土地区画整理事業における仮換地処分の公示送達

現在、当市が施行者となっている土地区画整理事業において、順次、仮換地指定処分を行おうとしています。ところが、地権者のうち一人の方が平成元年頃に死亡されており、その方の相続関係について調査しましたが、生存している相続人が特定できませんでした。したがいまして、相続人不存在の可能性が高いものと判断しました。
そこで、当市においては、土地区画整理法第133条第1項に規定する「過失がなくてその者の住所、居所その他書類を送付すべき場所を覚知することができないとき」に該当すると判断して、同項の規定により、当該所有者に対する仮換地指定処分を公示送達することを検討しておりますが、この判断は正しいでしょうか。誤っている場合には、対処方法を教えてください。

(結論)
 質問事項の場合、土地区画整理法第133条を適用することはできません。死亡者の相続財産管理人を選任して、その方に送達すべきでしょう。

(理由)
 土地区画整理法第133条第1項は、「送付を受けるべき者がその書類の受領を拒んだとき、又は過失がなくてその者の住所、居所その他書類を送付すべき場所を確知することができないときは」と規定しています。すなわち、この規定は、生存している地権者が、書類の受領を拒んだとき又は送付すべき場所が分からないときに使える条文であって、相続人が発見できないときの死亡者に対するものとしては規定されていないのです。したがいまして、この条文を使って、公示送達をしても書類の送付に変えることはできません。

 それでは、相続人が見つからない死亡者に対する送達はどのようにすべきなのでしょうか。土地区画整理法には、そのような場合のための規定はありません。そうしますと、原則論的には、行政手続法によることとなりますが、行政手続法にも送達に関する規定はありません。
 行政関係法に死者に対する送達の規定がない場合には、私法規定を類推適用することになります。そうしますと、相続人がいない可能性が高い場合の相続財産の取扱いが参考になります。民法第951条によりますと、相続人が明らかではない場合は、相続財産は法人となり、同法第952条では、「家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。」としています。したがいまして、この規定により、家庭裁判所に相続財産管理人の申立てを行い、相続財産管理人が決まりましたら、この者に対して、仮換地指定処分をすることとなります。

〇土地区画整理法
 (書類の送付にかわる公告)
第133条 施行者は、土地区画整理事業の施行に関して書類を送付する場合において、送付を受けるべき者がその書類の受領を拒んだとき、又は過失がなくてその者の住所、居所その他書類を送付すべき場所を確知することができないときは、その書類の内容の公告をすることをもつて書類の送付にかえることができる。
2 第77条第5項の規定は、前項の場合について準用する。この場合において、同項中「前項後段の公告」とあるのは「前項の公告」と、「当該土地区画整理事業の施行地区を管轄する市町村長」とあるのは「当該土地区画整理事業の施行地区を管轄する市町村長及び書類の送付を受けるべき者の住所又はその者の最後の住所を管轄する市町村長」と読み替えるものとする。
3 第1項の公告があつた場合においては、その公告があつた日から起算して10日を経過した日に、当該書類が送付を受けるべき者に到達したものとみなす。

〇民法
 (相続財産法人の成立)
第951条  相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
 (相続財産の管理人の選任)
第952条  前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。