空き家条例

(令和5年3月3日更新)

【はじめに】

〇 本稿では、「空き家条例」を取り上げる。居住者のいない空き家が、地域の安全、衛生、景観等の様々な問題を引き起こしていることを踏まえ、その所有者等に適正な管理を求めるとともに、空き家に対する自治体の対応を規定している条例である。

〇 空き家問題や空き家条例については、北村喜宣上智大学教授が「多数の著作を有し、この問題について第一人者といえる」(宇賀克也「はしがき」(行政法研究24号(信山社 2018年6月)ⅲ~ⅳ頁))とされる。北村教授の空き家問題や空き家条例に関する多数の著作のうち、本稿では、特に「老朽空き家への法政策対応」(北村喜宣「自治体環境行政法第8版」(第一法規 平成30年10月)第15章。以下、「北村論文①」という。)、「空き家対策の自治体政策法務」(北村喜宣「空き家問題解決のための政策法務-法施行後の現状と対策-」(第一法規 平成30年2月)第1章。以下、「北村論文②」という。)、「条例による空き家対策をめぐる法的論点」(前記「空き家問題解決のための政策法務-法施行後の現状と対策-」第2章。以下、「北村論文③」という。)、「空家法制定後の条例動向」(前記行政法研究24号 1。以下、「北村論文④という。)、「空家法の実施と条例対応」(亘理格・内海麻利編著「縮減の時代の「管理型」都市計画」(第一法規 令和3年2月)第2部第4章。以下、「北村論文⑤」という。)、「空き家法制定後の空き家条例の動向」(北村喜宣「空き家問題解決を進める政策法務-実務課題を乗り越えるための法的論点とこれから」(第一法規 令和4年10月)第2章。以下、「北村論文⑥」という。)を参考にしている。北村論文①は自治体の条例と国の法律による対応の経緯と両者の関係を概観したものであり、北村論文②は平成24年4月時点の空き家条例を、北村論文③は平成24年12月時点の空き家条例を、北村論文④は空家法が成立した平成26年11月から平成29年10月までに制定された条例を、北村論文⑤は平成29年11月から令和元年10月までに制定された条例を、北村論文⑥は令和2年7月までに筆者が入手した条例それぞれ紹介するとととともに詳しく分析している。なお、大澤昭彦「空家法の補完機能としての空き家条例の実態」(高崎経済大学地域科学研究所編「空き家問題の背景と対策」(日本経済評論社 令和元年3月)第2章)は、平成30年9月末時点で制定済みの空き家条例を分析している。

〇 「あきや」の表記については、自治体の条例では、「空き家」とするものもあれば、「空家」とするものもある。平成26年の「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、「空家法」という。)制定前の空き家条例では「空き家」と表記されていたが、空家法制定後は「空家」と表記されるものが多くなった。「あきや」は、例えば広辞苑第7版は「空き家」としているように、一般的には「空き家」と表記されることが多いが、法令では通常「空家」(空家法のほか、「豪雪地帯対策特別措置法」13条の4等)と表記される。しかし、法令では唯一「特別交付税法に関する省令」は「空き家」(例えば、4条1号の表56号は「空き家対策に要する経費があること。」)としており、行政文書も総務省行政評価局「空き家対策に関する実態調査(平成31年1月)」は「空き家」と表記している。本稿では、空家法や個々の条例の規定を引用する場合を除き、「空き家」と表記することとする。

 

【空家法制定前の空き家条例の動向】

〇 空き家条例は、平成22年7月に制定された埼玉県所沢市の「所沢市空き家等の適正管理に関する条例」以降、「まさに燎原の火のごとく制定が拡大した」(北村論文①283頁)とされる。所沢市条例以前には、空き地の管理に併せて空き家の管理についても規定する条例や景観に関する条例や環境美化に関する条例で空き家の管理についても規定が置かれるものはあったが、空き家対策に特化した条例は所沢市条例が全国で初めてであった(北村論文②14頁、田中孝夫「適正な管理がなされていない空き家にどう対応するのか」(自治体法務NAVI47号(平成24年6月)20頁)とされる。

 所沢市条例が制定された平成22年7月以降の空き家対策に特化した条例の制定状況については、北村論文②は平成24年4月までに30条例が、北村論文③は平成24年12月末までに約70条例が確認できるとし、それぞれその一覧表を掲載している。これらによると、所沢市条例が制定されて後、2年強で約70の空き家対策に特化した条例が制定されたこととなる。

 また、国土交通省資料(自治体の空き家対策条例(平成26年4月1日現在))によると、平成26年4月1現在、「空き家対策条例」は、355自治体(1県、354市区町村)で356条例(埼玉県蕨市が2条例)が制定されている。同国土交通省調査は、空き家対策に特化した条例だけではなく、景観条例や環境美化条例等で空き家に関する規定を置いているものも含まれるが、平成22年に6条例、平成23年に8条例、平成24年に53条例、平成25年に164条例が制定されており、「所沢市条例の制定後に空き家条例が激増した様子がよくわかる。」(北村論文①272頁)とされる。なお、国土交通省は、空家法が制定される前の平成26 年10月には、401条例が制定されていた(国土交通省資料「空家等対策の推進に関する特別措置法(平成 26年法律第127号)の概要」)としている。

〇 このように所沢条例制定後、空き家条例ブームともいえる現象が生じたが、その背景として、北村論文①及び北村論文②は、空き家の増加とそれに伴う社会問題の顕在化、既存法令の非活用、自治体の対応困難等があげられるとしている。すなわち、わが国では住宅の新規着工数が増加する一方で、空き家数及び空き家率も増加し(平成20年では、空き家率は13.1%。なお、平成25年では13.5%、平成30年では13.6%である(総務省「平成30 年住宅・土地統計調査」))、そのことにより、建築物の倒壊の恐れ、建材の飛散・崩落の恐れ、樹木・雑草の繁茂、公衆衛生の低下、治安の低下、地域イメージの低下等の問題を引き起こしていること、建築基準法10条3項は、「特定行政庁は、建築物の敷地、構造又は建築設備・・・が著しく保安上危険であり、又は著しく衛生上有害であると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置をとることを命ずることができる。」と規定しているものの、前例がない、要件が不明確、命令の履行が期待できない、行政代執行は手続的に面倒等の理由により、活用されてこなかったこと、そのため、住民から苦情が持ち込まれても、自治体として対応する決め手を欠いていたことなどをあげている(北村論文①270頁以下、北村論文②2頁以下)。

〇 所沢市条例、すなわち、

埼玉県所沢市

所沢市空き家等の適正管理に関する条例

平成22年7月5日公布

平成22年10月1日施行

平成28年4月1日改正施行

 は、制定の背景としては、老朽化した住宅の増加、所有者の高齢化や遠隔地への移転等で管理不全な空き家が目立つようになり、近隣住民から不審者の侵入や放火などの不安などについて相談が寄せられるようになったことなどがあり、当初、「防犯まちづくり推進条例」を制定して空き家に関する規定を置くことが検討されたが、防犯上の問題のみならず環境保全上や火災予防上の問題もあることなどから、単独の条例を制定することとなったとされる(自治体法務研究2011年秋号CLOSEUP先進・ユニーク条例「所沢市空き家等の適正管理に関する条例について」参照)。

 条例の目的は「空き家等が放置され、管理不全な状態となることを防止することにより、生活環境の保全及び防犯のまちづくりの推進に寄与すること」(1条)とし、「空き家等」を「市内に所在する建物その他の工作物で常時無人の状態にあるもの」(2条1号)、「管理不全な状態」を「建物その他の工作物又はその敷地が、老朽化若しくは台風等の自然災害による倒壊等のおそれがある状態若しくは建築材等の飛散による危険な状態又は不特定者の侵入による火災若しくは犯罪が誘発されるおそれのある状態」(2条2号)と定義づけている。

 規定内容としては、空き家等の所有者等に管理不全な状態にならないように適正な管理を義務づける(3条)とともに、市長は実態調査をし(5条)、空き家等が管理不全な状態になるおそれがある、あるいは、管理不全な状態であると認めるときは、所有者等に対し、助言・指導、勧告、命令、公表ができる(6条~8条)等としている。

 なお、同条例は、空家法制定後平成28年に改正施行されているが、基本部分は変更されていない(現条例の9条(応急措置)及び11条(空家等対策の推進に関する特別措置法との関係)が追加され、他の条文の一部も若干修正されている。なお、前記2条1号及び2号の規定は改正前の条文である。)。

〇 所沢市条例制定の後、多くの条例が制定されたが、「空家法以前のものは、どちらかといえば、所沢市条例をモデルにしたものが大半で、それほどの違いはなかった。」(北村論文①283頁)とされる。とはいえ、条例の内容や規定の仕方は条例によって異なる部分があり、北村論文②及び北村論文③はあわせて約70の条例の分析を行っている。このうち、特に北村論文②は、所沢市条例とは異なる規定を置く条例として東京都足立区と秋田県東成瀬村の条例を、空き家条例として全国で初めて行政代執行を行った事例として秋田県大仙市の条例を、都道府県の条例として和歌山県の条例を、紹介し、解説している。すなわち、

東京都足立区

足立区老朽家屋等の適正管理に関する条例

平成23年10月25日公布

平成23年11月1日施行

秋田県東成瀬村

東成瀬村空き家等の適正管理に関する条例

平成23年12月26日公布

平成24年1月1日施行

秋田県大仙市

大仙市空き家等の適正管理に関する条例

平成23年12月26日公布

平成24年1月1日施行

和歌山県

建築物等の外観の維持保全及び景観支障状態

の制限に関する条例

平成23年7月7日公布

平成24年1月1日施行

平成27年7月3日改正施行

平成28年6月28日改正施行

である。

 足立区条例は、「老朽家屋等の管理の適正化を図ることにより、倒壊等の事故、犯罪及び火災を防止し、もって区民の安全で健康な生活を確保すること」(1条)を目的としているが、条例で対策を講ずる対象は「空き家等」ではなく「老朽家屋等」としている。所有者等の責務(3条)、区長による調査(4条)と指導勧告(5条)を定めるほか、所沢市条例と異なり、助成(6条)、緊急安全措置(7条)、老朽家屋等審議会(8条~12条)等の規定を置いている。このうち、緊急安全措置は、「建物等の危険な状態が切迫している場合で、所有者等から自ら危険な状態の解消をすることができないとの申出があったとき」に、区長が「危険な状態を回避するために必要な最低限度の措置」をとることができる(7条1項)とするものであり、措置を実施する場合は、所有者等の同意が必要(7条2項)としている。本条例は、平成23年に制定後は、改正されていない。

 東成瀬村と大仙市は、ともに秋田県中南部の豪雪地帯にあるが、平成23年冬に記録的大雪があり、空き家倒壊の懸念が指摘されたことにより、条例が制定されている。両条例とも、所有者等の責務、実態調査、助言・指導、勧告、公表、命令の規定を置くほか、所沢市条例と異なり、立入調査及び代執行についても定めている。このうち、行政代執行は、「命令を受けた者が当該命令に従わない場合において、他の手段によってその履行を確保することが困難であり、かつ、その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、行政代執行法・・・の定めるところにより代執行を行うことができる。」(東成瀬村条例14条、大仙市条例13条)としており、行政代執行ができる旨の確認的な規定を置いている。大仙市は、平成24年3月に全国で初めて代執行による空き家の撤去を行っている(内閣府「地方分権改革事例100」事例39「空き家適正管理条例の制定」参照)。また、両条例とも、対応すべき空き家の「危険な状態」について、詳細な規定を設けており、「この内容も、その後の条例に影響を与えている。」(北村論文②23頁)とされる。なお、東成瀬村条例は、寄付の申出(11条)に関する規定を置いている。両条例とも、平成23年に制定後は、改正されていない。

 和歌山県は、都道府県として空き家条例を制定した。和歌山県条例は、建築物等の外観が、著しい破損、腐食等を生じ、周辺の良好な景観に対して著しく不調和である状態を「景観支障状態」(3条1項)とし、知事は、その状態にある建築物等の除去措置の要請、勧告、命令を行うことができる(4条~6条)としている。なお、和歌山県条例は、平成27年及び平成28年に改正施行されているが、基本的なスキームを変わっていない。和歌山県条例の内容等については、自治体法務研究2012年夏号CLOSEUP先進・ユニーク条例「建築物等の外観の維持保全及び景観支障状態の制限に関する条例について」及び和歌山県HP「景観支障防止条例」を参照されたい。

 

【空家法の制定とその内容】

〇 所沢市条例制定以降制定された多くの条例の制度設計や実施の過程を通じて、いくつかの課題が認識されていたとされる。すなわち、1、所有者等の了解を得ないで敷地や家屋内部に立ち入り調査ができるか否か(所沢市条例や足立区条例は立入調査の規定は置かず、東成瀬村条例や和歌山県条例は立入調査の規定を置いている)、2、地方税法22条の守秘義務の規定などから、所有者等の情報収集が困難な場合がある、3 所有者が不明な場合に行うことができるといわゆる略式代執行は、条例ではなく、個別法によってのみ規定できると解されているなど(北村論文①274、275頁)であり、条例のみでは対応に限界があり、法律による解決が必要な課題もあった(北村基宣「空家法の立法過程と法案の確定」(前記「空き家問題解決のための政策法務」第5章127頁)とされる。このため、空き家対策に関する法律を求める声が自治体等から、関係省庁や国会議員に対して寄せられていた。

〇 他方、国土交通省は、建築基準法10条3項を空き家に対して適用することで対応可能であるとして、新法制定には消極的であった(北村論文①275頁)。このため、国会議員が動き出し、平成25年3月に自民党に「空き家対策推進議員連盟」が組織され、法案の検討が進められ、その結果、平成26年11月に議員立法により、空家法すなわち「空家等対策の推進に関する特別措置法」(平成26年11月27日公布・平成27年2月26日施行・一部平成27年5月26日施行)が制定された。

〇 空家法は、「適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることに鑑み、地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図り、あわせて空家等の活用を促進する」(1条)ことを目的としており、「空家等」を「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)」(2条1項)と、「特定空家等」を「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等」(2条2項)と定義づけている。

 空家等に対する対策の事務の主体を市区町村に置き、市区町村は、国土交通大臣及び総務大臣が定める基本指針に即して空家等対策計画を作成することができる(6条)とともに、協議会を設置する(7条)ことができるとしている。また、市区町村長は、立入調査(9条)及び固定資産税課税情報等の所有者等に関する情報の内部利用(10条)ができるとしたうえで、特定空家等の所有者等に対して、助言・指導、勧告、命令ができる(14条1項~3項)としている。命令不履行の場合は、命令対象者が過失なく確知できない場合も含めて、行政代執行ができる(同条9項、10項)としており、いわゆる略式代執行が認められている。命令違反者や立入調査拒否者等に対して、過料を科す(16条)としている。

〇 空家法の制定により、市区町村は法的な裏付けをもって、空き家対策を講じることが可能となった。また、これまで課題とされていた、立入調査、固定資産税課税情報等の利用、略式代執行についても、明文で認められた。しかし、空家法は、条例については一切触れておらず、これまで制定されていた条例の取扱いや条例で規定されているものの法律では規定されていない事項の取扱いなどが、新たな課題となった。

 空家法の制定過程については前記北村論文「空家法の立法過程と法案の確定」を、その内容については北村基宣「空家法の逐条解説」(前記「空き家問題解決のための政策法務」第6章)を、空家法に関する各種データ(法令、基本指針、ガイドライン、施行状況、総務省行政評価局実態調査等)については国土交通省HP「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」を、それぞれ参照されたい。

〇 なお、令和5年6月14日に「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が公布され、同年12月13日に施行された。同法は、①所有者の責務強化(現行の適切な管理の努力義務に加え、国、自治体の施策に協力する努力義務を追加)、②空家等活用促進区域(市区町村が空家等活用促進区域及び空家等活用促進指針を定めた場合に接道規制や用途規制を合理化し、用途変更や建替え等を促進等)、③空家等管理活用支援法人(市区町村長は、空家等の管理や活用に取り組むNPO法人、社団法人等を空家等管理活用支援法人として指定)、④空家等の管理の確保(市区町村長は、放置すれば特定空家等になるおそれがある空家等を管理不全空家等として指導・勧告、勧告を受けた管理不全空家等の敷地は固定資産税の住宅用地特例を解除)、⑤特定空家等の除却等(市区町村長に特定空家等の所有者等に対する報告徴収権を付与、特定空家等に対する命令等の事前手続きを経るいとまがないときの緊急代執行制度を創設、所有者不明時の略式代執行、緊急代執行の費用徴収を円滑化、市区町村長に財産管理人の選任請求権を付与)について、規定している。同法の内容等については、国土交通省HP「「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」を参照されたい。

 

【空家法制定後の空き家条例の動向】

〇 空家法制定後の市区町村の対応を、北村基宣「空家法制定後における市町村の条例対応とその特徴」(前記「空き家問題解決のための政策法務」第9章)は、①空家法のみを実施する市町村、②空家法に加えて既存条例をそのまま併用する市町村、③空家法に加えて既存条例を(全部・一部)改正して併用する市町村、④空家法に加えて新たに空き家条例を制定して併用する市町村の整理できるとしている(270頁)。

 これを踏まえて、大澤論文は、平成30年9月末制定されている559の空き家条例(環境保全関連条例で空き家対策を講じている条例は除く)を分析し、分類している。空家法施行前に条例を制定していた自治体のうち、①条例廃止をした団体は17、②条例を改正していない団体は177、③条例を改正した団体は169、空家法施行前に条例を制定していなかった自治体のうち、④新たに条例を制定した団体は213、であるとし、「法律ができた後に廃止した自治体は17にとどまる一方、法施行後に対応した条例は全559条例のうち382に及び、全体の3分の2を占める」(59頁)としている。

 また、北村論文④は平成26年11月から平成29年10月までに制定・改正された条例は243が、北村論文⑤は平成29年11月から令和元年10月までに制定・改正された条例は204が、それぞれ確認できるとしている。

 なお、令和元年10月1日以降も令和5年10月10日まで(いずれも、公布日)で、新たに157の条例が制定されていることが確認できる。制定年と制定団体は以下の通りである。

令和元年

(10月1日~12月31日)

16条例

栃木県さくら市、山梨県山梨市、長崎県雲仙市、岩手県住田町、北海道赤平市、千葉県芝山町、
北海道恵庭市、福井県おおい町、秋田県鹿角市、和歌山県湯浅町、埼玉県日高市、群馬県邑楽町、
三重県熊野市、新潟県十日町市、愛知県大府市、千葉県印西市

令和2年

52条例

広島県庄原市、岩手県一戸町、北海道愛別町、宮城県大衡村、北海道今金町、山梨県早川町、
宮崎県木城町、岐阜県七宗町、岡山県西粟倉村、宮城県石巻市、愛知県東栄町、奈良県広陵町、
熊本県宇土市、鹿児島県南さつま市、岩手県大船渡市、群馬県高山村、富山県立山町、
奈良県大和高田市、三重県多気町、岩手県金ケ崎町、石川県珠洲市、岡山県玉野市、
広島県三原市、東京都調布市、千葉県富津市、愛知県岡崎市、大阪府池田市、群馬県みどり市、
沖縄県沖縄市、埼玉県北本市、愛知県愛西市、愛知県豊川市、茨城県かすみがうら市、
栃木県那須町、愛知県北名古屋市、広島県大崎上島町、茨城県東海村、北海度秩父別町、
北海道奥尻町、北海道厚岸町、宮崎県高鍋町、千葉県市原市、新潟県佐渡市、愛知県知多市、
北海道紋別市、島根県雲南市、愛知県高浜市、北海道比布町、沖縄県北谷町、奈良県曽爾村、
青森県田舎館村、岩手県紫波町

令和3年

36条例

鹿児島県龍郷町、横浜市、福島県楢葉町、北海道北斗市、宮城県名取市、埼玉県吉川市、
群馬県昭和村、長崎県長与町、茨城県利根町、埼玉県久喜市、新潟県見附市、宮崎県五ヶ瀬町、
岡山県里庄町、山梨県昭和町、熊本県八代市、茨城県つくばみらい市、静岡県富士市、
岐阜県本巣市、神奈川県秦野市、福岡県久留米市、京都府木津川市、青森県風間浦町、
滋賀県愛荘町、鹿児島県伊仙町、埼玉県美里町、北海道枝幸町、兵庫県西脇市、北海道名寄市、
長野県喬木村、沖縄県石垣市、宮崎県都城市、長野県山ノ内町、三重県大台町、大阪府松原市、
大分県津久見市、広島県江田島市、群馬県南牧村、奈良県河合町

令和4年

33条例

鹿児島県肝付町、奈良県王寺町、宮崎県国富町、長野県売木村、神奈川県山北町、福岡県みやま市、
新潟県加茂市、新潟県魚沼市、北海道鹿部町、宮崎県小林市、石川県野々山市、鳥取県若桜町、
埼玉県入間市、沖縄県糸満市、埼玉県寄居町、岡山県笠岡市、岡山県井原市、奈良県五條市、
京都府京田辺市、佐賀県鹿島市、三重県大紀町、北海道滝川市、福島県いわき市、香川県さぬき市、
東京都大田区、鹿児島県与論町、福岡県吉富町、北海道当麻町、岐阜県飛騨市、新潟県南魚沼市、
北海道幌延町、福岡県宗像市、東京都青梅市

令和5年

(1月1日~10月10日)

20条例

静岡県裾野市、宮城県塩竈市、青森県七戸町、千葉県白子町、長野県朝日村、香川県多度津町、
大分県九重町、熊本県合志市、静岡県藤枝市、新潟県弥彦村、長野県千曲市、大阪府和泉市、
長崎県島原市、奈良県大淀町、山形県山形市、大阪府吹田市、高知県田野町、長崎県波佐見町、
青森県東北町、福島県会津若松市

〇 このように、空家法が制定された後も、既存条例を改正し、又は新規に条例を制定する自治体は多い。令和の時代に入っても、増加傾向は変わらない。多くの市区町村で条例改正・制定が進められている。

 こうした状況について、北村教授は、「空家法を制定した立法者が、同法にもとづく空き家対策を市町村が推進するにあたって、同法以外に条例が必要と考えていたかは不明である。ただ、法制定後3年を経過してもなお条例制定が続いているという事実は、実施に当たる市町村自身が、空家法だけでは不十分と考えている証左にほかならない。」(北村論文④2頁)としている。そして、空家法制定後に改正・制定された条例を見た場合、空家法以前に制定された条例は「所沢市条例をモデルにしたものが大半で、それほどの違いはなかった」のに対して、これらの条例は「驚くほどの多様性がある」とし、「市町村独自の法解釈を施した仕組みや規定ぶりも目立ち、分権時代の自治体政策法務の展開において、注目すべき事例となっている。」(北村論文①283頁)と評している。

〇 そのうえで、北村教授は、空家法制定後の空き家条例の規定事項は、大きく①時間的前置、②追加対象、③法律実施の3つに分けることができるとしている。内容及び具体的な事例については、北村論文①278頁以下、北村論文④4頁以下、北村論文⑤111頁以下、北村論文⑥76頁以下に詳細に記述されているが、これらによると、概略以下のようなことが言える。

① 時間的前置は、保安上の危険性の程度が低いため空家法の「空家等」に該当しないものの、そのまま放置すればいずれは空家法の規制対象となる家屋に一定の措置を講ずることにより、それを回避する方策を規定するものである。

② 追加対象は、空家法が対象としていない家屋等に対して横出し的対応を規定するものである。具体的には、長屋・共同住宅の住宅部分、居住者のいる老朽危険家屋などがある。

③ 法律実施は、空家法の規定に関して、市町村の地域特性に応じた対応が可能になるようにするためのものであり、(a)確認、確定、詳細化、修正、(b)追加(手続、措置)に細分できる。

・ (a)の「確認」は、空家法の関係規定を市町村に即して読み替えて確認的に規定するものである。例えば、空家法で「市町村は」「市町村長は」と規定している関係条文を、「市は」、「市長は」として条例に「二度書き」する対応である。

・ 「確定」は、空家法が任意としている事項について、それを採用するという決定を条例でするものであり、具体的に空家法6条の空家等対策計画の策定や同法7条の協議会の設置などがある。

・ 「詳細化」は、空家法の規定を詳細化した内容を条例で規定するものであり、自治体の法解釈を明確にするものであり、例えば、空家法2条2項の特定空家等の要件について具体的な基準を規定したり、同法14条3項の命令できる場合を条例で具体的に規定することなどである。

・ 「修正」は、空家法の規定を上書きする対応であり、例えば、空家法3条の努力義務規定を義務化したり、同法14条における助言・指導・勧告を命令に前置する規定を前置不要とする場合を認めるものなどである。

・ (b)の「追加」は、空家等や特定空家等に関して、空家法に定めのない内容を追加的に規定するものであり、追加的手続と追加的措置に分けることができる。

・ 「追加的手続」としては、特定空家等の認定手続を規定するもの、空家法14条の措置の決定に先立ち附属機関の意見聴取を義務づけるもの、14条2項の勧告に先立ち意見陳述の機会を保障するものなどがある。

・ 「追加的措置」としては、特定空家等に該当しない空家等に対して措置を講じうると規定するもの、空家法14条1項指導又は2項勧告を受けた所有者から実施困難との申出を受けた場合の行政による代行措置を規定するもの、同法14条に規定される措置に従わなかった場合のサンクションしての公表を規定するもの、即時執行を規定するもの、不在者財産管理人ないし相続財産管理人の選任申立てについて規定するもの、建築物の所有者に対して未登記の場合に登記を義務づけるものなどがある。このうち、「即時執行」は、条例によっては、「緊急安全措置」、「緊急時の管理行為」、「応急代行措置」、「応急措置」等と表現されるが、空き家条例の必置規定といってよい内容であるとされる。

 なお、国土交通省資料「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(平成29年3月31日時点 国土交通省・総務省調査)は、平成29年3月31日時点で「空き家適正管理条例」又はそれに類する条例を525市区町村が施行中であるとし、このうち、「長屋・共同住宅(建築物全体が空き家でないもの)」を当該条例の対象としているのは47市区町村、緊急安全措置(安全応急代行措置等を含む)を当該条例で規定しているのは297市区町村であるとしている。

 

【空家法制定後改正・制定された条例】

〇 まず、空家法制定前に制定され、同法制定後制定された条例の中から、二つの条例を紹介する。

兵庫県小野市

小野市空家等の適正管理に関する条例

平成24年9月28日公布

平成25年1月1日施行

平成28年3月28日改正施行

京都市

京都市空き家等の活用,適正管理等に関する条例

平成25年12月24日公布

平成26年4月1日施行

平成27年12月22日改正施行

 小野市条例は、平成24年9月に制定され、平成28年3月に改正施行されている。改正後は、制定当初時の規定を踏まえつつ、空家法の規定を考慮したものとしている。特定空家等の要件の具体的な基準(2条2号)、自治会からの情報提供(4条)、特定空家等の認定(6条)、特定空家等跡地の有効活用(7条)、行政代執行を行う場合の公益要件と議会の議決(9条2項)、危険予防措置(10条)等を規定している。

 京都市条例は、平成25年12月に制定され、平成27年12月に改正施行されている。改正後は、制定当初時の規定を踏まえつつ、空家法の規定を考慮したものとしている。条例の対象を「空き家等」とし、「現に人が居住せず,若しくは使用していない状態にあるもの」のみならず、「これらに準じる状態にあるもの」も含み、また、「長屋及び共同住宅」も対象に加え(2条1号)、法の規定が適用される特定空き家等に対する措置と法の規定が適用されない特定空き家等に対する措置を別条文で規定している(15条及び16条)。また、著しい管理不全状態にある特定空き家等に対しては、空家法14条に規定する助言・指導・勧告を前置することなく、命令することができる(17条1項)とするとともに、「緊急安全措置置(19条)、軽微な措置(20条)、協議会の設置(23条)等を規定している。

 両条例とも、改正後も、改正前の条例の内容が色濃く反映されている。

〇 次に、空家法制定後制定された条例のうち、平成27年から平成30年にかけて制定された条例の中から、いくつかの条例を紹介する。

長野県飯田市

飯田市空家等の適正な管理及び活用に関する条例

平成27年3月26日公布

平成27年7月1日施行

兵庫県明石市

明石市空家等の適正な管理に関する条例

平成27年3月31日公布

平成27年3月31日施行

岩手県北上市

北上市空家等対策条例

平成28年3月17日公布

平成28年4月1日施行

茨城県ひたちなか市

ひたちなか市空家等対策の推進に関する条例

平成28年3月25日公布

平成28年4月1日施行

東京都荒川区

荒川区空家等対策の推進に関する条例

平成28年12月16日公布

平成29年4月1日施行

岡山県総社市

総社市空家等の対策の推進に関する条例

平成30年3月22日公布

平成30年4月1日施行

千葉県銚子市

銚子市空家等の適切な管理に関する条例

平成30年3月23日公布

平成30年4月1日施行

愛知県豊橋市

豊橋市空家等の適切な管理及び活用に関する条例

平成30年3月28日公布

平成30年4月1日施行

北海道岩内町

岩内町空き家等対策の推進に関する条例

平成30年9月13日公布

平成30年9月13日施行

 飯田市条例は、準特定空家等の概念の設定(2条4号)、空家等に係るまちづくり委員会の役割(5条)、準特定空家等の所有者等に対する助言、指導(7条)、緊急安全措置(8条)、軽微な措置(9条)、審議会の設置(13条)等を、

 明石市条例は、勧告に当たっての意見聴取等(8条)、勧告に従わなかった場合の公表(9条)、命令の基準(10条)、応急措置(11条)等を、

 北上市条例は、空家等対策計画の策定(5条)、審議会の設置(6条)、特定空家等の認定と取消(15条)、安全措置(20条)、即時執行(21条)等を、

 ひたちなか市条例は、特定空家等に該当しない管理不全空家への指導(2条3号、8条)、緊急安全措置(9条)、協議会の設置(10条)等を、

 荒川区条例は、「使用建築物」の概念の設定(2条1項)、特定空家等の判定(7条)、空家等の使用者等の所有物に対する措置等(10条)、緊急の必要がある場合の空家等に対する措置(11条)、審査会の設置(12条)等を、

 総社市条例(平成27年に制定したものを、平成30年に全部改正)は、空家等対策計画の策定(6条)、協議会の設置(7条)、法14条の措置の当たっての配慮事項(14条)、緊急安全措置(16条)等を、

 銚子市条例は、相続財産管理人の選任(11条)、緊急安全措置(12条)等を、

 豊橋市条例は、勧告、命令、代執行を行う場合の協議会への意見聴取(8条)、代行措置(9条)、緊急安全措置(10条)等を、

 岩内町条例は、空き家等対策計画の策定(8条)、協議会の設置(9条)、建築物の所有者等に対する登記等の義務づけ(13条1項)、特定空き家等の判定(15条)、特定空き家等の認定(17条)、命令に従わない場合の公表(21条)、勧告、命令、公表、代執行を行う場合の協議会への意見聴取(19条2項、20条9項、21条3項、22条3項)、緊急安全措置(23条)等を、それぞれ規定している。

 これらの規定を見ると、「驚くほどの多様性がある」(北村論文①283頁)状況の一端をうかがい知ることができる。

〇 さらに、空家法制定後制定された条例のうち、令和の時代に入ってから制定された条例の中から、いくつかの条例を紹介する。

佐賀県玄海町

玄海町空家等の適正な管理及び活用の促進に関する条例

令和元年9月20日公布

令和元年9月20日施行

岡山県玉野市

玉野市空家等の適切な管理の促進に関する条例

令和2年3月23日公布

令和2年4月1日施行

大阪府池田市

池田市空家等及び空き長屋等の適切な管理に関する条例

令和2年3月25日公布

令和2年4月1日施行

沖縄県沖縄市

沖縄市空家等の対策の推進及び適正な管理に関する条例

令和2年3月27日公布

令和2年4月1日施行

茨城県東海村

東海村空家等対策の推進に関する条例

令和2年6月18日公布

令和2年10月1日施行

千葉県市原市

市原市空家等の適正な管理に関する条例

令和2年9月24日公布

令和2年9月24日施行

愛知県知多市

知多市空家等の適正管理に関する条例

令和2年9月28日公布

令和3年1月1日施行

横浜市

横浜市空家等に係る適切な管理、措置等に関する条例

令和3年3月5日公布

令和3年8月1日施行

兵庫県西脇市

西脇市空家等の適正管理に関する条例

令和3年6月25日公布

令和3年6月25日施行

長野県喬木村

喬木村空家等に係る適切な管理、措置及び活用に関する条例

令和3年9月17日公布

令和3年9月17日施行

群馬県南牧村

南牧村空家等対策の推進に関する条例

令和3年12月20日公布

令和3年12月20日施行

沖縄県糸満市

糸満市空家等の適切な管理及び対策の推進に関する条例

令和4年3月25日公布

令和4年10月1日施行

京都府京田辺市

京田辺市空家等対策の推進に関する条例

令和4年3月31日公布

令和4年7月1日施行

佐賀県鹿島市

鹿島市空家等の適正管理及び活用の促進に関する条例

令和4年3月31日公布

令和4年3月31日施行

福島県いわき市

いわき市空家等緊急措置条例

令和4年6月22日公布

令和4年8月1日施行

鹿児島県与論町

与論町空家等の適正管理に関する条例

令和4年9月5日公布

令和4年9月5日施行

北海道幌延町

幌延町空家等の適切な管理に関する条例

令和4年12月16日公布

令和4年12月20日施行

東京都青梅市

青梅市空家等対策の推進に関する条例

令和4年12月23日公布

令和5年1月1日施行

静岡県藤枝市

藤枝市空き家等の適切な管理に関する条例

令和5年3月20日公布

令和5年7月1日施行

大阪府和泉市

和泉市空家等及び空き長屋等の適切な管理に関する条例

令和5年3月24日公布

令和5年6月1日施行

長崎県島原市

島原市空家等対策の推進に関する条例

令和5年3月27日公布

令和5年4月1日施行

山形県山形市

山形市特定空家等緊急措置条例

令和5年3月28日公布

令和5年4月1日施行

長崎県波佐見町

波佐見町空家等対策の推進に関する条例

令和5年6月16日公布

令和5年6月16日施行

青森県東北町

東北町空家等の適切な管理に関する条例

令和5年9月8日公布

令和5年10月1日施行

福島県会津若松市

会津若松市空家等応急措置条例

令和5年10月10日公布

令和5年10月10日施行

 玄海町条例は、命令に従わない場合の公表(6条)、緊急安全措置(7条)、補助金の公布(8条)、協議会の設置(9条)等を、

 玉野市条例は、空家等対策計画の策定(4条)、協議会の設置(5条)、応急措置(6条)等を、

 池田市条例は、「空き長屋等」及び「特定空き長屋等」の概念の設定(2条2項、3項)、空き長屋等に対する立入調査(5条)、特定空き長屋等に対する措置(8条)、応急措置(9条)等を、

 沖縄市条例は、緊急安全措置及びそのための立入調査(7条、8条)等を、

 東海村条例は、代行措置(7条)、緊急安全措置(8条)等を、

 市原市条例等は、長屋等の「法定外空家等」の概念の設定(2条2号)、法定外空家等に対する立入調査、助言等(7条~9条)、命令代行措置(10条)、命令に従わない場合の公表(11条)、緊急安全措置(12条)等を、

 知多市条例は、軽微な措置(8条)、緊急安全措置(9条)、勧告、命令を行う場合の協議会の意見聴取(10条)等を、

 横浜市条例は、情報の提供の求め(6条)、危険の周知のための公示(7条)、応急的危険回避措置(8条)等を、

 西脇市条例は、長屋等の「特定法定外空家等」の概念の設定(2条4号)、特定空家等又は特定法定外空家等に対する認定、措置(9条、10条)、命令に従わない場合の公表(11条)、緊急安全措置(12条)等を、

 喬木村条例は、代行措置(9条)、緊急安全措置(10条)、軽微な措置(11条)、活用の促進と発生の予防(14条)等を、

 南牧村条例は、相続財産の管理人の選任の申立て(15条)、緊急安全措置(21条)等を、

 糸満市条例は、安全代行措置(15条)、緊急安全措置(16条)、軽微な措置(17条)等を、

 京田辺市市条例は、長屋や共同住宅を含む「空家空住戸等」の概念の設定(2条1号~4号)、空家空住戸等への立入調査(7条)、緊急安全措置(8条)、特定空家空住戸等の認定(12条)、特定空家空住戸等に対する措置(13条)等を、

 鹿島市条例は、緊急安全措置(10条)等を、

 いわき市市条例は、緊急措置(2条)等を、

 与論町条例は、命令に従わない場合の公表(11条)、緊急安全措置(13条)等を、

 幌延町条例は、情報の利用(11条)、安全代行措置(17条)、緊急安全措置(18条)等を、

 青梅市条例は、命令に従わない場合の公表(14条)、緊急安全措置(15条)、軽微な措置(16条)、相続人の不存在及び不在者への対応(17条)等を、

 藤枝市条例は、「準特定空家等」の概念の設定(2条3号)、特定空家等及び準特定空家等の判定(9条)、準特定空家等に対する助言又は指導(11条)、緊急安全措置(12条)、軽微な措置(13条)、清算人の選任等(14条)等を、

 和泉市条例は、「空き長屋等」及び「特定空き長屋等」の概念の設定(2条2項号、3号)、空き長屋等に対する立入調査(5条)、特定空き長屋等に対する措置(8条)、代執行(9条)、緊急安全措置(10条)等を、

 島原市条例は、情報の利用(7条)、緊急安全代行措置(9条)、軽微な措置(10条)等を、

 山形市条例は、緊急措置(2条)等を、

 波佐見町条例は、緊急安全代行措置(7条)、協議会の設置(9条)等を、

 東北町条例は、空家等対策計画の策定(10条)、命令を行う場合の協議会の意見聴取(15条)、命令に従わない場合の公表(16条)、緊急安全措置(18条)、協議会の設置(19条)等を、

 会津若松市条例は、応急措置(2条)等を、それぞれ規定している。

 これらの条例を見ると、即時執行(緊急安全措置、応急措置、応急的危険回避措置等を含む)は多くの条例が規定しており、また、長屋等を対象にするものも少なくない、ことがわかる。

〇 なお、北村喜宣「空家法改正にあたっての検討項目」(自治研究96巻6号(令和2年6月))は、これまで改正・制定された空き家条例の分析等を踏まえ、今後の空家法の改正検討項目を提示している。

 

【空家活用促進に関する兵庫県条例】

〇 兵庫県は、令和4年3月に、空家の活用促進を目的として空家特区制度を創設すること等を内容とする

兵庫県

空家等活用促進特別区域の指定等による空家等の活用の促進に関する条例

令和4年3月31日公布

令和4年4月1日施行

を、制定した。

〇 空家特区制度の創設の目的として、「県の人口減少は深刻で、人口対策が急務となっています。また、人口減少に連動するかたちで空家数も年々増加しており、地域の活力、居住環境及び地域経済に影響を及ぼしています。」、「そこで、空家等を地方回帰の受皿として流通・活用することにより、移住、定住及び交流の促進並びに地域の活性化を図ることを目的として、届出制度や規制の合理化を定めた「空家等活用促進特別区域の指定等による空家等の活用の促進に関する条例(空家活用特区条例)」を制定(R4.4.1施行)するとともに、空家等の活用を促進するための補助事業として「空家活用特区総合支援事業」を創設しました。」とし、その制度の仕組みとして、「空家等の活用を特に促進する必要がある区域を『空家等活用促進特別区域(特区)』として、市町からの申し出を受け、県が指定します。」、「特区に指定されると、特区内の空家の所有者は、市町に対して空家情報を届け出ることになります。」、「市町と県は、この届出情報を基に、1流通促進、2規制の合理化、3活用支援の3つを軸とした施策を多面的に実施することにより、空家の活用を促進します。」(兵庫県HP「空家活用特区制度」)としている。

〇 本条例の内容等については、上記兵庫県HPを参照されたい。

 

【空き家税に関する京都市条例】

〇 京都市は、令和5年4月に、法定外普通税として空き家税(非居住住宅利活用促進税)を課すこと等を内容とする

京都市

京都市非居住住宅利活用促進税条例

令和5年4月13日公布

市規則で定める日に施行

を、制定した。

〇 本条例は、「非居住住宅の存在が、本市に居住を希望する者への住宅の供給を妨げるとともに、防災上、防犯上又は生活環境上多くの問題を生じさせ、地域コミュニティの活力を低下させる原因の一つになっていることに鑑み、非居住住宅の所有者に対し非居住住宅利活用促進税を課することにより、非居住住宅の有効活用を促すとともに、その税収入をもって空き家の活用を支援する施策を講じることで、住宅の供給の促進、安心かつ安全な生活環境の確保、地域コミュニティの活性化及びこれらの施策に係る将来的な費用の低減を図り、もって持続可能なまちづくりに資すること」(1条)を目的としている。

 非居住住宅利活用促進税は、京都市の市街化区域内に所在する非居住住宅に対し、その所有者に家屋価値割額及び立地床面積割額の合算額によって課す(4条1項)こととし、課税標準は家屋価値割は非居住住宅に係る固定資産税の課税標準となるべき価格、立地床面積割は非居住住宅の単位地積当たり価格に当該非居住住宅の延べ面積を 乗じて得た額(6条1項)、税率は家屋価値割は100分の0.7、立地床面積割は家屋価値割の課税標準となるべき価格に応じ100分の0.15、100分の0.3、100分の0.6(7条)としている。

 なお、非居住住宅利活用促進税は、令和5年3月24日に、地方税法669条1項に基づく協議に係る総務大臣の同意が得られている(京都市HP「非居住住宅利活用促進税の新設が総務大臣の同意により正式決定しました」参照)。

〇 本条例の内容等については、京都市HP「非居住住宅利活用促進税について」及び自治体法務研究2023年冬号条例制定の事例CASESTUDY「京都市非居住住宅利活用促進税」を参照されたい。



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