自治会加入に関する条例
(令和7年4月16日更新)
【全体の状況】
〇 市町村の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体(地縁による団体)として、いわゆる自治会、町内会等(以下、「自治会等」という)がある。全国で約30万弱の団体があり、自治会、町内会、町会、部落会、区会、区等の名称で呼ばれ、住民相互の連絡、集会施設の維持管理、区域の環境美化・清掃活動、防災・防火、交通安全・防犯、文化・スポーツ・レクリエーション活動、盆踊り・お祭り等の行事開催等の地域的な共同活動を行っている(第32次地方制度調査会第24回専門小委員会(令和元年10月4日)参考資料4「公共私の連携(地域の共助組織のあり方)について」11頁以下「地縁による団体の認可事務の状況等に関する調査結果(抄)」参照)。
核家族化、都市化、サラリーマン化等の進展、地域の連帯意識の希薄化等により、自治会等への加入率の低下が指摘されて久しい。一方で、東日本大震災の発生や本格的な高齢社会の到来等により、改めて地域コミュニティの機能が認識されている。こうした観点から、自治会等への加入について条例で規定する自治体が増えている。
〇 こうした自治会等への加入を規定する条例は、その目的等から見て、大きく4つのタイプに分けることができる。すなわち、
① 自治会等への加入に主眼を置いた条例
② 地域コミュニティの推進や活性化に関する条例であって、自治会等への加入を規定するもの
③ いわゆる自治基本条例や住民参加条例であって、自治会等への加入を規定するもの
④ 集合住宅の建築等の規制に関する条例であって、主として事業者の責務として自治会等への加入に関する事項を規定するもの
以下、こうした種別ごとに、条例の制定状況を示す。
〇 なお、釼持麻衣「自治会加入促進条例の法的考察」(「都市とガバナンス」第26号2016年9月15日)は、平成28年7月15日までに著者が収集した18の自治会加入促進条例について、内容の分析と法的な検討を行っている。また、礒崎初仁「自治体政策法務講義(改訂版)」(第一法規 平成30年3月)は、第1部第4章「5自治基本条例の制度設計」(62頁以下)及び「8コミュニティ推進条例の制度設計」(70頁以下)において、特に自治会等への住民加入の位置づけの観点から条例の分類を行い、分析している。本稿は、これらを参考にしている。
〇 総務省が設置した「地域コミュニティに関する研究会」は、令和4年4月に「報告書」を取りまとめた。同研究会は、全国の1741市区町村に対していアンケート(報告書資料9ー3「自治会等に関する市区町村の取組についてのアンケートとりまとめ結果」)等を行いつつ、自治会等やNPO等の地域コミュニティの様々な主体が行う地域活動について、変化するニーズに対応し、持続可能なものとすることができるものとするため、①地域活動のデジタル化、②自治会等の活動の持続可能性の向上、③地域コミュニティの様々な主体間の連携の3つの視点から方策を検討している。
アンケート結果によると、自治会等の加入に関し、平成22年度から令和2年度まで毎年度自治会等の加入率を世帯単位で把握している600市区町村の自治会等の平均加入率の推移は、平成22年に 78.0%であったのが、令和2年では 71.7%であり、6.3ポイント低下し(報告書7頁)、また、概ねの傾向としては人口規模が大きい団体ほど平均加入率が低くなっており(同27頁)、さらに、自治会等に対して期待する方向性を条例や計画等に定めている市区町村は699団体であり、その具体的内容(複数回答可)としては、「加入率」(190 団体)、「女性会長・役員の割合」(104 団体)、「自治会活動に参加する住民の割合」(98団体)、「加入世帯数(加 入者数)」(90 団体)の順に多くなっている(同27頁)等としている。
そのうえで、報告書は、②自治会等の活動の持続可能性の向上について、「自治会等の役員・運営の担い手不足、加入率の低下等により、活動範囲の縮小・停滞に陥るリスクが高まっており、活動の持続可能性を向上させるため、自治会等の自己改革のみならず、市区町村として、加入促進の支援や、デジタル化など市区町村全体の業務の見直しと一体的に、自治会等の負担軽減のための「行政協力業務」の部局横断的な見直しを推進することが必要である」、「自治会等の加入率の向上に向けた市区町村の取組としては、条例や計画等に目標等を設けるのみならず、ニーズに即した具体的な取組を行うことが重要であり、加入案内を作成する際には活動内容・収支、加入のメリット、加入者に求められる役割等を丁寧に伝えることとし、地域の実情に応じ、学生向けパンフレット、不動産業界との協定、アドバイザーの活用など、適切な手法を組み合わせることが必要である」(51頁)等としている。
【自治会等への加入に主眼を置いた条例】
〇 ①自治会等への加入に主眼を置いた条例として、令和7年3月25日時点で確認できるものとして、
長野県塩尻市 | 平成23年3月24日公布 | 平成23年4月1日施行 | |
さいたま市 | 平成24年5月2日公布 | 平成24年5月2日施行 | |
埼玉県八潮市 | 平成24年12月21日公布 | 平成25年4月1日施行 | |
埼玉県所沢市 | 平成26年6月30日公布 | 平成26年6月30日施行 | |
川崎市 | 平成26年12月18日公布 | 平成27年4月1日施行 | |
島根県出雲市 | 平成27年3月公布 | 平成27年3月施行 | |
愛媛県大洲市 | 平成27年3月20日公布 | 平成27年4月1日施行 | |
埼玉県草加市 | 平成27年3月23日公布 | 平成27年4月1日施行 | |
東京都品川区 | 平成28年3月24日公布 | 平成28年4月1日施行 | |
宮崎県宮崎市 | 平成28年6月24日公布 | 平成28年6月24日施行 | |
東京都渋谷区 | 平成29年3月31日公布 | 平成29年4月1日施行 | |
宮崎県都城市 | 平成29年12月20日公布 | 平成29年12月20日施行 | |
岐阜県羽島市 | 平成30年3月26日公布 | 平成30年3月26日施行 | |
東京都豊島区 | 平成30年3月27日公布 | 平成30年4月1日施行 | |
埼玉県川口市 | 平成30年9月27日公布 | 平成30年9月27日施行 | |
北海道倶知安町 | 平成30年12月13日公布 | 平成30年12月13日施行 | |
東京都立川市 | 平成31年3月25日公布 | 平成31年3月25日施行 | |
東京都八王子市 | 平成31年3月27日公布 | 平成31年4月1日施行 | |
三重県四日市市 | 令和元年12月25日公布 | 令和2年4月1日施行 | |
千葉県市川市 | 令和2年3月25日公布 | 令和2年4月1日施行 | |
福島県南相馬市 | 令和3年3月26日公布 | 令和3年3月26日施行 | |
福岡県苅田町 | 令和3年12月21日公布 | 令和3年12月21日施行 | |
鳥取県倉吉市 | 令和4年3月16日公布 | 令和4年4月1日施行 | |
茨城県笠間市 | 令和4年3月18日公布 | 令和4年7月1日施行 | |
栃木県那須塩原市 | 令和4年3月24日公布 | 令和4年4月1日施行 | |
札幌市 | 令和4年10月6日公布 | 令和5年4月1日施行 | |
北海道えりも町 | 令和6年6月21日公布 | 令和6年6月21日施行 | |
東京都新宿区 | 令和6年12月9日公布 | 令和7年4月1日施行 | |
岐阜県笠松町 | 令和6年12月16日公布 | 令和6年12月16日施行 | |
茨城県水戸市 | 令和6年12月20日公布 | 令和7年4月1日施行 | |
岡山市 | に関する条例 | 令和7年3月19日公布 | 令和7年4月1日施行 |
長崎県大村市 | に関する条例 | 令和7年3月21日公布 | 令和7年4月1日施行 |
栃木県宇都宮市 | 令和7年3月25日公布 | 令和7年4月1日施行 |
がある。
〇 塩尻市条例を除き、さいたま市条例以下は、平成23年3月の東日本大震災発生以降に制定されている。例えば、八潮市条例は「私たちは、平成23年の東日本大震災により、地域住民相互のつながりの重要性を改めて認識した。」(前文)、所沢市条例は「このような中で発生した東日本大震災により、私たちは、人と人との絆や助け合いの大切さに改めて気づかされました。」(前文)、出雲市条例は「東日本大震災や、ゲリラ豪雨などによる度重なる自然災害の経験から、人と人とのつながりや絆、助け合いの大切さ、地域コミュニティの重要性が再認識されている今日、その中核となる自治会等の活性化は、取り組むべき喫緊の課題である。」(前文)、品川区条例は「私たちは、阪神・淡路大震災や東日本大震災などから地域住民による共助の重要性を再認識し、地域のつながりをより強め、共助の精神をさらに育んでいくことの大切さを改めて知りました。」(前文)等とするように、東日本大震災などの災害の発生と経験から、地域の結びつきの必要性が再認識されたことが、条例制定の契機の一つになっているとしている。
〇 制定自治体を地域的に見ると、従前は東京都や埼玉県等の大都市圏に多かった。例えば、草加市条例は「近年、少子化や若い世代の未婚化、核家族化などの社会環境の大きな変化により、地域に対する関心が薄れ、住民相互のつながりが希薄化し、町会・自治会に加入する住民の割合が低下している。」(前文)、立川市条例は「近年の急速な少子高齢化、核家族化、人々の価値観及び生活形態の多様化等の影響もあり、自治会に加入する市民の割合及び自治会等の活動に参加する市民は、減少傾向であり、地域でのコミュニケーションの希薄化が見られるようになりました。」(前文)等とするように、大都市近郊の都市部において、自治会等の加入率の低下や地域コミュニティの希薄化に対する危機意識が高いと考えられる。しかし、自治会等の加入率の低下や地域コミュニティの希薄化などの課題は全国各地の自治体でも見られ、大都市圏以外の自治体でも条例が制定されてきている。
〇 自治会等の定義については、地方自治法260条において、自治会、町内会等の「地縁による団体」を「市町村の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体」と規定し、同条に基づき認可を申請する際には、その目的に「良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行う」ことが要件の1つとして定められていることから、これらの表現を用いた定義規定とする条例が多い。
名称を、「自治会」とするもの、「町会、自治会」とするもの、「町内会、自治会」とするもの、「自治会等」とするもの、「町会」とするものなどがあるが、出雲市条例は「自治会等」を「自治会、町内会、区、振興協議会、自治協会その他の団体」とし(2条2号)、倶知安町条例は「町内会等」を「町内会、自治会、自治振興会その他の団体」(2条1号)としている。また、品川区条例は、「町会」と「自治会」を別に定義し、「町会」を地縁による団体であって、地域コミュニティの中心となって活動しているもの(2条1号)とし、「自治会」を「地縁による団体であって、地域コミュニティの中心となって活動しているもののうち、1棟の共同住宅の敷地または複数の共同住宅のそれぞれの敷地であって隣接しているものを主たる区域とするもの」(2条2号)としており、通常の地縁団体を「町会」、団地単位の地縁団体を「自治会」としている。
なお、都城市条例は、自治公民館への地域住民の加入及び活動参加の促進を図ることを目的としている(1条)。「自治公民館」は「良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行うことを目的として、地域住民の地縁に基づき形成された自治組織」(2条2号)と定義づけられているが、「都城市の自治公民館は、他市の自治会や町内会にあたります。都城市では、自治会や町内会の集会所を『公民館』と位置づけています。そこを拠点として、地域のひとづくりやまちづくりを進めていて、組織名称を『自治公民館』としています。自治公民館は、『公民館』としての機能を持っているという以外は、他市の『自治会』や『町内会』と変わらない組織だといえます。」(都城市HP「自治公民館とは、何ですか?」)とされている。また、倉吉市条例も、「自治公民館」を「市の区域内において、地縁によってつながりを持った市民が、地域における防災、防犯、環境保全、健康増進、福祉等の活動を自主的に運営している組織」(2条2号)と定義づけたうえで、自治公民館への加入及び活動への参加の促進を図ることを目的としている(1条)。
南相馬市条例は、市民の行政区への加入及び参加を促進することを目的とし(1条)、「行政区」を「南相馬市行政嘱託員の設置に関する条例・・・第2条に定める区域内で地域自治を目的に地縁に基づいて形成し、組織された団体」(2条3号)と定義づけているが、「本市は、東日本大震災及び原発事故により、居住人口が大きく減少し、地域活動の維持が困難になった地域や避難者が新たに移り住んできたことによる新たなコミュニティの形成が必要な地域があるなど、地域社会を取り巻く環境が大きく変化したことから、その活性化の取組が求められている。・・・特に、地域社会の基盤である行政区への市民の自主的な加入や活動の参加の促進による活性化が必要」(南相馬市資料「南相馬市一円融合の地域活性化条例の概要について」)としている。また、笠間市条例は、市民の行政区への加入及び行政区活動への参加を促進することを目的とし(1条)、「行政区」を「笠間市区長設置に関する規則(・・・)別表に掲げる行政区において構成される組織」(2条3号)と定義づけているが、「行政区は、皆さんにとって最も身近なコミュニティ組織として、生活に密着した活動を行っています。災害時の対策や、地域コミュニティの存続など、少子高齢化、人口減少に伴うさまざま課題を解決するうえで、地域住民と行政をつなぐ中間組織となる行政区の役割は、とても重要なものです。」(笠間市HP「「笠間市行政区への加入及び参加を促進する条例」の制定について」)としている。
〇 住民の自治会等への加入については、多くの条例は、例えば「住民は、自らが地域住民の一員であることを認識し、自らが居住する地域の町会自治会に加入するよう努めるものとする。」(八潮市条例4条1項)のように、住民に対して努力義務としている。
一方、塩尻市条例は「市民は、基本理念にのっとり、自らが居住する地域の自治会に加入するものとする。」(5条1項)、倶知安町条例は「地域住民は、地域の一員であることを認識し、地域で安心して快適に暮らすために町内会等が重要な役割を担っていることを理解し、町内会等への加入及びその活動へ積極的かつ主体的に参加するものとする。」(4条)、笠間市条例は「市民は、地域の一員であることを認識し、地域で安心して快適に暮らすために行政区が重要な役割を担っていることを理解し、行政区への加入及びその活動へ積極的かつ主体的に参加するものとする。」(4条)とし、自治会等の加入を義務付けている。いずれも、罰則はない。なお、塩尻市条例は、「自治会」を「一定の地域の市民が、その総意に基づき活動する自治組織としての区」(2条2号)と定義付け、一定住民の「総意」による活動であることを強調している。また、倶知安町条例は町内会等の加入が義務付けられる「地域住民」を「町内に居住する全ての個人をいい、住民基本台帳の記録の有無、国籍のいかん及び居住期間の長短を問わない。」(2条2号)としており、住民基本台帳上の住民であるか否か、また、日本国籍を有するか否かを問わないことを明記している。倶知安町は「国際リゾートとして発展」(前文)しており、一時的に滞在する外国人にも町内会等に加入して、活動することを求めていることになる。
これらに対して、さいたま市条例、川崎市条例及び品川区条例は、住民に対する自治会等への加入について規定は置かず、例えば「市は、地域住民が町内会・自治会に自発的に加入し、又は町内会・自治会を自主的に設立することを促進するため必要な支援を行うものとする。」(川崎市条例4条2項)、「町内会・自治会は、地域住民の自発的な加入を促進するよう努めるものとする。」(川崎市条例5条1項)のように、自治体の責務や自治会等の役割として規定している。このことに関して、渋谷区の担当者は「他の地方公共団体の同種の条例には、市民・区民に町会等へ加入する努力義務を課す例があるようですが、渋谷区においては、消極的結社の自由に対して最大限の配慮をして、これには言及しないこととしました。」(ぎょうせい法令改廃情報提供システム平成29年6月6日関連トピックス「条例紹介―渋谷区新たな地域活性化のための条例」)としている。
最高裁判所は、自治会は「会員相互の親ぼくを図ること、快適な環境の維持管理及び共同の利害に対処すること、会員相互の福祉・助け合いを行うことを目的として設立された権利能力のない社団」であり、「いわゆる強制加入団体でもな」い(最三小判平成17年4月26日 同判決については前田雅子「自治会の法的性格と退所の自由」(地方自治判例百選[第4版](有斐閣2013年5月30日)12頁)を参照のこと)としていることから、前記礒崎著書は「既存の自治会等への加入を義務づけることは合理的な制約とはいえず、違憲となる可能性がある」(72頁)とし、剱持論文は「加入の義務付けには法的限界があると言わざるを得ない」とし「努力義務にとどめておく方が望ましいだろう。」(145頁)としている。
〇 塩尻市条例及びさいたま市条例を除く他の条例は、例えば「事業者は、事務所又は事業所が所在する地域の自治会等の活動への参加及び協力に努めるものとする。」、「事業者は、従業員がその居住する地域の自治会等へ加入し、又はその活動に参加することに配慮するよう努めるものとする。」、「住宅関連事業者は、自治会等への加入及び参加の促進に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。」、「住宅関連事業者は、住宅の建築等に当たっては、当該住宅に入居しようとする者に対して、当該住宅が所在する地域の自治会等に関する情報を提供するよう努めるものとする。」(所沢市条例6条1項、2項、8条1項、2項)などのように、事業者による自治会活動への参加・協力や従業員の自治会等への加入の配慮、住宅関連事業者による自治会等への加入促進の協力や入居者への自治会等に関する情報の提供等について、何らかの形で規定している。
〇 さいたま市、川崎市、出雲市、羽島市、川口市及び岡山市の条例は、議員提案により制定されたものである。
〇 倶知安町条例の内容等については自治体法務研究2021年冬号条例制定の事例CASESTUDY「倶知安町町内会等への加入及び参加を促進する条例」を、市川市条例の内容等については自治体法務研究2021年冬号条例制定の事例CASESTUDY「市川市自治会等を応援する条例」を、それぞれ参照されたい。
また、札幌市条例の内容、検討経緯、制定背景等については札幌市HP「札幌市未来へつなぐ町内会ささえあい条例」を、新宿区条例の内容、検討経緯等については新宿区HP「新宿区未来につなぐ町会・自治会ささえあい条例が制定されました」を参照されたい。
【地域コミュニティの推進や活性化に関する条例であって、自治会等への加入を規定するもの】
〇 ②地域コミュニティの推進や活性化に関する条例であって、自治会等への加入を規定するものとして、
横浜市 | 平成23年3月25日公布 | 平成23年3月25日施行 | |
京都市 | 平成23年11月11日公布 | 平成24年4月1日施行 | |
神奈川県湯河原町 | 平成24年3月5日公布 | 平成24年3月5日施行 | |
兵庫県川西市 | 平成26年6月25日公布 | 平成26年10月1日施行 | |
岩手県滝沢市 | 平成28年3月22日公布 | 平成28年4月1日施行 | |
福岡県宇美町 | 平成28年9月12日公布 | 平成29年4月1日施行 | |
鹿児島県曽於市 | 平成29年3月27日公布 | 平成29年4月1日施行 | |
石川県金沢市 | 平成29年3月27日公布 | 平成29年4月1日施行 | |
長崎県佐世保市 | 平成29年12月20日公布 | 平成30年4月1日施行 | |
沖縄県北中城村 | 平成30年6月19日公布 | 平成30年6月19日施行 | |
福岡市 | 令和4年3月28日公布 | 令和4年4月1日施行 | |
福岡県小郡市 | 令和4年9月21日公布 | 令和4年9月21日施行 | |
京都府長岡京市 | 令和4年12月26日公布 | 令和5年1月1日施行 |
などがある。
〇 ①のタイプの条例が自治会等への加入を主眼としているのに対して、これらの条例は、自治会等の活動を含む地域活動を促進し、地域コミュニティの活性化を図ることを目的としている。
〇 いずれも東日本大震災発生後制定されている。京都市条例と湯河原町条例は、前文で東日本大震災による影響について言及している。
〇 横浜市条例、湯河原町条例及び北中城村条例は、いずれも条例名の中に「絆を育む(はぐくむ)」が入っている。地域活動を促進し、地域の絆を育むための住民の役割や自治体の責務等を規定した理念的な条例である。住民の役割として自治会等への加入や地域活動の参加について努力義務を規定している。
〇 京都市、滝沢市、宇美町、曽於市、金沢市、佐世保市及び福岡市の条例は、いずれも条例名の中に「地域コミュニティ」が入っている。地域コミュニティを、例えば「本市の区域内における地域住民相互のつながりを基礎とする地域社会」(京都市条例2条1号)のように定義付けたうえで、地域コミュニティの推進や活性化に関して、基本理念、住民、住民団体及び事業者等の役割、自治体の責務、推進施策等の規定を置いている。また、京都市条例及び金沢市条例は「地域コミュニティ活性化推進計画」の策定や「地域コミュニティ活性化推進審議会」の設置等について、滝沢市条例は「地域別計画」の策定や「地域づくり懇談会」の設置等について、宇美町条例は「推進計画」の策定等について、曽於市条例は「地域コミュニティ活性化推進計画」の策定や「地域コミュニティ協議会の設置」の設置等について、佐世保市条例は「地区自治協議会」の設置について、規定している。
自治会等の加入に関しては、京都市条例は、自治会,町内会その他の地域住民が組織する団体により構成されるものであること等の要件を満たす地域の自治を担う団体を「地域自治を担う住民組織」(2条3号)として、地域住民は「地域自治を担う住民組織に多くの地域住民が主体的に参加する状況となることを目指」す(6条2項)と規定、滝沢市条例は「自治会、企業、NPO法人等の公益性を有する活動を行う団体」を「地域コミュニティ団体等」とし、市民は地域コミュニティ団体等の「活動に参加し、地域づくりを推進するよう努めるものとする」(4条3項)と規定しており、自治会等の加入に関する直接的な規定は置いていない。また、金沢市条例は、「地域活動を行うことを主たる目的とする団体で、当該地域の住民により組織されるもの」を「町会その他の地域団体」(2条2項)とし、地域住民は「それぞれが居住する区域の町会その他の地域団体の地域活動に参加するよう努めるものとする」(5条2項)としている。
一方で、宇美町条例は、自治会は「地域コミュニティを形成する基礎的な組織」(6条1項)としたうえで、「町民は、自らが居住する地域の自治会への加入に努めるものとする」(8条2項)とし、曽於市条例は、自治会は「地域コミュニティの中心組織」(4条1項)としたうえで、住民は「自らが居住する地域の自治会に加入するよう努めるものとする」(5条1項)とし、住民に対して自治会等加入の努力義務規定を置いている。また、佐世保市条例は、町内会等を「一定の区域に居住する者の地縁に基づいて形成された団体又は自治活動を行っていると認められる集合住宅の管理組合であって、良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行うもの」(2条5号)と定義付け、「市民は、自らが居住する地域等の町内会等に加入するものとする」(4条2項)と規定し、住民に対して町内会等加入の義務規定を置いている。なお、佐世保市は、「町内会等への加入や参加・参画は強制されるものはなく、義務でもありません」(佐世保市条例パンフレット参照)としている。
京都市、金沢市及び佐世保市の条例は、住宅販売業者による入居者への地域自治を担う住民組織や自治会等に関する情報の提供等について規定している。なお、金沢市条例は、集合住宅におけるコミュニティ組織の形成の促進に関する条例 (平成20年3月26日公布、平成20年4月1日施行)が廃止されたうえで、制定されている。
〇 川西市条例は、地域分権の推進の観点から「自治会」と「コミュニティ組織」を位置づけ、その機能強化を図り、「地域における総合的な自治を強化することにより、自治体力を高めることを目指」す(前文)こととしている。このうち、「コミュニティ組織」は、市民が原則として小学校区単位で設置することができる(10条)とし、その役割として「住民自治の推進を図るため、地域が抱える課題の解決に向けて地域活動に取り組むとともに、より良い地域づくりに努め」、「地域住民の自治会活動等への参加促進に積極的に取り組み、自治会活動の活性化の推進に努める」(6条1項、2項)ものとしている。そのうえで、自治会は、「地域における最も身近な地縁組織」(4条1項)とし、市民は「自らが地域住民の一員であることを認識し、住所を有する地域での活動に関心を持ち、自治会活動等の地域活動に主体的に参加するよう努めるものとする。」(3条)としている。なお、コミュニティ組織に対し財政的支援を行うため、地域づくり一括交付金を交付することができる(14条)としている。また、住宅業者に対して入居予定者への自治会への加入等の説明(7条1項)等の規定を置いている。
〇 小郡市条例は、条例名を「みんなですすめるまちづくり条例」とし、市民の役割と取組として「市民は、自治会や校区まちづくり組織などの地域コミュニティや、市民活動団体などに関心を持ち、状況や思いを正しく知り、参加・協力しましょう。」(6条2項)等と規定している。
〇 長岡京市条例は、条例名を「助け合いとつながりのまちづくり条例」とし、市民に期待することとして「共感できる活動又は団体に参加するよう努めること」(5条2号)等と規定するとともに、自治会に期待することとして「自治会活動への地域住民の共感を高め、地域の魅力を共有し、会員の拡大に取り組むよう努めること」(6条3号)等と規定している。
〇 横浜市条例は、議員提案により制定されている。
〇 さっぽろ地域コミュニティ検討委員会の第4回会議(平成28年3月23日)資料4「町内会・自治会及び地域コミュニティの活性化に関する他都市の条例との比較整理」(2頁)は、さいたま市、横浜市、川崎市及び京都市の条例の内容比較をしている。
【いわゆる自治基本条例や住民参加条例であって、自治会等への加入を規定するもの】
〇 ③いわゆる自治基本条例や住民参加条例であって、自治会等への加入を規定するものとして、
長野県高森町 | 平成14年12月20日公布 | 平成15年4月1日施行 平成27年4月1日廃止 | |
福島県浪江町 | 平成15年9月26日公布 | 平成15年10月1日施行 | |
岐阜県岐阜市 | 平成19年3月30日公布 | 平成19年4月1日施行 | |
長野県駒ケ根市 | 平成20年6月25日公布 | 平成20年7月1日施行 | |
神奈川県大井町 | 平成21年3月16日公布 | 平成21年4月1日施行 | |
長野県小諸市 | 平成22年3月30日公布 | 平成22年4月1日施行 | |
福岡県久留米市 | 平成23年12月14日公布 | 平成24年4月1日施行 | |
鹿児島県いちき串木野市 | 平成25年6月27日公布 | 平成26年4月1日施行 | |
長野県高森町 | 平成26年12月16日公布 | 平成27年4月1日施行 | |
岐阜県瑞浪市 | 平成27年3月23日公布 | 平成27年7月1日施行 | |
長野県長和町 | 平成28年12月21日公布 | 平成29年4月1日施行 | |
長野県安曇野市 | 平成29年3月24日公布 | 平成29年4月1日施行 | |
福岡県飯塚市 | 令和2年3月26日公布 | 令和2年4月1日施行 | |
奈良県広陵町 | 令和3年5月27日公布 | 令和3年6月1日施行 |
|
奈良県河合町 | 令和4年12月22日公布 | 令和5年4月1日施行 |
などがある。
〇 剱持論文は、平成14年12月に制定された高森町町民参加条例が「加入促進条例の先駆けといわれる」(139頁)としている。「町民は、地域社会における自らの役割と責務を認識し、まちづくりの根幹をなす住民自治の担い手として、自治基盤である常会・区等(以下『自治組織』という。)の加入に努めるものとする。」(2条2項)と規定していた。同条例は、高森町まちづくり基本条例(平成26年12月16日公布、平成27年4月1日施行)の制定に伴い、廃止されている。高森町まちづくり基本条例では、「自治組織」を「町内の自治の基盤を構成する常会、地区及び区等」(2条5項)としたうえで、「町内に居住する町民は、自治組織がまちづくりや地域福祉に果たす役割や意義を認め、自治組織への加入に努めます。」(13条1項)と規定している。
〇 高森町条例と同様に住民に対して自治会等への加入の努力義務規定を置くものとして、岐阜市、駒ケ根市、久留米市、いちき串木野市、長和町、安曇野市、飯塚市、広陵町及び河合町の条例がある。このうち、駒ケ根市条例は、「市民は、全員が自治組織に加入し、自治組織を通じて行動することで、地域の一員としてその責務を果たしていくことに努めるものとします」(9条2項)とし、市民全員が自治組織(区、自治組合及びこれに類する地縁により構成された団体 2条3号)に加入することを努力義務としている。
なお、いちき串木野市では「日常生活に最も身近な自治組織として『自治公民館』があり」(いちき串木野市HP「自治公民館加入のご案内」)、いちき串木野市条例は「市民は、互いに助け合い、親睦を深めることにより住みよい地域づくりを目指す自治公民館の活動に対する理解を深め、積極的に自治公民館に加入して活動に参加するよう努めるものとします」(23条1項)としている。
〇 一方、小諸市条例は、区を「本市の一定の地域に住む人等が、自治意識に基づき主体的に活動する地域自治組織」(3条4号)とし、区の役割を「対象地域における共通課題を解決し、福祉の向上を図ります」(8条1項)としたうえで、「本市に住む人は、前条(8条)第1項の目的を達成するため、区へ加入しなければなりません。」(9条)と規定し、地域自治組織である区への加入を市民に義務付けている。また、大井町条例は「住民は、原則として自治会に加入しなければなりません。」(8条)、瑞浪市条例は「住民は、原則として自治会へ加入するものとします。」(7条3項)と規定し、住民に対して「原則として」自治会への加入を義務づけている。
〇 浪江町条例は、「行政区及び自治会組織への加入は、町と地域住民が協働して促進に努めるものとする。」(5条)として、町と地域住民が共同して加入の促進に努めるものとしている。
〇 全体として、自治基本条例や住民参加条例であって自治会等の加入を規定するものは、長野県下の市町村に多い。なお、①のタイプの条例で最も制定年が早く、住民に対して自治会への加入を義務付けている塩尻市条例も、長野県下の市町村の条例である。制定年は、小諸市条例の方が塩尻市条例よりも早い。
【集合住宅の建築等の規制に関する条例であって、主として事業者の責務として自治会等への加入に関する事項を規定するもの】
〇 ④集合住宅の建築等の規制に関する条例であって、主として事業者の責務として自治会等への加入に関する事項を規定するものとして、
東京都江戸川区 | 平成17年12月22日公布 | 平成18年4月1日施行 | |
東京都台東区 | 平成20年7月1日改正施行 | ||
東京都北区 | 平成20年3月21日公布 | 平成20年10月1日施行 | |
東京都豊島区 | 平成22年1月1日改正施行 | ||
東京都荒川区 | 平成25年4月1日改正施行 | ||
東京都墨田区 | 平成28年12月9日公布 | 平成29年4月1日施行 | |
京都府亀岡市 | 平成28年12月23日公布 | 平成29年4月1日施行 | |
東京都板橋区 | 平成29年12月25日公布 | 平成30年7月1日施行 | |
東京都足立区 | 平成30年3月28日公布 | 平成30年10月1日施行 | |
島根県松江市 | 令和2年10月20日公布 | 令和2年12月1日施行 | |
埼玉県川口市 | 令和2年12月22日公布 | 令和4年4月1日施行 | |
東京都葛飾区 | 令和4年3月30日公布 | 令和4年10月1日施行 |
などがある。
〇 亀岡市、松江市及び川口市を除く条例は、すべて東京都特別区が制定したものである。これらの条例は、マンション等の建設や管理に関して、区への届出や協議や良好な住環境を整備するための基準等について規定しているが、地域コミュニティの形成の観点から、入居者の自治会等の加入に関する規定を置いている。例えば、江戸川区条例は「住宅を建築しようとする事業者は、地域コミュニティの形成の促進を図るため、区と連携し、入居者に係る町会、自治会等への加入及び新設に関する協力を行うものとする。」(36条)、豊島区条例は「建築主は、地域コミュニティの形成のため、入居者等(建築主を含む。)の町会等への加入に関して、町会等と協議を行わなければならない。」(21条)、板橋区条例は「管理者等及び居住者等は、居住者等間のコミュニティの形成を図るため、マンション内で組織する自治会を設置するよう努めるものとする。」及び「管理者等及び居住者等は、マンション内で自治会を組織していない場合は、地域コミュニティの形成のため、当該マンションの所在する地域の町会・自治会等への居住者等の加入について協議するものとする。」(25条1項、2項)としている。
〇 亀岡市条例は、開発行為や建築行為に関して一定の手続きや基準を定めるものであるが、「事業者は、住宅又は集合住宅を目的とした開発行為等を行う場合は、入居予定者に対し、自治会への加入促進に努めなければならない。」(14条)と、松江市条例は、中高層建築物の建築に係る手続を定めるものであるが、「建築主は、中高層建築物のうち共同住宅を建築するときは、近隣住民と共同住宅入居者との良好な近隣関係の構築及び健全な居住環境の保全及び形成を図るため、共同住宅入居者の町内会・自治会加入の促進に努めなければならない。」(3条3項)としている。また、川口市条例は、マンション管理の適正化について定めるものであるが、「管理組合は、町会・自治会(・・・)に加入していない当該マンションの入居者に対し、町会・自治会への加入の促進に努めるものとする。」(18条2項)としている。