情報公開請求に係る審査請求で、執行停止がなされた部分に係る別件の情報公開請求

3か月前に当市に対して、指定管理者公募時に提出された提案書について公文書開示請求がなされ、実施機関が全部開示決定をしましたところ、当該指定管理者から、当該提案書にはノウハウ等が記載されており開示により不利益を被ることなどを理由として開示決定の取消しを求める審査請求がなされました。
 これを受けて、実施機関である市長は、職権により執行停止をした上で、本市情報公開・個人情報保護審査会に諮問し、現在審理手続中です。
 ところが、前記審査請求とは別に、前記指定管理者の選定に際し設けられた内部審査会において、事業者ヒアリングをした際の議事録の開示請求がありました。当該議事録の一部には、前記審査請求において開示の執行停止がされた提案書記載部分を引用した発言が記載されています。
 このような場合、引用部分を開示してもよろしいでしょうか。

(結論)
 別件審査請求において、引用部分に係る提案書の開示決定に対する執行停止がかかっていることを理由に、一時、開示決定を保留する旨を記載して、一時非開示決定をすべきでしょう。

(理由)
 行政不服審査法第25条は、執行停止に関し、執行停止決定があったとき、他の処分にどのような影響が出るかを規定していませんが、情報公開請求の場合、実質的に同一情報につき、開示請求が行われる場合があります。
 御質問の場合でも、提案書の開示決定に対し、提案書を提出した企業から審査請求が出され、実施機関である市長が職権で執行停止決定を出したところ、その提案書の内容を引用した議事録の開示請求があったというのですから、実質的に同じ文書の開示を求めているといえます。
 実質的に、同じ文書に開示請求がなされるとなると、仮に、実施機関が開示決定をしたとしても、審査請求がなされれば、再度、提案書の作成者である企業は、開示決定に対し、審査請求を行い、今度は執行停止の申立てをするでしょう。そうすれば、やはり執行停止決定が出るでしょう。仮に、執行停止の申立てがなされなかったとしても、実施機関である市長は、職権で、再度の執行停止決定をするでしょう。
 御質問のケースの場合、市長が執行停止をかけているわけですから、当該情報を執行停止決定が取り消されない間に、公開することは、市役所としては、執行機関である市長の判断に従わないことになります。
 また、実施機関である市長の職権ではなく、情報公開・個人情報保護審査会の答申に基づいて、執行停止決定をしていたとしても、提案書の作成者が審査請求を申し立てれば同じ結果となるでしょう。
 そうすると、行政不服審査法第25条には規定がないものの、すでに開示決定に対する執行停止中の情報と実質的に同じ情報に対する開示請求に対しては、執行停止の効力が及ぶと解するべきでしょう。

○行政不服審査法
(執行停止)
第25条 審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
2 処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置(以下「執行停止」という。)をとることができる。
(以下省略)