鳥インフルエンザの発生予防・まん延防止に関する条例

(令和5年11月24日更新)

【茨城県の条例】

〇 茨城県は、令和5年3月、鳥インフルエンザの発生予防及びまん延防止のため、

茨城県茨城県鳥インフルエンザの発生の予防及びまん延の防止に関する条例令和5年3月29日公布

令和5年4月1日施行

を制定した。

 

(条例の内容)

〇 本条例は、「大規模農場における鳥インフルエンザの発生が養鶏産業に重大な被害を与えているのみならず、その防疫措置が行政機能に重大な影響を及ぼしていることに鑑み、基本理念を定め、県、大規模事業者及び関係団体の責務を明らかにするとともに、迅速な防疫措置を行うために必要な措置その他の鳥インフルエンザの発生の予防及びまん延の防止を図るために必要な措置(以下「発生の予防及びまん延の防止の措置」という。)を講ずる」(1条)ことを内容としている。

〇 「鳥インフルエンザ」を家畜伝染病予防法2条1項に規定する高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザ、「大規模農場」を敷地内に50万羽以上の採卵鶏をケージに入れて飼養することができる施設を有する農場、「大規模事業者」を大規模農場で飼養する鶏を所有する者と定義づけた(2条1項、2項、3項)うえで、発生の予防及びまん延の防止の措置として、

(1)鶏舎設備等基準の設定等(7条~12条)   

・知事は、「鶏舎設備等基準」(「茨城県鳥インフルエンザの発生の予防及びまん延の防止に関する条例に係る実施要領」別表1及び「鶏舎設備等基準参考資料」)を定める。

・大規模事業者は、鶏舎を新設、建替え等を行う場合は、鶏舎設備等基準に適合するよう努めなければならない。

・鶏舎を新設、建替え等の工事を行う大規模事業者は、知事に届け出なければならない。

(2)人材の育成(13条)

・知事は、大規模事業者及び従事者を対象に、衛生管理に関する研修を実施する。

・大規模事業者は、飼養衛生管理者に、年1回以上、上記研修を受けさせなければならない。

(3)人員及び資材の確保(14条)

・大規模事業者は、国の飼養衛生管理基準に基づき対応計画を策定し、自ら確保できる人員、機材等を記載しなければならない。

を規定している。

 

(条例制定の背景)

〇 茨城県は、条例制定の背景として、「本県は養鶏産業が盛んですが、近年、高病原性鳥インフルエンザの発生が増加しており、大規模農場(50万羽以上)で発生してしまうと、養鶏産業に大きな被害が生じるほか、卵価高騰や防疫措置による県民サービスの低下など、県民生活にも影響が及んでしまいます。そのため、大規模農場での鳥インフルエンザの発生を予防し、また発生した場合のまん延防止対策を強化することで、養鶏産業や県民生活への影響を最小限にとどめるため、有識者(大学教授、養鶏団体、養鶏事業関係者等)からなる検討委員会を設置し、条例の必要性や内容等について検討を重ね、本条例を制定しました。」(茨城県HP「茨城県鳥インフルエンザの発生に予防及びまん延の防止に関する条例について」)としている。

〇 茨城県では、令和4年11月(かすみがうら市 102万羽以上殺処分)、令和5年1月(城里町 91万羽以上殺処分)、令和5年2月(八千代町 110万羽以上殺処分)、令和5年2月(坂東市 115万羽以上殺処分)等において、高病原性鳥インフルエンザが発生し、防疫措置を実施た(茨城県HP「鳥インフルエンザ関連情報」参照)。

〇 茨城県知事は、記者会見で、「鳥の処分が非常に多大な時間を要してしまうと、さらに二次、三次の感染の拡大、それから、その周辺の出荷なり何なりの移動停止を行っていますので、影響が非常に大きくなってしまいます。したがいまして、速やかに短時間で殺処分を含めた作業を行わなければいけないということですが、これが農場100万羽とか、そういうものが立て続けに今回来ましたので、私も実際に作業をしたことがありますが、結構大変なのですね。・・・農水大臣には、事業者に対しても、大規模な事業者については、それなりの備えを責務として考えてほしいというふうに我々茨城県として要望しましたし、・・・我々としては、少し先に進む形で、条例によって、努力義務ではございますが、大規模農場に対しては、一旦、鳥インフルエンザが発生した時に、その処分がしやすいような構造の養鶏場の設備に変えていっていただくということをお願いするという中身の条例を上程したいと思っています。」(茨城県知事令和5年2月21日記者会見「知事定例記者会見における発言要旨230221」)と述べている。

〇 本条例の制定経緯や内容等については、自治体法務研究2023年秋号CLOSEUP先進・ユニーク条例「茨城県鳥インフルエンザの発生の予防及びまん延の防止に関する条例」を参照されたい。

 

(国の法律等)

〇 鳥インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザ)の発生予防とまん延防止については、家畜伝染病予防法(以下「法」という。)が適用され(法2条1項24号、25号)とされ、また、その措置に関しては農林水産大臣により特定家畜伝染病防疫指針(法3条の2)が作成されている(「高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針」)。また、鳥インフルエンザの対象となる家畜のうち鶏、あひる及びうずらについては、農林水産大臣が飼養衛生管理基準を定めることとされている(法12条の3、法施行令4条 「飼養衛生管理基準(鶏その他家きん)」)。

 なお、政府の鳥インフルエンザに対する取組み等については、農林水産省HP「鳥インフルエンザに関する情報」を参照されたい。

〇 茨城県条例は、鳥インフルエンザの発生予防及びまん延防止のために県独自の措置を定めたものであるが、法の措置と相まって(条例1条)、必要な措置を講ずることとしている。

 

(鳥インフルエンザの関する他の条例)

〇 鳥インフルエンザに関しては、(京都府)「京丹波町鳥インフルエンザ対策関連事業整備基金条例」(平成17年)、(宮崎県)「西都市高病原性鳥インフルエンザ見舞金支給条例」(平成23年)等が制定されているが、発生予防及びまん延防止の観点から制定されたものとしては、茨城県条例以外に確認できない。



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