シティプロモーションに関する条例
(令和6年12月7日更新)
【シティプロモーションとは】
〇 「シティプロモーション」は、一般的には「地域の魅力を内外に発信し、その地域へヒト・モノ・カネを呼び込み地域経済を活性化させる活動」(日本都市センター「シティプロモーションによる地域づくり―「共感」を都市の力に―第14回都市政策研究交流会」はしがき)などと定義づけられている。なお、河井孝仁東海大学教授は「地域を持続的に発展させるために、その魅力を発掘し、内外に効果的に訴求し、人材、物財、資金、情報などの資源を地域内部で活用可能としていくこと」(河井孝仁「どうなればシティプロモーションは成功なのか~計画倒れにならない戦略づくり~」(前記日本都市センター報告書基調講演)2頁)と定義づけ、シティプロモーション自治体等連絡協議会は「シティ・プロモーションは地域再生、観光振興、住民協働など様々な概念が含まれています。シティ・プロモーションの捉え方は多々ありますが、その一つは、そこに住む地域住民の愛着度の形成と考えます。その先には、地域の売り込みや自治体名の知名度の向上と捉えることも可能です。」(同HP「シティプロモーションとは?」)としている。
牧瀬稔関東学院大学准教授によると、自治体においてシティプロモーションという言葉は、平成10年前後から使われはじめ、平成20年前後から使用頻度が急拡大する(牧瀬稔「注目を集めるシティプロモーションの現状と展望」(牧瀬稔・読売広告社ひとまちみらい研究センター「シティプロモーションとシビックプライド事業の実践」(東京法令出版 平成31年3月)第Ⅰ部第2章21頁以下))とされる。
〇 シティプロモーションと同様な意味を持つ言葉として、「シティセールス」がある。牧瀬准教授は「シティプロモーションもシティセールスも和製英語である。そのため海外で使用すると、意味が通じないことが多い。特に、シティセールスは問題である。何が問題かというと、シティセールスは『地方自治体を売る』と解釈されてしまう傾向が強い。」(牧瀬稔「注目を集めるシティプロモーションとシビックプライド」前記牧瀬稔・読売広告社ひとまちみらい研究センター著書第Ⅰ部第1章3頁))としている。
〇 また、シティプロモーションに関連づけられて、「シビックプライド」という言葉が使われることがあるが、「シビックプライド」の言葉の意味や関連する条例等については、「シビックプライドに関する条例」を参照されたい。
【シティプロモーション条例】
〇 シティプロモーションの推進を主眼とした条例としては、次のようなものがある。
三重県四日市市 | 平成28年3月23日公布 | 平成28年4月1日施行 |
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和歌山県有田市 | 平成29年3月24日公布 | 平成29年4月1日施行 |
である。
〇 四日市市条例は、「市民、事業者、行政が一体となって、市の魅力を発信できるよう、観光推進及びシティプロモーションを通じた本市の魅力の創造と発信に努め、都市の持続的な発展に資することを目的に、この条例を制定します」(前文)とし、シティプロモーションを「地域資源に対する市民等の誇りの醸成を基礎として、地域の魅力を創造し、磨き上げ、発信することによって、都市イメージの向上を図る活動」(2条5号)と定義付けている。
そのうえで、基本理念(3条)、市の責務(4条)並びに市民等、事業者及び団体の役割(5条~7条)を定めるとともに、助成措置、情報の発信、地域資源の発掘と魅力の創造、来訪の促進、地場産品の利用等の推進、市民の誇りともてなしの心の醸成及び良好な景観形成及び利便性の向上(8条~15条)に関する市の施策ついて規定している。
〇 有田市条例は、議員提案により、制定された。ほぼ四日市市条例と同様の構成、内容となっている。議会の役割が規定されている(5条)。
【その他の条例】
〇 条例でシティプロモーションを規定した他の条例として、
埼玉県朝霞市 | 平成25年3月29日公布 | 平成25年4月1日施行 |
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埼玉県吉川市 | 産業振興基本条例 |
平成30年3月15日公布 | 平成30年4月1日施行 |
令和4年3月15日公布 | 令和4年4月1日施行 | ||
茨城県小美玉市 | 平成31年3月25日公布 | 平成31年3月25日施行 |
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東京都清瀬市 | 令和5年12月22日公布 | 令和6年3月1日施行 |
などがある。
〇 朝霞市条例は、シティ・プロモーションの推進に関する事業展開等の調査、提言等を行うため、朝霞市シティ・プロモーション委員会を設置するものである。
〇 吉川市の「吉川市における幸福実感向上を目指したまちづくりのための産業振興基本条例」は産業振興施策の基本的方針の一つとして「産業を通したシティプロモーションを行うことにより市民の郷土愛を育むこと」(4条14号)を掲げ、また、「吉川市文化芸術基本条例」は基本理念の一つとして「文化芸術施策の推進に当たっては、文化芸術がコミュニティ、国際交流、子育て支援、高齢・障がい福祉、健康・体力づくり、環境、産業、まちづくり、観光、教育、シティプロモーション等様々な分野に多面的に活用されるよう図られなければならない。」(2条7項)と規定している。
〇 小美玉市条例は、シティプロモーションの指針の策定や施策の推進に関する附属機関として、小美玉市シティプロモーション推進懇談会を設置するものである。
〇 清瀬市条例は、清瀬市のブランド力の向上を図り、市内へ多くの人々を呼び込むシティプロモーションの一環として、市の施設及び市の資産等を活用したロケーション等撮影を円滑に推進し、映像を通じて市の魅力を国内外に発信することによって市内の振興及び活性化に寄与することを目的としている(1条)。
【シティプロモーションに関する部課の設置】
〇 市町村の内部組織として、シティプロモーション部やシティプロモーション課を設置している市町村がある。事務分掌条例等で規定するものとして、次のようなものがある。
シティプロモーション部 | 三重県四日市市(四日市市事務分掌条例1条) 千葉県成田市(成田市行政組織条例2条) |
シティプロモーション課 | 愛知県瀬戸市(瀬戸市事務分掌条例1条) 福岡県宇美町(宇美町課設置条例1条) |
なお、事務分掌規則等で、シティプロモーション課を設置する市町村は少なくない(例えば、(埼玉県)新座市事務分掌規則2条 総合政策部シティプロモーション課)。