性の多様性に関する条例
(令和6年11月29日更新)
【性の多様性に関する用語】
〇 性の多様性に関しては、LGBT、性的少数者、性的指向、性自認、性同一性障害などの用語が使われている。最初に、用語の整理をしておく。
〇 LGBTとは、Lesbian(レズビアン:女性の同性愛者)、Gay(ゲイ:男性の同性愛者)、Bisexual(バイセクシャル:両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー:こころの性とからだの性との不一致)の頭文字を組み合わせた言葉である。なお、Queer/Questioning(クィア又はクエスチョニング:性的指向・性自認が定まらない人)を含めて、LGBTQとされることもある。
「LGBT」の使用例は、法律ではないが、自治体の条例では令和5年に制定された(宮崎県)木城町個人情報保護法施行条例や(青森県)大鰐町議会ハラスメント防止条例において使用されている。
〇 性的指向とは、英語のSexual Orientationの日本語訳で、どのような性別の人を好きになるかということであり、LGBTのうち、L、G、Bがその類型に入るとされている。また、性自認とは、英語のGender Identityの日本語訳(Gender Identityは、「性同一性」とも訳される)で、自分の性をどのように認識しているかということであり、LGBTのうち、Tがその類型に入るとされている。国連では、平成23年6月に人権理事会が「性的指向及び性自認に関する決議」を採択するなど、性的指向・性自認の概念が使われている。性的指向と性自認のそれぞれの頭文字をとって、SOGIという言葉も使われている。
最近自治体が制定する性の多様性に関する条例では、一般的に「性的指向」及び「性自認」が使われている。「性的指向」は平成15年に制定された小金井市男女平等基本条例や平成18年に制定された(鳥取県)琴浦町男女共同参画推進条例 などで使用されているが、「性的指向」及び「性自認」を併せて使用した最初の条例は平成25年に制定された文京区男女平等参画推進条例と 多摩市女と男の平等参画を推進する条例 である(なお、文京区条例は「性自認」ではなく「性的自認」と表記している)。また、平成元年に制定された大阪府性的指向及び性自認の多様性に関する府民の理解の増進に関する条例や令和4年に制定された深谷市性的指向及び性自認の多様性を理解し尊重する社会の推進に関する条例では、条例名にも使用されている。ちなみに、大阪府条例では、「性的指向」を「自己の恋愛又は性愛の対象となる性別についての指向」と、「性自認」を「自己の性別についての認識」と定義づけている。
〇 性的少数者とは、英語Sexual Minorityの日本語訳であり、性的マイノリティなどともいわれる。
一部の自治体の条例では、「性的少数者」や「性的マイノリティ」が使用されている。ちなみに、渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例(全部改正前)は「性的少数者」を「同性愛者、両性愛者及び無性愛者である者並びに性同一性障害を含め性別違和がある者」と、 世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例 は「性的マイノリティ」を「性自認、性的指向等のあり方が少数と認められる人々」と、 鳴門市男女共同参画推進条例は「セクシュアル・マイノリティ」を「同性愛者、両性愛者、性同一性障がい者、インターセックス等の性的少数者」と定義づけている。
〇 性同一性障害とは、英語のGender Identity Disorderの日本語訳で、医学的な疾患名であり、性自認が一致しないため、社会生活に支障がある状態とされる。
平成15年に性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律が制定され、法律用語となっている。法律では、「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているもの」(2条)と定義されている。
「性同一性障害」を使用する条例は、平成14年に制定された堺市男女平等社会の形成の推進に関する条例や平成16年に制定された 八女市男女共同参画のまちづくり条例など、少なくない。
〇 令和5年6月、議員立法により「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」が制定された(令和5年6月23日公布・施行)。同法は、同年5月に自民党及び公明党により「性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」、立憲民主党及び共産党により「性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」、維新の会及び国民民主党により「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」がそれぞれ提案され、自民党及び公明党案が修正された(「性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案に対する修正案」)うえで、賛成多数により可決され、成立している(令和5年6月16日成立 審議経過については衆議院HP「衆法 第211回国会13性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案 議案審議経過情報」を参照されたい。)。
同法は、「性的指向」を「恋愛感情又は性的感情の対象となる性別についての指向」(2条1項)、「ジェンダーアイデンティティ」を「自己の属する性別についての認識に関するその同一性の有無又は程度に係る意識」(2条2項)と定義づけたうえで、基本理念として「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策は、全ての国民が、その性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、性的指向及びジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならないものであるとの認識の下に、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを旨として行われなければならない。」(3条)と規定している。
併せて、国及び地方公共団体の役割(4条、5条)、事業主等の努力(6条)、施策の実施の状況の公表(7条)、政府による基本計画の策定(8条)、学術研究、知識の着実な普及等(9条、10条)等について、規定している。
同法制定までは「性的指向」や「性自認」は法律用語としては用いられていなかったが、同法により新たに「性的指向」と「ジェンダーアイデンティティ」が法律用語となったことになる。「性自認」は依然して法律用語として用いられていない。
同法の内容や政府の取組み等については、内閣府HP「性的指向・ジェンダーアイデンティティ理解増進」を参照されたい。
【条例の制定状況】
〇 性的指向・性自認及び性的少数者に対する差別的な取扱いを禁止することなどを規定している条例として、以下のようなものが確認できる。
大阪府泉南市 | 平成23年12月26日公布 | 平成24年4月1日施行 |
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東京都文京区 | 平成25年9月27日公布 | 平成25年11月1日施行 |
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東京都多摩市 | 平成25年9月30日公布 | 平成26年1月1日施行 |
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大阪府羽曳野市 | 平成25年12月27日公布 | 平成26年4月1日施行 |
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大阪府阪南市 | 平成26年3月27日公布 | 平成26年4月1日施行 |
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東京都台東区 | 平成26年12月17日公布 | 平成27年1月1日施行 |
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徳島県鳴門市 | 平成27年3月24日公布 | 平成28年1月1日施行 |
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大阪府松原市 | 平成27年3月27日公布 | 平成27年4月1日施行 |
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東京都渋谷区 | する条例(全部改正前) |
平成27年4月1日公布 | 平成27年4月1日施行 |
和歌山県橋本市 | 平成27年9月25日公布 | 平成27年10月1日施行 |
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埼玉県戸田市 | 平成28年9月30日公布 | 平成28年10月1日施行 |
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鳥取県日野町 | 平成29年3月21日公布 | 平成29年3月21日施行 |
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東京都武蔵野市 | 平成29年3月22日公布 | 平成29年4月1日施行 令和4年4月1日改正施行 |
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奈良県五條市 | 平成29年3月28日公布 | 平成29年3月28日施行 |
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東京都国立市 | 平成29年12月28日公布 | 平成30年4月1日施行 令和3年4月1日改正施行 |
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東京都世田谷区 | 平成30年3月6日公布 | 平成30年4月1日施行 |
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東京都 |
人権尊重の理念の実現を目指す条例 |
平成30年10月15日公布 | 平成30年10月15日施行 令和4年11月1日改正施行 |
東京都国立市 | 平成30年12月27日公布 | 平成31年4月1日施行 | |
兵庫県宝塚市 | 平成31年3月29日改正施行 |
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奈良県大和郡山市 | 平成30年12月20日公布 | 平成31年4月1日施行 |
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岩手県北上市 | 平成31年3月22日公布 | 平成31年4月1日施行 |
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岡山県総社市 | 平成31年3月22日公布 | 平成31年4月1日施行 |
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茨城県 | 平成31年4月1日改正施行 |
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東京都豊島区 | 平成31年4月1日改正施行 |
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神奈川県横須賀市 | 平成31年4月1日改正施行 |
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岡山市 | 平成31年4月1日改正施行 |
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岩手県盛岡市 | 令和元年6月28日公布 | 令和元年6月28日施行 |
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沖縄県久米島町 | 令和元年7月1日公布 | 令和元年7月1日施行 |
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大阪府 | 令和元年10月30日公布 | 令和元年10月30日施行 |
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川崎市 | 令和元年12月16日公布 | 令和元年12月16日施行 |
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宮崎県高鍋町 | 令和2年3月23日公布 | 令和2年4月1日施行 |
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茨城県守谷市 | 令和2年3月26日改正施行 |
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大阪府岬町 | 令和2年3月26日改正施行 |
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東京都港区 | 令和2年4月1日改正施行 |
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東京都狛江市 | 令和2年3月31日公布 | 令和2年7月1日施行 |
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三重県いなべ市 | 令和2年6月26日公布 | 令和2年7月1日施行 |
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香川県丸亀市 | まちを実現する条例 |
令和2年12月21日公布 | 令和3年1月1日施行 |
奈良県宇陀市 | 令和2年12月25日公布 | 令和2年12月25日施行 |
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兵庫県宍粟市 | 令和3年3月12日公布 | 令和3年4月1日施行 |
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宮崎県木城町 | 令和3年3月18日公布 | 令和3年3月18日施行 |
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三重県 |
して暮らせる三重県づくり条例 |
令和3年3月23日公布 | 令和3年4月1日施行 |
沖縄県浦添市 | 令和3年3月23日公布 | 令和3年10月1日施行 |
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茨城県潮来市 | 令和3年3月24日改正施行 |
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静岡県富士市 | 令和3年4月1日改正施行 |
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鹿児島県南さつま市 | 令和3年7月7日公布 | 令和3年8月1日施行 |
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鳥取県 | 令和3年4月1日改正施行 |
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大阪府守口市 | 令和4年2月16日改正施行 |
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宮崎県国富町 | 令和4年3月14日公布 | 令和4年4月1日施行 |
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埼玉県深谷市 | 尊重する社会の推進に関する条例 | 令和4年3月23日公布 | 令和4年3月23日施行 |
兵庫県加西市 | 社会づくり条例 | 令和4年3月24日公布 | 令和4年4月1日施行 |
秋田県 |
基本条例 |
令和4年3月25日公布 | 令和4年4月1日施行 |
東京都江戸川区 |
する社会づくり条例 |
令和4年3月25日公布 | 令和4年4月1日施行 |
徳島県阿南市 | 令和4年3月25日改正施行 |
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京都府福知山市 | 令和4年3月29日公布 | 令和4年4月1日施行 |
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沖縄県南風原町 | 令和4年3月30日公布 | 令和4年4月1日施行 |
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茨城県取手市 | 令和4年4月1日改正施行 |
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長野県安曇野市 | づくり条例 |
令和4年4月1日改正施行 |
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愛知県岡崎市 | 尊重する社会を実現するための条例 |
令和4年4月1日改正施行 |
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三重県 | 令和4年5月19日公布 | 平成4年5月19日施行 |
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神奈川県逗子市 | 社会を推進する条例 | 令和4年6月20日公布 | 令和4年10月1日施行 |
埼玉県 | 令和4年7月8日公布 | 令和4年7月8日施行 |
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兵庫県加西市 | 令和4年10月1日公布 | 令和4年10月1日施行 |
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岡山県美作市 | 関する条例 |
令和4年10月1日改正施行 |
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鹿児島県志布志市 | 令和4年12月16日公布 | 令和5年4月1日施行 |
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三重県明和町 | 令和4年12月23日公布 | 令和5年1月1日施行 |
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兵庫県明石市 | 令和4年12月23日公布 | 令和5年4月1日施行 |
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東京都杉並区 | するための取組の推進に関する条例 | 令和5年3月15日公布 | 令和5年4月1日施行 (一部、令和5年4月24日施行) |
東京都中央区 | に関する基本条例 | 令和5年3月17日公布 | 令和5年4月1日施行 |
長野県松本市 | 令和5年3月22日公布 | 令和5年3月22日施行 |
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千葉県木更津市 | 令和5年3月23日公布 | 令和5年4月1日施行 |
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愛知県大府市 | まちづくり推進条例 | 令和5年3月23日公布 | 令和5年4月1日施行 |
山梨県 | 令和5年3月24日公布 | 令和5年3月24日施行 |
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千葉県流山市 | 令和5年3月27日公布 | 令和5年4月1日施行 |
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東京都町田市 | 令和5年3月31日公布 | 令和5年4月1日施行 |
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沖縄県 | 令和5年3月31日公布 | 令和5年4月1日施行 |
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東京都墨田区 | 令和5年4月1日改正施行 |
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東京都日野市 | 多様な生き方を認め合う条例 | 令和5年4月1日改正施行 |
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福井県勝山市 | 推進条例 | 令和5年4月1日改正施行 |
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愛知県豊橋市 | 社会づくりを推進する条例 | 令和5年4月1日改正施行 |
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鹿児島県天城町 | 令和5年6月8日公布 | 令和5年6月8日施行 |
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埼玉県横瀬町 | 令和5年6月14日公布 | 令和5年7月1日施行 |
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島根県浜田市 | 令和5年7月7日公布 | 令和5年7月7日施行 |
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大阪府大東市 | 令和6年3月12日改正施行 |
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大阪府東大阪市 | 令和6年3月29日改正施行 |
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群馬県渋川市 | 推進する条例 | 令和6年3月7日公布 | 令和6年4月1日施行 |
東京都渋谷区 | する条例(全部改正後) | 令和6年3月7日公布 | 令和6年4月1日施行 |
愛媛県愛南町 | 令和6年3月8日公布 | 令和6年4月1日施行 |
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福岡県上毛町 | 令和6年3月15日公布 | 令和6年4月1日施行 |
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群馬県太田市 | の推進に関する条例 | 令和6年3月18日公布 | 令和6年4月1日施行 |
相模原市 | 令和6年3月21日公布 | 令和6年4月1日施行 |
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奈良県天理市 | 令和6年3月21日公布 | 令和6年4月1日施行 |
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東京都品川区 | 社会を実現するための条例 | 令和6年3月28日公布 | 令和6年4月1日施行 |
東京都三鷹市 | 令和6年3月29日公布 | 令和6年4月1日施行 |
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令和6年3月29日公布 | 令和6年4月1日施行 |
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に伴う関係条例の整理に関する条例 |
令和6年3月29日公布 | 令和6年4月1日施行 |
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大分県臼杵市 | 令和6年9月30日公布 | 令和6年10月1日施行 |
〇 平成23年12月に制定された泉南市条例は、「性的指向」を「性的意識の対象が異性、同性又は両性のいずれかに向かうのかを示す概念」(2条6号)と定義づけたうえで、「すべての人は、社会のあらゆる分野において、直接的又は間接的を問わず性別及び性的指向を理由とする権利侵害及び差別的取扱いを行ってはならない。」(10条1項)と規定し、「性的指向」に対する差別的取扱いを禁止した。
その後平成20年代に制定された大阪府下の羽曳野市、阪南市及び松原市の条例も、「性的指向」に対する差別的取扱いを禁止している。
〇 平成25年9月に制定された文京区条例及び多摩市の条例は、「性的指向」及び「性自認」に対する差別的取扱いを禁止した。但し、文京区条例は「性的自認」としている。両条例については、次項において解説する。
その後制定された全国の条例のほとんどは、「性的指向」及び「性自認」に対する差別的取扱いの禁止としている。なお、日野町条例は「性的自認」とし、五條市及び久米島町の条例は「性的指向」ではなく「性的思考」としている。
なお、令和5年10月25日最高裁大法廷判決は、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号が性別の取扱いの変更の要件として「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。」を規定していることは憲法3条に違反している旨判示しているが、この判決文の中で、性同一性障害を有する者を取り巻く社会状況等として、「地方公共団体においては、平成25年に、東京都文京区で性自認等を理由とする差別的な取扱いその他の性別に起因する人権侵害を行ってはならない旨の条項を含む条例が制定されて以降、相当数の地方公共団体の条例において同趣旨の条項が設けられている。」(5頁)と記述している。
〇 平成27年に制定された鳴門市条例は、「セクシュアル・マイノリティ」を「同性愛者、両性愛者、性同一性障がい者、インターセックス等の性的少数者」(2条12号)と定義づけたうえで、「すべての人は、セクシュアル・マイノリティへの理解を深めるとともに、差別をしたり人権を侵害してはなりません。」(11条1項)と規定している。なお、あわせて「すべての人は、生まれついての生物学的な性別やジェンダーにとらわれずに、自分が決定した性の自認や性的指向が尊重されなければなりません。」(同条2項)と規定している。
同じく平成27年に制定された渋谷区条例は、「性的指向」を「人の恋愛や性愛がどういう対象に向かうかを示す指向(異性に向かう異性愛、同性に向かう同性愛及び男女両方に向かう両性愛並びにいかなる他者も恋愛や性愛の対象としない無性愛)」(2条6号)、「性的少数者」を「同性愛者、両性愛者及び無性愛者である者並びに性同一性障害を含め性別違和がある者」(同条7号)と定義づけたうえで、「区、区民及び事業者は、性別による固定的な役割分担の意識を助長し、若しくはこれを是認させる行為又は性的少数者を差別する行為をしてはならない。」(8条3項)と規定している。
〇 総社市及びいなべ市の条例は、「性的マイノリティ」を「性的指向(どの性別を恋愛の対象にするかを表すものをいう。)や性自認(自己の性別についての認識をいう。)のあり方が多数者とは異なる者」(総社市条例は3条2号、いなべ市条例は2条1号)と定義づけたうえで、「性的マイノリティであることを理由とする差別的取扱い又は暴力的行為」を禁止している(両条例とも8条1号)。
また、浦添市条例は、「性自認」を「自己の性別についての認識」、「性的指向」を「人の性的関心(恋愛又は性的欲求)がどのような対象に向かうか(向かわない場合を含む。)を表す概念」、「性別等」を「生物学的な性、性自認、性的指向及び性別表現(服装、仕草及び言葉遣い等で表現する性別)」、「性的マイノリティ」を「性別等が多数者と異なる者」と定義づけた(2条2号~5号)うえで、「性的マイノリティであることを理由とする差別的取扱い又はハラスメントを行うこと」(8条1号)を禁止している。
なお、世田谷区条例は、「性的マイノリティ」を「性自認、性的指向等のあり方が少数と認められる人々」(2条6号)と定義づけている。
【文京区条例と多摩市条例】
〇 文京区男女平等参画推進条例は、性的指向又は性的自認に起因する差別的な取扱いに関して、「何人も、配偶者からの暴力等、セクシュアル・ハラスメント、性別に起因する差別的な取扱い(性的指向又は性的自認に起因する差別的な取扱いを含む。)その他の性別に起因する人権侵害を行ってはならない」(7条1項)と規定している。
本条例では、「性的指向」及び「性的自認」という用語を使用している一方で、「性的指向」及び「性的自認」の定義規定は置いていないが、これに関しては、「LGBT概念に入らない、例えばXジェンダー、クエスチョン、インターセックスという類型の人たちを排除することにもなるおそれ」を危惧し、LGBT概念は使用せず、「国連でも使われていたSOGI(Sexual OrientationとGender Identity)概念すなわち性的指向・性自認の用語を用いることとし、禁止規定に位置づけることで、定義付けはあえて行わなかった」((谷口洋幸編著「LGBTをめぐる法と社会」(日本加除出版 2019年)76頁)とされている。
また、「区民及び事業者は、区に対し、区が関与する男女平等参画に関する施策に係る苦情を申し立てることができる」(15条1項)として、苦情申立ての規定を置いている。
なお、現在の文京区のSOGIに関する取組は、文京区HP「SOGI(性的指向と性自認)」を参照のこと。
〇 多摩市女と男の平等参画を推進する条例は、基本理念として「すべての人が、個人として尊重され、性別並びに性的指向及び性自認にかかわらず、個人の能力及び個性を発揮し、意欲及び希望に沿って、社会的責任を分かち合うこと」(3条1号)及び「すべての人が、性別による差別的取扱い並びに性的指向及び性自認による差別を受けることなく、固定的な性別役割分担意識に基づく社会制度や慣行を解消されること」(3条2号)を掲げたうえで、性的指向及び性自認による差別に関して、「市、市民、事業者及びその他の団体は、社会のあらゆる場において、性別による差別的取扱い並びに性的指向及び性自認による差別を行ってはなりません」(7条1項)とし、また、「市、市民、事業者及びその他の団体は、情報を公表する際には、それらの情報が、男女平等参画社会の実現を阻害し、性別による差別的取扱い並びに性的指向及び性自認による差別を助長し、又は暴力的行為を誘発することのないように配慮しなければなりません」(8条)と規定している。
「性的指向」を「人の恋愛感情や性的な関心がいずれの性別に向かうかの指向(この指向については、異性に向かう異性愛、同性に向かう同性愛、男女両方に向かう両性愛等の多様性があります。)をいいます」(2条6号)と、「性自認」を「自分がどの性別であるかの認識(この認識については、自分の生物学的な性別と一致する人もいれば、一致しない人もいます。)のことをいいます」(2条7号)とそれぞれ定義づけているが、これに関しては「広く使用されている『性的マイノリティ』(性的少数者)という表現をせずに、『性的指向』、『性自認』として第2条に定義しました」(多摩市HP「平成26年1月1日から、「多摩市女と男の平等参画を推進する条例」が施行されました!」)とされている。
また、「市民、事業者及びその他の団体は、市が実施する男女平等参画社会の実現に関する施策又は男女平等参画社会の実現に影響を及ぼすと認める施策並びに性別による差別的取扱い、性的指向及び性自認による差別その他の男女平等参画社会の実現を阻害する人権侵害と認める事項に関し、市に対して、苦情の申し出をすることができます」(21条1項)として、苦情処理の規定を置いている。
【同性パートナーシップ制度を規定している条例】
〇 上記条例のうち、同性パートナーシップ制度を規定しているのは、渋谷区、総社市、豊島区、港区、いなべ市、国立市、浦添市、武蔵野市、福知山市、岡崎市、東京都、美作市、町田市、日野市、杉並区、天理市及び三鷹市の条例である。
同性パートナーシップ制度とは、自治体が、同性カップルに対して、二人のパートナーシップを証明し、または、二人のパートナーシップの宣誓を受け取るなどの制度であるが、令和6年6月28日時点で、全国の自治体のうち458団体が導入している(「渋谷区・虹色ダイバーシティ全国パートナーシップ制度共同調査」)とされるが、その大半は、条例ではなく、規則、要綱等を根拠としている。
〇 全国で初めて同性パートナーシップ制度を導入し、かつ、条例に規定したのは、渋谷区である。
渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例(全部改正前)を平成27年4月に制定し、「パートナーシップ」を「男女の婚姻関係と異ならない程度の実質を備える戸籍上の性別が同一である二者間の社会生活関係」(2条8号)と定義づけたうえで、区長は、公序良俗に反しない限りにおいて、パートナーシップに関する証明をすることができる(10条1項)とし、パートナーシップ証明制度を設けた。証明にあたっては任意後見契約に係る公正証書及び共同生活の合意契約に係る公正証書による確認が必要である(10条2項)などの手続きを定めるとともに、区民及び事業者は、その社会活動の中で、区が行うパートナーシップ証明を最大限配慮しなければならないなどの配慮規定(11条)を置いた。
同条例は、令和6年3月に全部改正され、渋谷区人権を尊重し差別をなくす社会を推進する条例となったが、「パートナーシップ」を「婚姻関係と異ならない程度の実質を備える2者間の社会生活関係」(2条7号)と定義を一部変更したほかは、パートナーシップ証明制度については全部改正前とほぼ同様の規定を置いている(17条、18条)。
なお、制度の内容は、渋谷区HP「渋谷区パートナーシップ証明」を参照のこと。また、条例の内容等は、渋谷区HP「渋谷区人権を尊重し差別をなくす社会を推進する条例」を参照のこと。
全部改正にあわせて、渋谷区多様性を認め合う社会を推進する条例も制定されている(渋谷区HP「渋谷区多様性を認め合う社会を推進する条例」参照)。
〇 総社市多様な性を認め合う社会を実現する条例 は、パートナーシップの宣誓制度を規定している。
すなわち、「パートナーシップ」を「2人の者が,互いを人生のパートナーとし,相互の協力により継続的な共同生活を行っている,又は継続的な共同生活を行うことを約した関係」(2条4号)と、「宣誓」を「パートナーシップの関係にある者同士が,市長に対し,パートナーシップの関係である旨を誓うこと」(2条5号)と定義づけたうえで、パートナーシップの宣誓は,宣誓書を市長に提出することにより行い、市長は,パートナーシップの宣誓があった場合は,パートナーシップ登録簿への登録を行うとともに,登録証明書に宣誓書の写しを添えて交付する(12条)こととしている。
なお、制度の内容は、総社市HP「総社市パートナーシップ宣誓制度・ファミリーシップ制度」を参照のこと。
〇 豊島区男女共同参画推進条例は、パートナーシップ制度を規定している。
すなわち、「パートナーシップ」を「互いを人生の伴侶とし、日常の生活において、経済的又は物理的かつ精神的に相互に協力し合うことを約した、一方又は双方が多様な性自認又は性的指向の2人の者の関係」(2条7号)と定義づけたうえで、区長は、パートナーシップの届出があったときは、規則で定めるところにより、受理証明書を交付することができる(8条の2)とし、事業者は、その社会活動の中で、受理証明書を最大限に配慮し、必要な措置を講ずるよう努めるものとする(8条の3)としている。
なお、制度の内容等は、豊島区HP「豊島区パートナーシップ・ファミリーシップ制度」及び自治体法務研究2020年夏号条例制定の事例CASESTUDY「豊島区男女共同参画推進条例」を参照のこと。
〇 港区男女平等参画条例は、みなとマリアージュ制度を規定している。
すなわち、区は、「みなとマリアージュ制度(性的指向又は性自認にかかわらず 、誰もが人生を共にしたい人と家族として暮らすことを尊重する施策を推進するための制度)」を設け、制度の利用に関し必要な事項は区規則で定める(9条の2)こととしている。
なお、制度の内容は、港区HP「みなとマリアージュ制度の概要」を参照のこと。
〇 いなべ市性の多様性を認め合う社会を実現するための条例は、パートナーシップの宣誓制度を規定している。
すなわち、「パートナーシップ」を「2人の者が、互いを人生のパートナーとし、相互の協力により継続的な共同生活を行っている、又は継続的な共同生活を行うことを約した関係」(2条3号)と、「宣誓」を「パートナーシップの関係にある者同士が、市長に対し、パートナーシップの関係である旨を誓うこと」(2条4号)と定義づけたうえで、パートナーシップの宣誓は,宣誓書を市長に提出することにより行い、市長は、パートナーシップの宣誓があった場合は、パートナーシップ登録簿への登録を行うとともに、宣誓した2人の者に対して、登録証明書を交付する(12条)こととしている。
なお、制度の内容は、いなべ市HP「いなべ市パートナーシップ宣誓制度」を参照のこと。
〇 国立市は 国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例を令和3年4月1日改正施行して、パートナーシップ制度を規定した。
すなわち、「パートナーシップ」を「互いを人生のパートナーとし、相互の人権を尊重し協力し合うことを約した、継続的かつ対等な2者間の関係」(2条10号)と定義づけたうえで、市長は、パートナーシップの届出があったときは、規則で定めるところにより、受理証明書を交付し、事業者等は、その事業活動の中で、市が実施するパートナーシップに係る制度を尊重し、必要な措置を講ずるよう努める等(10条)としている。
なお、制度の内容は、国立市HP「くにたちパートナーシップ制度」を参照のこと。
〇 浦添市性の多様性を尊重する社会を実現するための条例は、パートナーシップの宣誓証明制度を規定している。
すなわち、「パートナーシップ」を「互いを人生のパートナーとして、日常の生活において相互に協力し合うことを約束した二者間の関係であって、その一方又は双方が性的マイノリティであるもの」(2条6号)と定義づけたうえで、市長は、公序良俗に反しない限りにおいて、パートナーシップ宣誓証明書を交付することができるとし、その申請手続その他必要な事項は、規則で定める(10条)としている。
なお、制度の内容は、浦添市HP「パートナーシップ宣誓証明書の交付」を参照のこと。
〇 武蔵野市は、武蔵野市男女平等の推進に関する条例を令和4年4月1日改正施行して、パートナーシップ制度を規定した。
すなわち、「パートナーシップ制度」を「性別等にかかわりなく、お互いを人生のパートナーとして、日常生活において、互いに協力し、及び扶助し合うことを約した2人が、安心して暮らし続けられることを目的として、市長がパートナーシップの届出を受理した場合に、受理したことを証する書面を交付する制度」(2条12号)と定義づけたうえで、市長は、パートナーシップの届出があったときは、規則で定めるところにより、受理したことを証する書面を交付する(18条)としている。また、事業者等は、その活動においてパートナーシップ制度を最大限に尊重し、必要な措置を講ずるよう努める(6条3項)としている。
なお、制度の内容は、武蔵野市HP「武蔵野市パートナーシップ制度」を参照のこと。
〇 福知山市みんなの多様な性を尊重する条例は、パートナーシップ制度を規定している。
すなわち、「パートナーシップ」を「互いを人生のパートナーとし、日常の生活において協力し合うことを約した一方又は双方が性的マイノリティである2者の関係」(2条6号)と定義づけたうえで、市長は、パートナーシップの届出があったときは、規則で定めるところにより、受理証明書を交付し、市、市民、事業者及び教育に携わる者は、その活動の中で、受理証明書を最大限に尊重し、必要な措置を講ずるよう努める等(12条)としている。
なお、制度の内容は、福知山市HP「福知山市パートナーシップ制度がスタートしました!」を参照のこと。
〇 岡崎市は、岡崎市男女共同参画推進条例を令和4年4月1日改正施行して、岡崎市男女共同参画の推進及び多様な性を尊重する社会を実現するための条例としたうえで、パートナーシップ・ファミリーシップ制度を規定した。
すなわち、「パートナーシップ」を「互いを人生のパートナーとし、相互の協力により継続的な共同生活を行っている、又は継続的な共同生活を行うことを約束した2人の関係」(2条4号)と、「ファミリーシップ」を「パートナーシップにある者が、そのパートナーの実子又は養子と継続的な共同生活を行っている関係」(2条8号)と定義づけたうえで、市長は、パートナーシップ・ファミリーシップに係る届出があったときは、規則で定めるところにより、受理証明書を交付し、事業者は、その社会活動の中で受理証明書に係るパートナーシップ・ファミリーシップを最大限に配慮し、必要な措置を講ずるよう努める等(10条の2)としている。
なお、制度の内容は、岡崎市HP「岡崎市パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を参照のこと。
〇 東京都は、令和4年6月22日に東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例の一部を改正する条例を公布し、条例にパートナーシップ宣誓制度に関する規定を置き、令和4年11月1日に施行している。
すなわち、「性的マイノリティ」を「性自認が出生時に判定された性と一致しない者又は性的指向が異性に限らない者」(改正後3条の2第1号)、「パートナーシップ関係」を「双方又はいずれか一方が性的マイノリティであり、互いを人生のパートナーとして、相互の人権を尊重し、日常の生活において継続的に協力し合うことを約した二者間の関係」(改正後3条の2第2号)、「東京都パートナーシップ宣誓制度」を「知事がパートナーシップ関係にある者(双方又はいずれか一方が都の区域内において居住し、就業し、又は就学している場合に限る。)からの宣誓に係る届出を受理したことを証明する制度」(改正後7条の2第2項)と定義づけたうえで、「都は、多様な性に関する都民の理解を推進するとともに、パートナーシップ関係に係る生活上の不便の軽減など、当事者が暮らしやすい環境づくりにつなげるため、東京都パートナーシップ宣誓制度を実施するものとする。」(改正後7条の2第1項)と規定している。
なお、制度の内容は、東京都HP「東京都パートナーシップ宣誓制度」を参照のこと。
〇 美作市は、美作市男女共同参画まちづくり促進に関する条例を令和4年10月1日に改正施行して、パートナーシップ及びファミリーシップ宣誓制度を規定した。
すなわち、「パートナーシップ」を「互いを人生のパートナーとし、相互の協力により継続的な共同生活を行っている、又は継続的な共同生活を行うことを約束した2人の関係」(2条5号)と、「ファミリーシップ」を「パートナーシップの関係にある2人とそれらの者の子(実子又は養子をいう。以下この号において「子」という。)との関係であって、次のいずれかに該当するものをいう。 ア 子とその親との関係 イ 子の親のパートナー(当該パートナーシップの関係にある者に限る。以下同じ。)が、当該子と生計を同一とし、家族として豊かな愛情をもって当該子を養育することを約した場合における、当該パートナーと当該子との関係」(2条6号)と定義づけたうえで、市長は、パートナーシップ又はファミリーシップの宣誓があったときは、規則で定めるところにより、受理証明書を交付する(9条)としている。
なお、制度の内容は、美作市HP「美作市パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」を参照のこと。
〇 町田市性の多様性の尊重に関する条例は、パートナーシップ宣誓制度を規定している。
すなわち、「パートナーシップ」を「互いを人生のパートナーとし、日常生活において、継続的かつ相互に協力することを約した戸籍(日本の国籍を有しない者にあっては、その本国の行政機関が発行する性別を証する書類その他これに準ずるものとして市長が認める書類)上の性別が同一である2人の者の関係」(3条3号)、「宣誓」を「パートナーシップを結んだ2人の者が、市長に対し、双方が互いのパートナーであることを誓うこと」(3条4号)定義づけたうえで、市は、宣誓が行われたことの証明(以下「パートナーシップ宣誓証明」という。)をする町田市パートナーシップ宣誓制度を実施するものとし(10条1項)、市長は、宣誓が行われたときは、町田市規則で定めるところにより、宣誓を行った者に対し、パートナーシップ宣誓証明書を交付する(10条2項)としている。そのうえで、市、市民、事業者及び教育に携わる者は、その活動の中で、パートナーシップ宣誓証明を最大限配慮しなければならない(10条4項)としている。
なお、制度の内容は、町田市HP「町田市パートナーシップ宣誓制度」を参照のこと。
〇 日野市は、日野市男女平等基本条例を令和5年4月1日改正施行して、日野市すべての人の性別等が尊重され多様な生き方を認め合う条例としたうえで、パートナーシップ制度を規定した。
すなわち、「パートナー」を「人生を共に歩む伴侶のこと」(改正後2条5号)と、「パートナーシップ」を「互いをパートナーとし、互いの人権を尊重し、協力し合うことを約した継続的な2人の者の関係」(改正後2条6号)と定義づけたうえで、市長は、パートナーシップに係る届出があったときは、規則で定めるところにより、パートナーシップ宣誓証明書を交付する(改正後9条の2第1項、第2項)としている。また、事業者は、証明書の提示があったときは、当該証明書に記載されている情報の取扱いについて被交付者の意思を十分に確認する等、必要な措置を講じなければならない(改正後9条の2第3項)としている。
なお、制度の内容は、日野市HP「日野市パートナーシップ制度」を参照のこと。
〇 杉並区性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例は、パートナーシップ制度を規定している。
すなわち、「パートナーシップ関係」を「双方又はいずれか一方が性的指向が異性に限らない者又は性自認が出生時に判定された性別と一致しない者であり、互いを人生のパートナーとして、相互の人権を尊重し、継続的に協力し合い、共同生活を営むことを約した2者間の関係」(2条3号)と定義づけたうえで、区長は、パートナーシップ関係にある旨の届出があったときは、規則で定めるところにより、届出を受理したことを証する書面を交付し(9条1項、2項)、また、届出を受理したことを証するカードの申請があったときは、当該カードを交付する(9条3項、4項)としている。
なお、制度の内容は、杉並区HP「パートナーシップ制度」を参照のこと。
〇 天理市性の多様性の尊重に関する条例は、パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度を規定している。
すなわち、「パートナーシップ」を「一方又は双方が性的マイノリティである2者が、互いを人生のパートナーとし、日常生活において、経済的及び物理的かつ精神的に、相互に協力し合うことを約した関係」、「ファミリーシップ」を「パートナーシップにある2者が、互いの子、親等の近親者を家族として尊重し、協力し合う継続的な関係」、「パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓」を「パートナーシップにある2者が、市長に対し、パートナーシップの関係及びファミリーシップの関係であることを誓うこと」(2条6号、7号、9号)と定義づけたうえで、市長は、パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓の届出があったときは、市長が別に定めるところにより、パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓書受領証を交付する(10条2項)としている。
なお、制度の内容は、天理市HP「天理市パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度が始まりました」を参照のこと。
〇 三鷹市は、同性パートナーシップ制度の単独条例である三鷹市パートナーシップ宣誓手続条例 を制定し、パートナーシップ宣誓手続を定めている。
すなわち、「パートナーシップ関係」を「互いを人生のパートナーとして、日常生活において相互の合意の下、協力して継続的な共同生活を行っている、又は継続的な共同生活を行うことを約した、一方又は双方が多様な性的指向又はジェンダーアイデンティティを持つ2者間の関係」(2条1号)と、「宣誓」を「市長に対し、パートナーシップ関係にある者の双方がパートナーシップ関係であることを誓うこと」(2条2号)と定義づけたうえで、宣誓をすることができる者の要件(3条)、宣誓の方法(4条)、通称名の使用(5条)、受理証等の交付(6条)等を規定している。
併せて、三鷹市パートナーシップ宣誓手続条例の施行に伴う関係条例の整理に関する条例を制定している。
なお、制度の内容は、三鷹市HP「三鷹市パートナーシップ宣誓制度」を参照のこと。
【アウティングとカミングアウト強制・禁止の禁止規定を置く条例】
〇 アウティング(本人の意思に反して第三者が性的指向又は性自認を公表すること)とカミングアウト(自らの性的指向又は性自認を公表すること)の強制・禁止を禁止する規定を置くものとして、国立市、総社市、豊島区、港区、いなべ市、宍粟市、木城町、三重県、浦添市、富士市、加西市、深谷市、江戸川区、武蔵野市、福知山市、岡崎市、逗子市、埼玉県、美作市、志布志市、明石市、杉並区、町田市、墨田区、日野市、豊橋市、天城町、東大阪市、渋川市、渋谷区、愛南町、太田市、天理市、品川区、三鷹市及び臼杵市の条例がある。
〇 国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例 は、基本理念として「性的指向、性自認等に関する公表の自由が個人の権利として保障されること」(3条2号)を掲げ、本人の公表の権利を規定したうえで、「何人も、性的指向、性自認等の公表に関して、いかなる場合も、強制し、若しくは禁止し、又は本人の意に反して公にしてはならない。」(8条2項)とし、アウティングを禁止するとともにカミングアウトの強制・禁止を禁止している。
なお、国立市の条例については、自治体法務研究2018年冬号CLOSEUP先進・ユニーク条例「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」を参照のこと。
〇 総社市多様な性を認め合う社会を実現する条例 は、「カミングアウト」を「自らが性的マイノリティであることを公表すること」(3条3号)と定義づけたうけで、「性的マイノリティであることを、本人の意に反して公にすること」及び「カミングアウトを強制し、又は禁止すること」を禁止している(8条2号及び3号)。
〇 豊島区男女共同参画推進条例 は、「何人も、性自認又は性的指向の公表に関して、本人に対し強制又は禁止してはならない。」(7条5項)とするとともに、「何人も、本人の同意なくして性自認又は性的指向を公表してはならない。」(7条6項)と規定している。
なお、豊島区の条例については、自治体法務研究2020年夏号条例制定の事例CASESTUDY「豊島区男女共同参画推進条例」を参照のこと。
〇 港区男女平等参画条例は、「何人も 、他人の性的指向又は性自認に関して、公表を強制し、若しくは禁止し、又は本人の意に反して公にしてはならない 。」(7条3項)と規定している。また、「何人も 、正当な理由がない限り 、他人の性別表現を妨げてはならない。」(7条4項)と規定し、「性別表現」(外面に表れる性別についての自己表現 2条5号)の自由を保障しているとしている。
〇 いなべ市性の多様性を認め合う社会を実現するための条例は、「カミングアウト」を「自らが性的マイノリティであることを公表すること」(2条2号)と定義づけたうけで、「性的マイノリティであることを、本人の意に反して公にすること」及び「カミングアウトを強要し、又は禁止すること」を禁止している(8条2号及び3号)。
〇 宍粟市誰もが自分らしく生きる共同参画社会づくり条例は、「何人も、本人の同意を得ないで、当該本人に関して知り得た性的指向、性自認等の内容を他人に漏らしてはならない。また、いかなる場合も本人に公表を強制し、又は禁止してはならない。」と規定している(9条3項)。
〇 木城町多様性を認め合い他者を思いやる差別のない社会を推進する条例は、「カミングアウト」を「これまで公にしていなかった自らの性的指向又は性自認を表明すること」、「アウティング」を「本人の了解を得ずに他の人に公にしていない性的指向又は性自認のことを暴露すること」と定義づけた(3条4号及び5号)うえで、「カミングアウトを強制し、又は禁止すること」及び「アウティング」を禁止している(7条1号及び2号)。
〇 性の多様性を認め合い、誰もが安心して暮らせる三重県づくり条例は、「性的指向又は性自認の表明に関して、強制し、禁止し、または本人の意に反して、正当な理由なく暴露(本人が秘密にしていることを明かすことをいう。)をしてはならない。」(4条)と規定している。都道府県において、条例でアウティングを禁止する規定を置くのは、三重県条例が初めてとなる。
なお、三重県の条例については、自治体法務研究2021年冬号CLOSEUP先進・ユニーク条例「性の多様性を認め合い、誰もが安心して暮らせる三重県づくり条例」を参照のこと。
〇 浦添市性の多様性を尊重する社会を実現するための条例は、「性的マイノリティであることを、本人の意に反して公にすること」及び「性的マイノリティであることの公表を強要し、又は禁止すること」を禁止している(8条2号及び3号)。
〇 富士市男女共同参画条例は、「性別等」を「性別、性自認及び性的指向」(2条4号)と定義づけたうえで、「何人も、性別等に関する個人情報を本人の意に反して他に公開し、及び他に公開することを強要してはならない。」(9条3項)と規定している。
〇 加西市誰もが性差にとらわれず共に生きる社会づくり条例は、「全ての人は、本人の同意を得ないで、当該本人に関して知り得た性的指向、性自認等の内容を他人に漏らし、又は本人に公表を強制若しくは禁止してはなりません。」(9条3項)と規定している。
〇 江戸川区性の平等と多様性を尊重する社会づくり条例は、「何人も、個人の性的指向、性自認に関して、正当な理由なく、公表を強制し、若しくは禁止し、又は本人の意に反して公にしてはならない。」(8条2項)と規定している。また、併せて、「何人も、情報の発信及び流通に当たっては、性別等に起因する人権侵害に当たる表現を用いないよう十分に配慮しなければならない。」(8条3項)と規定している。
〇 武蔵野市男女平等の推進に関する条例は、「市、市民及び事業者等は、性自認又は性的指向に関する公表を強制し、又は禁止してはならない。」(7条3項)と規定するとともに、「市、市民及び事業者等は、本人の意思に反して性自認又は性的指向を第三者に公表してはならない。」(7条4項)と規定している。
〇 福知山市みんなの多様な性を尊重する条例は、「性自認又は性的指向を本人の意に反して公にすること」及び「性自認又は性的指向の公表を強制又は禁止すること」を禁止している(8条2号及び3号)。また、併せて、「性的表現」を「服装、言動、ふるまい方等、外面に表れる性別についての自己表現」(3条3号)と定義づけたうえで、「正当な理由なく、他人の性別表現を妨げること」を禁止している(8条4号)。
〇 岡崎市男女共同参画の推進及び多様な性を尊重する社会を実現するための条例は、「何人も、性的指向又は性自認の公表に関して、本人に対し強制し、又は禁止してはならない。」(9条5項)とするとともに、「何人も、本人の同意なくして性的指向又は性自認を公表してはならない。」(9条6項)と規定している。
〇 逗子市男女平等参画及び多様性を尊重する社会を推進する条例は、「何人も、他人の性的指向又は性自認に関して、公表を強制し、若しくは禁止し、又は本人の意に反して公にしてはならない。」(8条3項)と規定している。また、併せて、「何人も、情報の発信に当たっては、性別等による人権侵害に当たる表現又は性別による役割分担を助長し、若しくは連想させる表現を用いないよう配慮しなければならない。」(8条4項)と規定している。
〇 埼玉県性の多様性を尊重した社会づくり条例は、「何人も、性的指向又は性自認の表明に関して、強制し、又は禁止してはならない。」(4条2項)とするとともに、「何人も、正当な理由なくアウティング(性的指向又は性自認に関して本人の意に反して本人が秘密にしていることを明かすことをいう。)をしてはならない。」(4条3項)と規定している。
〇 美作市男女共同参画まちづくり促進に関する条例は、「他者に対しその性自認又は性的指向の公表を強制し、又は禁止する行為」(7条1項4号)及び「本人の同意なく他者の性自認又は性的指向を公表する行為」(7条1項5号)を禁止している。
〇 志布志市ひとがともに輝くまちづくり条例は、「何人も、性的指向及び性自認の公表に関して、いかなる場合も強制し、若しくは禁止し、又は本人の意に反して公にしてはならない。」(8条2項)と規定している。
〇 あかしジェンダー平等の推進に関する条例は、「何人も、性自認又は性的指向の公表を本人に対して強制し、又は禁止してはならず、かつ、本人の同意なく性自認又は性的指向を暴露してはならない。」(8条4項)と規定している。
なお、明石市の条例については。自治体法務研究2023年夏号CLOSEUP先進・ユニーク条例「あかしジェンダー平等の推進」を参照のこと。
〇 杉並区性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例は、「何人も、正当な理由なく、本人の意に反して、性的指向若しくは性自認の表明を強制し、若しくは禁止し、又は性的指向若しくは性自認を明らかにしてはならない。」(4条2項)と規定している。
〇 町田市性の多様性の尊重に関する条例は、「性自認又は性的指向を本人の意に反して公表すること。」(8条2号)及び「性自認又は性的指向の公表を強要し、又は禁止すること。」(8条3号)を禁止している。
〇 墨田区女性と男性及び多様な性の共同参画基本条例は、「何人も、他人の性的指向、性自認等の公表に関して、いかなる場合も、強制し、若しくは禁止し、又は本人の意に反して公にしてはならない。」(10条3項)と規定している。
〇 日野市すべての人の性別等が尊重され多様な生き方を認め合う条例は、「何人も、性自認、性的指向等の公表に関して、いかなる場合であっても、本人に対し強制又は禁止し、若しくは本人の意に反して行ってはならない。」(7条5項)と規定している。
〇 豊橋市男女共同参画及び性の多様性を尊重する社会づくりを推進する条例は、「何人も、性的指向又は性自認の公表を本人に対して強制又は禁止してはならない。」(9条3項)とするとともに、「何人も、本人の意に反して性的指向又は性自認を公表してはならない。」(9条4項)と規定している。
〇 天城町男女共同参画推進条例は、「何人も、性的指向及び性自認の公表に関して、いかなる場合も強制し、若しくは禁止し、又は本人の意に反して公にしてはならない。」(11条2項)と規定している。
〇 東大阪市男女共同参画推進条例は、「何人も、他人の性的指向又は性自認を本人の意に反して公表し、又は公表を強制し、若しくは禁止してはならない。」(8条4項)と規定している。
〇 渋川市男女共同参画及び多様性を尊重する社会を推進する条例は、「何人も、他者の性的指向又はジェンダーアイデンティティに関して、公表を強制し、若しくは禁止し、又は本人の意に反して公にしてはならない。」(7条4項)と規定している。
〇 渋谷区人権を尊重し差別をなくす社会を推進する条例は、「性のありよう」を「身体的・生物学的な性、性自認、性的指向及びジェンダー表現を要素とした全ての人が持っている性のあり方(2条3号)と定義づけたうえで、「何人も、性のありようの表明に関して、正当な理由なく、強制し、禁止し、又は本人の意に反して、公表してはならない。」(20条2項)と規定している。
〇 愛南町男女共同参画推進条例は、「何人も、本人の同意を得ないで、当該本人に関して知り得た性的指向又は性自認の内容を他人に漏らしてはならない。また、いかなる場合も本人にその公表を強制し、又は禁止してはならない。」(8条3項)と規定している。
〇 太田市男女共同参画社会の形成及びジェンダー平等の推進に関する条例は、「何人も、他人のジェンダーアイデンティティ又は性的指向に関し て、公表を強制し、若しくは禁止し、又は本人の意に反して公にしてはならない。」(8条3項)と規定している。
〇 天理市性の多様性の尊重に関する条例は、「何人も、性的指向又は性自認の公表に関して、本人に対し強制し、又は禁止してはならない。」(8条1項)とするとともに、「何人も、本人の意に反して性的指向又は性自認を公表してはならない。」(8条2項)と規定している。
〇 品川区ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を実現するための条例は、「何人も、個人の性的指向、ジェンダーアイデンティティに関して、公表を強制し、もしくは禁止し、または本人の意に反して公にしてはならない。」(8条2項)と規定している。
〇 人権を尊重するまち三鷹条例 は、「人権に関する個人の情報を本人の意に反して公にする行為」(4条3号)及び「人権に関する個人の情報を本人が公にすることを強制し、又は禁止する行為」(4条4号)を禁止している。
〇 臼杵市性の多様性の尊重に関する条例は、「性的指向又はジェンダーアイデンティティを本人の意に反して公表すること」(8条2号)及び「性的指向又はジェンダーアイデンティティの公表を強要し、又は禁止すること」(8条3号)を禁止している。
【その他】
〇 性の多様性等に対する自治体の役割については、鈴木秀洋「性的マイノリティへの対応と自治体の役割」(自治体法務研究2020年夏号特集「ダイバーシティの推進と自治体」)を参照されたい。
〇 江藤祥平「地方公共団体の憲法解釈ー性の多様性をめぐる条例の是非」(地方自治917号令和6年4月 2頁以下)は、同性パートナーシップ制度やアウティング禁止等を定める自治体の条例を通して自治体の憲法解釈の意義を論じているので、参照されたい。
〇 性の多様性に関する条例を含む人権の尊重と差別の解消に関する条例については、「人権の尊重と差別の解消に関する条例」を参照されたい。