市民団体による講演の使用許可申請

 当市が設置、管理するA公園について、市民団体から、同団体が企画した市民祭りの会場として利用したいとの相談がありました。
 当市では、都市公園法に基づき定めた都市公園条例により、個人あるいは私的団体による占有を伴う使用については、事前に許可申請をしてもらう必要があります。そして審査の結果、その使用の態様が「公園の管理上支障がある」と判断すれば、使用は不許可とすることになります。
 この点について、当市ではさらに具体的な審査基準を内規で定めており、市が協賛又は後援をした催しに限って、「管理上の支障」がないものと認定し、使用の許可をする運用としています。このような審査基準を設けた趣旨は、一部の市民による私的な占用を認めることで、他の公園利用者や近隣住民への支障が生じることは望ましくないと考えたためです。また、公の施設である公園を私的団体の宣伝や売名目的で使用させるべきではないという判断もあります。
 本件申請に対しても、当市の後援を受けていない催しであることを理由に、使用不許可としてよいでしょうか。

(結論)
当該基準により申請を不許可とすることは、違法であると考えられます。

(理由)
 公園は、地方公共団体によって、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するために設けられる施設ですので「公の施設」(地方自治法第244条第1項)に該当し、「正当な理由」がない限り、住民の利用を拒んではならないことになります(同条第2項)。
 そして「公の施設」は、広く市民に平等に利用されることを本質とするものですので、いかなる事由があれば「正当な理由」があると言えるのかについても厳格に考えられており、一般的には①施設使用料の不払い、②定員超過、利用申請の競合による調整、③施設の設置目的に反する利用、④施設の利用を認めることにより、他の利用者等への支障が生じることが明白な場合などが挙げられています。
 さて、ご相談の事例では、市の協賛又は後援のない占用については原則として不許可としており、その趣旨は、「管理上の支障」すなわち他の公園利用者や近隣住民への支障が生じることを防ぐことにあるとのことです。
 このことについては、どのような場合であれば「管理上の支障」を理由に、公の施設の利用を拒めるのかについてのリーディングケースとされる判例(最高裁平成8年3月15日判決)がありますので、まずこれを御紹介します。
 この事件は、何者かに殺害された労働組合幹部の合同葬に使用するために市福祉会館の使用許可申請がされたという事案で、市は、当該合同葬に反対する者らによる妨害の可能性があるとの理由で、条例で不許可事由とされる「会館の管理上支障があると認められるとき」に当たるとして使用を不許可にしました。その後、この不許可処分の適否が訴訟で争われることになり、裁判所は「会館の管理上支障が生ずるとの事態が、許可権者の主観により予測されるだけでなく、客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合に初めて、本件会館の使用を許可しないことができる…(傍線は筆者による)」との判断を示しました。  この判例を前提として、本件について検討をしてみますと、本件で問題とされている施設は、常時開放されており、不特定多数の近隣住民が日常的に休息、散歩、運動等のために利用する公園ですから、初めから一部のものによる独占的な利用が予定されているホールなどの場合と比較して、占用を認めることによって支障が生じる可能性はより高いといえます。
 しかし、その点を考慮しても、本件市民祭りの開催により、他の利用者にどのような支障が生じるのかということについて具体的な検討は全くされていませんし、市が協賛又は後援をしているかということと、当該催しの開催により他の利用者に支障が生じるかということとの間に論理的な関連性があるとは考え難いところです。したがって、かかる基準に基づき使用を不許可とすることは違法であると考えられます(大阪高判平成29年7月14日、『判例地方自治』435号42頁等参照)。
 本件公園を市民祭りの会場として利用させることが、他の利用者あるいは周辺住民への影響の点から不適当であるか否かは、当該公園の面積や設備、周辺環境の状況、市民団体による利用の態様、占有時間の長短や時間帯、代替施設の有無などを総合的に考慮して、具体的に検討をする必要があります。
 また、使用自体を不許可とせずとも、例えば騒音が問題になるのであれば、拡声器の利用やイベントの開催時間に条件を設けるなど、より謙抑的な方法で調整を図ることも考えられます。このような検討を経ずに、使用を不許可とすることも望ましくありません。  上記のほかに、公の施設である公園を私的団体の宣伝や売名目的で使用させるべきではないという判断もあったようですが、この点は管理上の支障が生ずることの理由にはならないものと考えられます。

〇地方自治法
(公の施設)
第244条 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
2 普通地方公共団体(次条第3項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
3 略