養育費に関する条例
(令和6年11月15日更新)
【明石市の条例】
〇 兵庫県明石市は、令和5年3月、こどもの養育費の確保支援を図るため、
兵庫県明石市 | 令和5年3月30日公布 | 令和5年4月1日施行 |
を制定した。
(条例の内容)
〇 同条例は、「こどもの養育費確保支援に係る基本理念を定め、市、父母及び市民等の責務を明らかにし、並びにこどもの養育費確保支援に関する施策を総合的かつ継続的に推進するための基本となる事項を定めること」(1条)を内容としている。
〇 「養育費」を「離婚その他の事由により、こどもを現に監護していない父母の一方が、当該こどもに係る扶養の義務を履行するために負担する当該こどもの監護に要する費用」(2条1号)、「こどもの養育費確保支援」を「養育費を確保するために市が行う支援」(2条4号)と定義づけたうえで、市の責務として①こどもの養育費確保支援に関する基本的かつ総合的な施策の実施、②必要な財政上の措置、③こども、保護者及び市民等に対して支援その他の必要な措置について規定するとともに、父母の責務として①離婚その他の事由により、いずれか一方のみがこどもの監護をするときは、こどもの最善の利益を主として考慮し、養育費について必要な事項を取り決めるよう努めること、②養育費の取決めをしたとき又は家庭裁判所が民法766条2項の規定により子の監護に要する費用の分担について定めたとき若しくは同法879条の規定により子に対する扶養の程度若しくは方法について定めたときは、これを誠実に遵守するよう努めることについて規定している。
なお、附則において、「養育費の支払義務の不履行に対する罰則の制定の可否その他のこどもの養育費を確保するために必要な方策について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。」(附則2項)としている。
〇 本条例の制定経緯や内容等については、自治体法務研究2023年冬号CLOSEUP先進・ユニーク条例「明石市こどもの養育費に関する条例」を参照されたい。
(養育費に関する明石市の取組み)
〇 明石市は、「離婚や別居に伴う養育費や面会交流などの「こどもの養育支援」について、平成26年4月から「明石市こども養育支援ネットワーク」の運用を開始し、支援に取り組んでいます。」(明石市HP「離婚等のこども養育支援 ~明石市の取組~」)としている。
具体的には、平成26年4月からは①相談体制の充実化(こども養育専門相談の実施)、②参考書式の配布(養育合意書・養育プラン・作成の手引きの配布)、③関係機関との連携(連絡会議の開催)、平成26年10月からは④「こどもと親の交流ノート(養育手帳)」の配布、⑤「親の離婚とこどもの気持ち」の配布、⑥親子交流サポート事業(天文科学館の無料利用)、平成27年1月に⑦離婚前講座(離婚後の子育てとこどもの気持ちー終了)、平成27年8月に⑧こどもふれあいキャンプ(終了)、平成28年9月からは⑨面会交流コーディネート事業、平成30年11月からは⑩養育費立替パイロット事業(終了)、令和2年7月からは⑪こどもの養育費緊急支援事業(終了)、令和2年8月からは⑫養育費取決めサポート事業、令和4年8月からは⑬こどもの養育費立替支援事業、⑭養育費差押えサポート事業を実施している(明石市HP「離婚等のこども養育支援 ~明石市の取組~」参照)。
明石市は、こうした「明石市こども養育支援ネットワーク」の取組みは、「これまでタブー視されてきた離婚のテーマに行政として初めて風穴を開け、実現困難と思われてきたことを次々に実現するという奇跡を起こしてきた。まさに歴史的快挙というべきである。」(明石市報告書「明石市こども養育支援ネットワークの奇跡」(令和3年4月)はしがき)としている。
(国の検討状況等)
〇 養育費に関して、平成2年1月に法務大臣の私的勉強会として「養育費勉強会」が設置され、同勉強会は同年5月に「とりまとめ」を行い、同年6月に法務省に「養育費不払い解消に向けた検討会議」が設置され、同検討会議は同年12月に「とりまとめ」を行った。併せて、同年6月に法務省と厚生労働省により「不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース」が設置されている。以上の法務省による検討状況については、法務省HP「父母の離婚後の子育てに関する法制度の調査・検討状況について」を参照されたい。
令和3年2月、法務大臣は法制審議会に対して「父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑み、子の利益の確保等の観点から、離婚及びこれに関連する制度に関する規定等を見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」と諮問し(「離婚及びこれに関連する家族法制の見直しに関する諮問第113号」)、法制審議会「家族法制部会」において検討がなされて、令和6年2月15日に法制審議会は「家族法制の見直しに関する要綱案」を法務大臣に答申した。
これを踏まえ、令和6年5月「民法等の一部を改正する法律」が制定された(令和6年5月24日公布・二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行)。同法は、①親権は子の利益のために行使しなければならないこと、親権は、その一方のみが親権者であるとき、他の一方が親権を行うことができないとき、子の利益のため急迫の事情があるとき以外は、父母が共同して行うこと、双方が親権者であるときでも監護及び教育に関する日常の行為は単独でできること等について所要の規定を設ける ②協議上の離婚をするときは、その協議で父母の双方又は一方を親権者と定めること、裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定め、子の利益を害するときは一方を親権者と定めなければならないとするほか、子の利益のために必要があると認めるときは親権者を変更できるとすること等について所要の規定を設ける ③子の監護の費用の先取特権、子の監護に要する費用の分担についての定めがなく協議上の離婚をした場合における子の最低限度の生活の維持に要する費用の請求等について所要の規定を設ける 等を内容としている(同法については、法務省HP「民法等の一部を改正する法律案」を参照されたい。)。
養育費については、法務省HP「養育費」を参照されたい。
(養育費に関する他の条例)
〇 離婚や別居に伴う養育費に関して規定している条例は、明石市条例以外に確認できない。