予定公物の使用許可について

 当市では、都市公園法上の都市公園である市営運動公園の隣地である市有地に、同公園のための駐車場を設置することとし、現在工事を行っています。同駐車場は、工事完成後に都市公園区域を変更した上で、都市公園法上の公園施設とする予定ですが、現状では都市公園法第2条の2の公告は行っていません。
 そうしたところ、同公園内のアリーナにおいて、大規模な国際大会が開催されることになり、大会の主催者である組織委員会から工事中の駐車場用地を駐車場として使用させてほしいとの申出がありました。
 当市の都市公園条例では、工作物等を設置して公園を占用する場合には占用の許可を、イベント等を行うため公園の全部又は一部を独占して利用する場合には、利用の許可(行為の許可)を得なければならないと規定していますが、有料公園施設の利用許可の規定はありません。また、占用の許可及び行為の許可の規定は、都市公園法第33条第4項に定める公園予定区域等に準用すると定めています。
 なお、工事請負業者との契約では、当市が必要と認めた場合は、工事途中の駐車場用地を使用することができることになっています。
 この場合、組織委員会に工事中の駐車場用地を使用させるためには、どのような方法を取るのが適切でしょうか。

(結論)
 議会の議決により都市公園とすべき区域と決定している場合(都市公園法第33条)には、貴市の都市公園条例に基づく許可を行うことが適切です。他方、議決により都市公園とすべき区域と決定していない場合は、駐車場用地が「公用又は公共用に供することを決定した」と言えるときは、行政財産として、目的外使用許可(地方自治法第238条の4第7項)を行うことが可能と考えられます。

(理由)
1 自治体における財産の管理
 地方自治法(以下「法」といいます。)は、公有財産を、用途によって行政財産と普通財産とに分け(法第238条第3項)、それぞれについて管理方法を定めています。
 このうち、行政財産は、普通公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することを決定した財産をいい(法第238条第4項)、本来的に行政目的で使用する財産であることから、第三者の使用収益は、その用途又は目的を妨げない限度においてのみ許可されることになっています(法第238条の4第7項)。他方、行政財産以外の財産である普通財産については、行政財産のように行政執行上直接使用されるものではなく、その経済的価値を保全発揮することにより、間接的に普通地方公共団体の行政に貢献することとなるものであるため、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、若しくは出資の目的とし、又はこれに私権を設定することができるとされています(法第238条の5第1項)。
2 予定公物について
 行政財産には、未だ現実には公用又は公共用には供されてはいないものの、今後公用又は公共用に供することを決定した財産(講学上、予定公物と言われることから、以下「予定公物」といいます。)も含まれます。そのため、予定公物についても、第三者に使用収益させる場合には、行政財産の目的外使用許可の手続(法第238条の4第7項)によることになります。
 なお、河川予定地(河川法第56条、第57条)、道路予定区域(道路法第91条)、公園予定区域(都市公園法第33条)のように、個別法令において、管理処分についての定めを置いているものもあります。この場合には、それぞれの法令に従って管理処分を行うことになります。
3 質問について
 今回の質問では、駐車場用地について、公園施設の供用開始手続である公告(都市公園法第2条の2)がなされていません。
 よって、都市公園の占用及び利用の許可を行うことはできないのが原則ですが、都市公園法は、地方公共団体が、必要があると認めるときは、都市公園を設置すべき区域(公園予定区域)を定めることができるとし(同法第33条第1項)、この場合については、都市公園の占用許可(同法第6条第1項)及び利用許可(同法第12条第1項)の規定を準用するとしています(同法第33条第4項)。また、都市公園法及び同法に基づく命令で定めるもののほか、都市公園の設置及び管理に必要な事項は、条例で定めることができるとされているところ(同法第18条)、多くの自治体では、都市公園条例において、公園予定区域についても、占用許可、行為の許可及び有料施設の利用許可の規定を準用すると定めています。貴市の都市公園条例でも、公園予定区域に占用の許可及び行為の許可の規定を準用していることから、公園予定区域を定めるための手続である、議会の議決(同法第33条第5項)を経ている場合には、同条例に基づく許可を行うことが適切です。
 他方、公園予定区域としての議決を経ていない場合には、都市公園条例に基づく許可を行うことはできません。この場合、駐車場用地が「公用又は公共用に供することを決定した」と言えるときは、行政財産(予定公物)として、目的外使用許可(法第238条の4第7項)を行うことが考えられます。
 「公用又は公共用に決定した」と言えるかについては、個別具体的な判断になると考えられますが、この点に関し、大阪地判昭和44年3月4日・判タ233号180頁は、公園としての公用開始前の公園内苑池の使用許可について、許可の当時、公園用苑池等の新設工事を行った結果、一応一般市民の利用に供しうる状態となったこと、その間、市議会提出資料である財産表及び事務事業概要に公園用地として登載され、また〇〇公園の名称でA市特別都市計画公園に追加された旨が建設省告示をもって告示されたことなどの事情からすると、公用開始前においては、公園予定地であったと認めるのが相当であると判示しています。
 質問の事案では、既に工事が行われているとのことですが、対外的にも公園用地であることが明示されているなどの事情があれば、都市公園の予定地であることが決定しているといえ、予定公物として、行政財産の使用許可(法第238条の4第7項)を行うことが可能であると考えられます。
 他方、「公用又は公共用に決定した」と言えない場合には、予定公物には当たらないため、普通財産として、貸付を行うのが適当であると考えられます。

〇都市公園法
(都市公園の設置)
第2条の2 都市公園は、次条の規定によりその管理をすることとなる者が、当該都市公園の供用を開始するに当たり都市公園の区域その他政令で定める事項を公告することにより設置されるものとする。
(都市公園の占用の許可)
第6条 都市公園に公園施設以外の工作物その他の物件又は施設を設けて都市公園を占用しようとするときは、公園管理者の許可を受けなければならない。
(以下略)
(国の設置に係る都市公園における行為の禁止等)
第12条 国の設置に係る都市公園において次の各号に掲げる行為をしようとするときは、国土交通省令で定めるところにより、公園管理者の許可を受けなければならない。
一 物品を販売し、又は頒布すること。
二 競技会、集会、展示会その他これらに類する催しのために都市公園の全部又は一部を独占して利用すること。
三 前二号に掲げるもののほか、都市公園の管理上支障を及ぼすおそれのある行為で政令で定めるもの
(以下略)
(条例又は政令で規定する事項)
第18条 この法律及びこの法律に基づく命令で定めるもののほか、都市公園の設置及び管理に関し必要な事項は、条例(国の設置に係る都市公園にあつては、政令)で定める。
(公園予定区域等)
第33条 地方公共団体は、必要があると認めるときは、都市公園を設置すべき区域を定めることができる。
2・3 略
4 第1項又は第2項の規定により都市公園を設置すべき区域が決定され、その旨が公告された後当該区域に都市公園が設置されるまでの間においても、当該都市公園を設置しようとする地方公共団体又は国が当該区域についての土地に関する権原を取得した後においては、第2条の3、第4条、第5条、第6条から第12条まで、第13条、第14条、第19条、第25条から第28条まで及び前条の規定は、当該区域(以下「公園予定区域」という。)又は当該公園予定区域内に設けられる施設で公園施設となるべきもの(以下「予定公園施設」という。)について準用する。
5 地方公共団体は、第1項の規定により都市公園を設置すべき区域を決定しようとするときは、あらかじめ、当該地方公共団体の議会の議決を経なければならない。
(以下略)

〇地方自治法
(公有財産の範囲及び分類)
第238条
1・2 略
3 公有財産は、これを行政財産と普通財産とに分類する。
4 行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産をいい、普通財産とは、行政財産以外の一切の公有財産をいう。
(行政財産の管理及び処分)
第238条の4
1~6 略
7 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。
(普通財産の管理及び処分)
第238条の5 普通財産は、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、若しくは出資の目的とし、又はこれに私権を設定することができる。
(以下略)