RILG - 一般財団法人 地方自治研究機構


ポイ捨てを禁止する条例

                                                  (令和3年4月29日更新)

【制定状況の概観】

〇 空き缶やたばこの吸い殻等のいわゆる「ポイ捨て」を禁止する条例が、多くの自治体で制定されている。

  「ポイ捨て」とは「空き缶、紙くず、プラスチックごみ、たばこの吸い殻その他のごみを、回収容器及び定められた場所以外にみだりに捨てる」こと(環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課「令和元年度「ポイ捨て」に関する調査報告書」(令和2年3月))とされる。

  もとより国の法令では、「ポイ捨て」という用語は一切使用されていない。ちなみに、国語辞典では、「ぽい捨て」を「所かまわずゴミを投げ捨てること」(広辞苑第7版)、「物を無造作に捨てること」(大辞林第4版)等としている。

  条例で「ポイ捨て」を、例えば「空き缶やたばこの吸い殻等をみだりに捨てること」などと定義づけたうえで、条例本文で使用し、また、「ポイ捨て等防止条例」などと条例名で使用するものもある。他方で、条例上は「ポイ捨て」は使用せず、「空き缶やたばこの吸い殻等をみだりに捨てはならない。」等と規定しているものもある。「ポイ捨て」ではなく、「ぽい捨て」とするものもある。

  また、「ポイ捨て」の禁止や防止に特化した条例もあれば、「環境美化条例」、「環境保全条例」、「まちをきれいにする条例」等において飼い犬等のふんの放置の禁止、落書きの禁止、路上喫煙の禁止等とともに「ポイ捨て」の禁止を規定するものもある。「路上喫煙及びポイ捨て防止条例」等、路上喫煙と「ポイ捨て」を同一条例で禁止の対象とする条例も少なくない。

  数は少ないものの、「投げ捨て」という用語を使っている条例もある。「投げ捨て」は、例えば「ごみ容器その他のごみを収納するための場所以外の場所にごみを捨てること」と定義づけられており、ほぼ「ポイ捨て」と同義で使われているものと考えられる。

  こうした条例は、通常、「路上喫煙」等を禁止するだけでなく、「路上禁煙」等を防止するための自治体等の責務や取り組み等を規定している。

〇 環境省は、ポイ捨てを禁止する条例の制定状況について、調査をしている。直近の調査報告書は、上記の環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課「令和元年度「ポイ捨て」に関する調査報告書」(令和2年3月)である。 同報告書では、「いわゆる『ポイ捨て』の問題において、生活環境の保全や公衆衛生を害する状況に対応すること等を目的とした条例」を調査対象にしているが、同報告書を見る限りにおいては、調査結果は「条例等」としており、条例のみならず、要綱等も対象に含んでいるものと考えられる。なお、その内訳等は記載されていない。

  同報告書によれば、令和元年7月末時点で、全国1741市区町村を対象にアンケート調査を実施した結果(回答率100%)、1074市区町村が条例等を制定済みと回答している(同報告書2頁)。全国の6割以上の市区町村で制定されていることになる。

  都道府県別の条例等制定状況も一覧表にして示している(3頁)が、都道府県によって条例等の制定状況に顕著な差が見られるとしている。香川県では全市町村が制定し、茨城県、富山県及び岐阜県では9割以上の市町村が、千葉県、愛知県、福岡県、長崎県、山口県、栃木県、大阪府及び神奈川県では8割以上の市町村が制定しているのに対して、岩手県では2割未満の市町村、青森県では3割未満の市町村、秋田県、高知県、沖縄県及び北海道では4割未満の市町村が制定している。

  制定年度(施行日)は、平成27年度以前が1000団体と圧倒的に多いが、平成28年度は19団体、平成29年度は13団体、平成30年度は30団体、令和元年度は12団体となっており(4頁)、最近においても制定されていることがわかる。

  条例等に罰則規定を設けているのは、535団体である(5頁)。条例等を制定している市区町村のうち、5割を上回る団体で罰則規定を置いていることとなる。

  また、ポイ捨て等を行った者への措置として条例等で規定されているのは、「勧告」が785団体、「命令」が707団体、「助言及び指導」が676団体、「調査」が508団体、「公表」が496団体などとなっている(4頁)。

  なお、以上のほか、罰則規定や措置規定の適用事例、条例等の施行による課題等についても、調査している。

〇 いくつかの都道府県では、県内市町村のポイ捨て防止に関する条例の制定状況を調査し、公表している。例えば、

  埼玉県は、「廃棄物減量化等実態調査」において、「ポイ捨て等ごみの散乱防止に係る条例」の制定状況等も調査している。直近の調査結果は、令和元年度(令和2年3月31日現在)の「2 条例等」の「2.2 ポイ捨て等ごみの散乱防止に係る条例の制定状況」である。これによると、63市町村中43市町が「ポイ捨て等ごみの散乱防止に係る条例」を制定しており、また、条例を制定している43市町のうち、21市町が罰則規定を置いている。条例名に「ポイ捨て」を含んでいるものは、12市である。 

  千葉県は、「一般廃棄物に係る千葉県調査」において、「ポイ捨て禁止条例」の制定状況等も調査をしている。直近の調査結果は、「令和元年度一般廃棄物に係る千葉県調査」の「ポイ捨て禁止条例の制定状況等」である。これによると、54市町村中49市町が「ポイ捨て禁止条例」を制定しており、また、条例を制定している市町のうち、37市町が罰則規定を置いている。条例名に「ポイ捨て」または「ぽい捨て」を含んでいるものは、12市町である。制定日に関しては、平成6年から9年にかけて13市町、平成10年代に30市町、平成20年代に6市町が制定している。

  岐阜県は、「空き缶等ポイ捨て防止条例」の制定状況を調査している。直近の調査結果は、「岐阜県市町村空き缶等ポイ捨て防止条例策定状況(平成30年4月1日現在)」である。これによると、42市町村中39市町村が「空き缶等ポイ捨て防止条例」を制定している。また、条例を制定している39市町村のうち、13市町が罰則規定を置いている。条例名に「ポイ捨て」を含んでいるものは、14市町村である。制定日に関しては、平成6年から9年にかけて4市町、平成10年代に33市町村、平成20年から23年にかけて2市町が制定している。

 

【ポイ捨て防止に関する条例の系譜】

〇 ごみの不法投棄については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律137号)が、「廃棄物」を「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)」(2条1項)としたうえで、「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。」(16条)とし、違反して廃棄物を捨てた者は5年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処する(25条1項14号)としている。また、軽犯罪法(昭和23年法律39号)は、「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体そのほかの汚物又は廃物を棄てた者」(1条27号)は拘留または科料に処するとしている。

  自治体の条例では、従前から「河川取締条例」や「都市公園条例」等で普通河川敷地や都市公園等におけるごみの投棄を禁止し、違反行為に対して罰則規定を置いていた。

〇 こうした中で、昭和40年代後半以降、缶飲料の自動販売機が急速に普及し、その結果、空き缶が道路、公園、海岸、河川等において捨てられ、散乱し、地域の環境美化等の観点から大きな問題となった。そのため、昭和50年代後半以降、「空き缶等の回収に関する条例」、「空き缶等の散乱防止に関する条例」等を制定し、事業者に対して空き缶等の回収を義務づけ、また、住民等に対して空き缶等をみだりに捨てることを禁止する自治体が、増加していった。

  このよう条例で現在も施行されているものとして、例えば、以下のようなものがある。

茨城県常陸太田市常陸太田市空き缶回収に関する条例昭和58年12月27日公布

昭和59年4月1日施行

山梨県山梨県空き缶等の散乱防止に関する条例昭和59年3月27日公布

昭和59年3月27日施行

平成30年6月15日最終改正施行

  常陸太田市条例は、「市民(滞在者及び旅行者を含む。)は,空き缶を散乱させないため,家庭の外で自ら生じさせた空き缶を持ち帰り,又は回収する容器へ収納するよう努めなければならない。」(2条1項)とし、山梨県条例は、「県民等は、空き缶等をみだりに捨ててはならない。」(3条1項)としている。両条例とも、罰則規定は置いていない。

〇 また、「環境美化条例」等を制定し、住民等に対して、空き缶等を捨て、散乱させることを禁止する自治体も増加した。例えば、

京都府舞鶴市舞鶴市環境美化条例昭和59年3月30日公布

昭和59年4月1日施行

埼玉県長瀞町長瀞町環境美化の促進に関する条例昭和59年7月1日公布

昭和59年7月1日施行

 等である。

  舞鶴市条例は、「何人も、ごみの投棄を禁止する法令の規定のほか、この条例の規定を遵守して、みだりにあきカン、あきびん、使い捨て容器等ごみを捨て、又はごみを散乱させてはならない。」(2条)と規定し、長瀞町条例は、条例の目的を「空きかん等飲料容器、紙くず、たばこの吸いがら等のごみの散乱を防止」(1条)としたうえで、「何人も、ごみの投棄を禁止する法令の規定のほか、この条例の規定を遵守して、みだりにごみを捨て、又はごみを散乱させてはならない。」(2条)と規定している。両条例とも、罰則規定は置いていない。

〇 平成4年以降、空き缶等の「ポイ捨て」に対して罰則を科する条例が制定されるようになった。 

福岡県北野町

北野町の環境をよくする条例

平成4年7月4日公布

平成4年10月1日施行

平成17年2月5日久留米市に編入のため失効

和歌山県和歌山市

和歌山市美化推進及び美観の保護等

に関する条例

平成4年7月16日公布

平成4年11月1日施行

平成31年4月1日最終改正施行

 等である。

  いわゆる「ポイ捨て禁止条例」は、平成1ケタ年代半ばに制定ブームが巻き起こったが、そのブームの火付け役となったのは北野町である(北村喜宣「自治体環境行政法(第4版)(第一法規 平成18年)258頁)とされる。「(北野町)町長が、シンガポールを訪問し、『ちりひとつ落ちていない街並みを見て腹を決めた。』のである。帰国後、精力的に条例案づくりが進められ、わずか1ヵ月後に、議会に上程された。・・・北野町条例が注目されたのは、義務違反に対して、直罰的に罰金を科すとしたからである。」とされ、また、「和歌山市についても、市長がシンガポールを訪問したことが、ポイ捨て禁止という法政策の発想のきっかけとなっている。シンガポール訪問は、和歌山市長の方が早かったようであるが、その後、準備が進められ、・・・(条例が)制定された。」(前記北村自治体環境行政法258頁)とされる。

  北野町条例は、市町村合併に伴い現在では失効しているが、「空き缶等のごみ」を「空き缶、空き瓶、紙くず、たばこの吸い殻等」(2条3号)と定義づけたうえで、「町民等、事業者及び占有者等は、道路、河川、水路、ため池、公園、広場及びその他の場所並びに他人が所有し管理する場所に空き缶等のごみを投棄し、又は汚してはならない。」(9条1項)とし、「第9条の規定による道路等に空き缶等のごみを投棄し、又は汚した者」は3万円以下の罰金に処する(24条2項1号)と規定していた。

  また、和歌山市条例は、「『ポイ捨て』という個人等の倫理的な問題を解決し、個々の美化意識の向上を図ることにより、市民の皆様が美しいまちで快適に生活し、また、本市を訪れる方々を気持ちよくお迎えできることを目的に、全国に先駆けて平成4年に制定しました。」(和歌山市HP「ポイ捨て防止重点区域について」中の「ポイ捨て防止条例に関するQ&A」Q1・A1)としている。現行の条例は、数次の改正を経ているが、平成4年制定当時、2万円以下の罰金を科していた(本多滝夫「空き缶・吸い殻のポイ捨てに罰金!?」(法学セミナー1993年11月号)66頁)とされる。

〇 「ポイ捨て」という用語が自治体の条例にいつから使用されているかは、これまで調べられる範囲内では明確ではないが、現在施行されている条例を見る限りにおいては、

茨城県水戸市水戸市空き缶等のポイ捨て防止に関する条例平成6年3月30日公布

平成6年10月1日施行

奈良県奈良市奈良市ポイ捨て防止に関する条例平成6年9月19日公布

平成7年1月1日施行

広島県呉市呉市ポイ捨て等防止に関する条例平成7年3月14日公布

平成7年10月1日施行

 等の条例から使用例が見られる。

  水戸市条例は、「ポイ捨て」を「空き缶等を定められた場所以外の場所に捨てること」(2条2号)と定義づけたうえで、「市民等は,美観保全重点区域において空き缶等のポイ捨てをしてはならない。」(8条)と規定し、奈良市条例は、「ポイ捨て」を「空き缶等を定められた場所以外の場所に捨てること」(2条3号)と定義づけたうえで、「何人も、美化促進重点地域においてポイ捨てをしてはならない。」(5条)と規定し、呉市条例は、「ポイ捨て」を「空き缶等及びたばこの吸い殻等を回収容器,吸い殻入その他の定められたもの以外の場所に捨てること」(2条3号)と定義づけたうえで、「何人も,重点区域において,空き缶等及びたばこの吸い殻等のポイ捨てをしてはならない。」(8条1項)と規定している。

  3条例とも、ポイ捨てを、市の全区域ではなく、重点区域等に限って禁止している。

  呉市条例は重点区域におけるポイ捨て行為者に対する命令違反に対して1万円の罰金を科しているが、水戸市条例及び奈良市条例はポイ捨て行為に対して罰則規定は置いていない。なお、3条例ともに、自動販売機に係る回収容器の設置等に関する命令違反等に対して罰則規定を置いている。

  水戸市条例は、昭和59年に制定された「水戸市空き缶及び空き瓶回収に関する条例」を廃止して、制定されている。

〇 また、大阪市は、平成7年に条例名に「投げ捨て」を使用した

大阪市大阪市空き缶等の投げ捨て等の防止に関する条例平成7年9月29日公布

平成7年11月1日施行

 を、制定している。「投げ捨て」を「ごみ容器その他のごみを収納するための場所以外の場所にごみを捨てること」(2条2号)と定義づけたうえで、「何人も、道路、広場、公園、河川、港湾その他の公共の場所にみだりに空き缶等を投げ捨ててはならない。」(6条)と規定している。罰則規定は置いていない。

〇 平成9年に制定された

香川県善通寺市善通寺市環境美化条例平成9年12月26日公布

平成10年4月1日施行

 は、条例違反のポイ捨て行為に対して、罰金ではなく、2000円の過料を科している。

  すなわち、「何人も、みだりに空き缶等及び吸い殻等を、公共の場所及び他人が所有し、占有し、又は管理する場所に捨ててはならない。」(8条)としたうえで、この規定に違反した者は2000円の過料に処する(19条)としている。市の全域を対象にしている。

  地方自治法の平成12年4月1日の改正施行に伴い、条例で5万円以下の過料を科すことができる旨規定された(14条3項)が、それ以前には条例で過料を科すことを認める規定が置かれておらず、「自主条例のなかでは過料を規定することはできないと解されていた」(北村喜宣「条例の義務履行確保手法としての過料」(地方自治職員研修20003年4月号)20頁)。善通寺市条例は、「それにもかかわらず、旧地方自治法にもとで、自主条例に基づいてポイ捨て禁止義務違反に対して直罰的に過料を規定し、しかも、実際に適用した」(前記北村地方自治職員研修22頁注2)とされる。

〇 平成14年に、東京都千代田区は、

東京都千代田区安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例平成14年6月25日公布

平成14年10月1日施行

 を制定した。

  「何人も、公共の場所においてみだりに吸い殻、空き缶等その他の廃棄物を捨て、落書きをし、又は置き看板、のぼり旗、貼り札等若しくは商品その他の物品・・・を放置・・・してはならない。」(9条1項)と規定し、また、「路上禁煙地区においては、道路上及び区長が特に必要があると認める公共の場所(以下「道路等」という。)で喫煙する行為並びに道路等(沿道植栽を含む。)に吸い殻を捨てる行為を禁止する。」(21条3項)としたうえで、「推進モデル地区内において第9条第1項の規定に違反し、生活環境を著しく害していると認められる者」または「第21条第3項の規定に違反して路上禁煙地区内で喫煙し、又は吸い殻を捨てた者」は、2万円以下の過料に処する(24条1項)と規定している。

  本条例は、平成10年に制定された「千代田区吸い殻、空き缶等の散乱防止に関する条例」を廃止して制定されているが、路上喫煙に対して過料を科するとした全国最初の条例であり、その後に続く路上喫煙を禁止する条例の嚆矢となるものである(「路上喫煙を禁止する条例」を参照されたい)。

  本条例制定以降、路上喫煙を禁止する条例を制定して、併せて、吸い殻等のポイ捨てを禁止し、または、それまで制定していた空き缶等のポイ捨てに関する条例等を改正して、路上喫煙を禁止する規定等を追加する自治体が増加した。

〇 都道府県の条例で、ポイ捨てを禁止し、その違反行為に対して罰則を科すものがある。例えば、

鳥取県鳥取県環境美化の促進に関する条例平成9年6月23日公布

平成9年7月1日施行

埼玉県埼玉県ごみの散乱防止に関する条例平成12年10月20日公布

平成13年4月1日施行

北海道北海道空き缶等の散乱の防止に関する条例平成15年3月14日公布

平成15年12月1日施行

 等である。

  鳥取県条例は、「県民等は、みだりに空き缶等を捨ててはならない。」(7条)としたうえで、環境美化促進地区内において7条の規定に違反した者は、2万円以下の罰金に処する(15条)としている。

  埼玉県条例は、「ごみ」を「容器包装及び破損された容器包装・・・、たばこの吸い殻、チューインガムのかみかす、紙くず並びに廃プラスチック類」(2条2項)と定義づけ、「何人も、みだりにごみを捨ててはならない。」(9条)としたうえで、この規定に違反した者は、2万円以下の罰金に処する(16条)としている。

  北海道条例は、「何人も、みだりに空き缶等を捨ててはならない。」(8条1項)としたうえで、この規定に違反した者は、2万円以下の過料に処する(16条)としている。

  3条例ともに、ポイ捨てを禁止する条例を制定している市町村を適用除外とする規定を置いている(鳥取県条例13条、埼玉県条例17条、北海道条例17条)。

〇 平成30年以降制定された条例としては、

鹿児島県垂水市垂水市ポイ捨て等防止条例平成30年3月16日公布

平成30年7月1日施行

茨城県五霞町五霞町ポイ捨て等防止条例平成31年3月18日公布

平成31年4月1日施行

愛知県岡崎市岡崎市生活環境の美化の推進に関する条例平成31年3月25日公布

平成31年4月1日施行

奈良県平群町平群町ポイ捨て等の防止条例令和元年12月13日公布

令和2年1月1日施行

京都府亀岡市亀岡市ポイ捨て等禁止条例令和2年2月13日公布

令和2年8月1日施行

(一部、令和3年4月1日施行)

和歌山県和歌山県ごみの散乱防止に関する条例令和2年3月24日公布

令和2年4月1日施行

(一部、令和2年10月1日施行)

 等がある。

  これらの条例のうち、垂水市、五霞町及び平群町の条例は、空き缶等のポイ捨てと飼い犬等のふんの放置を禁止している。違反行為に対して、垂水市自条例は、市長が指導、改善勧告、改善命令、公表をすることができるとし、改善命令に従わない者には5万円以下の過料を科すとしている。また、違反行為に対して、五霞町条例は町長が指導、勧告、命令をすることができるとし、平群町条例は町長が勧告、命令、公表をすることができるとしているが、両条例とも罰則規定は置いていない。

  岡崎市条例は、空き缶、吸い殻等のポイ捨て、飼い犬等のふんの放置及び路上喫煙の禁止並びに土地、建物等の適正管理を定めている。ポイ捨てに関しては、「何人も、ポイ捨てをしてはならない。」(9条)としたうえで、違反行為に対して勧告、命令、公表をすることができるとし、また、ポイ捨て等防止重点区域を指定することができる(13条1項)としているが、ポイ捨てに関しては罰則規定は置いていない。

  亀岡市条例は、空き缶・吸い殻等のポイ捨て及び飼い犬等のふんの放置の禁止並びに空き地の管理を定めている。ポイ捨てに関しては、「何人も、公共の場所及び他人が所有し、占有し、又は管理する場所にポイ捨てをしてはならない。」(9条)としたうえで、違反行為に対して指導、勧告、命令をすることができるとし、命令に違反した者は5万円以下の過料に処する(14条)としている。また、ポイ捨て等防止重点区域を指定することができる(13条1項)としている。亀岡市条例は、議員提案により制定されているが、平成30年12月に亀岡市と亀岡市議会が「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を行ったことを踏まえ、亀岡市議会環境厚生常任委員会において、環境問題について「調査・研究を重ねる中で、プラスチックごみゼロのまちを実現するためには、ごみの投棄を抑止する施策を充実させる必要があるとの結論に達し、ポイ捨て等禁止条例の制定に向けた取り組みを開始」したとしている(亀岡市HP「亀岡市ポイ捨て等禁止条例案について(議員提案)」)。

  和歌山県条例は、「ごみ」を「ペットボトル、空き缶、空き瓶その他の容器及び包装(中身の入ったもの並びに栓及び蓋を含む。)並びにたばこの吸い殻、紙くず、木くず、金属くず及び廃プラスチック類」(2条)と定義づけ、「何人も、みだりにごみを捨ててはならない。」(6条)としたうえで、知事は、違反者に対してごみの回収を命じることができる(9条)とし、命令に従わない者は、5万円以下の過料に処する(10条)としている。「ごみの投棄を禁止し、これに違反した者を罰金又は過料に処することを定める条例を制定した市町村で規則で定めるものの区域」は適用除外としている(13条)。和歌山県の仁坂知事は、本条例の制定の考え方として、昨今プラスチックゴミ問題が大きな課題となっているとしたうえで、「世の中の人はすべからくみだりにプラスチックを捨てることを一番慎み、憎み、取り締まるべきだと思うのです。その考えで、この条例はできています。プラスチックを含むゴミを環境に捨てた人は、県から注意を受けて現状回復を迫られます。(『こらこら!それはダメだから拾え』ということです。) それでも言うことを聞かない人は過料をいただくということにしました。さらに、県の行政としては、どうしても命令や過料の徴収は、手続きに時間がかかり、機動力に欠けるので、環境監視員を任命して、その人が命令もするし、過料の徴収も出来るということにしました。」(和歌山県HP「知事からのメッセージ 令和2年4月7日 和歌山県ごみの散乱防止に関する条例」)と述べている。

〇 令和2年に制定された亀岡市条例及び和歌山県条例は、その制定の背景として、プラスチックごみへの対応があることがわかる。条例の制定理由として、亀岡市議会は「プラスチックごみゼロのまちを実現するためには、ごみの投棄を抑止する施策を充実させる必要がある」とし、和歌山県知事は「世の中の人はすべからくみだりにプラスチックを捨てることを一番慎み、憎み、取り締まるべきだと思うのです。その考えで、この条例はできています。」としているのである。

〇 こうしてみると、条例で「ポイ捨て」を禁止する対象として、昭和50年代から平成1ケタ年代にかけては「空き缶」に重きが置かれ、平成10年代以降は「空き缶」とともに「たばこの吸い殻」がクローズアップされ、令和の時代に入って「プラスチックごみ」が注目されてきている、ということができよう。

 

【罰則規定について】

〇 「ポイ捨て」の禁止規定に対する罰則について、上記環境省報告書によれば、条例等に罰則規定を設けているのは、535市区町村である。条例等を制定している市区町村のうち、5割を上回る団体で罰則規定を置いていることとなる。

〇 「みだりに廃棄物を捨てる行為」や「公共の利益に反してごみを捨てる行為」等に対しては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)や軽犯罪法等で罰則規定を置いており、これらとは別に自治体の条例で罰則を定めることができるかが、議論となりえる。この点については、「一般市民のポイ捨て行為が実際上は法執行の対象となっていないことに鑑みて、当該地域においてポイ捨てを禁止する条例を制定する特別の意義と効果がある場合には、当該条例を制定することができると解せられよう。」(福士明「ポイ捨て・路上喫煙禁止」(行政課題別条例実務の要点(第一法規 令和2年12月20日))6802頁)とされ、また、廃棄物処理法は「みだり投棄に対して出される原状回復命令の要件が『生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められる』場合というように、それなりの被害の発生を前提としていることから、ポイ捨てに対して用いられることはないと考えられる。この点で、両者は『棲み分け』をしているのであり、廃棄物処理法との関係での抵触はない。」、軽犯罪法の規定は「公衆衛生規制的観点からのものであって、生活環境保全や美観保持という観点からのポイ捨て禁止条例とは目的を異にしていると整理できる。」(兼子仁・北村喜宣・出石稔共著「政策法務事典」(ぎょうせい 20008年)126頁)とされている。

〇 罰則を設けている場合、罰金とするものと過料とするもの、また、ポイ捨て行為に対して直ちに罰則を科すもの(直罰方式)とポイ捨て行為があった場合に知事や市区町村長が回収等の勧告、命令を行い、命令違反行為に対して罰則を科すもの(間接罰方式)とに分かれる。

  上記環境省報告書では、罰則規定の内訳は記載されていないが、上記埼玉県資料(「2 条例等」の「2.2ポイ捨て等ごみの散乱防止に係る条例の制定状況」)によると、条例を制定している43団体のうち、21団体が罰則規定を置いており、このうち、罰金を科すものが15団体、過料を科すものが6団体であり、また、直罰方式が1団体(罰金 川口市)、間接罰方式が20団体(罰金が14団体、過料が6団体)となっている。少なくとも、埼玉県の市町村では罰金が多く、また、ほとんどが間接罰方式と言える。なお、埼玉県条例は、罰金で直罰方式をとっている。

  少し資料が古くなるが、深町晋也「路上喫煙条例・ポイ捨て禁止条例と刑罰論―刑事立法学序説―」(立教法学79号 2010年)は、平成21年時点での東京都特別区、指定都市、中核市等の94団体の条例の罰則規定の有無及び内容を調査し、分析している。これによると、94団体のうち、罰金を科すものが30団体、過料を科すものが31団体、条例を制定しているものの罰則規定のないものが24団体、条例を制定していないものが11団体であり、罰則を科しているもののうち、直罰方式が40団体(罰金が16団体、過料が24団体)、間接罰方式が21団体(罰金が14団体、過料が7団体)となっている(なお、千代田区及び岡山市は、間接罰による罰金と直罰による過料を併用している)。東京都特別区、指定都市及び中核市等では、罰金と過料が約半々であり、直罰方式が間接罰方式より多いと言える。

〇 「路上喫煙を禁止する条例」の罰則は大部分が過料となっている(「路上喫煙を禁止する条例」参照)のに対して、「ポイ捨てを禁止する条例」では罰金を科すとするものは多い。その理由として、廃棄物処理法の罰則が刑事罰(懲役または罰金)を科していること、全国の自治体でポイ捨てに対する罰則を条例で科するようになったのは平成4年以降であるが、地方自治法において条例で過料を科すことができることが明記されたのは平成12年4月以降であり、それ以前には過料を科すことができないと解されていたこと、などをあげることができる。

  しかし、「条例の刑罰規定は、違反は発生しているにもかかわらず、めったに適用されない。行政が告発をしたとしても、捜査と送致を担当する警察が、それほどの実質的可罰性のない刑罰規定の適用に消極的になることは、容易に想像できる。いわゆるポイ捨て禁止条例に規定される罰金規定が、典型的である。『実効性を期して罰則を規定した→しかし、警察が動かない→罰則規定が張子の虎と化している』という現象は、あちこちでみることができる。」(前記北村地方自治職員研修20頁)とされる。このため、「1998年(平成10年)に制定された(島根県)『出雲市飲料容器及び吸い殻等の散乱の防止に関する条例』は、義務違反に対して、直罰的に2万円以下の罰金を規定していた。しかし、抑制効果の点でも、それほどの効果がなく、また、実際に適用することが困難であることから、罰則は削除され、原状回復命令等への違反に対して2万円以下の過料に改正された。」(前記北村地方自治職員研修20頁)例もあるとされる。

  過料は「現場での過料徴収を積極的に行うことにより、実効性をかなりの程度確保」できる(宇賀克也「行政法概説T(第6版)」(有斐閣 2019年)258頁)とされる。具体例をあげると、千葉県市川市は、「市川市民等の健康と安全で清潔な生活環境の保持に関する条例」(平成15年9月22日公布、平成16年4月1日施行、平成22年4月1日改正施行)を制定し、ポイ捨て違反者に対して2000円の過料を科しているが、多い時(平成17年)には5000件を超える過料を科し、その結果、ポイ捨て件数は大きく減少しているとしている(市川市HP「過料件数・ポイ捨て定点観測の推移」。

  一方で、現場での過料徴収及びそのための取り締まりには、大きな人的・物的コストが必要となるとされ、「財政的に余裕のない地方自治体においてはこのような対策を採れない以上、刑罰規定の選択も考慮されるべきことになろう」(前記深町論文85頁)とされ、また、「特にポイ捨てに妥当することであるが、ある地域の生活環境のみならず、観光地としての価値を維持することが極めて重要となるため、そうした価値を損なう行為としてのポイ捨てに対して犯罪としてのスティグマを付与することは十分に合理性があると言えよう。」(前記深町論文85頁)ともされる。

  なお、神奈川県大和市は、平成22年に制定した「大和市ポイ捨て等の防止に関する条例」を平成24年7月に改正施行して、罰則規定(12条)を設けたが、2万円以下の罰金としている。このことに関して、大和市は「ポイ捨て等の禁止行為の違反者が勧告を受け、これに従わないときは、新たに市から勧告に従うよう命じ、命令にも従わない場合には、罰則として2万円以下の罰金の適用を新たに規定します。違反者を罰すること自体が目的ではありませんが、近隣自治体との規制の仕組みの整合性や、ポイ捨て等による迷惑な行為の違反者に刑事罰である罰金を適用するという抑止及び未然防止効果を活かすため規定します。」(大和市HP「「大和市ポイ捨て等の防止に関する条例」を一部改正」)としている。




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