誤って次期分の納付書で納付された固定資産税に係る徴収金の取扱いについて

当市の固定資産税について、ある納税者から第3期の納期限までに当該期分の納付がされなかったため、督促状を送付したところ、当該納税者からは、「第3期の納期中に、第3期分の納付書と取り違えて第4期分の納付書で納付をしてしまったようだ。すでに納付した分を第3期分に振り替えて扱ってほしい。」との連絡がありました。
確認したところ、確かに第3期の納期中に第4期分の納付書により納付(以下「本件納付」といいます。)がされていることが分かりました。しかし、当市としては、本件納付は第4期分の納付書で自主的に納付された以上、地方税法(以下「法」といいます。)第17条の3の予納であり、納税者は還付を請求することはできないので、要望のような振替(法第17条の2に基づく還付金充当)はできないと考えています。第3期分については引き続き納付を求め、納付されない場合は延滞金を課すつもりですが、問題ないでしょうか。

(結論)
問題があります。本件納付に係る徴収金は誤納金として第3期分に充当するべきです。

(理由)
1 予納に当たるかについて 法第17条の3は予納額の還付の特例を定めており、同条は予納ができることを当然の前提としているので予納の根拠条文でもあるとされています。その趣旨については、「地方団体の徴収金は、原則としてその納付納入すべき金額が確定し、納期が到来してから納付納入されるものであるから、その確定前又は納期前の納付納入は、不適法であり、過誤納金となるべきものである」ところ、「納税者又は特別徴収義務者が自発的に期限前に納税した時にあえてこれを拒む理由もないので、次(同条第1項各号)に掲げるような納付納入については、一応適法な納付納入として取り扱い、予納した者はその還付を請求することが出来ないこととしている」とされています(地方税務研究会編『地方税法総則逐条解説』(以下「逐条解説」といいます。)498頁)。
 同条は「その申出により」としており、納税者が納付に当たり任意に申し出ることを必要としていますが、これは、納期未到来にもかかわらずあえて納付することについて納税者自身の認識を明確にして錯誤を防止する趣旨と解されます。「申出は、その旨を記載した書面により行わせるものとし、口頭による申出は受理しない取扱いとするのが適当である」とされており(逐条解説497頁)、「予納申出書」等の様式を定めている自治体もあります。
本件納付については、納税者が改めて第4期分として取り扱われたいと申し出れば、追完的な申出と見ることができる可能性もありますが、取違え発覚後も第3期分として扱われることを要望しているのですから、申出を欠いていることは明らかであり、予納に当たりません。
2 前納に当たるかについて
(1)法第28条第2項と外部提供における「法令等」
法第365条第1項は「到来した納期に係る納付額に相当する金額の税金を納付しようとする場合においては、当該納期の後の納期に係る納付額に相当する金額の税金をあわせて納付することができる。」(下線は筆者による。)として、いわゆる前納について定めています。同条は第17条の3の特則とされており、また、「申出」は必要とされていません。
 しかし、本件納付は、第3期分とあわせて第4期分を納付したものではありませんので、前納にも当たりません。
3 過誤納金として取り扱うべきかについて
そこで、本件納付に係る徴収金について、過誤納金(誤納金)(地方税法第17条の2)として取扱うべきか問題となります。
地方税法上に過誤納の定義はありません。文献では、「誤納金とは、納付納入の時にはそれに対応する租税債務が存在していなかったため、当初から明らかに不適法な納付納入があった場合における地方団体の徴収金のことであり、①税額を確定する行為(申告、公正、決定又は賦課決定)がないにもかかわらず納付納入された地方団体の徴収金及び②確定税額を超えて納付納入された場合における超過納付納入額をいう。」とされている(逐条解説478頁)一方で、前記引用のとおり「その確定前又は納期前の納付納入は、不適法であり、過誤納金となるべきものである」ともされています( 同498頁。下線は筆者による。)。また、「すでに納付すべき税額が確定した地方税の納付であっても納期が到来する前にされた納付は誤納となる」とされています(地方税法実務研究会編著『地方税法関係実務辞典』1111頁)。なお国税については、「過誤納金のうち、(中略)、誤納金とは、法定の予納の要件を具備する場合を除き、国税債務がないにもかかわらず納付された国税の超過納付額をいい、その納付・徴収の時点において、実体法的にも手続法的にも法律上の原因を欠くものと解される」とする裁判例があります(福岡高等裁判所平成25年4月9日)。
法が固定資産税の納期中の徴収を原則としていること、また、予納及び前納は適法に納期前納付を行うことのできる例外的場合について定めていると解されることからすれば、本件納付のように、対応する租税債務が存在し税額が確定しているものの、納期前に納付し予納にも前納にも該当しないような場合の徴収金も、不適法な納付に係る徴収金であって誤納金に含まれると考えられます。
たがって、本件納付に係る徴収金は誤納金として取り扱った上で、過誤納金の充当を認める法第17条の2に基づき、納付されたときに遡って第3期分の徴収金に充当することが相当と考えます。
 

○地方税法
(過誤納金の還付)
第17条の2 地方団体の長は、前条の規定により還付すべき場合において、その還付を受けるべき者につき納付し、又は納入すべきこととなつた地方団体の徴収金(中略)があるときは、前条の規定にかかわらず、過誤納金をその地方団体の徴収金に充当しなければならない。
2〜5 略
(地方税の予納額の還付の特例)
第17条の3 納税者又は特別徴収義務者は、その申出により次に掲げる地方団体の徴収金として納付し、又は納入した金額があるときは、その還付を請求することができない。
一 納付し、又は納入すべき額が確定しているが、その納期が到来していない地方団体の徴収金
二 最近において納付し、又は納入すべき額の確定が確実であると認められる地方団体の徴収金
2 前項各号に掲げる地方団体の徴収金として納付し、又は納入された地方団体の徴収金の全部又は一部につき、法律又は条例の改正その他の理由によりその納付又は納入の必要がないこととなつたときは、その時において過誤納金が納付され、又は納入されたものとみなして、前二条の規定を適用する。