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シビックプライドに関する条例

                                                   (令和3年9月9日更新)

【シビックプライドとは】

〇 「シビックプライド」とは、「都市に対する市民の誇り」のことである。しかし、それは、単なるまち自慢や郷土愛ではなく、「ここをよりよい場所にするために自分自身がかかわっている」という、当事者意識に基づく自負心を意味している(牧瀬稔「注目を集める『シビックプライド』の可能性」(日本都市センター・戸田市「住民がつくる『おしゃれなまち』−近郊都市におけるシビックプライドの醸成ー」(令和元年3月)第3章第1節72頁)、伊藤香織「シビックプライドを醸成するまちと市民の接点」(同書第3章第2節89頁))とされる。なお、牧瀬論文及び伊藤論文は、シビックプライドの概念、歴史、自治体の取組、効果、海外の事例等を紹介し、解説している。

〇 シビックプライドという言葉は、19世紀のイギリスの都市で、都市の象徴となる公共建築に関連づけられて使われるようになった(伊藤論文90頁以下)が、わが国では、シティプロモーションに取り組む自治体において、シティプロモーションに関連づけて使われるようになってきた(牧瀬論文73頁以下)とされる。

  他方、シビックプライドとシティプロモーションは、その対象や目的が異なる。シビックプライドは、主として、内側(市内住民)を対象にした働きかけであり、市民が自分のまちに積極的にかかわっていこうとする意識を高めようとするものであり、継続的な「対話コミュニケーション」を手段とするのに対して、シティプロモーションは、主として、外側(市外住民)を対象にした情報発信であり、まちの魅力に対する認知度・理解度を向上させるものであり、一方的な「広報型コミュニケーション」を手段とする(水本宏毅「論考:シティプロモーションとシビックプライド事業の活かし方」(牧瀬稔・読売広告社ひとまちみらい研究センター「シティプロモーションとシビックプライド事業の実践」(東京法令出版 平成31年3月)第U部第1章80頁以下))とされる。なお、シティプロモーションに関する条例については、「シティプロモーションに関する条例」を参照されたい。

 

【相模原市の条例】

〇 相模原市は、「シビックプライド」を高めることを目的とした条例を、令和3年3月に制定した。すなわち、

相模原市さがみはらみんなのシビックプライド条例令和3年3月25日公布

令和3年4月1日施行

 である。

〇 本条例は、「シビックプライド」を「相模原市に対する誇り、愛着及び共感を持ち、まちのために自ら関わっていこうとする気持ち」(2条1号)と定義づけたうえで、「相模原市と関わりのあるみんなのシビックプライドを高めること」(1条)を目的としている。

  「シビックプライド」の定義を、単に「市に対する誇り、愛着及び共感」とするだけでなく、それらを持つことにより「まちのために自ら関わっていこうとする気持ち」とし、市民等の当事者意識が求められることを明確にしている。

  また、対象を、住所を有する市民のみならず、広く「相模原市と関わりのあるみんな」すなわち「相模原市内に居住し、通学し、若しくは通勤する人、相模原市と何らかのつながりがある人又は相模原市に関心のある人」(2条3号)とし、そのうえで「相模原市と関わりのあるみんなの個人の思いを尊重しつつ、相模原市と関わりのあるみんなのシビックプライドを高める取組を行うことを基本的な考え方」(3条)としている。

〇 前文と、目的(1条)、定義(2条)、基本的な考え方(3条)、市長の責務(4条)、市の責務(5条)、市民の役割(6条)、さがみはらファンの役割(7条)、計画(8条)、協力(9条)の9条から構成されている。

  市の責務として、「相模原市と関わりのあるみんなのシビックプライドを高めるための取組を推進」する(5条)ものとし、市民の役割として、「相模原市への関心を持つこと及び魅力の発見に努め」る(6条)ものとしている。

  また、「さがみはらファン」を「相模原市を好きな人」(2条2号)と定義づけたうえで、さがみはらファンの役割として、「自らが思う相模原市の魅力の発信に努め」る(7条)ものとしている。

  市長は、「自ら相模原市の魅力を発信」する(4条)とともに、計画を策定する(8条)としている。

〇 本条例の文体は、ですます調であり、「子ども達を含め、多くの皆様にご覧いただき、親しんでいただけるよう、難しい漢字や表現をできるだけ避け、分かりやすく簡潔な内容及び文体としております。」(相模原市資料「さがみはらみんなのシビックプライド条例(案)の骨子」に関するパブリックコメント手続の実施結果について」参照)としている。

  なお、前文には、隠し文字が埋め込められている(ちゅうおうくらしねっとHP「シビックプライド条例案に込められたもの!」参照)とされる。すなわち、前文1行目の冒頭の「さ」を下にたどれば「さがみ果ラ踏あん」となり、ここには「さがみはらファン」の文字が、同じく前文1行目の最後の「自」を下にたどれば「自びっクプらいド」となり、ここには「シビックプライド」の文字が、それぞれ隠されているとしている。

  工夫が凝らされ、遊び心もみられる条例である。

〇 本条例の内容、制定経緯等については、相模原市HP「さがみはらみんなのシビックプライド条例スタート!!」及び自治体法務研究2021年秋号CLOSEUP先進・ユニーク条例「さがみはらみんなのシビックプライド条例」を参照されたい。

 

【住民が地域の誇りを持ってまちづくりを進めること等を規定する条例】

〇 相模原市条例は「シビックプライド」を高めることを目的とした単独条例であるが、自治基本条例や市民参加条例等において、住民が地域の誇りを持ってまちづくりを進めること等を規定するものは、少なくない。例えば、

奈良県王寺市王寺町まちづくり基本条例令和2年12月16日公布

令和3年4月1日施行

山梨県上野原市上野原市まちづくり基本条例平成29年3月17日公布

平成29年4月1日施行

埼玉県狭山市狭山市協働によるまちづくり条例平成30年12月19日公布

平成31年4月1日施行

高知県土佐清水市土佐清水市みんなでまちづくり条例平成28年3月28日公布

平成28年4月1日施行

神奈川県松田町松田町自治基本条例平成30年3月23日公布

平成30年10月1日施行

三重県四日市市四日市市観光・シティプロモーション条例平成28年3月23日公布

平成28年4月1日施行

愛知県豊田市「WE LOVE とよた」条例平成29年3月22日公布

平成29年4月1日施行

 などである。

  王寺町条例は、前文で「シビックプライド」という言葉を使用している。「すなわち、わたしたちは、将来にわたって、社会潮流が変化する中においても、先人たちが築き上げてきた町を守り、さらに発展させて子どもたちに引き継がなければなりません。」としたうえで、「そのためには、町民一人ひとりがまちを愛し、誇りに思うと同時に、まちづくりの担い手としての自覚と責任を持って主体的に行動する意識『シビックプライド』を育み、協働によるまちづくりを推進する必要があります。」とし、「王寺の人々が町に明るい希望を抱くとともに、いきいきと活躍できるよう、王寺町まちづくり基本条例を制定します。」としている。

  上野原市条例は、市民の責務として「地域を愛し、誇りを持ち、伝統や文化を後世に伝えるよう努めるものとする。」(6条3項)とし、市民が地域に誇りを持つことを努力義務として、規定している。

  狭山市条例は、市民と市は、「地域への愛着と誇りの醸成を図ること」を基本原則として、協働によるまちづくりを推進する(3条3号)とし、市民等が地域の誇りの醸成を図ることを基本原則とすることを、規定している。

  土佐清水市条例は、市民,市議会及び市は、「地域,歴史,文化,産業に誇りを持ち,これらを守り発展させながら将来へ継承していくまち」を実現するよう努める(5条4号)とし、市民等が地域に誇りを持ち,守り発展させることが、めざすまちの姿であると、規定している。

  松田町条例は、前文で「わたしたちは、誰もが安心して安全に暮らすことができ、住んでいて幸せと感じるまち、誇りの持てるまち、おもてなしの心を持ったまちづくりを進めていきます。」とし、誇りの持てるまちづくりを町民が進めていく決意を、表明している。

  四日市市条例は、シティプロモーションを進めるための条例であるが、目的で「市民が地域を誇らしく思う心の醸成を図る」(1条)とし、基本理念としてシティプロモーションを「地域に誇りと愛着を持ち、温かなもてなしを実践することが重要であるという認識の下に推進する」(3条2号)こととしている。

  豊田市条例は、わがまちを愛することを推進するための条例であるが、前文で「私たちは、・・・愛情と誇りを持って行動し、魅力にあふれたまちを次の世代に引き継いでいきたいと願っています。」と規定している。




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