プラスチック資源循環に関する条例

(令和6年2月28日更新)

【プラスチック資源循環に関する単独条例】

〇 プラスチック資源循環に関する単独条例として制定が確認されるのは、令和6年1月1日時点で、

栃木県

栃木県プラスチック資源循環推進条例

令和2年3月10日公布

令和2年3月10日施行

京都府宮津市

宮津市プラスチック等資源循環の促進等に関する条例

令和4年12月23日公布

令和5年1月1日施行

の2条例である。

〇 栃木県条例は、議員提案により、令和2年3月に制定された。

 本条例は、前文で、「今、資源の大量消費が気候変動などを地球規模で引き起こしている。とりわけ、プラスチックに関しては、いわゆるマイクロプラスチックなどの海洋ごみが生態系に大きな影響を与えるリスクが懸念されており、早急かつ実効性のある対策が求められている。」とし、「今こそ使い捨て型の大量消費社会から循環型社会への大胆な移行が必要であり、プラスチックの持つ高度な機能を尊重しつつ、プラスチックとの上手な付き合い方を探求し、持続可能な社会の実現に向けた新たな1歩を踏み出していかなければならない。」としたうえで、「ここに、プラスチックが資源として適正に循環する体制を築き、持続可能な循環型社会を実現することを決意し、この条例を制定する。」としている。

 プラスチック資源循環を「プラスチック製の製品、容器等・・・が廃プラスチック類等となることを抑制し、並びにプラスチック製品等が循環資源となった場合においてはこれについて適正に循環的な利用を行い、及び循環的な利用が行われない廃プラスチック類等については適正に処分すること」(2条5号)と定義づけたうえで、県は、プラスチック資源循環の推進に関する基本的な指針を策定する(7条)するとともに、廃プラスチック類等の発生の抑制(8条)、廃プラスチック類等の循環的な利用の促進等(9条)、廃プラスチック類等の適正な処分(10条)等の施策を講ずるものとしている。また、事業者及び県民の責務(4条、5条)を規定するとともに、施策の推進に当たっては市町村と連携・協力を図ること(6条)としている。

 本条例については、自治体法務研究2021年春号CLOSEUP先進・ユニーク条例「栃木県プラスチック資源循環推進条例」を参照されたい。

 栃木県のプラスチック資源循環に関する取組みについては、栃木県HP「プラスチック資源循環について」を参照されたい。なお、栃木県は県内全25市町とともに「栃木からの森里川湖(もりさとかわうみ)プラごみゼロ宣言」(令和元年8月27日)を行っている。

〇 宮津市条例は、「地球温暖化に起因する気候変動の影響や海洋プラスチック問題等への対応を契機として、プラスチックをはじめとする資源循環の重要性が高まる中、脱炭素社会、循環型社会及び自然共生社会を構築し、将来へ良好な環境を引き継いでいくため」(宮津市議会令和4年12月定例会議案参考資料「宮津市プラスチック等資源循環の促進等に関する条例の制定について」)、市長提案により、令和4年12月に制定された。

 「プラスチックをはじめとする資源循環の促進等(以下「資源循環の促進等」という。)に関し、市、事業者、市民及び観光旅行者その他の滞在者(以下「観光旅行者等」という。)の責務を明らかにするとともに、資源循環の促進等に関する基本的事項を定め、これに基づく施策を総合的かつ計画的に推進する」(1条)ことを内容としている。

 すなわち、総則(1章)において、市、事業者、市民及び観光旅行者等の責務(3条~6条)を規定するとともに、市長は基本指針を定める(8条)ものとし、資源循環の促進等に関する基本的な施策(2章)において、プラスチックの資源循環の促進等、海洋プラスチックごみ対策の推進、資源循環の促進等に関する教育及び学習の推進等、市民等の自主的な活動を推進するための措置、資源循環を促進する事業所の認定等(9条~16条)を規定している。

 本条例については、宮津市HP「宮津市プラスチック等資源循環の促進等に関する条例を制定しました」及び自治体法務研究2023年夏号条例制定の事例CASESTUDY「宮津市プラスチック等資源循環の促進等に関する条例」を参照されたい。

 

【その他プラスチックの資源循環について規定する条例】

〇 脱炭素社会を目指す条例等においてプラスチックの資源循環について規定するものとしては、以下のようなものがある。

長野県長野県脱炭素社会づくり条例令和2年10月19日公布

令和2年10月19日施行

新潟県妙高市生命地域妙高ゼロカーボン推進条例令和3年3月31日公布

令和3年4月1日施行

群馬県

二千五十年に向けた「ぐんま5つのゼロ宣言」実現条例

令和4年3月15日公布

令和4年3月15日施行

長野県松本市

松本市ゼロカーボン実現条例

令和4年6月24日公布

令和4年6月24日施行

神奈川県

神奈川県資源の循環的な利用等の推進、廃棄物の不適正処理

の防止等に関する条例

令和4年7月29日改正施行

福岡県

環境と人と動物のより良い関係づくり等福岡県における

ワンヘルスの実践促進に関する条例

令和4年10月28日公布

令和5年4月1日施行

〇 長野県条例は、脱炭素社会づくりを目的とするものであるが、プラスチックの資源循環の推進に関する規定を置いている(9条)。議員提案により、制定されている。

 すなわち、「県は、プラスチックの資源循環を推進するため、使い捨てのプラスチック製品等からのリプレイス(持続可能な脱炭素社会づくりに資する素材及び製品への転換をいう。・・・)、プラスチック廃棄物 の発生抑制並びにプラスチックの再利用及び再生利用に資する取組に努めるものとする。」(9条1項)としたうえで、「事業者は、プラスチックの使用量の削減、プラスチック代替素材の開発並びに代替素材を活用した製品の開発及び実用化に努めるものとする。」(同条3項)、「県民は、プラスチック廃棄物の削減につながる製品の選択及び市町村、事業者等が実施するプラスチック廃棄物の分別回収への協力に努めるものとする。」(同条4項)としている。

 本県条例の内容、制定経緯等については、長野県HP「長野県脱炭素社会づくり条例を制定しました」を参照されたい。

〇 妙高市条例も、脱炭素社会づくりを目的としている。

 プラスチックの資源循環に関して、市民の責務の一つとして「市民は、エネルギー消費量の少ない製品の使用、プラスチックの資源循環の推進等、市が講ずるゼロカーボンの実現のための措置に積極的に関与するよう努めるものとする。」(3条2項)と規定し、市の重点施策の一つとして「プラスチックスマート(プラスチックの削減を図る取組をいう。)を推進し、環境負荷を軽減する生活スタイルの変革に取り組むこと。」(6条4号)を掲げている。

 本条例の内容等については、妙高市HP「生命地域妙高ゼロカーボン推進条例」を参照されたい。

〇 群馬県条例は、令和元年12月の「ぐんま5つのゼロ宣言」(以下「宣言」という。)を踏まえ、2050年に向けて①自然災害による死者「ゼロ」、②温室効果ガス排出量「ゼロ」、③災害時の停電「ゼロ」、④プラスチックごみ「ゼロ」及び⑤食品ロス「ゼロ」を実現することを目的として、令和4年3月に制定された。プラスチックごみ「ゼロ」については、宣言では「環境中に排出されるプラスチックごみをなくす」としている。

 プラスチックごみゼロに関して、 プラスチックごみを「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」2条3項に規定するプラスチック使用製品廃棄物及び同条4項に規定するプラスチック副産物と定義づけた(2条14号)うえで、事業者は「プラスチックごみを分別して排出するとともに、その再資源化等(・・・)を行うよう努めなければならない。」(71条1項)、消費者は「市町村が定める分別の基準に従い、プラスチックごみ(・・・)を分別して排出するよう努めなければならない。」(同条2項)等と規定している。

 また、プラステック資源循環の推進に関して、県は「プラスチックの生産から流通、消費、廃棄、再資源化(・・・)に至るまでの資源循環(・・・)の構築を図り、環境中にプラスチックごみが排出されないように努めるものとする。」(72条1項)等と規定し、あわせて、関連産業の育成・振興に関する規定(73条)を置いている。

 「ぐんま5つのゼロ宣言」については群馬県HP「2050年に向け群馬県は『ぐんま5つのゼロ』を宣言します!!」を、本条例の内容等については自治体法務研究2022年秋号CLOSEUP先進・ユニーク条例「2050年に向けた「ぐんま5つのゼロ宣言」実現条例」を参照されたい。

〇 松本市条例は、脱炭素社会づくりを目的としているが、脱炭素に寄与する社会基盤整備の促進として「市は、公共交通及び自転車の利用促進、森林整備、緑化推進、プラスチック資源循環の推進、食品ロスの抑制、廃棄物の削減及び再資源化、農産物等の地産地消等の温室効果ガスを削減する取組みを通じ、脱炭素に寄与する社会基盤の整備を促進するものとする。」(13条)と規定している。

〇 神奈川県条例は、令和4年7月に「神奈川県廃棄物の不適正処理の防止等に関する条例」が改正され、条例名も「神奈川県資源の循環的な利用等の推進、廃棄物の不適正処理の防止等に関する条例」とされたものである。

 改正後の条例は、新たに、プラスチックに係る資源の循環的な利用等に関し、「県は、プラスチックに係る資源の循環的な利用等の推進に関する総合的な施策の実施に当たって、プラスチックの使用量の削減、プラスチックに代替する素材の活用その他のプラスチックが使用されている製品の設計又はその部品若しくは原材料の種類についての工夫がなされた製品の製造及び使用が促進されるよう努めなければならない。」(改正後3条の2)と規定するとともに、県に対してプラスチック資源循環推進等計画の策定を義務づけている(改正後9条の2)。

〇 福岡県条例は、環境と人と動物のより良い関係づくりその他のワンヘルスの実践を促進することを目的としているが、プラスチックごみに関して「県は、プラスチックごみの大気、河川、海等への流出による生態系への負荷を低減し、これらの環境に生息する生物の健康を確保するため、プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律に基づくプラスチック使用製品廃棄物及びプラスチック副産物の分別収集、再商品化、再資源化等並びにプラスチックに代替する安全な素材を使用した製品の普及に向けた市町村及び事業者の取組を支援するよう努めるものとする。」(22条1項)等と規定している。

 

【プラスチック資源循環施策の動向】

〇 政府は、令和元年5月31日に「プラスチック資源循環戦略」を策定した。同戦略は、廃プラスチックの有効利用率が低く、特に海洋プラスチック等による環境汚染が世界的課題となっていることから、「世界全体の取組として、プラスチック廃棄物のリデュース、リユース、徹底回収、リサイクル、熱回収、適正処理等を行うためのプラスチック資源循環体制を早期に構築するとともに、海洋プラスチックごみによる汚染の防止を、実効的に進めることが必要」であるとして、我が国として、3R(リデュース、リユース、リサイクル)+Renewable(再生可能資源への代替)を基本原則としたプラスチックの資源循環を総合的に推進することとしている(同戦略概要を参照のこと)。

〇 令和3年6月11日に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が公布され、令和4年4月1日より施行された。同法は、「多様な物品に使用されているプラスチックに関し包括的に資源循環体制を強化し、製品の設計からプラスチック廃棄物の処理までに関わるあらゆる主体におけるプラスチック資源循環等の取組(3R+Renewable)を促進するための措置を講じようとするもの」であるが、同法の内容等については、環境省HP「プラスチック資源循環法関連」及び中野かおり「サーキュラーエコノミーへの移行に向けて-プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案-」(立法と調査434号 2021年4月)を参照されたい。

〇 なお、プラスチック資源循環を巡る我が国及び海外の状況や取り組みについては、「プラスチックを取り巻く国内外の状況 <参考資料集>」(中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環小委員会、産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会プラスチック資源循環戦略ワーキンググループ合同会議第11回(令和3年11月22日)参考資料2)を参照されたい。

 また、プラスチック使用削減のため、プラスチック製レジ袋の有料化等が進められているが、関連条例については「レジ袋に関する条例」を参照されたい。



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