ケアラー支援に関する条例

(令和4年8月29日更新)

【ケアラー支援に関する条例】

〇 ケアラー支援に関する条例を、平成2年3月に埼玉県が全国ではじめて制定した。それ以降、いくつかの自治体が同様の条例を制定してきている。

〇 ケアラーとは、介護者のことであり、家族や身近な人に対して、無償で、介護、看護、日常生活上の世話等を行う人々のことである。子どもや若者の介護者は、ヤングケアラーと言われる。

 こうしたケアラーは、介護等を行うことにより、様々な身体的、精神的、経済的な負担を強いられ、社会的に孤立し、介護する家族等のために自分自身の生活を犠牲にせざるを得ない状況に置かれることにもなる。特にヤングケアラーは、学業をあきらめ、また、将来の進路を変えざるを得ないことにもなり、人格形成などにも大きな影響を及ぼすことも懸念される。

〇 ケアラー支援に関する条例は、介護者、すなわちケアラーが、個人として尊重され,健康で文化的な生活を営むことができるよう、社会全体で支えることを目的として、基本理念、自治体の責務や住民・事業者・関係機関等の役割を定め、推進計画や基本方針の策定等を規定している。

〇 ケアラー支援に関する条例として、令和4年8月29日時点で確認できるものは、

埼玉県

埼玉県ケアラー支援条例

令和2年3月31日公布

令和2年3月31日施行

北海道栗山町

栗山町ケアラー支援条例

令和3年3月19日公布

令和4年4月1日施行

三重県名張市

名張市ケアラー支援の推進に関する条例

令和3年6月30日公布

令和3年6月30日施行

岡山県総社市

総社市ケアラー支援の推進に関する条例

令和3年9月9日公布

令和3年9月9日施行

茨城県

茨城県ケアラー・ヤングケアラーを支援し、

共に生きやすい社会を実現するための条例

令和3年12月14日公布

令和3年12月14日施行

北海道浦河町

浦河町ケアラー基本条例

令和3年12月14日公布

令和3年12月14日施行

岡山県備前市

備前市ケアラー支援の推進に関する条例

令和3年12月24日公布

令和3年12月24日施行

栃木県那須町

那須町ケアラー支援条例

令和4年3月14日公布

令和4年3月14日施行

北海道

北海道ケアラー支援条例

令和4年3月31日公布

令和4年4月1日施行

埼玉県入間市

入間市ヤングケアラー支援条例

令和4年6月27日公布

令和4年7月1日施行

さいたま市

さいたま市ケアラー支援条例

令和4年7月1日公布

令和4年7月1日施行

である。

〇 埼玉県、茨城県及び那須町の条例は議員提案により制定され、栗山町、名張市、総社市、浦河町、備前市、北海道、入間市及びさいたま市の条例は首長提案により制定されている。

 

【埼玉県の条例】

〇 埼玉県条例は、全国初のケアラー支援に関する条例である。

〇 「ケアラー」を「高齢、身体上又は精神上の障害又は疾病等により援助を必要とする親族、友人その他の身近な人に対して、無償で介護、看護、日常生活上のその他の援助を提供する者」(2条1項)と定義づけ、また、「ヤングケアラー」を「ケアラーのうち、18歳未満の者」(同条2項)と定義づけている。

〇 条例の目的は、「ケアラーの支援に関し、基本理念を定め、県の責務並びに県民、事業者及び関係機関の役割を明らかにするとともに、ケアラーの支援に関する施策の基本となる事項を定めることにより、ケアラーの支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって全てのケアラーが健康で文化的な生活を営むことができる社会を実現すること」(1条)としている 。

〇 基本理念として、1、ケアラーの支援は、全てのケアラーが個人として尊重され、健康で文化的な生活を営むことができるように行われなければならない、2、ケアラーの支援は、県、県民、市町村、事業者、関係機関、民間支援団体等の多様な主体が相互に連携を図りながら 、ケアラーが孤立することのないよう社会全体で支えるように行われなければならない、3、ヤングケアラーの支援は、適切な教育の機会を確保し、かつ、心身の健やかな成長及び発達並びに その自立が図られるように行われなければならない、ことを掲げる(3条)とともに、県の責務(4条)、県民の役割(5条)、事業者の役割(6条)、関係機関の役割(7条)、教育関係機関の役割(8条)を定めたうえで、県は、推進計画を策定し(9条)、広報・啓発、人材育成及び民間支援団体等による支援の推進に関する施策を講じ(10条~12条)、体制の整備及び財政上の措置に努める(13条及び14条)こととしている。

 特に、ヤングケアラーに関しては、教育に関する業務を行う関係機関(学校等)は、支援の必要性の把握に努め、教育・福祉に関する相談、適切な支援機関への案内・取次ぎ等の支援を行うよう努める(8条)こととしている。

〇 本条例の内容等については、自治体法務研究2020年秋号CLOSEUP先進・ユニーク条例「埼玉県ケアラー支援条例」を、ケアラー支援に関する埼玉県の取組みについては、埼玉県HP「ケアラー(介護者等)支援」を参照されたい。

 

【栗山町の条例】

〇 栗山町条例は、全国市区町村で初めてのケアラー支援に関する条例である。

〇 条例の目的は、「ケアラーを社会全体で支えるため、ケアラーの支援に関し、基本理念を定め、町の責務並びに町民、事業者及び関係機関の役割を明らかにするとともに、ケアラーの支援に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図ることにより、全てのケアラーが健康で文化的な生活を営むことができる社会を実現すること」(1条)としている 。

〇 ケアラーの定義については、埼玉県条例とほぼ同様の規定を置いている(2条1号)が、ヤングケアラーに関する規定は置いていない。

〇 目的(1条)及び定義(2条)のほか、基本理念(3条)、町の責務(4条)、町民の役割(5条)、事業者の役割(6条)、関係機関の役割(7条)、推進計画の策定(8条)及び栗山町ケアラー支援推進協議会の設置について規定している。推進計画には、基本方針とともに、具体的施策として、情報提供及び相談・支援体制、交流及び集いの場の設置、人材の育成、広報及び啓発活動等を定める(8条2項)ものとしている。

〇 本条例の内容等については、栗山町HP「栗山町ケアラー支援条例の制定」を参照されたい。

 

【名張市の条例】

〇 条例の目的は、「この条例は、社会全体でケアラーを支援するための基本理念を定め、市の責務並びに市民、事業者及び関係機関の役割を明らかにするとともに、ケアラーに対する支援(・・・)に関する施策の基本となる事項を定めることにより、ケアラー支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって全てのケアラーが自分らしく、健康で文化的な生活を営むことができる地域社会の実現に寄与すること」(1条)としている 。

〇 ケアラー及びヤングケアラーの定義については、埼玉県条例とほぼ同様の規定を置いている(2条1号、2号)。

〇 目的(1条)及び定義(2条)のほか、基本理念(3条)、市の責務(4条)、市民の役割(5条)、事業者の役割(6条)、関係機関の役割(7条)、学校等の役割(8条)、ケアラー支援に関する基本方針等(9条)、広報及び啓発(10条)、人材の育成等(11条)及び体制の整備(12条)について規定している。

〇 基本理念のうち、ヤングケアラーに対する支援については、「名張市子ども条例(平成18年条例第14号)の趣旨を踏まえるとともに、子どもがその発達段階に応じて、社会において自立的に生きる基礎を培い、人間としての基本的な資質を養うことの重要性に鑑み、適切な教育の機会を確保し、かつ、心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られるように行われなければならない。」(3条3項)と規定している。なお、名張市子ども条例については「子どもの権利に関する条例」を参照されたい。

 

【総社市の条例】

〇 条例の目的は、「この条例は,社会全体でケアラーを支援するための基本理念を定め,市の責務並びに市民等,事業者及び関係機関の役割を明らかにするとともに,ケアラーを支援するための基本方針及び施策を定めてこれを推進し,もって全てのケアラーが自分らしく,健康で文化的な生活を営むことができる社会の実現に寄与すること」(1条)としている 。

〇 目的(1条)、定義(2条)、基本理念(3条)、市の責務(4条)、市民等の役割(5条)、事業者の役割(6条)、関係機関の役割(7条)、学校等の役割(8条)、ケアラー支援に関する基本方針等(9条)、広報及び啓発(10条)及びその他(11条)の全11条から構成されている。

〇 条例の構成と内容は、名張市条例とほぼ同様なものとなっている。

〇 本条例の内容等については、総社市HP「ケアラー支援について」を参照されたい。

 

【茨城県の条例】

〇 条例の目的は、「この条例は、ヤングケアラー及びこれらの者を含む全てのケアラーの支援に関し、基本理念を定め、県の責務を明らかにするとともに、ケアラーの支援に関する施策の基本となる事項を定め、とりわけ次代の社会を担うヤングケアラーの教育の機会の確保等が図られるとともに、ケアラーの個人の尊厳が重んぜられ、かつ、社会から孤立しないよう支えることにより、全ての県民が生きやすい社会を実現すること」(1条)としている 。

〇 目的(1条)、定義(2条)、基本理念(3条)、県の責務(4条)、県民の理解(5条)、事業者の協力(6条)、関係機関の役割(7条)、市町村との連携等(8条)、推進計画(9条)、ケアラーの支援(10条)、人材の育成等(11条)、普及啓発(12条)、民間支援団体の活動に対する支援(13条)、実態調査等(14条)、年次計画(15条)、推進体制の整備(16条)及び財政上の措置(17条)の全17条から構成されている。

〇 ケアを「介護、看護、日常生活上の世話その他の援助」(2条1号)と、ケアラーを「心身の機能の低下、負傷、疾病、障害その他の理由により援助を必要とする家族、身近な人その他の者に対して、無償でケアを行う者」(2条2号)と定義づけている。

 前文を付すほか、ケアラーの生活の質を維持向上させるとともに、ケアラー及びその家族の日常生活上及び社会生活上の不安、負担等を軽減させるため、県が講ずることが必要な施策として、10項目(10条各号)を列挙している。

〇 本条例の内容等については、茨城県HP「ケアラー・ヤングケアラー支援について」を参照されたい。

 

【浦河町の条例】

〇 目的(1条)、定義(2条)、基本理念(3条)、町の責務(4条)、町民の役割(5条)、事業者の役割(6条)、関係機関の役割(7条)及びケアラーの支援に関する計画(8条)の全8条から構成されている。

〇 条例の構成と内容は、栗山町条例とほぼ同様なものとなっているが、栗山町条例がケアラー支援推進計画を策定する(8条)としているのに対して、浦河町条例は「ケアラーの支援に関する施策を実施するために、町が策定する介護、高齢者の福祉、障がい者及び障がい児の支援、医療、教育及び児童の福祉等に関する個別計画の中に第3条の基本理念に基づいた具体的施策を盛り込む」(8条)と規定している。

 

【備前市の条例】

〇 目的(1条)、定義(2条)、基本理念(3条)、市の責務(4条)、市民等の役割(5条)、事業者の役割(6条)、関係機関の役割(7条)、学校等の役割(8条)、ケアラー支援に関する施策(9条)及び委任(10条)の全10条から構成されている。

〇 条例の構成と内容は、総社市条例とほぼ同様なものとなっているが、総社市条例がケアラー支援に関する基本方針等を定める(9条)としているのに対して、備前市条例はケアラー支援に関する施策として広報・啓発、支援体制の構築等を規定している(9条)。

〇 本条例の内容等については、備前市HP「ケアラー支援」を参照されたい。

 

【那須市の条例】

〇 目的(1条)、定義(2条)、基本理念(3条)、町の責務(4条)、町民の役割(5条)、事業者の役割(6条)、関係機関の役割(7条)、推進計画(8条)、広報及び啓発(9条)、人材の育成(10条)、民間支援団体等による支援の推進(11条)、体制の整備(12条)及び委任(13条)の全13条から構成されている。

〇 条例の構成と内容は、埼玉県条例や名張市条例を踏まえたものとなっている。町は推進計画を策定する(8条1項)としている。

 

【北海道の条例】

〇 条例の目的は、「ケアラーへの支援(・・・)に関し、基本理念を定め、並びに道の責務並びに道民、事業者、関係機関及び支援団体の役割を明らかにするとともに、道の施策の基本となる事項を定めることにより、ケアラー支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって全てのケアラーとその家族等が孤立することなく健康で心豊かな生活を営み、将来にわたり夢や希望を持って暮らすことができる地域社会の実現に寄与すること」(1条)としている 。

〇 目的(1条)、定義(2条)、基本理念(3条)、道の責務(4条)、道民の役割(5条)、事業者の役割(6条)、関係機関の役割(7条)、ヤングケアラーと関わる教育に関する業務を行う関係機関の役割(8条)、支援団体の役割(9条)、推進計画(10条)、普及啓発の促進(11条)、ケアラーの早期発見及び相談の場の確保等(12条)、ケアラーを支援するための地域づくり(13条)、推進体制の整備(14条)及び財政上の措置(15条)の全15条から構成されている。

〇 基本的施策として、普及啓発による道民理解の促進(11条)のほか、ケアラーの早期発見及び相談の場の確保(12条)、ケアラーを支援するための地域づくり(13条)等を規定している。

〇 本条例の内容等及びケアラー支援に関する北海道の取組みについては、北海道HP「ケアラー支援に関する道の取組について 」を参照されたい。

 

【入間市の条例】

〇 ヤングケアラーの支援に特化した条例である。

〇 ヤングケアラーを「本来大人が担うと想定される家事や家族等身近な者に対する介護、看護、日常生活上の世話その他の援助を無償で提供する18歳未満の者」(2条1号)と定義づけている。

〇 目的(1条)、定義(2条)、基本理念(3条)、市の責務(4条)、保護者の役割(5条)、学校の役割(6条)、地域住民等の役割(7条)、関係機関の役割(8条)、早期発見(9条)、ヤングケアラーの支援(10条)、支援体制の整備(11条)、人材の確保等(12条)、財政上の措置(13条)及び委任(14条)の全14条から構成されている。

〇 本条例の内容等及びヤングケアラー支援に関する入間市の取組みについては、入間市HP「ヤングケアラー支援」を参照されたい。

 

【さいたま市の条例】

〇 目的(1条)、定義(2条)、基本理念(3条)、市の責務(4条)、市民等の役割(5条)、事業者の役割(6条)、関係機関の役割(7条)、学校等の役割(8条)、ケアラー支援に関する施策(9条)、広報及び啓発(10条)、体制の整備(11条)、財政上の措置(12条)及び委任(13条)の全13条から構成されている。

〇 前文を付すほか、ケアラー支援に関する施策として7項目(9条各号)を列挙している。

〇 本条例の内容等については、さいたま市HP「さいたま市ケアラー支援条例について」を、ケアラー支援に関するさいたま市の取組みについては、さいたま市HP「ケアラー・ヤングケアラー支援について」を参照されたい。

 

【ヤングケアラーに対する国の取り組み】

〇 厚生労働省と文部科学省は、令和3年3月17日に「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」を立ち上げ、ヤングケアラーの支援につなげるための方策について、厚生労働省及び文部科学省が連携し、検討を進めることとした。4月12日に要保護児童対策地域協議会、子ども本人、学校を対象とした初めての全国規模の調査研究事業である「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」の報告書を公表し、5月17日にプロジェクトチームとしての取りまとめ報告「報告本文報告概要)を行っている。同とりまとめ報告は、今後取り組むべき施策として、早期発見・把握、支援策の推進(悩み相談支援、関係機関連携支援、教育現場への支援、適切な福祉サービス等の運用の検討、幼いきょうだいをケアするヤングケアラー支援)及び社会的認知度の向上を掲げ、介護、医療、教育等、関係機関が連携し、ヤングケアラーを早期に発見して適切な支援につなげるため、これらの取組みを推進することとしている。

 なお、ヤングケアラーについての厚生労働省の取り組みについては厚生労働省HP「ヤングケアラーについて」を、文部科学省の取り組みについては文部科学省HP「ヤングケアラーについて」を参照されたい。

〇 なお、日本ケアラー連盟は、「ケアラー支援法・支援条例」の制定をめざして政策提言やキャンペーン活動を行ってきており、地方議会等に対してケアラー支援条例制定の働きかけ等を行っている。



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