が被害を受けた場合という、発生する可能性があるだけのものです。このような条例は、議会に対し、予備費や補正予算で対応する旨を説明し、議会の了を得れば足りるものと考えます。
 条例で、支援する旨の規定を置いてその具体的な内容は規則に委ねた場合も同様です。

○地方自治法
(予算を伴う条例、規則等についての制限)
第222条 普通地方公共団体の長は、条例その他議会の議決を要すべき案件があらたに予算を伴うこととなるものであるときは、必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込みが得られるまでの間は、これを議会に提出してはならない。
2 普通地方公共団体の長、委員会若しくは委員又はこれらの管理に属する機関は、その権限に属する事務に関する規則その他の規程の制定又は改正があらたに予算を伴うこととなるものであるときは、必要な予算上の措置が適確に講ぜられることとなるまでの間は、これを制定し、又は改正してはならない。