平和に関する条例
(令和6年12月12日更新)
【広島市の条例】
〇 広島市は、令和3年6月に議員提案により、
広島市 | 令和3年6月29日公布 | 令和3年6月29日施行 |
を制定した。
〇 広島市条例は、前文で「私たち広島市民は、・・・昭和20年8月6日の惨状と復興への道のりを伝え残し、世界に対して,行政を始め各界各層の多くの人々と共に『絶対悪』である核兵器を廃絶するために積極的に声を上げ、行動し、核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現に努めることを決意し、この条例を制定する。」とし、平和を「世界中の核兵器が廃絶され,かつ,戦争その他の武力紛争がない状態」(2条)と定義づけたうえで、「平和の推進に関し,本市の責務並びに市議会及び市民の役割を明らかにするとともに,本市の施策の基本となる事項を定めることにより,平和の推進に関する施策を総合的かつ継続的に推進」(1条)するとしている。
〇 平和記念日について、「人類史上最初の原子爆弾が投下された昭和20年8月6日を世界平和樹立への礎として永久に忘れてはならない日とし,原子爆弾による死没者を追悼するとともに世界恒久平和の実現を祈念するため」、毎年8月6日を平和記念日とし(6条1項)、「平和記念日に、広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式を、市民等の理解と協力の下に、厳粛の中で行うものとする。」(8条2項)としている。
〇 また、市は、平和推進に関する施策として、「核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現を目指し、国内外の都市等との連携を図るための施策」(7条1項)、「市民等が,原子爆弾による被爆の実相への理解を深めるとともに、平和について考え、平和の推進に関する活動を主体的に行うよう、平和意識の醸成を図るための施策」(同条2項)、「原子爆弾被爆者の体験及び平和への思い(・・・)を世界に広め、かつ、これらを次世代に確実に伝え続けるよう、被爆体験の継承及び伝承を図るための施策」(同条3項)等を策定し、実施するものとしている。
〇 広島市議会は、令和元年6月に立ち上げた政策立案検討会議で、「平和の推進に関する条例について」検討を行うこととし、令和元年7月から令和3年6月にかけて、平和関係団体、平和関係の有識者及び市民に対するアンケートの実施、条例素案に対する市民意見募集の実施、これらを受けた条例案の検討等を実施した(広島市議会HP「平和の推進に関する条例について」参照)。政策立案検討会議でまとめられた条例案(「政策立案検討会議検討結果報告書(令和3年6月)」6頁以下)が議長による修正案に基づき修正された(「毎日新聞令和3年6月22日付記事」参照)うえで、議員提案がなされ、令和3年6月25日に賛成多数により議決された。
〇 本条例を市議会において検討することとなった背景として、「平成29年6月に設置した平和推進・安心社会づくり対策特別委員会において、平和の推進に係る調査研究を行う中で、『本市は平和推進のために様々な活動を行っているがその活動の根拠として明文化されたものがない。被爆者の高齢化も進み、被爆体験が直接本人から聞けなくなるという現実を迎えている。こうしたことから、平和の推進に関する条例を今この時に制定する必要がある。』などの意見が出されましたが、一方で市は、条例制定には慎重な姿勢でした。 このような状況の中、平成31年3月、同特別委員会から、『平和の推進に関する条例について、令和元年5月の市議会議員の改選後に取組を進めることとしている議会による政策立案を行うための仕組みの中で条例案策定に向けて検討されたい。』との提言が行われました。 こうした経緯を踏まえ、令和元年6月、政策立案検討会議において平和の推進に関する条例についての検討を進めていくことを決定しました。」(「広島市平和の推進に関する条例(仮称)素案に対する市民意見募集の結果及び提出された意見の概要と政策立案検討会議の考え方」1頁)としている。
【広島県庄原市の条例】
〇 広島県庄原市は、令和3年3月に議員提案により、
広島県庄原市 | 令和3年3月23日公布 | 令和3年3月23日施行 |
を制定した。
〇 庄原市条例は、前文で「私たちは、尊い犠牲と引き換えに得た歴史的教訓を継承していくことが責務であることを確認し、世界最初の被爆県の都市の市民として8月6日を決して忘れることなく、誰ひとりとして平和な日常を脅かされることのない社会の実現に努めることを決意し、平和推進条例を制定する。」とし、「平和の推進に関し、市及び市民の役割を明らかにするとともに、市の施策の基本となる事項を定めることにより、平和の推進に関する施策を総合的に実施」(1条)するとしている。
〇 市は「平和の推進に関する施策を策定し、及び実施するよう努めるものとする。」(2条1項)等とし、市民は「市の平和の推進に関する施策に協力するとともに、平和の推進に関する活動を主体的に行うよう努めるものとする。」(3条)としている。
〇 本条例案については、庄原市総務常任員会が検討し、作成した。「庄原市は、これまで同様、条例が無くても、戦没者追悼式並びに平和祈念式典やロビー展示など平和行政を行ってきた。沖縄県や関東地域の多くの市が平和推進条例、基金条例を定め、条例に基づき児童、生徒の平和使節団を結成し広島、長崎を訪問し、平和行政が行われているが、広島県内では、これまで条例を制定した市町が不思議なことに、存在していない。総務常任委員会では、これまで多くの他市の情報を得る中、本来の予算化の姿にする為、終戦から75年の節目の年に条例制定を目指して活動してきた。しかしながら、条例を制定するにあたり、市民と共に条例を作成する事が条例制定の意義を高める事になると判断し、市民の代表をお招きし、ご意見拝聴した。これを基に、条例案作成後、数回のご示唆や意見を頂き条例作成を行った。」(「令和3年第1回庄原市議会定例会所管事務調査報告書 令和3年3月12日 広島県庄原市議会総務常任委員会」5頁)としている。
【その他の平和の推進に関する条例】
〇 広島市条例及び庄原市条例以外の平和の推進に関する条例として、令和6年12月1日時点で確認できるものとしては、次のようなものがある。
東京都中野区 | 平成2年4月1日公布 | 平成2年4月1日施行 |
|
沖縄県読谷村 | 平成3年3月29日公布 | 平成3年4月1日施行 |
|
東京都三鷹市 | 平成4年3月27日公布 | 平成4年3月27日施行 |
|
沖縄県西原町 | 平成4年3月30日公布 | 平成4年3月30日施行 |
|
神奈川県藤沢市 | 平成7年3月30日公布 | 平成7年3月30日施行 |
|
沖縄県糸満市 | 平成7年3月31日公布 | 平成7年3月31日施行 |
|
千葉県佐倉市 | 平成7年6月30日公布 | 平成7年8月15日施行 |
|
東京都西東京市 | 平成13年1月21日公布 | 平成13年1月21日施行 |
|
北海道苫小牧市 | 平成14年4月1日公布 | 平成14年4月1日施行 |
|
兵庫県宝塚市 | 平成15年9月19日公布 | 平成15年9月19日施行 |
|
岡山県倉敷市 | 平成18年3月24日公布 | 平成18年4月1日施行 |
|
宮城県気仙沼市 | 平成18年9月28日公布 | 平成18年9月28日施行 |
|
堺市 | 平成18年12月22日公布 | 平成19年1月1日施行 |
|
神奈川県海老名市 | 平成19年9月28日公布 | 平成19年10月1日施行 |
|
長崎県時津町 | 平成20年3月27日公布 | 平成20年3月27日施行 |
|
千葉県我孫子市 | 平成20年6月30日公布 | 平成20年7月1日施行 |
|
新潟県新発田市 | 平成22年9月27日公布 | 平成22年9月27日施行 |
|
長野県高森町 | 平成22年9月27日公布 | 平成22年10月1日施行 |
|
横浜市 | 平成30年6月15日公布 | 平成30年6月15日施行 |
|
東京都国立市 | 平成30年12月27日公布 | 平成31年4月1日施行 |
〇 多くの条例は、それぞれの自治体で制定した平和都市宣言や非核都市宣言等(中野区は「憲法擁護・非核都市の宣言」、読谷村は「非核宣言」、三鷹市は「非核都市宣言」、西原町は「非核反戦平和都市宣言」、藤沢市は「核兵器廃絶平和都市宣言」、糸満市は「平和都市宣言」、佐倉市は「平和都市宣言」、宝塚市は「非核平和都市宣言」、気仙沼市は「非核平和都市宣言」、海老名市は「平和都市宣言」、時津町は「核兵器廃絶平和の町宣言」、我孫子市は「平和都市宣言」、新発田市は「核兵器廃絶平和都市宣言」、高森町は「非核平和都市宣言」、国立市は「平和都市宣言」)を踏まえて、平和の実現等に努めていく旨を規定している。
〇 中野区、読谷村、三鷹市、西原町、糸満市、佐倉市、西東京市、気仙沼市、海老名市、我孫子市及び高森町の条例は、平和行政や平和施策・事業を推進することにより平和の実現等を図ることを目的としているが、三鷹市、糸満市、我孫子市及び高森町を除く条例は基本原則を定め、また、海老名市条例を除く条例は平和事業を具体的に列挙したうえでそれらを実施する旨を規定している。それに加えて、中野区及び三鷹市の条例は基金の設置を、西原町条例は平和事業推進委員会の設置を、糸満市条例は平和週間を、西東京市条例は平和の日を、気仙沼市条例は市民の権利を、我孫子市条例は平和事業推進市民会議の設置を、高森町条例は平和推進会議の設置を定めている。
〇 藤沢市、苫小牧市、宝塚市、時津町及び新発田市の条例は、平和の実現と併せて核兵器の廃絶を図ることを目的としており、苫小牧市条例を除く条例は基本原則を定め、核兵器廃絶の実現に向けて国内又は国外の都市等との連携を深めることや当該自治体での核兵器の製造,保有,持込み及び使用に協力しないこと等を規定するとともに、平和事業に関する規定を置いている。苫小牧市条例は、同市において非核三原則の趣旨が損なわれるおそれがある事案が生じた場合は関係機関に対し協議を求めることや核兵器の実験等が行われた場合当該実験等に対して反対を表明するものこと等を規定している。
〇 倉敷市条例は国際平和交流の推進を目的とし、堺市条例は平和と人権を尊重するまちづくりの推進を目的とし、横浜市条例は国際平和の推進を目的とし、国立市条例は人権・平和のまちづくりの推進を目的としている。国立市条例は平和の日及び平和推進週間を定めている。
【平和の日を定める条例】
〇 上記の平和の推進に関する条例においても、広島市条例は「平和記念日」を、西東京市条例及び国立市条例は「平和の日」を定めているが、平和の日等を定める単独条例を制定している自治体もある。令和6年12月1日時点で確認できるものとしては、次のような自治体の条例がある。
岐阜県各務原市 | 平成2年3月19日公布 | 平成2年4月1日施行 |
|
東京都 | 平成2年7月20日公布 | 平成2年7月20日施行 |
|
沖縄県沖縄市 | 平成5年4月1日公布 | 平成5年4月1日施行 |
|
長崎県長崎市 | 平成7年3月23日公布 | 平成7年3月23日施行 |
|
沖縄県北谷町 | 平成7年3月31日公布 | 平成7年4月1日施行 |
|
東京都渋谷区 | 平成14年9月27日公布 | 平成14年9月27日施行 |
|
沖縄県与那原町 | 平成23年3月15日公布 | 平成23年3月15日施行 |
|
東京都武蔵野市 | 平成23年9月22日公布 | 平成23年9月22日施行 |
|
沖縄県南城市 | 平成23年12月22日公布 | 平成23年12月22日施行 |
|
沖縄県南風原町 | 平成25年3月28日公布 | 平成25年3月28日施行 |
|
東京都小金井市 | 平成26年12月18日公布 | 平成26年12月18日施行 |
|
新潟県長岡市 | 平成27年7月23日公布 | 平成27年8月1日施行 |
|
青森県青森市 | 平成28年3月28日公布 | 平成28年3月28日施行 |
|
名古屋市 | 令和6年3月29日公布 | 令和6年4月1日施行 |
〇 広島市、西東京市及び国立市の条例も含め、各条例における「平和の日」等の月日とその由来については、以下のとおりである。なお、広島市は「平和記念日」、渋谷区は「平和・国際都市渋谷の日」、長岡市は「恒久平和の日」とし、他は「平和の日」としている。
広島市 | 8月6日 |
広島市に原爆が投下された日(条例6条) |
東京都西東京市 | 4月12日 |
西東京市に空襲があった日(西東京市HP「西東京市平和の日」) |
東京都国立市 | 6月21日 |
国立市平和都市宣言の告示日(国立市HP「「くにたち平和の日」」) |
岐阜県各務原市 | 6月22日 |
各務原空襲のあった日(条例本則) |
東京都 | 3月10日 |
東京大空襲があった日(東京都HP「東京都平和の日関連事業」) |
沖縄県沖縄市 | 9月7日 |
沖縄戦が公式に終結した日(沖縄市HP「市民平和の日」 |
長崎県長崎市 | 8月9日 |
長崎市に原爆が投下された日 |
沖縄県北谷町 | 10月22日 |
沖縄戦後、町内の一部に居住が許された日(北谷町HP「北谷町民平和の日」) |
東京都渋谷区 | 10月1日 |
昭和7年に渋谷区が誕生した日(渋谷区HP「平和・国際都市渋谷」 |
沖縄県与那原町 | 5月21日 |
沖縄戦で現在の町全域が壊滅した日(「広報よなばる平成23年4月号」) |
東京都武蔵野市 | 11月24日 |
市内に初空襲があった日(条例前文) |
沖縄県南城市 | 8月10日 |
市域がハートの形をしており8月10日を「ハートの日」とし「平和の日」とした (南城市資料「ハートのまちづくりコンセプトブック」) |
沖縄県南風原町 | 10月12日 |
沖縄戦後、南風原村役所が地元(現南風原小学校)で役所業務を開始した日 (「広報はえばる平成25年9月1日号」) |
東京都小金井市 | 3月10日 |
東京大空襲があった日(条例前文) |
新潟県長岡市 | 8月1日 |
長岡空襲があった日(条例前文) |
青森県青森市 | 7月28日 |
青森市に空襲があった日(条例前文) |
名古屋市 | 5月14日 |
名古屋空襲により市街地に大きな被害が及んだ日(名古屋市HP「なごや平和の日について」) |
〇 なお、沖縄県は「沖縄県慰霊の日を定める条例」(昭和49年10月21日公布・施行)を制定し、沖縄戦の組織的戦闘が終結した日を「慰霊の日」として定めている(沖縄県資料「沖縄全戦没者追悼式 Q&A」)。