暴力団排除条例

(令和4年9月19日更新)

【暴力団排除条例とは】

〇 暴力団排除条例とは、暴力団を自治体の事務・事業や住民・事業者の経済取引や事業活動から排除することについて、その基本理念、自治体・住民・事業者の責務・役割等を定めるとともに、暴力団排除の措置等について規定する条例である。都道府県では47のすべての都道府県、市区町村では46都道府県内の全市区町村で制定されている(警察庁組織犯罪対策部「令和3年における組織犯罪の情勢」(令和4年3月)31頁)。暴力団排除の措置に関する規定としては、都道府県の条例では、都道府県の事務・事業からの暴力団排除の措置、青少年の暴力団からの保護措置、事業者の暴力団員等に対する利益供与の禁止、不動産の譲渡等をしようとする者の講ずべき措置等が定められ、市区町村の条例では市区町村の事務・事業からの暴力団排除の措置等が定められている。

 なお、都道府県や市区町村は、暴力団排除に関して総合的な内容を有する暴力団排除条例とは別に、公営住宅条例や個別の公の施設の設置・運営条例において暴力団排除の規定を置いている。また、一部の都道府県や市町村では、「公共施設の暴力団排除に関する条例」や「暴力団の利益となる公の施設の使用等の制限に関する条例」等の名称の公共施設等における暴力団排除を包括的に規定する条例を制定している。

〇 「暴力団」とは、法令上「その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体」(「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(以下「暴力団対策法」という。)2条2号)と定義づけられている。

〇 暴力団対策法は、平成3年制定され、暴力団を反社会的な団体として法的に位置づけ、暴力団員が国民に対して不当な要求行為等を行うことを禁止している。暴力団対策法等により、警察は暴力団の犯罪行為に対する取締りを実施してきている。

 しかし、暴力団対策法制定後も、暴力団は様々な経済取引に介入して多額の資金を獲得し、その勢力を維持してきているとされ、警察による暴力団に対する取締りとともに、社会が一体となって暴力団を排除する活動を行うことが不可欠であるとされている。そのため、「暴力団を利用しない、暴力団を恐れない、暴力団に金を出さない」等のスローガンのもと、暴力追放運動推進センター等により暴力団排除のための運動が展開され、また、平成19年には、企業に対して「反社会的勢力とは、取引関係を含めて、一切の関係をもたない。」。「反社会的勢力による不当要求は拒絶する。」、「反社会的勢力への資金提供は、絶対に行わない。」等の対応を求める内容の「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)が取りまとめられた。

〇 こうしたことを背景にして、制定されたのが暴力団排除条例である。「それまでの対策は、暴力団を専ら対象とし、事業者は暴力団の支配が及んでいたり、暴力団と密接な関係にある場合に限って問題視してきた。暴力団の側にない一般の事業者を、被害者としてではなく、規制の対象とするのは、暴力団対策における新たな枠組みである。」(田村正博「暴力団排除条例と今後の組織犯罪法制」(産大法学48巻1・2号 平成27年1月)97頁)とされ、「警察対暴力団という構図から、社会対暴力団という構図に変えたもの」(後藤啓二「企業・自治体・警察関係者のための暴力団排除条例入門」(東洋経済新報社 平成24年5月)43頁)とされる。

〇 暴力団対策の取組み等については、警察庁HP「暴力団対策」を参照されたい。

 

【都道府県の条例】

〇 まず、都道府県の暴力団排除条例について、概観する。

 

(制定状況)

〇 都道府県の暴力団排除条例の制定状況は、以下のとおりである。制定年月は公布日を基準としている。

平成21年 6月

佐賀県暴力団事務所等の開設の防止に関する条例(平成23年10月 佐賀県暴力団排除条例に全部改正)

平成21年10月

福岡県暴力団排除条例

平成21年12月

長崎県暴力団事務所等の排除に関する条例(平成23年12月 長崎県暴力団排除条例に全部改正)
鹿児島県暴力団排除活動の推進に関する条例(平成26年3月 鹿児島県暴力団排除条例に全部改正)

平成22年 3月

愛媛県暴力団排除条例

平成22年 7月

京都府暴力団排除条例

平成22年 9月

大分県暴力団排除条例 茨城県暴力団排除条例

平成22年10月

(兵庫県)暴力団排除条例 愛知県暴力団排除条例 山梨県暴力団排除条例 栃木県暴力団排除条例
三重県暴力団排除条例 高知県暴力団排除条例 群馬県暴力団排除条例 徳島県暴力団排除条例

平成22年11月

大阪府暴力団排除条例

平成22年12月

北海道暴力団の排除の推進に関する条例 岐阜県暴力団排除条例 岡山県暴力団排除条例
山口県暴力団排除条例 熊本県暴力団排除条例 (宮城県)暴力団排除条例 福井県暴力団排除条例
島根県暴力団排除条例 広島県暴力団排除条例 神奈川県暴力団排除条例

平成23年 3月

秋田県暴力団排除条例 岩手県暴力団排除条例 和歌山県暴力団排除条例 長野県暴力団排除条例
福島県暴力団排除条例 千葉県暴力団排除条例 埼玉県暴力団排除条例 東京都暴力団排除条例
静岡県暴力団排除条例 富山県暴力団排除条例 石川県暴力団排除条例 奈良県暴力団排除条例
鳥取県暴力団排除条例 香川県暴力団排除推進条例 山形県暴力団排除条例
滋賀県暴力団排除条例 宮崎県暴力団排除条例 青森県暴力団排除条例 新潟県暴力団排除条例

平成23年 7月

沖縄県暴力団排除条例

〇 平成21年6月に佐賀県が「佐賀県暴力団事務所等の開設の防止に関する条例」を制定し、同年10月には福岡県が「福岡県暴力団排除条例」を制定した。佐賀県条例は、不動産所有者に対し不動産取引に際して暴力団事務所に利用されることを防止する責務を課すことを内容としているのに対して、福岡県条例は、事業者の暴力団員等に対する利益供与の禁止を含む、暴力団排除に関して総合的な内容を有するものである。

 平成21年12月には長崎県と鹿児島県が佐賀県条例と同様の条例を制定したが、平成22年3月以降、全国の都道府県で、福岡県条例を参考にして総合的な内容を有する暴力団排除条例が制定されていった。

 佐賀県、長崎県、鹿児島県の条例を含めると、2年程度の期間で47のすべての都道府県が一気呵成に暴力団排除条例を制定したこととなる。これら47都道府県の条例を施行日で見ると、施行日が最も遅いのは、「東京都暴力団排除条例」と「沖縄県暴力団排除条例」であり、平成23年10月1日である。

 なお、佐賀県、長崎県、鹿児島県の条例は、それぞれ平成23年10月、平成23年12月、平成26年3月に全部改正され、総合的な内容を有する暴力団排除条例となっている。

〇 令和3年10月1日は、暴力団排除条例が47のすべての都道府県で施行されるようになって10年目に当たることとなる。このことに関して、いくつかの新聞は関連記事を掲載している。

 例えば、朝日新聞(ネット版 令和3年10月1日)は、「『早くやめておけば』あえぐ組員、強まる排除 『暴排』条例の10年」の見出しで、「社会と暴力団との関係を断つことをめざす暴力団排除(暴排)条例が47都道府県にそろって10月で10年になる。暴力団への包囲網は確実に強まり、組員・準構成員はこの10年で3分の1に減った。ただ、暴力団の活動が止まったわけではなく、組を離れた人たちの受け皿作りも課題だ。」などとしている。

 また、産経新聞(ネット版 令和3年11月8日)は、「シノギ獲得『脅し』から『だまし』に 暴排条例10年」との見出しで、「暴力団組員への利益供与などを規制する『暴力団排除条例(暴排条例)』が47都道府県にそろってから、今年で10年となった。施行後は暴力団排除に向けた機運が高まり、確認される暴力団構成員数は着実に減少した。一方で、近年は『シノギ』と呼ばれる資金源の獲得方法に変化が生じて活動実態が見えづらくなっているといい、『規制のあり方を見直す必要がある』との声も上がる。」などとしている。

〇 宮城県は、平成22年12月制定の「暴力団排除条例」とは別に、平成21年12月に「暴力団の利益となる公の施設の使用等の制限に関する条例」を制定している。

 

(条例の内容)

〇 主な共通的事項

 ほとんどの都道府県条例で規定されている共通的事項は、以下のとおりである。

ア 総則

a 基本理念

b 都道府県・住民・事業者の責務(役割)

イ 基本的施策

a 都道府県の事務・事業からの暴力団排除の措置

b 暴力団から危害を加えられるおそれがある者に対する警察による保護措置

ウ 青少年の暴力団からの保護措置

a 学校等の周辺200m以内の区域における暴力団事務所の開設・運営の禁止

b 青少年に対する暴力団排除教育の実施

エ 事業者の暴力団員等に対する利益供与の禁止等

a 事業者が暴力団員等に対して利益供与を行うことを禁止

b 事業者が暴力団の威力を利用することを禁止

c 事業者に対して契約時に相手方が暴力団員等でないことを確認するよう努力義務

d 事業者に対して契約書等に暴力団排除条項を盛り込むよう努力義務

オ 不動産の譲渡等をしようとする者の講ずべき措置等

a 不動産が暴力団事務所に利用されることを知って取引することを禁止

b 不動産が暴力団事務所に利用されることを知って取引の代理人となることを禁止

カ 違反者に対する措置

a 公安委員会による説明又は資料の要求

b 公安委員会による勧告、公表(エab及びオabの違反行為)

c 罰則(ウaの違反行為)

〇 条例によっては規定されている事項

  都道府県によっては、上記の共通的事項のほか、それぞれの暴力団情勢等に応じた規定を置いている。例えば、以下のようなものがある。

ⅰ 暴力団排除特別強化地域を設定し、風俗営業等の特定接客業者が暴力団員を用心棒にし又は暴力団員にみかじめ料や用心棒代を供与することを禁止

ⅱ 暴力団員が青少年を暴力団員事務所に立ち入らせることを禁止

ⅲ 祭礼等において、行事主催者等が暴力団を利用し又は暴力団員を関与させることを禁止

ⅳ 旅館等の特定事業者に対して、約款等に暴力団排除条項を盛り込むよう努力義務

ⅴ 暴力団員が他人の名義を利用することを禁止

ⅵ 暴力団排除活動を妨害する行為を禁止

ⅶ 住居地域、商業地域等の区域における暴力団事務所の開設・運営の禁止

〇 共通的事項についても、その細部は各条例によって異なる。エの規定に関して、各都道府県条例の規定を比較したものとしては、渡邉雅之「暴力団排除条例の利益供与の禁止の基準―各都道府県の利益供与の禁止規定・勧告事例の検討―」(金融法務事情1947号(平成24年6月)6頁以下)及び渡邉雅之「各都道府県の暴力団排除条例における事業者に対する措置の比較」(金融法務事情1966号(平成25年3月)52頁以下)がある。

 また、重成浩司「暴力団排除条例の概要及びその適用事例について 」(危機管理研究会編「実戦!社会vs暴力団~暴対法20年の軌跡」(金融財政事情研究会 平成25年3月))は、条例によっては規定されている事項を「暴力団排除に関する条例の特徴的な規定」として整理しており(195頁~197頁)、鈴木秀洋「社会的弱者にしない自治体法務」(第一法規 令和3年3月 なお、初出は鈴木秀洋「暴力団排除条例制定上の課題と展望(1・2完)―警察との連携のあり方を含めて」(自治研究88巻2・3号(平成24年2・3月))は都道府県条例ごとの独自規定を例示している(498頁)。

 

(条例の具体例)

〇 いくつかの条例について、その改正内容も含めて紹介する。

福岡県

福岡県暴力団排除条例

平成21年10月19日公布

平成22年4月1日施行

宮城県

暴力団排除条例

平成22年12月24日公布

平成23年4月1日施行

秋田県

秋田県暴力団排除条例

平成23年3月14日公布

平成23年3月14日施行

東京都

東京都暴力団排除条例

平成23年3月18日公布

平成23年10月1日施行

神奈川県

神奈川県暴力団排除条例

平成22年12月28日公布

平成23年4月1日施行

兵庫県

暴力団排除条例

平成22年10月7日公布

平成23年4月1日施行

大阪府

大阪府暴力団排除条例

平成22年11月4日公布

平成23年4月1日施行

〇 福岡県条例は、総合的な内容を有する暴力団排除条例としては、平成21年10月に全国で最初に制定された。概ね上記の「主な共通的事項」の内容が盛り込まれており、その後に続く他の都道府県の暴力団排除条例のモデルとなっている。なお、本条例制定当時の内容、制定経緯等については、田村正博「福岡県暴力団排除条例の意義と今後の課題」(早稲田大学社会安全政策研究所紀要3号(平成23年3月)27頁以下)を参照されたい。

 本条例は、当初制定の後、幾度かの改正がなされ、その都度新たな内容が追加されている。平成23年10月の改正では①青少年の健全な育成を阻害する行為が行われた暴力団事務所の使用を制限、②暴力団等から不当な要求を受けた建設工事関係者の県に対する通報義務、③事業者間の書面による契約に暴力団排除条項を盛込むことの努力義務、④暴力団排除特別強化地域内の「暴力団員立入禁止標章」が掲示された特定接客業店への暴力団員の立入を禁止する規定等が、平成25年3月の改正では暴力団員が縄張の設定・維持目的で暴力団排除特別強化地域に営業所を置く特定接客業者、建設工事関係者等に対して事業所・居宅への立入り、架電、ファックス・メールの送信、面会等の要求、つきまとい等を行うことを禁止する規定が、平成28年3月改正では①暴力団からの離脱を促進するための措置、②自己申告した場合の公安委員会による勧告の適用除外等に関する規定が、令和3年10月改正では住居地域、商業地域等の区域における暴力団事務所の開設・運営を禁止する規定が、それぞれ追加されている。また、令和4年3月改正では公益通報者保護法の改正を踏まえ、暴力団排除通報をした者に対する不利益な取扱いの禁止について見直しがなされている。

 福岡県の暴力団対策、条例改正の内容等については、福岡県警察HP「暴力団の壊滅」を参照されたい。

〇 宮城県条例及び秋田県条例は、概ね上記の「主な共通的事項」の内容が規定されている。但し、宮城県条例はウaは規定されておらず、秋田県条例はエcdは規定されていない。上記の通り、宮城県は、別途「暴力団の利益となる公の施設の使用等の制限に関する条例」を制定している。

〇 東京都条例は、沖縄県条例と並んで、47都道府県の条例では最後に施行された。制定当初から、上記の「主な共通的事項」の内容のほか、①暴力団員が青少年を暴力団員事務所に立ち入らせることを禁止、②祭礼等において、行事主催者等が暴力団を利用し又は暴力団員を関与させることを禁止、③暴力団員が他人の名義を利用することを禁止、④暴力団排除活動を妨害する行為を禁止、③自己申告した場合の公安委員会による勧告の適用除外等の規定が置かれていた。

 平成元年6月改正により、暴力団排除特別強化地域を設定し、同地域において風俗営業等の特定接客業者が暴力団員を用心棒にし又は暴力団員にみかじめ料や用心棒代を供与することを禁止する規定を追加している。

 東京都条例の内容等については、警視庁HP「東京都暴力団排除条例」を参照されたい。

〇 神奈川県、兵庫県、大阪府の条例についても、これまで数次にわたり条例改正が行われてきているが、最近の条例改正については、神奈川県条例では、平成30年3月改正により①住居系用途地域における暴力団事務所の開設・運営を禁止、②暴力団員が少年に対し面会の要求、ファックス・メールの送信、つきまとい、金銭・物品の供与等を行うことを禁止、③暴力団員が他人の名義を利用することを禁止、④暴力団からの離脱を促進するための措置等の規定が、令和4年7月改正により暴力団排除特別強化地域を設定し、同地域における風俗営業等の特定営業者と暴力団員との間で用心棒料等の利益の授受等を禁止する規定がそれぞれ追加され、兵庫県条例では、平成30年10月改正により暴力団排除特別強化地域を設定し、同地域における風俗営業等の特定接客業者が暴力団員を用心棒にし又は暴力団員にみかじめ料や用心棒代を供与することを禁止する規定が、令和2年10月改正により暴力団員が青少年を暴力団員事務所に立ち入らせること、青少年に対して金品等の利益を供与すること、面会の要求、ファックス・メールの送信、つきまといを行うこと等を禁止する規定がそれぞれ追加され、大阪府条例では、令和3年10月改正により住居地域、商業地域等の区域における暴力団事務所の開設・運営を禁止する等の規定が追加されている。

 神奈川県条例については神奈川県警察HP「神奈川県暴力団排除条例」、兵庫県条例については兵庫県警察HP「暴力団排除条例の制定」、大阪府条例については大阪府警察HP「大阪府暴力団排除条例について」を、また、兵庫県条例におけるハロウィーンの暴力団活動の規制については「ハロウィーンに関連する条例」を、それぞれ参照されたい。

 

【市区町村の条例】

(制定状況と内容)

〇 全国の市区町村では、暴力団排除条例は令和3年末までに46都道府県内の全市区町村で制定されている(上記警察庁組織犯罪対策部「令和3年における組織犯罪の情勢」31頁)とされる。香川県内の市町村については、暴力団排除条例の制定については確認できない。

 福岡県では平成22年6月までに全市町村が暴力団排除条例を制定し、さらに平成23年末までに三重県、滋賀県、和歌山県、山口県、愛媛県、高知県、大分県及び宮崎県の8県で(警察庁組織犯罪対策部「平成23年の暴力団情勢」33頁)、また、平成25年末までにはこれら9県を含む35府県で(警察庁組織犯罪対策部「平成25年の暴力団情勢」31頁)、それぞれ全市町村が暴力団排除条例を制定しており、都道府県の条例と同様に、全国の市町村においても短い期間で一気呵成に条例制定が進められていったと言える。

 上記鈴木論文は、福岡県条例が都道府県条例制定のモデル型であり、福岡県下の福岡市や北九州市等の条例が全国市区町村条例制定のモデル型であるとしたうえで、「このモデル型が地域の実情に合わせた形で都道府県ごとに修正が加えられ、また当該都道府県条例との関係で都道府県下の市区町村条例のモデル型ができ上っている。」(495頁)としている。

 また、上記田村論文「福岡県暴力団排除条例の意義と今後の課題」は、平成20年7月に制定された「直方市暴力団等追放推進条例」が暴力団排除条例に特化した全国最初の条例であるとしている(29頁)。

 なお、「公共施設の暴力団排除に関する条例」や「暴力団の利益となる公の施設の使用等の制限に関する条例」等の名称の公共施設等における暴力団排除を包括的に規定する条例は、平成8年ごろから制定されており、令和4年5月7日時点で、全国130程度の市町村で制定されている。

〇 市区町村条例については、都道府県条例が事業者等に対する規制と違反行為に対する勧告、公表、罰則等の規定を置いているのに対して、一般的には、先行して制定されている都道府県条例との関係も考慮し、基本理念、市区町村・住民・事業者の責務・役割等を定めるとともに、市区町村の事務・事業からの暴力団の排除等を規定している。あわせて、市区町村の公共施設等における暴力団の排除、住民に対する支援、青少年に対する教育等の支援等について規定しているものも多い。

 市区町村条例においては、事業者の暴力団員等に対する利益供与の禁止等の規定を置くものもあるが、この場合は、禁止規定のみで、違反行為に対する勧告、公表、罰則等の規定は置かないものが多い。

 一部の市区町村条例では、違反行為に対して勧告、公表、罰則等を規定するものがあり、また、都道府県条例で規定されている規制よりも厳しい規制措置を規定するものもある。

 

(条例の具体例)

〇 以下、市区町村条例の具体例を見てみる。

福岡県直方市

直方市暴力団等追放推進条例

平成20年7月1日公布

平成20年7月1日施行

北九州市

北九州市暴力団排除条例

平成22年6月23日公布

平成22年7月1日施行

福岡市

福岡市暴力団排除条例

平成22年6月24日公布

平成22年7月1日施行

愛媛県今治市

今治市暴力団排除条例

平成22年12月22日公布

平成22年12月22日施行

愛媛県松山市

松山市暴力団排除条例

平成22年12月28日公布

平成23年4月1日施行

岡山県勝央町

勝央町暴力団排除条例

平成23年6月22日公布

平成23年6月22日施行

岡山市

岡山市暴力団排除基本条例

平成24年3月26日公布

平成24年4月1日施行

岡山市暴力団威力利用等禁止条例

平成24年3月26日公布

平成24年7月1日施行

東京都府中市

府中市暴力団排除条例

平成23年6月30日公布

平成23年10月1日施行

東京都豊島区

豊島区暴力団排除条例

平成23年12月13日公布

平成24年4月1日施行

東京都文京区

文京区暴力団排除条例

平成24年3月6日公布

平成24年4月1日施行

東京都港区

港区暴力団排除条例

平成26年3月26日公布

平成26年4月1日施行

徳島県鳴門市

鳴門市暴力団排除条例

令和2年3月17日公布

令和2年4月1日施行

〇 直方市条例は、上記の通り、暴力団排除条例に特化した全国最初の条例とされており、福岡県条例よりも1年以上前に制定されている。市の事務・事業における暴力団排除(4条)、青少年に対する教育等(5条)等のほか、市民が違法・不当の利益のために暴力団等を利用すること及び暴力団等に対して資金提供・便宜供与を行うことの禁止(8条)、市民が暴力団事務所等に使用われることを知って暴力団員等に対して土地建物の売買、賃貸等を行うことの禁止(9条)に関する規定を置いている。

 北九州市及び福岡市の条例は、「福岡県暴力団排除条例」制定の後、制定されている。両条例とも、市の事務・事業における暴力団排除、市民等に対する支援、青少年に対する教育等のほか、市民等による暴力団の威力利用の禁止及び暴力団員等に対する利益供与の禁止に関する規定を置いている。それに加えて、北九州条例は「市民暴排の日」の規定(11条)、福岡市条例は公の施設における暴力団排除の規定(7条 平成23年3月改正により追加)を置いている。

 直方市、北九州市及び福岡市の条例はいずれも、市民等の違反行為に対して、勧告、公表、罰則等の規定は置いていない。

〇 今治市及び松山市の条例は、平成22年3月の「愛媛県暴力団排除条例」制定の後、制定されている。

 今治市条例は、市の事務・事業における暴力団排除及び公の施設における暴力団排除に関する規定のほか、祭礼等からの暴力団排除(9条)の規定を置いているが、市民等に対する規制については規定していない。

 一方、松山市条例は、市の事務・事業における暴力団排除及び公共施設における暴力団排除、公共工事からの暴力団排除(9条)、市民等による暴力団の威力利用の禁止及び暴力団員等に対する利益供与の禁止の規定のほか、暴力団排除特別強化地域の設定と同区域における風俗営業等の特定営業への暴力団員の従事の禁止等の規定(12条)を置き、9条違反に対しては調査、勧告及び公表(13条~15条)、12条違反に対しては罰則(17条・18条)を定めている。

〇 勝央町及び岡山市の条例は、平成22年12月の「岡山県暴力団排除条例」制定の後、制定されている。

 勝央町条例は、町民等による暴力団員等に対する利益供与の禁止及び暴力団の威力利用の禁止を定め、違反行為に対して調査、勧告及び公表(11条~13条)の規定を置いている。

 岡山市は、「岡山市暴力団排除基本条例」及び「岡山市暴力団威力利用等禁止条例」を同時に制定している。また、「岡山市公共施設における暴力団排除に関する条例」(平成21年12月制定)も制定しており、暴力団排除に関する条例を3本制定していることとなる。「暴力団排除基本条例」は基本理念、市・市民・事業者の責務、市の事務・事業からの暴力団排除等を規定しているのに対して、「暴力団威力利用等禁止条例」は暴力団排除特別強化地域を設定し、同地域において風俗営業等の特定接客業者が暴力団員を用心棒にし又は暴力団員にみかじめ料や用心棒代を供与すること等を禁止し(3条~6条)、違反行為に対して罰則を科している(9条・10条)。

〇 府中市、豊島区、文京区及び港区の条例は、「東京都暴力団排除条例」制定の後、制定されている。府中市条例は、東京都下の市区町村では最初に制定された暴力団排除条例であり、港区条例は最後に制定された条例である。

 4条例ともに、市区の事務・事業からの暴力団排除、公の施設における暴力団排除、市区民等に対する支援、青少年に対する教育等の支援等の規定を置いている。

 これに加えて、府中市条例は府中刑務所の出所者に対する暴力団員による出迎え等により市民等に危害等を及ぼすおそれがあると認める場合における市長による警察署長への市民等の安全確保措置の要請(12条)、豊島区条例は共同住宅等所有者等の暴力団排除の努力義務(13条)、虚偽の養子縁組の禁止及び虚偽の養子縁組に対する対応措置(14条・15条)、文京区条例は区内全域における暴力団事務所の開設及び運営の禁止(9条)、港区条例は区民・事業者による暴力団の威力利用の禁止及び暴力団員等に対する利益供与の禁止(8条・9条)、飲食店営業許可を受けた事業者による誓約書の提出(10条)、区の補助金等が暴力団活動を助長する場合等における補助金の返還等(12条2項)、区長による警察署長への区民・事業者の安全確保措置の要請(22条)等の規定を置いている。

 文京区条例は9条違反行為に対して罰則等の規定は置いていない。他方、港区条例は12条2項違反行為に対して指導、勧告及び公表の規定(14条・15条)を置いている。

 なお、豊島区は、平成20年12月に「豊島区生活安全条例」を改正し、暴力団等の排除に関する区・区民等・事業者の責務を定めるとともに、店舗・事務所・共同住宅の所有者等に対し、暴力団等の居住・使用を制限する責務を定めた。「共同住宅などの所有者等に暴力団等の使用制限責務を定めるのは全国で初、また、生活安全条例の中に、暴力団等の排除に関する活動の規定を設けるのは、都内で初の試み」(豊島区プレス発表資料「平成20年第4回豊島区議会定例会開会」)としている。関連条項は、平成23年12月の「豊島区暴力団排除条例」制定時に削除されている。

〇 鳴門市条例は、令和4年5月7日時点で確認できるものとしては、全国市区町村で最後に制定された暴力団排除条例である。徳島県内の24市町村のうち、暴力団排除条例は、19市町村は平成24年に制定していたが、5市町は令和元年以降に制定し、5市町のうち鳴門市が最後となった。徳島県は、暴力団排除条例を都道府県内の全市区町村で制定した46番目の都道府県となる。

 市の事務・事業における暴力団排除、公の施設における暴力団排除、市民等に対する支援、青少年に対する指導等のほか、市民等による暴力団員等に対する利益供与の禁止、祭礼等からの暴力団排除に関する規定を置いている。市民等の違反行為に対して、勧告、公表、罰則等の規定は置いていない。

〇 暴力団排除条例における都道府県条例と市区町村条例の関係については、宇那木正寛「暴力団排除事務をめぐる都道府県条例と市区町村条例の関係(1・2完)―抵触関係の発見とその調整方法について」(自治研究88巻1・2号(平成24年1・2月))、宇那木正寛「都道府県条例と市町村条例②」(自治体法務研究「自治体職員のための政策法務入門」2015年冬号)及び上記鈴木論文が詳細に論じている。

 なお、市町村条例との調整について、「岡山県暴力団排除条例」は「県は、市町村が制定した条例による施策の実施等により、当該市町村がこの条例の目的の全部又は一部を達成することができると認めるときは、当該市町村の区域について、この条例の規定(当該目的に係る部分に限る。)を適用しないこととすることができる。」(23条1項)及び「前項の規定によりこの条例の規定を適用しないこととする市町村の区域及びこの条例の規定のうち当該市町村の区域において適用しないこととする規定については、公安委員会規則で定める。」(同条2項)と規定し、「広島県暴力団排除条例」は「この条例の規定は、市町が、地域の実情に応じて暴力団の排除を推進するため、条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない。」(25条1項)及び「前項の規定にかかわらず、市町は、条例で、前条による暴力団事務所の開設又は運営に係る規制を緩和することができない。」(同条2項)と規定している。他の都道府県条例では、こうした市区町村条例との調整に関する規定は置いていない。



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