徴収事務の一部委託の可否について

当市では、公の施設として位置づけられた斎場を設置運用しております。当該斎場は、民間事業者に施設の総合維持管理業務を委託しており、本市の正規職員とともに、民間事業者の従業員も常駐し、施設管理業務に当たっています。
今回、総合維持管理業務の一つとして、利用者からの火葬場や式場の使用料等の受領業務の一部を民間事業者に委託しようと考えています。具体的には、民間事業者の従業員が使用料等を受領し、その後速やかに斎場に配置されている市職員に引き渡し、その職員が受領した金員を指定金融機関に入金するというものです。当然ながら、領収書は、民間事業者の従業員が発行し、領収書の額と市職員が受領した額との確認を取ります。
また、民間事業者と、総合維持管理業務委託とは、別に徴収事務委託契約を締結いたします。
ところで、徴収事務委託契約における徴収とは、普通地方公共団体の歳入の調定、納入の通知、収入の受入れという一連の事務とされていますが、本件徴収事務委託は、その一連の事務のうち、収入の受入れの一部、すなわち、市職員が受領金を指定金融機関に入金処理する部分を除いたものといえます。
このような形態の徴収事務委託契約を締結することに、地方自治法上問題はありませんか。

(結論)
 問題ありません。

(理由)
 私人の公金の取扱いについては、地方自治法第243条が規定しています。この規定によりますと、私人に公金を取り扱わせることは原則として禁じられていますが、例外的に、法律又はこれに基づく政令に特別の定めをすることによって、地方公共団体の歳入の徴収又は収納の委託をすることができる旨を規定しています。そして、公の施設では、使用料を徴収することができ、地方自治法施行令第158条により使用料については、「私人にその徴収又は収納の事務を委託することができる。」とされています。さらに行政実例によれば、委託する徴収の範囲は、調定から収納までを言うとされています(昭和38・12・19自治丁行発93号)。したがいまして、地方自治法が認めているのは、歳入の徴収又は収納の全部の委託しか認めておらず、一部の委託については、何らの規定も置いていません。
 貴市では、歳入の徴収のうち、歳入の調定、収入の受入れの一部を委託しようというものです。すなわち、委託された民間事業者は、定められた使用料を受領し、領収書を発行し、領収した使用料(金員)を、貴市の職員に手渡すだけです。そうしますと、地方自治法第243条の規定の対象外の行為を委託することになります。
 しかし、第243条が、私人の公金の取扱いを禁じている理由が、「公金は、その性格からして、取り扱い上の責任を明確にし、公正を期することが要求される」(『新版逐条地方自治法第5次改訂版』969頁)ことにあります。そうとすると、徴収段階の前段階のみを委託し、その後の手続を貴市が自ら行う場合には、私人の公金の取扱いを禁じている第243条の趣旨には反しないものと考えます。すなわち、取扱い上の責任が明確になっているからです。
 ただ、実務では、領収書に記載された金額と貴市職員に交付された金員の額が一致していることを確認する行為が存在しなければ、取扱い上の責任が明確ではないと評価されますので、お気を付けください。