水道水源保護条例

 

【制定の状況】

〇 「水源地域保全条例」とは異なり、「水道水源保護条例」と言われる条例のグループがある。「水源地域保全条例」が都道府県により土地の取引を規制するものであるに対して、「水道水源保護条例」は、主として市町村が、水道水源の保全のために、一定の事業所の施設の設置を規制しまたは施設からの排出を規制するものである。また、水道水源が地下水である場合は、地下水採取の規制を行っているものもある。なお、一部の都道府県においても制定されている。「水道水源保護条例」は「水源地域保全条例」よりも制定の歴史は古く、また、制定件数も多い。

〇 これらの水道水源保護条例については、かつて厚生労働省で全国の条例制定状況を調査していた。この調査によると、平成13年3月時点では、5都道府県・44市・104町・26村・1団体の180団体で、平成19年3月時点では、6都道府県・106市・44町・3村・1団体の160団体で、条例を制定している(厚生労働省HP「水道水源の保全に関する取組み状況調査について」)。平成19年3月時点の条例制定数が、平成13年3月時点よりも少ないが、市町村合併によるものと考えられる。条例名は、水道水源保護(保全)条例とするものが多いが、環境保全条例等の中で水道水源の保護を規定するものも少なくなく、また、地下水保全(採取の規制)条例とするものも少なくない。

〇 平成13年3月時点施行されていた条例のうち、制定時期が最も早いものは、岩手県宮古市の宮古市上水道水源保護条例(昭和29年3月26日公布)である(なお、本条例は、市町村合併等により廃止され、現在は、宮古市水道水源保護条例(平成17年6月6日公布)となっている)。次に制定されたのが、滋賀県彦根市の彦根市上水道水源地域保護条例(昭和35年3月31日公布)で、さらに、同じく滋賀県の栗東町の栗東町水道水源地域保護条例(昭和37年3月9日公布)が続いている。

  このように水道水源保護条例の歴史は古く、水道法(昭和32年法律177号)制定前後から制定されていた。昭和62年までに約40程度の条例が制定された(その多くは、地下水に関する条例であった)が、昭和63年から平成に入って、制定件数が急増し、平成13年3月時点では180の条例が制定されたこととなる。その契機となったのは、水道原水取水口上流部で産業廃棄物処分場建設が計画されたことに端を発し、隣接する久居市及び美里村とともに昭和63年に制定された三重県津市の津市水道水源保護条例(昭和63年2月8日公布)とされる(なお、本条例は、市町村合併により廃止され、現在は、津市水道水源保護条例(平成19年3月30日公布)となっている)。昭和63年には、三重県ではこの2市1村を含む10市町村で条例が制定され、さらに、産業処理廃棄物場やゴルフ場等を規制対象として、水道水源の保全の観点から、条例の制定は全国の市町村に広がっていった。 

  令和2年5月末現在で、インターネットで例規集を公開している自治体の条例を調べると、水道水源保全、水道水源保護、水道水源の水質の保全等と、条例名に「水道水源」を冠する条例(基金条例、審議会条例を除く)は125(確認できるもの)あり、このうち、平成20年以降制定されたのは18条例である。平成29年以降制定されたのは5条例であり、平成の早い時期に比べると制定件数は減っているが、現在も、制定は続いている。

〇 水道水源保護条例は、大きく次の3つのタイプに分かれる。

@  水道水源地域において、一定の事業所の施設の設置を規制する条例(立地規制型の条例)

A  水道水源地域において、一定の事業所からの排出を規制する条例(排出規制型の条例)

B  地下水の採取等を規制する条例

  このうち、B地下水の採取等を規制する条例については、「水源の保全B−地下水保全条例」で取り上げ、本稿では、@及びAのタイプを概観する。

〇 こうした条例が制定される背景として、水道の事業者である市町村は、水道の水質を確保するために水源の保全を図る必要があるが、水道法は、水道の水質基準、施設基準、水道事業等について定めているものの、水源地等に関する規定はなく、水質汚濁防止法(昭和45年法律138号)、特定水道利水障害の防止のための水質の保全に関する特別措置法(平成6年法律9号)、水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律(平成6年法律8号)、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)等では、水道水源の保護を十分に図ることができない面があることがあげられる(内藤悟「産業廃棄物処理をめぐる地方自治体の法政策による対応―水道水源保護条例を中心に」(日本公共政策学会年報2000)参照)。

〇 なお、平成8年までに制定された各自治体の水道水源保護条例については、内藤悟「水道水源保護条例に関する一考察」(北大法学研究科ジュニア・リサーチ・ジャーナルNo.3 1996年10月)が詳しく分析しているので、参照されたい。

 

立地規制型の条例その1―津市条例タイプ】

〇 立地規制型の条例も、いくつかのタイプに分かれるが、最も典型的なものは、市町村長(管理者)が指定した水源保護地域において、一定の対象事業を行おうとする者に、事前に市町村長(管理者)等と協議を義務づけ,規制対象事業場と「認定」されたものは設置を禁止する、違反した者には工事の中止命令等を行い、さらにそれに違反した者には罰金に処するとするものである。対象事業としては、産業廃棄物処理業、砕石業、砂利採取業等がある。「認定」の代わりに、「判定」、「同意」、「許可」等とするものもある。

〇 このタイプは、立地規制型の条例の中でも最も制定条例数は多いが、代表例としては、

三重県津市

津市水道水源保護条例

平成19年3月30日公布

平成19年6月1日施行

  をあげることができる。前述に通り、この条例の前身は昭和63年に制定された津市水道水源保護条例(昭和63年2月8日公布)であり、全国市町村における同種の条例のモデルとなったものである。基本的な内容は、変わっていない、

  本条例は、「水道法・・・第2条第1項の規定に基づき、本市の水道に係る水質の汚濁を防止し、清浄な水を確保するため、その水源の保護及びかん養を図り、もって住民の生命と健康を守ること」(1条)を目的とする。そのうえで、@上下水道事業管者は、市の水道に係る水源(取水施設及び貯水施設に係る周辺の地域で、水道の原水の取入れに係る区域)及びその上流地域において、審議会の意見を聴き、水源保護地域を指定することができる(5条1項、2条1号・2号)、A水源保護地域において、砕石業、砂利採取業または産業廃棄物処理業を行おうとする者は、あらかじめ管理者に協議するとともに、関係地域の住民に対する説明会の開催等をしなければならない(6条1項、2項、2条3号)、B管理者は、審議会の意見を聴き、規制対象事業場(水道に係る水質を汚濁し、又は汚濁するおそれのある工場その他事業場)と認定したときは、事業者に通知する(6条3項、2条5号)、C何人も、水源保護地域内において、規制対象事業場を設置してはならない(7条)、D管理者は、違反して建設工事を行った者に対して、工事の一時停止、中止等を命ずることができる(8条、9条)、E一時停止命令、中止命令等に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する(17条)などとしている。

〇 「認定」ではなく、「判定」とするものとして、

奈良県天理市

天理市水道水源保護条例

平成14年6月25日公布

平成14年6月25日施行

 などがある。

  なお、天理市条例は、規制対象事業場に該当しない旨の通知を受けた者は、管理者と水道に係る水質の保全及び水量の確保のために必要な事項について、水源保護協定を締結しなければならない(17条)としている。

〇 「認定」ではなく、「同意」とするものとして、

長野県箕輪町

箕輪町水道水源保護条例

平成5年3月19日公布

平成5年8月1日施行

  などがある(長野県水環境保全条例が「同意」としているため、長野県下の市町村に多い)。

  なお、箕輪町条例は、対象行為として、ゴルフ場の建設、廃棄物の保管及び処理場の設置、油脂類の保管及び販売、建築物等の施設の設置(床面積が10uを超えるもの)及び土石類の採取その他の土地形質の変更 (1000u以上のもの)を掲げている(2条3号 別表)。水道水源保護地域内において、対象行為をしようとする事業者は、町長に協議し、その同意を得なければならない(8条1項)とし、同意には、必要な限度において条件を付することができる(8条4項)としている。

〇 「認定」ではなく、「許可」とするものとして、

岐阜県東白川村

東白川村水道水源保護条例

平成10年12月21日公布

平成11年4月1日施行

 などがある。

  なお、東白川村条例は、特別水源保護区域(村の水道の取水に係る河川の中心部から30メートル以内の区域)においては、規制対象事業を禁止し(9条)、水源保護地域(村の水道の取水に係る水源地域で、村長が指定する区域)においては、林業経営に関連する建物以外の建物等建築事業及び廃棄物処理事業については禁止し、それ以外の規制対象事業については水源の汚濁や自然環境を損なうことがないものとして許可したもの以外は禁止している(8条)。許可については、自然の変改を最小限にとどめる条件を付して許可することができる(11条)。また、水源保護地域内の土地所有者は、水源保護地域内の土地について土地売買等の契約を締結しようとする場合は、あらかじめ村長に届け出なければならない(16条)、としている。

〇 平成29年以降制定されたものとして、

北海道占冠村

占冠村水道水源保護条例

平成29年3月13日公布

平成29年4月1日施行

一部平成29年9月1日施行

三重県南伊勢町

南伊勢町水道水源保護条例

平成29年3月21日公布

平成29年4月1日施行

千葉県鋸南町

鋸南町水道水源保護条例

平成29年9月15日公布

平成29年10月1日施行

茨城県大子町

大子町水道水源保護条例

平成29年12月20日公布

平成29年12月20日施行

一部平成30年6月1日施行

 などがある。上記4条例はいずれも、津市条例と同じタイプのものである。

  このうち、占冠村条例、鋸南町条例及び大子町条例は、事業者が市町村長と事前協議を行う前の関係住民等に対する説明会の開催について具体的な手続きを規定するとともに、 必要が生じた場合は事業者は関係住民等と協定を締結するものとし(占冠村条例10条、鋸南町条例9条、大子町条例9条)、占冠村条例及び大子町条例は、水源保護地域を指定に当たって、あらかじめ関係図書を一般の縦覧に供し、その意見を求めるものとし(占冠村条例5条2項、大子町条例5条2項)、また、大子町条例は、水道水源保護区域を「工作物の設置又は土砂の埋立て等により、汚水、有害物質等が地下に浸透すること並びに地下水の涵養を妨げられることを防止する必要のある区域」として他の条例に比べて限定的に定義付けている(2条3号)。

〇 こうした立地規制型条例は、特に廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)との関係を巡って、裁判で争われている。次の二つの条例に関して裁判例がある。

和歌山県紀伊長島町

紀伊長島町水道水源保護条例

平成6年3月25日公布

平成6年3月25日施行

徳島市阿南市

阿南市水道水源保護条例

平成7年3月3日公布

平成7年3月3日施行

  両条例とも、立地規制型の条例で津市条例タイプである。なお、紀伊長島町条例については、市町村合併により廃止され、現在は、紀北町水道水源保護条例(平成22年6月18日公布 平成22年8月1日施行)となっているが、基本的な内容は変わっていない。

  両条例に関する事案は、いずれも、廃棄物処理事業者が、産業廃棄物処理施設の設置について条例に基づき町(市)に協議をしたところ、規制対象事業所として認定されたため設置することができなとして認定処分の取消訴訟を提起したものである。  

  また、両事案とも、廃棄物処理法15条1項に基づく県知事の許可を得ていたものであり、また、事業者の産業廃棄物処理場建設計画を町(市)が知った後に条例が制定されているものである。

  紀伊長島町条例事案については、第1審津地方裁判所判決(平成9年9月25日判決)は請求棄却とし、また、 控訴審名古屋高等裁判所判決(平成12年2月29日判決)も条例の適法性と認定処分の妥当性を認め控訴棄却とした。しかし、上告審最高裁判所第二小法廷判決(平成16年12月24日判決)は、町は条例の適用において申請者の地位を不当に害することがないよう配慮すべき義務があるとして、破棄差し戻しをした。差戻後控訴審名古屋高等裁判所判決(平成18年2月24日判決)は配慮義務違反として町の認定処分を取り消し、差戻後上告審最高裁決定(平成19年6月7日決定)は上告棄却として、差戻後控訴審判決は確定した。  

  阿南市条例事案については、第1審徳島地方裁判所判決(平成14年9月13日判決)は、条例は、その目的と産業廃棄物処理法の目的と同一であり二重規制となるため、廃棄物処理法条15条1項ないし3項に違反して無効であるとして、市の認定処分を取り消した。控訴審高松高等裁判所判決(平成18年1月30日判決)は、条例の違法性については判断せず、上記最高裁判決を引用して、市の配慮義務違反として、市の認定処分を違法として、控訴を棄却した。上告審最高裁決定(平成20年2月1日決定)により上告は棄却され、控訴審判決は確定した。

  両事案の下級審判決では、条例の適法性について判断が分かれたが、確定した差戻後控訴審判決及び控訴審判決ともに、条例の適法性については判断をせず、 最高裁判決を踏まえ配慮義務違反として認定処分が取り消された。これらの判決については、牛嶋仁「水道水源保護条例と廃棄物処理法」(地方自治判例百選[第3版](有斐閣2003年10月30日)66頁)及び牛嶋仁「水道水源保護条例適用における配慮義務」(地方自治判例百選[第4版](有斐閣2013年5月30日)64頁)を参照されたい。

 

【立地規制型の条例その2―その他のタイプ】

〇 立地規制型条例のうち、昭和30年代に制定された

滋賀県彦根市

彦根市上水道水源地域保護条例

昭和35年3月31日公布

昭和35年4月1日施行

 は、条例上明記された水源保護地域内での建造物の建設等を含む一定の行為を禁止し、違反に対して施設の撤去等の処置を行い、 戒告に応じない者は10万円以下の罰金または科料に処するとしている。なお、滋賀県栗東市の栗東市水道水源地域保護条例(昭和37年3月9日公布・施行)及び長崎県南塩原市の南島原市水道水源保護条例(平成18年3月31日公布・施行)は彦根市条例とほぼ同様の内容を有するが、栗東町条例には罰則規定はない。

〇 立地規制型条例のうち、地域指定、事前協議等の手法は津市条例タイプに準じるものの、禁止規定や認定手続規定は置かず、罰則も設けないものとして、

新潟県刈羽村

刈羽村水道水源保護条例

平成3年9月27日公布

平成3年9月27日施行

岡山県備前市

備前市水道水源保護条例

平成18年12月19日公布

平成19年4月1日施行

 などがある。このうち、刈羽村条例は、事前協議をしない事業者に対して、町長は勧告、一時停止命令及び公表することができるとしている。また、備前市条例は、協議の申出をした事業者は、市長と水道水源保護協定を締結するものとし、協定を締結しない場合等は、勧告及び公表することができるとしている。

〇 さらに、地域指定は行い、事前届出を義務付けるものの、助言・指導にとどめるものとして、

石川県金沢市

金沢市における水道水源の保全に関する条例

平成18年3月27日公布

平成18年4月1日施行

 などがある。金沢市条例は、管理者は水道水源保全区域を指定(6条1項)し、同保全区域内においてや建築物の新築等を行おうとする者はあらかじめ管理者に届け出なければならないとし(7条1項)、管理者は届出行為に対して水道水源の水質の保全に必要な措置を講ずるよう助言又は指導をしなければならない(9条1項)としている。事業者に対する支援の規定も置いている(10条)。

  なお、金沢市条例や備前市条例は、平成18年に制定されており、前述の水道水源保護条例を巡る一連の判決状況を考慮して制定されたものと考えることができる。

 

【排出規制型の条例】

〇 排出規制型の条例は、市町村長(管理者)が指定した水源保護地域において、一定の対象事業を行おうとする者に、市町村長(管理者)に対する協議(または、届出)を義務づけることは立地規制型条例と同様であるが、認定された規制対象事業場の設置を禁止するなどの手法をとらない。排出基準等を設定し、当該排出基準等に適合しない場合は、計画変更命令等を出し、排出基準等を順守させようとするものである。

〇 この排出規制型の条例として全国で最初に制定されたのは、

静岡県伊東市

伊東市水道水源保護条例

平成元年10月4日公布

平成元年12月1日施行

 とされる。また、水道水源保護条例の中で初めてゴルフ場を対象にしたものともされる。管理者が指定した水源保護地域(6条1項)において、対象事業場(ゴルフ場、リゾート関連事業、砂利採取業、採石業、産業廃棄物処理業等)を設置しようとする事業者は、管理者に事前協議し(8条1項)、管理者は、事業計画基準(7条)に適合しないと認めるときは、計画変更命令(10条1項)を出し、計画変更命令に従わない場合等は、一時停止命令(12条)を出し、その旨公表することができる(13条)としている。罰則規定はない。

〇 伊東市条例に続くものとして、

福島県いわき市

いわき市水道水源保護条例

平成4年3月30日公布

平成4年4月1日施行

千葉県木更津市

木更津市小櫃川流域に係る水道水源の水質の保全に関する条例

平成6年12月22日公布

平成7年4月1日施行

 などが制定されている。

  いわき市条例は、対象事業場としてゴルフ場と廃棄物最終処分場を掲げ(2条3号)、市長が排出基準を規則で定める(4条1項)としたうえで、事業者は水道水源保護地域において対象事業場の設置等を行う場合には、市長に届出をし(5条1項)、市長は、排出基準に適合しないと認めるときは、計画変更命令を行うことができる(6条)としている。また、対象事業場の設置等を行った事業者は、排水基準を遵守しなければならず(8条)、排水基準に適合しない排出水を排出したときなどは、市長が改善命令をすることができる(9条)としている。これらの命令に違反した者は、10万円以下の罰金に処する(16条)としている。

  木更津市条例は、小櫃川上流の産業廃棄物処分場の放流水からシアン、砒素等の有害物質が検出されたことを契機に、制定された。同じ流域に所在する袖ヶ浦市及び君津市においても、同様の条例が制定されている。木更津市条例は、いわき市条例とほぼ同様の構成となっているが、届出があった場合に住民説明会等を義務づけている(10条)。また、生活排水対策、家畜糞尿の適正処理及び肥料の適正使用について規定を置いている(15条〜17条)。命令違反の場合の罰金は、20万円以下としている(26条)。

  他の自治体の排出規制型の条例は、いわき市条例や木更津市条例とほぼ同様の構成とするものが多い。

〇 いわき市条例や木更津市条例とは異なり、命令や罰則等の手法を取らず、水道水源保護協定の締結により、排出基準等の遵守を確保しようとする条例がある。

岩手県盛岡市

盛岡市水道水源保護条例

平成14年3月29日公布

平成14年10月1日施行

 などである。盛岡市条例は、水道水源保護区域の指定(6条1項)や特定施設の設置の届出(9条1項)については、他の条例と同様の手続を規定しており、また、排出基準については、水質指針値(2条5号)とし、有害物質等の種類等やそれぞれの目標値については、条例の別表で具体的に定めている。そのうえで、水道水源保護区域内において特定施設から排出水を排出する事業者は、水質指針値を遵守するよう努めなければならない(7条)とし、市と水道水源保護協定を締結するものとしている(10条1項)。

  そして、市長は、水道水源保護協定に違反していると認めたときは、当該水道水源保護協定を遵守するよう指導又は勧告をするものとし(12条1項)、指導又は勧告に従わないときは,公表することができる(13条)としている。盛岡市条例については、牛嶋仁「環境保全・リサイクル条例」(「政策法務の新展開―ローカル・ルールが見えてきたー」(ぎょうせい2004年10月4日)338頁以下)を参照のこと。

 

【都道府県の条例】

〇 水道水源保護条例は、主として市町村において制定されているが、都道府県の条例で、水道水源の保全に関して明示的に規定している条例がある。

長野県

長野県水環境保全条例

平成4年3月19日公布

平成4年4月1日施行

福島県

福島県生活環境の保全等に関する条例

平成8年7月16日公布

平成9年4月1日施行

排出規制 地下水汚染対策(立地規制)

宮城県

ふるさとみやぎの水循環保全条例

平成16年6月22日公布

平成17年1月1日施行

である。

〇 長野県条例は、水道水源保護を目的とした県条例制定の直接請求がなされたことが端緒となっている(直接請求自体は、県議会で否決されたが、その後県で条例制定の検討が進められた)。条例のタイプとしては、立地規制型の条例で、津市条例タイプのうち「同意」型である。「水環境保全総合計画の策定、水質の監視及び水道水源保全地区の指定等について必要な事項を定めることにより、水環境の保全対策の総合的な推進を図る」(1条)としており、基本原則を定め(2条)、水環境保全総合計画を策定し(7条)、水質の監視(8条)等を行うこととしたうえで、水道水源保全地区の指定(11条)、水道水源保全地区内における行為の事前協議と知事の同意(12条)、中止命令等(13条)、罰則(24条)等の規定を置いている。対象行為は、ゴルフ場の建設、廃棄物最終処分場の設置及び土石類の採取等の土地の形質の変更で一定規模以上のもの‘(12条1項)としている。

  市町村との関係については、水道水源保全地区の指定は、所在市町村長の申出又は他の市町村長の要請(関係市町村長の意見を聴く)により行う(11条1項、2項)としている。前述の箕輪町水道水源保護条例は、長野県条例制定の後に制定され、ほぼ同様の構成となっているが、規制の対象行為は長野県よりも広い。

〇 福島県においても、水源保全条例の直接請求がなされたが、県議会で否決されている。その後検討が進められ制定されたのが、福島県条例である。生活環境の保全全般にわたる施策を総合的に推進することを目的としているが、様々な施策の一つとして、水環境の保全に関するものを規定し、地下水の汚染防止や採取規制とともに、排出規制等について定めている。

  この排出規制に関する規定は、知事は、水道水源の水質を保全するため、特別排水規制水域を指定し(28条1項)、特別排水規制水域給水区域等毎に特定事業場排水基準を規則で定める(29条1項)こととしている。この特別排水規制水域は、所在市町村長の申出又は他の市町村の要請(関係市町村長の意見を聴く)により、指定する(28条1項)こととしているが、市町村と関わりについては、長野県条例と同様の手続としている。

〇 宮城県条例は、議員提案により、制定された。「健全な水循環の保全に関する施策の基本的な事項を定めることにより、施策を総合的かつ計画的に推進」(1条)するものとし、基本理念(2条)を規定するとともに、知事は水環境保全基本計画(7条)及び流域水循環計画(12条)を策定するものとしている。そのうえで、知事は、水道水源特定保全地区を指定し(13条)、水道水源特定保全地域内において一定の開発行為(鉱物の掘採・土石の採取、木竹の伐採、工作物の新築等及び土地の開墾等)を行おうとする者は知事に届け出なければならず(14条)、知事は、必要と認めるときは、届出者に対して指導することができる(15条)としている。立地規制型の条例であるが、禁止、認定、許可、罰則等の手法は取らず、指導にとどめている。タイプとしては、上記の金沢市条例に似ている(制定時期は、宮城県条例の方が早い)。条例提出者の一人は、本条例検討に当たって、水道水源保護条例を巡る一連の判決、廃棄物処理法との整合性、科学的合理性による根拠の提示の困難性等を考慮して、「許可制に基づく水道水源保全条例の制定については断念することとした」(油川洋・小野寺初正「条例制定から政策提言へ−宮城県の目指す水循環政策の提言−」(作大論集5号2015年3月15日 作新学院大学)219頁)としている。

 




条例の動きトップに戻る