死体の火葬を行う者がいない者の遺産の取扱い

隣の市に居住していたAさんが、当市の金融機関で倒れ、当市内の病院に搬送されましたが、その後当該病院内で死亡しました。そのため、墓地埋葬法第9条の規定に従い、当市において火葬に付しました。その費用は、Aさんの所持金5万800円を火葬費用の一部に当て、残りの15万5200円を当市が葬祭扶助費により負担しました。また、7万円程度の医療費の未払いがあります。
しかし、Aさんの預金通帳には、300万円余りの預金残高がありましたので、当市において相続人を調べたところ、相続人になり得る方が7名いることが分かりました。この場合、

(1)相続財産を引き渡すために、相続人のうち最年長者に連絡し、承諾が得られれば引き渡すことでよろしいでしょうか。

(2)全員に連絡する必要があるとして、そのうちの何人かが相続放棄をしたとの連絡をしてきたときは、どのように対応すればよいですか。

(3)最終的に、7人中6名の方が相続放棄の意思表示を行い、お一人だけが相続の意思表示をしました。ただ、家庭裁判所からの相続放棄の受理証明書の写しを市役所に送ってきたのは2名だけです。この場合の相続財産の引渡しはどのようにしたらよいですか。

(結論)
(1)について
 一人にだけ連絡することはやめてください。相続人全員に、Aさんが死亡し、相続が発生したこと、遺産の総額、債務の金額を通知してください。
(2)について
 相続放棄の意思を表明した方に対しては、相続放棄手続を教え、家庭裁判所から発行される相続放棄申述受理証明書の写しの送付を依頼してください。
(3)について
 相続する意思表示をされた方に、他の相続人が相続放棄をする旨の意思表示を伝えてきたこと、そのうち2名から相続放棄申述受理証明書が提出されたこと、及びその2名からの相続放棄申述受理証明書の写しを送付するとともに、遺産を引き渡してください。

(理由)
(1)について
 一人にだけ連絡することはやめてください。相続人全員に、Aさんが死亡し、相続が発生したこと、遺産の総額、債務の金額を通知してください。
(2)について
 相続放棄の意思を表明した方に対しては、相続放棄手続を教え、家庭裁判所から発行される相続放棄申述受理証明書の写しの送付を依頼してください。
(3)について
 相続する意思表示をされた方に、他の相続人が相続放棄をする旨の意思表示を伝えてきたこと、そのうち2名から相続放棄申述受理証明書が提出されたこと、及びその2名からの相続放棄申述受理証明書の写しを送付するとともに、遺産を引き渡してください。


〇墓地、埋葬等に関する法律
 〔市町村長の埋葬又は火葬の義務〕
第9条 死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。
2 前項の規定により埋葬又は火葬を行つたときは、その費用に関しては、行旅病人及び行旅死亡人取扱法(明治32年法律第93号)の規定を準用する。