RILG - 一般財団法人 地方自治研究機構


ハラスメントに関する条例

                                                 (令和3年11月21日更新)

【制定状況】

〇 自治体職員のハラスメントの防止等については、通常、自治体の要綱や規程等において定められており、また、議員については、政治倫理条例で規定する政治倫理基準において定めているものがある。しかし、職員や議員のハラスメントの防止等に関して、単独条例を制定している自治体がある。令和3年11月21日現在、11条例が確認できる。すなわち、

東京都狛江市

狛江市職員のハラスメントの防止等に関する条例

平成30年7月4日公布

平成30年11月1日施行

埼玉県川越市

川越市議会ハラスメント根絶条例

平成31年3月7日公布

平成31年3月7日施行

茨城県牛久市

牛久市職員のハラスメント防止に関する条例

令和元年12月24日公布

令和元年12月24日施行

大阪府忠岡町

忠岡町議会ハラスメント防止条例

令和2年9月11日公布

令和2年9月11日施行

青森県七戸町

七戸町議会ハラスメント防止条例

令和2年12月4日公布

令和2年12月4日施行

埼玉県東松山市

東松山市議会ハラスメント防止条例

令和2年12月24日公布

令和2年12月24日施行

青森県三戸町

三戸町職員のハラスメントの防止等に関する条例

令和3年3月15日公布

令和3年3月15日施行

青森県五戸町

五戸町職員のハラスメントの防止等に関する条例

令和3年3月19日公布

令和3年4月1日施行

東京都世田谷区

世田谷区議会議員による職員に対する

ハラスメントに関する条例

令和3年6月25日公布

令和3年6月25日施行

福岡県中間市

中間市議会ハラスメント根絶条例

令和3年9月27日公布

令和3年9月27日施行

大阪府池田市

池田市の職員及び市議会議員の

ハラスメント防止に関する条例

令和3年9月30日公布

令和3年9月30日施行

 である。

  狛江市、五戸市及び池田市の条例は特別職を含む職員と議員の両方を、川越市、忠岡町、七戸町、東松山市、世田谷区及び中間市の条例は議員のみを、牛久市条例は特別職を含む職員を、三戸町条例は一般職職員等をそれぞれ対象にしている。三戸町及び五戸町の条例は町長提案により制定されているが、他の9条例は議員提案により制定されている。

 

【狛江市の条例】

〇 狛江市条例は、「前市長のセクハラ問題の際、同市の『狛江市職員のハラスメントの防止に関する規則』は市長などの特別職や市議会議員が対象になっていないなどの問題点が明らかになったのを受け」、市議会議員による策定作業が進められ、「条例には対象を特別職に拡大するとともに、第三者委員会の設置や調査結果の公表などを盛り込んだ」(K-Press川崎・狛江のインターネット新聞 2018年6月29日)とされる。市議会における審議での主な質疑・応答については、「こまえ市議会だより No.210 平成30年8月15日号」で紹介されている。

〇 「ハラスメント」を「セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメントその他の職員に対する誹謗、中傷、風評の流布等により人権を侵害し、又は不快にさせる行為」と定義づけた(2条3号)うえで、市長,副市長及び教育長並びに議員は「ハラスメントの事実があると疑われたときは,自ら誠実な態度を持って疑惑の解明に当たるととも、その責任を明確にするよう努めなければならない」(3条4項)とし、職員は市長が定める「職員に対する指針」(5条)に従い、「ハラスメントをしてはならない」(4条3項)としている。市長は、事実関係の公正な調査によりハラスメントの事実が確認された場合は、市長等又は議員については公表を、職員については懲戒処分等を、それぞれ行うことができる(11条1項)としている。

〇 相談窓口の設置(7条)、相談員の選任(8条)及び苦情処理委員会の設置(9条)について規定するとともに、相談・苦情の手続(10条)等について定めている。

 

【川越市の条例】

〇 川越市条例は、「市議による市職員へのハラスメントが問題となったことを受け、議員のハラスメントの防止、根絶を目的に議員から提出され」、「全会一致で可決」され、「ハラスメント防止策として議員への研修の実施を盛り込んだほか、ハラスメントが確認された議員の氏名の公表などを明記した」(時事通信平成31年3月7日配信記事)とされる。条例の提案理由については、「平成31年第1回定例会3月7日本会議会議録」を参照されたい。

〇 「ハラスメント」については、狛江市条例と同一の定義をし(1条)、「議員は、当該議員によるハラスメントがあると疑われたときは、自ら誠実な態度を持って疑惑の解明に当たるとともに、その責任を明確にするよう努めなければならない」(3条3項)としている。議長は、「職員からハラスメントに関する苦情の申出があったときは、・・・速やかに、当該苦情に係る事実関係を把握し」(5条)、「議員によるハラスメントがあったことを確認したときは、当該ハラスメントを行った議員の氏名の公表その他の必要な措置を講じなければならない」(6条1項)としている。

 

【牛久市の条例】

〇 牛久市条例は、平成26年9月に制定された「牛久市役所パワーハラスメント防止条例」が廃止されたうえで、令和元年12月に制定された。「牛久市役所パワーハラスメント防止条例」は、パワーハラスメントを防止することを目的とし、特別職職員を含む職員全員にパワーハラスメントを禁止するとともに、相談窓口の設置、審査委員会の設置等を規定していた。市役所においてパワハラ事例が多いとして、議員提案で制定されたものであった。

〇 牛久市条例も、議員提案により制定されているが、「本年(平成元年)5月には、女性活躍推進法や労働施策総合推進法などのセクハラ、パワハラ防止対策の強化を目的とする、いわゆる『パワハラ防止法』が成立しました。・・・牛久市には、これまでハラスメントに関して2014年に制定した『牛久市役所パワーハラスメント防止条例』と2013年に制定された『牛久市職員のハラスメント防止に関する要綱』がありました。今回の条例は、これらの条例や要綱との整合性を図るとともに、パワハラ、セクハラだけでなく、近年大きな問題になっているマタニティハラスメント、モラルハラスメントも類型として組み込んでいます。」(条例提案理由 「令和元年第3回定例会12月20日本会議会議録」)としている。

〇 「ハラスメント」を「パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、モラルハラスメント及びその他のハラスメント」と定義づけ(2条1号)、さらに、それぞれのハラスメントの種別ごとに個別に定義規定を置いた(2条2号〜6号)うえで、「職員は、互いの人格を尊重し、他の職員を職務遂行上の対等なパートナーと認め、ハラスメントをしてはならない。」(4条)としている。一般職職員のみならず、市長、副市長、教育長等をも対象にしている(2条8号)。相談窓口の設置(7条)、ハラスメント対策委員会の設置(8条)を規定するとともに、相談等の申出等の手続について定めている(6条)。

 

【忠岡町の条例】

〇 忠岡町条例は、川越市条例とほぼ同様の内容を規定しているが、対応措置(6条)において、議長は、議員によるハラスメントがあったことを確認したときは、当該ハラスメントを行った議員の氏名の公表その他の必要な措置のほか、「申し出た職員の被害回復においても必要な措置を講じなければならない。」としている。

 

【七戸町の条例】

〇 七戸町条例も、川越市条例とほぼ同様の内容を規定しているが、「議会は、町長から議員によるハラスメントがあったことを報告されたときは、総務企画常任委員会から意見を聴き、当該ハラスメントを行った議員の氏名の公表その他の必要な措置を講じなければならない。」(6条2項)としている。職員に対しては、七戸町職員のハラスメントの防止等に関する規則(令和2年10月1日公布・規則)が制定されている。

 

【東松山市の条例】

〇 東松山市条例は、令和2年12月に制定されたが、併せて、東松山市議会基本条例及び東松山市議会議員政治倫理条例も改正されている。

〇 「ハラスメント」を「@言葉、行為等により、相手を傷つけ、苦痛を与える行為、不快にさせる行為又は不利益を与える行為、A社会的若しくは性的差別により、相手に精神的又は身体的な苦痛を与える行為、B職務上の地位、役職等の優位性を背景に、適正な職権の範囲を超えて、相手に精神的又は身体的な苦痛を与える行為、C性的指向、性自認等の望まない情報の暴露により、プライバシーを侵害し、相手を傷つける行為」(2条)と定義づけ、「議員は、当該議員によるハラスメントがあると疑われたときは、自ら誠実な態度を持って疑惑の解明に当たるとともに、その責任を明確にするよう努めなければならない。」(3条2項)としたうえで、議長は、「議員によるハラスメントの相談及び申立てがあった場合には、迅速かつ適切に必要な措置を講じなければならない」とし、「相当の理由があると認めるときは、事実関係の調査及び確認」を行い、各会派の代表からなるハラスメント審査会の調査結果を尊重して「ハラスメントが確認された場合は、ハラスメントを行った議員に対して指導、助言、注意その他必要な措置を講じる」ものとしている(4条)。

 

【三戸町の条例】

〇 三戸町条例は、職員の職場におけるハラスメントの防止を目的としている。

〇 ハラスメントを「セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメント、モラル・ハラスメント、妊娠・出産・育児又は介護に関するハラスメント及びその他の人権侵害」(2条2号)と定義づけたうえで、「職員は勤務時間の内外を問わず、ハラスメントをしてはならないものであるとともに、この条例の趣旨に従いハラスメントの防止等に努めなければならない。」(4条1項)としている。ハラスメント相談窓口(6条)及びハラスメント対策委員会(7条)を設置し、ハラスメントを受けた職員等の相談及び苦情等の対応、事実関係の調査、事案の処理等を行うこととし、「町長は、ハラスメントの態様等に応じ、ハラスメントを行った職員に対しては、懲戒処分その他の必要な措置を講ずるものとする。」(10条)としている。

 

【五戸町の条例】

〇 五戸町条例は、狛江市条例とほぼ同様の内容を規定しているが、相談窓口の設置(7条)、相談員の選任(8条)、苦情処理委員会の設置(9条)等についても規定している。

 

【世田谷区の条例】

〇 世田谷区条例は、川越市、忠岡町、七戸町及び東松山市の条例と同様に、議員による職員に対するハラスメントを防止することを目的としているが、条例名を「議員による職員に対するハラスメントに関する条例」とし、また前文では「議員の地位による影響力を不正に利用したハラスメント行為は断じて許されるものではない。議員と職員という特殊な人間関係を背景としたハラスメントは顕在化しにくい上に、不当に職員の尊厳を傷つけ、最悪の場合、回復不能な肉体的・精神的な被害をもたらし、ひいては人材の喪失、行政の停滞を招くことになり、さらには議員への区民の信頼を裏切ることにもなりかねない。」と記述するなど、その趣旨を明確にしている。

〇 ハラスメントについての定義規定は特に置いていない。「議員は、職員に対するハラスメントが個人の尊厳を不当に傷つけ、労働意欲を低下させることを自覚し、職員の人格を尊重して活動しなければならない。」(2条1項)とし、「議会は、区長から職員に対するハラスメントに関する事案の報告があったときは、必要な措置を講ずるものとする。」(5条)としている。

 

【中間市の条例】

〇 中間市条例も、議員による職員に対するハラスメントを防止することを目的としている。

〇 議員の責務として「議員は、市民の代表者として、権能及び責務を自覚するとともに、常に高い倫理意識を持ち、ハラスメントが個人の尊厳を不当に傷つけ、人権侵害に当たること及び職員の労働意欲を低下させることを自覚認識し、議員間又は職員の人格を尊重してハラスメントの防止根絶に努めなければならない。」(3条1項)等を規定している。

 

【池田市の条例】

〇 池田市条例は、市長等の特別職を含む職員と市議会議員の両方を対象にしている。

〇 「職員又は市議会議員から他の職員又は市議会議員へのハラスメントを防止することにより、職員及び市議会議員が個人としての尊厳を尊重され、良好な職員の職場環境及び市議会議員が活動できる環境を確立すること」(1条)を目的とし、職員及び市議会議員の責務として「職員及び市議会議員は、他の職員及び市議会議員を職務遂行上の対等なパートナーとして互いの人権を尊重し、他の職員及び市議会議員に対しハラスメントをしてはならない。」(3条1項)等を規定している。

 

【人事院規則及び法律の規定】

〇 国家公務員のハラスメント防止に関しては、人事院規則で規定されている。セクシュアル・ハラスメントについては「人事院規則10−10セクシュアル・ハラスメントの防止等」(平成11年4月1日施行)、マタニティ・ハラスメントについては「人事院規則10−15妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等」(平成29年1月1日施行)、パワー・ハラスメントについては「人事院規則10−16パワー・ハラスメントの防止等」(令和2年6月1日施行)が、それぞれ定められている。これらについては、人事院HP「ハラスメント防止について」を参照のこと。

〇 労働者全般に対するハラスメントの防止に関しては、これまで、セクシュアル・ハラスメント及びマタニティ・ハラスメントについては、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」において、「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」(11条1項)及び「事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」(旧11条の2第1項、現11条の3第1項)と規定されていた。

  令和元年6月に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」(令和元年6月5日公布)が制定されたことに伴い、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」が改正され、新たにパワー・ハラスメントに関する規定が設けられた。すなわち、「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」(30条の2第1項)と規定するとともに、相談等を理由とする不利益な取扱いの禁止(30条の2第2項)、国、事業主及び労働者の責務(30条の3)等についても定めている。あわせて、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」も改正され、セクシュアル・ハラスメント及びマタニティ・ハラスメントについても、相談等を理由とする不利益な取扱いの禁止、国、事業主及び労働者の責務等の規定が追加された。これらの規定は、原則として令和2年6月1日施行とされている。以上に関しては、厚生労働省HP「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」を参照のこと。




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