ハロウィーンに関連する条例

(令和6年10月9日更新)

【ハロウィーンと条例】

〇 秋に入ると、街角や店先でハロウィーンの飾りが見られ、また、10月31日のハロウィーン当日前後になると、仮装イベントなども各地で開催される。日本でも、ハロウィーンは、欧米に起源をもつクリスマスやバレンタインデーなどと同様に、季節を彩る行事の一つとして定着してきた。

〇 こうしたハロウィーン行事に関連して、条例が制定され、又は改正される事案が見られる。3事例であるが紹介する。なお、クリスマスやバレンタインデーなどの行事に関連して条例が制定されたなどの事例は、調べた範囲では確認できない。

 

【東京都渋谷区の条例】

(当初条例)

〇 まず、渋谷区の事案である。平成元年6月に、

東京都渋谷区

渋谷駅周辺地域の安全で安心な環境の確保に関する条例

令和元年6月20日公布

令和元年6月20日施行

が制定された。

〇 「渋谷区では、ハロウィーンや年末カウントダウンなどの特定の期間において、一部の来街者による迷惑行為などにより、渋谷駅周辺地域の安全で快適な秩序が脅かされる事態が発生していたことから、令和元年6月に本条例を制定しました。」(渋谷区HP「渋谷駅周辺地域の安全で安心な環境の確保に関する条例」)としている。

〇 条例制定に先立ち、渋谷区は「渋谷ハロウィーン対策検討会」を設置して対策のあり方を検討したが、令和元年5月15日に取りまとめられた中間報告では、「近年、不特定多数の来訪者が集まり、器物破損や暴行、ゴミの大量放置などの問題が繰り返されてきたハロウィーン期間中の一連の問題に対し、特定のイベントなどは無く自然発生的に生じた結果であることや渋谷を訪れる人自体を拒否することはできないなどの理由から、既存の対策で問題を解決することは困難とし、解決策の一部として、必要なルールを定め規制措置を取るための条例制定を検討すべきとした。」(シブヤ経済新聞令和元年9月15日記事)とされる。

〇 渋谷駅周辺地域のうち渋谷区の規則で定める区域内の公共の場所で、ハロウィーンの期間(10月31日及び11月1日並びに10月24日から同月30日までの金曜日、土曜日及び日曜日)、年末のカウントダウンの期間(12月31日及び1月1日)及びその他区長が特に必要と認める期間に、飲酒を禁止している(6条)。区長は、この規定に違反した者に対して、中止するよう指導することができる(8条)としている。罰則規定は置いていない。事業者に対しては、区が実施する酒類の販売自粛等の施策に協力しなければならない(4条)としている。

 あわせて、渋谷駅周辺地域の公共の場所において、正当な理由なく、音響機器等により音を異常に大きく出す行為、放尿等をする行為、街路灯、標識、屋根等に上る行為などの迷惑行為も禁止している(7条)が、6条で定める飲酒の禁止と異なり、対象期間を限定せず、通年適用される。区長による指導の規定も置いていない。

(改正条例)

〇 本条例は、令和6年6月に本条例は改正され、同年10月から、路上飲酒禁止期間がハロウィーン等の期間に限定されず、通年化された。

東京都渋谷区

渋谷駅周辺地域の安全で安心な環境の確保に関する条例

(改正後)

令和6年6月18日改正公布

令和6年10月1日改正施行

 すなわち、令和元年6月の条例制定後も「迷惑路上飲酒は常態化し、これに起因するごみの放置や騒音などのトラブルは深刻化しています。そこで、本条例を改正し、令和6年10月1日より午後6時から翌朝5時の間、路上や公園など公共の場所における飲酒を通年で禁止し、また禁止エリアも拡大することとしました。これによってさらに区民、事業者および来街者の安全・安心を確保し、渋谷区が成熟した国際都市へと進化していくことを目指します。」(渋谷区HP「渋谷駅周辺地域の安全で安心な環境の確保に関する条例」) としたのである。

〇 路上飲酒期間(6条)を、改正前は「10月31日及び11月1日並びに10月24日から同月30日までの金曜日、土曜日及び日曜日」、「12月31日及び1月1日」及びその他「区長が特に必要と認める期間」に限定していたが、「何人も、渋谷駅周辺地域のうち、区規則で定める区域内の公共の場所(道路、公園、広場その他公共性を有する場所をいう。以下同じ。)において、区規則で定める時間帯に飲酒をしてはならない。」とし、通年とした。

 併せて、「渋谷区周辺地域」(2条1号)を、改正前は「渋谷一丁目、渋谷二丁目、渋谷三丁目、桜丘町、道玄坂一丁目、道玄坂二丁目、宇田川町、神南一丁目及び神宮前六丁目の区域」としていたが、新たに「円山町」を加えるとともに、区長の指導の対象(8条)は、路上飲酒行為(6条)に限定していたが、「音響機器等により音を異常に大きく出す行為」、「放尿等をする行為」、「街路灯、標識、屋根等に上る行為」等(7条)にも拡大した。

 

【東京都新宿区の条例】

〇 次に、新宿区の事案である。平成6年6月に、

東京都新宿区

新宿駅周辺地域の安全で秩序ある環境の確保に関する条例

令和6年6月21日公布

令和6年6月21日施行

が制定された。

〇 「国内外からの観光客など来街者が増加する中で、ハロウィン時期等において、歌舞伎町周辺に大勢の来街者が集まり、大きな混乱はないものの、ごみが至るところに散乱するなどの事態を招きました。今後もハロウィン時期等の来街者の増加が予想されることから、路上飲酒の制限、迷惑行為の禁止、事故等の防止に向けた対応が必要になると考え、新宿駅周辺地域の安全で秩序ある環境の確保に関する条例を制定する運びとなりました。」(新宿区HP「新宿駅周辺地域の安全で秩序ある環境の確保に関する条例が制定されました」)としている。

〇 本条例は、新宿駅周辺地域(東京都新宿区新宿三丁目及び歌舞伎町一丁目の区域)のうち新宿区規則で定める区域内で、ハロウィーンの期間(10月31日及び11月1日)及びその他区長が特に必要と認める期間に、路上飲酒(道路、公園、広場その他公共の場所における飲酒)を禁止している(2条1号、2号、6条)。区長は、この規定に違反した者に対して、中止するよう指導することができる(7条)としている。罰則規定は置いていない。事業者に対しては、区が実施する酒類の販売の自粛等の施策に協力しなければならない(5条)としている。

 あわせて、新宿駅周辺地域の公共の場所において、迷惑行為(火気を使用する行為、街路灯、建造物等に上る行為、音響機器等により騒音を派生させる行為等)も禁止している(2条3号、7条)が、6条で定める飲酒の禁止と異なり、対象期間を限定せず、通年適用される。区長による指導の規定も置いていない。

 なお、ハロウィン時期における具体的な対策については、新宿区資料「新宿駅周辺地域の安全で秩序ある環境の確保に関する条例」を参照されたい。

 

【兵庫県の条例】

〇 兵庫県の事案である。兵庫県は、令和2年10月、ハロウィーンの日に暴力団が子どもたちをその事務所に招くこと等を禁止することを目的として、

兵庫県

暴力団排除条例

平成22年10月7日公布

令和2年10月6日改正公布

平成23年4月1日施行

令和2年10月26日改正施行

を改正した。

〇 新20条から新23条及び新35条2項を新たに追加し、あわせて所要の改正を行っている(暴力団排除条例の一部を改正する条例(令和2年兵庫県条例35号)参照)。

〇 「国内最大の暴力団・山口組が長年、ハロウィーンの日に子どもたちを神戸市の総本部に招き入れている事態に歯止めをかけようと、兵庫県で組事務所に正当な理由なく子どもたちを立ち入らせることなどを禁じる改正暴力団排除条例が成立しました。国内最大の指定暴力団・山口組は長年、10月のハロウィーンの日にあわせ、神戸市灘区にある総本部に子どもたちを招き入れ、仮装した組員が菓子を配っていました。子どもたちと組員との関わりに歯止めをかけようと、兵庫県警察本部は暴力団排除条例の改正案を議会に提出しました。・・・改正暴力団排除条例は5日の県議会で全会一致で可決・成立し、31日のハロウィーンの日の前の今月26日から施行されます。」(NHK NewsWeb令和2年10月5日)とされる。

〇 暴力団員は、正当な理由がなく、暴力団事務所等に青少年を立ち入らせてはならない(21条1項)、青少年に対し、金品その他の財産上の利益の供与をしてはならない(21条2項)、青少年を暴力団の支配下に置く目的で、面会の要求、電話、電子メールの送信、つきまとい、待ち伏せし、住居等の付近における見張り、住居等への押し掛け、住居等の付近のうろつき等の行為をしてはならない(21条3項)としている。

 また、公安委員会は、暴力団員がこれらの行為に違反していると認めるときは、暴力団員等に対し、中止の命令等を行うことができ(改正後条例22条)、命令に違反したした者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する(35条)としている。

〇 なお、暴力団排除条例については「暴力団排除条例」を参照されたい。



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