読書に関する条例
(令和6年12月7日更新)
【いわゆる読書条例】
〇 住民やとりわけ子どもの読書活動を推進するためのいわゆる読書条例は、令和6年12月1日時点で確認できるものとしては、以下のとおりである。
宮崎県高千穂町 | 平成16年3月29日公布 | 平成16年4月1日施行 |
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秋田県 | 平成22年3月30日公布 | 平成22年4月1日施行 |
議員提案 | |
秋田県仙北市 | 平成23年6月28日公布 | 平成23年7月1日施行 |
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北海道恵庭市 | 平成24年12月18日公布 | 平成25年4月1日施行 |
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横浜市 | 平成25年6月5日公布 | 平成26年4月1日施行 |
議員提案 | |
岐阜県中津川市 | 平成25年10月1日公布 | 平成25年10月1日施行 |
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和歌山県有田川町 | 平成26年3月28日公布 | 平成26年4月1日施行 |
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栃木県野木町 | 平成26年9月29日公布 | 平成26年10月1日施行 |
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北九州市 | 平成27年7月3日公布 | 平成27年7月3日施行 |
議員提案 | |
福島県小野町 | 平成27年12月9日公布 | 平成27年12月9日施行 |
議員提案 | |
徳島県 | 平成29年3月21日公布 | 平成29年4月1日施行 |
議員提案 | |
佐賀県嬉野市 | 平成29年6月22日公布 | 平成29年7月1日施行 |
議員提案 | |
東京都墨田区 | 平成30年12月11日公布 | 平成30年12月11日施行 |
議員提案 | |
山形県川西町 | 平成31年3月22日公布 | 平成31年4月1日施行 |
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群馬県 | 平成31年3月22日公布 | 平成31年4月1日施行 |
議員提案 | |
石川県加賀市 | 令和3年6月22日公布 | 令和3年6月22日施行 |
議員提案 | |
大阪府泉佐野市 | 推進条例 |
令和3年9月30日公布 | 令和3年11月1日施行 |
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福島県矢祭町 | 令和3年12月10日公布 | 令和3年12月10日施行 |
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神奈川県開成町 | 令和5年3月8日公布 | 令和5年4月1日施行 |
議員提案 | |
東京都荒川区 | 令和5年3月22日公布 | 令和5年4月1日施行 |
〇 これらの条例は、読書活動の推進についての基本理念を明らかにするとともに、自治体の責務のほか、学校、家庭、地域などの役割(取組み)等を定めるものが多い。また、財政上の措置、読書活動推進計画の策定、読書推進月間や読書の日の設定などを規定するものもある。そのほとんどは理念的な規定である。
〇 子どもの読書活動の推進に関する法律(平成13年法律第154号)が、平成13年12月12日公布され、施行されている。これは、平成12年(2000年)の「子ども読書年」を契機として、「子どもの未来を考える議員連盟」が法案の検討を進め、議員立法により制定されたものである。地方公共団体は、子どもの読書活動の推進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する(4条)とし、都道府県と市町村は、子ども読書活動推進計画を策定するよう努めなければならない(9条)としている。なお、4月23日を「子ども読書の日」と定めている(10条)。国や自治体の子ども読書活動推進の取組みについては、国立国会図書館「国際子ども図書館」HP「国・自治体・公共図書館の読書活動推進サイト等」を参照されたい。
〇 全国最初に制定されたのは平成16年3月制定の高千穂町条例であり、また、都道府県において最初に制定されたのは平成22年3月に制定された秋田県条例である。高千穂町条例、秋田県条例をはじめすべての条例は、子どもの読書活動の推進に関する法律が公布・施行された後、制定されている。平成20年代に比較的多く制定されているが、令和3年以降も制定団体が増えている。
〇 議員提案により制定されたものが多い。特に、県及び指定都市の条例はすべて議員提案によるものである。
〇 北九州条例と墨田区条例は、子どもの読書活動の推進を目的としているが、他の条例も、その多くは学校や家庭の役割(取組み)を規定しており、小・中学生はじめ子どもの読書活動の重要性をも踏まえて制定されたものと考えられる。
〇 高千穂条例は、家族ぐるみの読書運動に焦点を当ており、学校に家族読書計画を策定することを義務付けている(4条)。また、家庭は学校と連携しながら学校が策定した家族読書計画に積極的に参加し協力するもの(5条)としている。さらに、教育委員会によるモデル校の指定についても規定している(5条)。
〇 恵庭市条例に関しては、前文で「私たちのまちは、子どもから大人まで、だれもが等しく読書活動に親しむことができるよう、読書の環境づくりに力を注ぎ、市民とともに地域ぐるみで読書のまちづくりを推進してきました。」としている通り、恵庭市は、市内で生まれた赤ちゃんに絵本や図書館の利用者カード申込書を配布する「ブックスタート事業」を全国に先駆けて実施するなど、条例の制定以前から活発に読書活動を推進していた。条例制定後も、市内の飲食店や会社等に本を並べ小さな図書館にする「恵庭まちじゅう図書館」等の取組みを実施している。なお、「読書活動」を「読書、読み聞かせ、一斉読書、調べ学習、読書会、本のリサイクル及びその他の読書に関する活動」(2条3号)と定義づけている。恵庭市の取組みについては、地方自治研究機構令和元年度調査研究報告書「図書館等を活用した新たな地域コミュニティの在り方に関する調査研究」116頁以下及び恵庭市HP「恵庭市立図書館」を参照されたい。
〇 横浜市条例は指定都市として最初に制定されたものである。条例に基づき、平成26年3月に横浜市民読書活動推進計画が策定されている。本条例の内容や横浜市の取組みについては、坪内一「コミュニティを育む読書活動と図書館の課題」(日本学習社会学会年報第12号 2016年9月)及び横浜市HP「横浜市民の読書活動推進」を参照のこと。
〇 北九州市条例は、議員提案によるものであるが、子ども図書館の設置(9条)、学校図書館及び図書館の整備(15条、16条)、北九州市子ども読書活動推進会議の設置(17条)など、具体的な施策に関する規定を置いている。
〇 小野町条例も、議員提案によるものであるが、図書や新聞に親しむことを推進することを目的としている(1条)。図書のみならず、新聞をも対象にしているものは、他に例がない。
〇 徳島県条例は、前文で「徳島県立図書館は、平成29年度に創立百周年という大きな節目を迎え、これまで取り組んできた催しや他の図書館との連携を更に推進」することが求められるとしたうえで、「インターネットを利用した徳島県立図書館と県内の公立図書館等との間における図書の検索及び図書の相互貸借のための情報の共有を促進する」(4条3項)ことなどを規定している。
〇 川西町条例は、前文で、同町出身の作家・劇作家の井上ひさし氏の著書の一文「本は人の運命も変えます。一冊の本が、読んだ人の考え方・生き方を変えるということがあります。」を引用して読書活動の重要性を強調したうえで、町の役割として、図書館の蔵書の充実と情報の提供、遅筆堂文庫の整備と利活用による井上ひさし氏の意思の継承等(3条)を規定している。
〇 群馬県条例は、前文で、図書館は「知の拠点」であることを強調したうえで、県立図書館、県立図書館以外の図書館及び学校図書館の機能充実に関する規定(5条)を置いている。
〇 加賀市条例は、「子どもの音読」に関する規定を置き、家庭や学校等は、子どもの読解力を向上させるため、日常的に子どもが音読に取り組む習慣づくりに努める(11条2項)ものとしている。
〇 泉佐野市条例に関して、泉佐野市は「読書活動は、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものであり、文化的な社会の発展に不可欠なものです。しかし、近年の各種情報メディア・デジタルコンテンンツの急速な発展により、読書活動を取り巻く環境が劇的に変化し、全国的に『読書離れ・活字離れ』が懸念されています。当市の読書を取り巻く状況も同様で『読書離れ・活字離れ』の傾向がみられることから、この度、『泉佐野市民の心と知識を豊かにする読書活動推進条例』を制定いたしました。」(泉佐野市HP「「泉佐野市民の心と知識を豊かにする読書活動推進条例」の制定について」)としている。
〇 矢祭町条例は、基本理念として「町は、全国からの寄贈図書により設置された町の知的財産である『矢祭もったいない図書館』を拠点に次世代に誇れる郷土づくりを推進するため、子どもたちを始めとする町民が書物に親しみ、読書を通し、言葉を学び、感性を磨き、表現力、創造力等を高め、問題解決を書物と相談する気風を育てる風土を醸成するとともに、全国からの善意に感謝し、その想いを子々孫々に伝えることにより、家庭と地域に読書の輪が広がる『読書の町矢祭』を全国に向けて発信する。」(2条)と規定している。
〇 開成町条例は、議員提案により制定されているが、条例の愛称が「本と親しむ条例」とされるとともに、解説付きの条例や子ども用の条例解説資料をも作成されている(開成町議会HP「開成町読書推進条例が制定されました」参照)。
〇 荒川区条例に関して、荒川区は「平成30年5月27日の『読書を愛するまち・あらかわ』宣言以降、街なか図書館の開設や家読(うちどく)の推進などの取組により、読書の意義や重要性について区民の関心及び理解が深まりつつあります。今後、これらの取組について、更に発展及び充実をさせ、『読書を愛するまち・あらかわ』宣言の理念をより一層深めるとともに、区民や事業者の読書活動に関する取組を促進し、地域が一体となって、あらゆる世代が生涯にわたり豊かな心を育む読書のまちづくりを推進していくため、条例を制定しました。」(荒川区HP「「「荒川区豊かな心を育む読書のまちづくり条例」が議決されました~「読書を愛するまち・あらかわ」の新たなステージへ~」)としている。
〇 平成27年ごろまでの読書条例の動きについては、日置将之「読書条例制定の動きについて」(カレントアウェアネス NO.323(2015.3))が詳しい。また、現在の読書条例制定状況については、うちどく.com「読書条例制定自治体」が調査をし、公表している。
【その他読書に関する条例】
〇 子ども条例において読書活動の推進を規定するものが、わずかながらある。
長野県茅野市 | 平成24年12月27日公布 | 平成25年1月1日施行 |
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愛知県西尾市 | 令和2年12月23日公布 | 令和2年12月23日施行 |
などである。
茅野市条例は「市は、読書活動が子どもの豊かな心を育むために大切なものであり、かつ、生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものであることに鑑み、すべての子どもが自主的に読書活動を行うことができるように、その活動を推進するものとする。」(11条)と規定し、西尾市条例は「市は、読書が子どもの情緒豊かな心を育てる大切なものであることを認識し、子どもが主体的に読書を行うことができるよう、読書活動を推進するものとする。」(15条)と規定している。
〇 読書のまちづくりや読書活動の推進のための基金を条例で設置する自治体がある。
愛知県豊橋市 | 昭和57年12月22日公布 | 昭和57年12月22日施行 |
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鹿児島県阿久根市 | 平成9年9月18日公布 | 平成9年9月18日施行 |
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熊本県水俣市 | 平成20年3月19日公布 | 平成20年4月1日施行 |
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宮崎県新富町 | 平成24年3月16日公布 | 平成24年3月16日施行 |
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京都府福知山市 | 平成24年12月21日公布 | 平成24年12月21日施行 |
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福岡県築上町 | 令和2年3月23日公布 | 令和2年3月23日施行 |
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滋賀県彦根市 | 令和3年3月19日公布 | 令和3年3月19日施行 |
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熊本県 | 令和5年3月24日公布 | 令和3年3月24日施行 |
である。
なお、水俣市は、平成19年11月に「水俣市日本一の読書のまちづくり」を宣言している。
また、彦根市の読書通帳に関しては、彦根市HP「読書通帳で紡ぐ子どもの学ぶ力向上事業」を参照されたい。
〇 いわゆる子ほめ条例において、生徒児童に対する表彰の一つとして、読書賞を授与している自治体が、数団体ある。
和歌山県上富田町 | 平成12年12月22日公布 | 平成13年4月1日施行 |
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鹿児島県志布志市 | 平成18年1月1日公布 | 平成18年1月1日施行 |
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鹿児島県長島町 | 平成22年9月27日公布 | 平成22年10月1日施行 |
である。
なお、「読書賞」は、上富田町条例及び志布志市条例では「平素からよく本を読んでいる者」が、長島町条例では「学校,図書館等を利用して本をよく読んでいる者」が対象になるとしている。
子ほめ条例については、条例の動き「ほめる条例」を参照されたい。