ハラスメントに関する条例

                                                  (令和2年10月7日作成)

【制定状況】

〇 自治体職員のハラスメントの防止等については、通常、自治体の要綱や規程等において定められており、また、議員については、政治倫理条例で規定する政治倫理基準において定めているものがある。しかし、職員や議員のハラスメントの防止等に関して、単独条例を制定している自治体が、ごくわずかであるがある。令和2年9月29日現在、3条例が確認できる。すなわち、

東京都狛江市

狛江市職員のハラスメントの防止等に関する条例

平成30年7月4日公布

平成30年11月1日施行

埼玉県川越市

川越市議会ハラスメント根絶条例

平成31年3月7日公布

平成31年3月7日施行

茨城県牛久市

牛久市職員のハラスメント防止に関する条例

令和元年12月24日公布

令和元年12月24日施行

 である。狛江市条例は市長,副市長、教育長等を含む職員と議員の両方を、川越市条例は議員のみを、牛久市条例は市長、副市長、教育長等を含む職員を、それぞれ対象にしている。3条例とも、議員提案により制定されている。

 

【狛江市の条例】

〇 狛江市条例は、「前市長のセクハラ問題の際、同市の『狛江市職員のハラスメントの防止に関する規則』は市長などの特別職や市議会議員が対象になっていないなどの問題点が明らかになったのを受け」、市議会議員による策定作業が進められ、「条例には対象を特別職に拡大するとともに、第三者委員会の設置や調査結果の公表などを盛り込んだ」(K-press川崎・狛江のインターネット新聞 2018年6 月29日)とされる。市議会における審議での主な質疑・応答については、「こまえ市議会だより No.210 平成30年8月15日号」で紹介されている。

〇 「ハラスメント」を「セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメントその他の職員に対する誹謗、中傷、風評の流布等により人権を侵害し、又は不快にさせる行為」と定義づけた(2条3号)うえで、市長,副市長及び教育長並びに議員は「ハラスメントの事実があると疑われたときは,自ら誠実な態度を持って疑惑の解明に当たるととも、その責任を明確にするよう努めなければならない」(3条4項)とし、職員は市長が定める「職員に対する指針」(5条)に従い、「ハラスメントをしてはならない」(4条3項)としている。市長は、事実関係の公正な調査によりハラスメントの事実が確認された場合は、市長等又は議員については公表を、職員については懲戒処分等を、それぞれ行うことができる(11条1項)としている。

〇 相談窓口の設置(7条)、相談員の選任(8条)及び苦情処理委員会の設置(9条)について規定するとともに、相談・苦情の手続等について定めている(10条)。

 

【川越市の条例】

〇 川越市条例は、「市議による市職員へのハラスメントが問題となったことを受け、議員のハラスメントの防止、根絶を目的に議員から提出され」、「全会一致で可決」され、「ハラスメント防止策として議員への研修の実施を盛り込んだほか、ハラスメントが確認された議員の氏名の公表などを明記した」(時事通信平成31年3月7日配信記事)とされる。条例の提案理由については、「平成31年第1回定例会3月7日本会議会議録」を参照されたい。

〇 「ハラスメント」については、狛江市条例と同一の定義をし(1条)、「議員は、当該議員によるハラスメントがあると疑われたときは、自ら誠実な態度を持って疑惑の解明に当たるとともに、その責任を明確にするよう努めなければならない」(3条3項)としている。議長は、「職員からハラスメントに関する苦情の申出があったときは、・・・速やかに、当該苦情に係る事実関係を把握し」(5条)、「議員によるハラスメントがあったことを確認したときは、当該ハラスメントを行った議員の氏名の公表その他の必要な措置を講じなければならない」(6条1項)としている。

 

【牛久市の条例】

〇 牛久市条例は、平成26年9月に制定された「牛久市役所パワーハラスメント防止条例」が廃止されたうえで、令和元年12月に制定された。「牛久市役所パワーハラスメント防止条例」は、パワーハラスメントを防止することを目的とし、特別職職員を含む職員全員にパワーハラスメントを禁止するとともに、相談窓口の設置、審査委員会の設置等を規定していた。市役所においてパワハラ事例が多いとして、議員提案で制定されたものであった。

  牛久市条例も、議員提案により制定されているが、「本年(平成元年)5月には、女性活躍推進法や労働施策総合推進法などのセクハラ、パワハラ防止対策の強化を目的とする、いわゆる『パワハラ防止法』が成立しました。・・・牛久市には、これまでハラスメントに関して2014年に制定した『牛久市役所パワーハラスメント防止条例』と2013年に制定された『牛久市職員のハラスメント防止に関する要綱』がありました。今回の条例は、これらの条例や要綱との整合性を図るとともに、パワハラ、セクハラだけでなく、近年大きな問題になっているマタニティハラスメント、モラルハラスメントも類型として組み込んでいます。」(条例提案理由 「令和元年第3回定例会12月20日本会議会議録」)としている。

〇 「ハラスメント」を「パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、モラルハラスメント及びその他のハラスメント」と定義づけ(2条1号)、さらに、それぞれのハラスメントの種別ごとに個別に定義規定を置いた(2条2号〜6号)うえで、「職員は、互いの人格を尊重し、他の職員を職務遂行上の対等なパートナーと認め、ハラスメントをしてはならない。」(4条)としている。一般職職員のみならず、市長、副市長、教育長等をも対象にしている(2条8号)。相談窓口の設置(7条)、ハラスメント対策委員会の設置(8条)を規定するとともに、相談等の申出等の手続について定めている(6条)。

 

【人事院規則及び法律の規定】

〇 国家公務員のハラスメント防止に関しては、人事院規則で規定されている。セクシュアル・ハラスメントについては「人事院規則10−10セクシュアル・ハラスメントの防止等」(平成11年4月1日施行)、マタニティ・ハラスメントについては「人事院規則10−15妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等」(平成29年1月1日施行)、パワー・ハラスメントについては「人事院規則10−16パワー・ハラスメントの防止等」(令和2年6月1日施行)が、それぞれ定められている。これらについては、人事院HP「ハラスメント防止について」を参照のこと。

〇 労働者全般に対するハラスメントの防止に関しては、これまで、セクシュアル・ハラスメント及びマタニティ・ハラスメントについては、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」において、「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」(11条1項)及び「事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」(旧11条の2第1項、現11条の3第1項)と規定されていた。

  令和元年6月に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」(令和元年6月5日公布)が制定されたことに伴い、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」が改正され、新たにパワー・ハラスメントに関する規定が設けられた。すなわち、「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」(30条の2第1項)と規定するとともに、相談等を理由とする不利益な取扱いの禁止(30条の2第2項)、国、事業主及び労働者の責務(30条の3)等についても定めている。あわせて、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」も改正され、セクシュアル・ハラスメント及びマタニティ・ハラスメントについても、相談等を理由とする不利益な取扱いの禁止、国、事業主及び労働者の責務等の規定が追加された。これらの規定は、原則として令和2年6月1日施行とされている。以上に関しては、厚生労働省HP「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」を参照のこと。




条例の動きトップに戻る