地震・震災対策に関する条例

(令和5年12月18日更新)

【制定状況の概観】

〇 我が国は、地震、津波、台風、豪雨、洪水、土砂災害、大雪、火山噴火など多くの災害に見舞われてきた。災害発生時には、国、地方の総力を挙げてその対応を行い、また平時においても、予防のための様々な対策が講じられてきている。災害の対応や予防などに関して、国では、災害対策基本法など多くの関係法律が制定され、自治体においてもそれぞれの地域の状況を踏まえた各種の関係条例を制定している。これらの条例のうち、まず、地震・震災対策に関する条例を本稿で取り上げる。地震を含む災害全般を対象にする防災対策に関する条例については、「防災対策に関する条例」で取り上げる。

〇 災害全般を対象にした防災対策に関する条例は日本各地の自治体で制定されているのに対して、地震・震災対策に関する条例を制定している地域は限定されている。すなわち、首都直下型地震等が懸念される東京都、千葉県、埼玉県及び神奈川県、東海地震・東南海地震・南海地震が懸念される静岡県、愛知県、岐阜県、高知県及び徳島県並びに宮城県沖地震や東日本大震災が既に発生し今後も千島海溝周辺海溝型地震が懸念される宮城県において、都県や都県下の市区町村で制定されている。

〇 地震・震災対策に関連した法律として、 東海地震を想定した大規模地震対策特別措置法(昭和53年6月15日公布・昭和53年12月14日施行)、平成7年1月に発生した阪神淡路大震災の後に制定された、地震防災対策特別措置法(平成7年6月16日公布・平成7年7月18日施行)、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平14年7月26日公布・平成15年7月25日施行)、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成16年4月2日公布・平成17年9月1日施行)等が制定されている。平成23年3月に発生した東日本大震災の後、津波防災地域づくりに関する法律(平成23年12月26日公布・平成23年12月27日施行)が制定され、また、南海トラフ巨大地震の被害想定が公表されたことを受けて、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法が南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法に改正されている(平成25年12月27日改正施行)。被災地の復興に関しては、阪神淡路大震災の後に制定された被災市街地復興特別措置法(平成7年2月26日公布・施行)、東日本大震災の後に制定された大規模災害からの復興に関する法律(平成25年6月21日公布・施行)等が制定されている。

〇 地震・震災対策に関する条例の制定年を概観すると、昭和46年に東京都震災予防条例、昭和50年に藤沢市地震対策条例が制定され、さらに昭和53年の大規模地震対策特別措置法制定の後、市川市震災予防条例(昭和55年)、川崎市地震対策条例(昭和56年)などが制定された。平成7年の阪神淡路大震災発生後には、静岡県地震対策推進条例(平成8年)、渋谷区震災対策総合条例(平成8年)、横浜市震災対策条例(平成10年)などが制定され、東京都震災予防条例は東京都震災対策条例に改正(平成12年)にされ、さらに埼玉県震災予防のまちづくり条例(平成14年)などが制定されている。平成15年の東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の施行を受け、愛知県地震防災推進条例(平成16年)、三重県地震対策推進条例(平成16年)、に岐阜県地震防災対策推進条例(平成17年)、高知県南海地震による災害に強い地域社会づくり条例(平成20年)などが制定され、平成17年の日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の施行等を受け、宮城県の震災対策推進条例(平成20年)が制定されている。平成23年の東日本大震災発生後は、これらの条例の多くは見直しの上改正され、また、徳島県南海トラフ巨大地震等に係る震災に強い社会づくり条例(平成24年)、東京都帰宅困難者対策条例(平成24年)、神奈川県地震災害対策推進条例(平成25年)などが制定されている。

〇 以下、地域ごとに、地震・震災対策に関する条例を紹介する。

 

【東京都と都下市区町村の条例】

〇 東京都及び都下市区町村の条例のうち主なものとしては、以下のようなものがある。

東京都

東京都震災対策条例

平成12年12月22日公布

平成13年4月1日施行

東京都帰宅困難者対策条例

平成24年3月30日公布

平成25年4月1日施行

東京都渋谷区

渋谷区震災対策総合条例

平成8年3月29日公布

平成8年4月1日施行

平成18年12月14日改正施行

平成25年4月1日改正施行

平成31年3月28日改正施行

令和5年4月1日改正施行

東京都足立区

足立区震災復興対策及び震災復興事業

の推進に関する条例

平成13年6月14日公布

平成13年6月14日施行

平成30年4月1日改正施行

足立区被災市街地復興整備条例

平成13年10月22日公布

平成13年10月22日施行

令和3年10月20日改正施行

東京都練馬区

練馬区震災復興の推進に関する条例

平成20年12月15日公布

平成20年12月15日施行

〇 東京都は、昭和46年に東京都震災予防条例を制定した。この条例は、「昭和39年に発生した新潟地震において、軟弱な地盤地域で発生した液状化現象により多くの建物が倒壊した教訓を受けて、同様の地域を多く抱えている東京都が、昭和46年に全国に先駆けて制定した。」ものであり、「1 行政の主導により、2 予防対策重視の観点から、3 都市施設整を進め、震災による被害の軽減を目指したもの」(東京都総務局「東京都震災予防条例全面改訂(中間のまとめ)」)とされる。

 しかし、「阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて、従来行政主導で、予防対策を中心に進めてきた震災対策を、都民、事業者及び行政が連携を図り、応急・復興対策も含めた総合的な震災対策へと転換」(上記東京都総務局資料)を図り、平成12年12月に全面改正し、東京都震災対策条例(新条例)が制定された。新条例は、「1 自らの生命は自らで守る-都民や事業者の責務と役割の強化-、2 他人を助けることのできる都民へ-自主的防災活動の活性化と助け合いの仕組みづくり-、3 より迅速な応急・復興活動を-危機管理の視点からの応急・復興対策の見直し及び強化-、4 地震に強いまち・東京へ-地震に強いまちづくりの一層の推進-」の基本的考え方に立って制定作業が進められた(上記東京都総務局資料)。

 新条例は、総則(1章)、予防対策(2章)、応急対策(3章)、復興対策(4章)、委任(5章)の5章、59条から構成されている。前文では、自助、共助、公助の考え方が強調され、予防対策では、都による防災都市づくり計画の策定、建築物等の耐震化、不燃化の確保等とともに、防災教育の充実、防災組織の育成、ボランティアの支援、防災訓練の実施等を、応急対策では、避難場所・避難道路の指定、救出・救助の活動拠点の確保等を、復興対策では、震災復興計画の策定、震災復興事業の推進等を規定している。なお、復興対策に関連して、平成10年6月に東京都震災復興本部の設置に関する条例(平成10年6月24日公布・平成10年12月17日施行)が制定されている。

〇 東京都は、東日本大震災の際に鉄道等の運行停止により多くの帰宅困難者が発生し、駅周辺や道路が大変混雑したことを受けて、平成24年3月に東京都帰宅困難者対策条例を制定した。同条例は、事業者は大規模災害の発生時には従業者が一斉に帰宅することの抑制に努めなければならない(7条1項)としたうえで、都に安否確認及び情報提供のための体制整備、一時滞在施設の確保、帰宅支援等を義務づけている(10条~13条)。

〇 渋谷区条例は、阪神淡路大震災の約1年後の平成8年3月に制定されており、「それまでいくつかの条例に分かれていた震災対策を一体化し、震災対策を、総合的に進めようとするもの」で、「全国に先駆けて」制定された「震災対策総合条例」である(渋谷区HP「渋谷区震災対策総合条例」)とされる。総則(1章)、組織及び体制整備(2章)、予防対策及び応急・復旧対策(3章)、震災復興対策(4章)、補則(5章)の5章、47条から構成されている。総則、組織及び体制整備で、震災対策計画の策定、渋谷区防災会議・渋谷区災害対策本部の設置等を、予防対策及び応急・復旧対策で、地震に強い都市づくり、初期消火体制の充実、防災拠点等の整備、食料、飲料及び生活必需品の確保、自主防災組織及び登録ボランティア、要配慮者の援護、医療救護等、防災訓練等を、震災復興対策で、渋谷区震災復興本部の設置等を規定している。平成18年に災害時要援護者に係る個人情報の目的外利用と外部提供に関する規定の追加等、平成25年に帰宅困難者に関する規定の追加等、さらに、平成31年に避難行動要支援者名簿の作成に関する規定の追加等の一部改正が、令和5年に個別避難計画の作成に関する規定の追加や避難行動要支援者名簿の作成に関する規定の改正がなされている。

〇 足立区及び練馬区の条例は、いずれも震災復興に関する条例である。このうち、「足立区震災復興対策及び震災復興事業の推進に関する条例」は、主として震災復興本部の設置等を規定し、「足立区被災市街地復興整備条例」は、復興対象地区の指定、都市復興基本計画の策定、都市復興事業の推進、建築行為の届出等について規定している。練馬区条例は、両方の内容を含んだものとなっている。

 都下の特別区や市町村では足立区及び練馬区のほかに、震災復興本部の設置等に関する条例は、板橋区(平成13年)、新宿区(平成15年)、目黒区(平成19年)、港区(平成23年)、北区(平成26年)で、被災市街地の復興整備に関する条例は、荒川区(平成13年)、墨田区(平成16年)、江戸川区(平成17年)、文京区(平成18年)、葛飾区(平成22年)、港区(平成25年)、大田区(平成30年)、杉並区(平成31年)で、震災対策本部の設置等及び被災市街地の復興整備の両方の内容を含んだ条例(震災復興の推進に関する条例)は、豊島区(平成25年)、江東区(平成25年)、八王子市(平成27年)で制定されている(括弧内は、条例の制定(公布)年である)。

 なお、特別区では、地震・震災対策に関する条例ではなく、災害対策に関する条例を制定している団体も多い。「防災対策に関する条例」を参照されたい。

 

【神奈川県、千葉県、埼玉県の県と市町村の条例】

〇 神奈川県、千葉県、埼玉県の県と市町村の条例としては、以下のようなものがある。

千葉県市川市

市川市震災予防条例

昭和55年10月9日公布

昭和55年10月9日施行

川崎市

川崎市地震対策条例

昭和56年4月1日公布

昭和56年4月1日施行

平成9年3月31日改正施行

平成29年4月1日改正施行

神奈川県藤沢市

藤沢市地震対策条例

昭和59年6月28日公布

昭和59年6月28日施行

令和3年6月17日改正施行

埼玉県

埼玉県震災予防のまちづくり条例

平成14年3月29日公布

平成14年7月1日施行

神奈川県

神奈川県地震災害対策推進条例

平成25年1月11日公布

平成25年4月1日施行

令和元年7月16日改正施行

令和3年10月22日改正施行

横浜市

横浜市震災対策条例

平成25年2月28日公布

平成25年4月1日施行

平成30年3月5日改正施行

令和5年4月1日改正施行

〇  市川市、川崎市、藤沢市の条例は、大規模地震対策特別措置法制定後の昭和55年10月、昭和56年4月、昭和59年6月にそれぞれ制定されている。3市とも同法3条1項に基づく地震防災対策強化地域には指定されていないが、指定されていないからこそ、震災発生に備えて条例で独自に予防対策や応急対策などの措置を講じることとしたものと考えられる。藤沢市条例は、昭和50年6月に制定された藤沢市地震対策条例が全部改正され、制定されている。3市の条例とも、震災予防対策(防災対策)、警戒宣言発令時の対応、震災応急対策、地域防災組織等を規定している。

〇 埼玉県条例は、「埼玉県を含む南関東地域では、マグニチュード7クラスの直下の地震の切迫性が高まっていることが指摘されており、あらかじめ被害の軽減を図るための措置を講じる震災予防対策は大変重要」(埼玉県HP「埼玉県震災予防のまちづくり条例とは」)との認識のもと、平成14年3月に震災予防対策に焦点を当てて制定されている。総則(1章)、都市の安全性の確保(2章)、地域社会における協働の促進(3章)、雑則(4章)の4章、27条から構成されており、前文では、東京都震災対策条例と同様に自助、共助、公助の考え方が強調されている。特に、都市の安全性の確保については、高さ31mを超える高層建築物等を新築、増築などする建築主に対して「防災計画」の作成と知事に対する届出を義務づけている(17条)。

〇 神奈川県条例は、東日本大震災後の平成25年1月に制定されている。「東日本大震災後に制定された条例としては初めての、総合的な地震災害対策のための条例のひとつである」(自治体法務研究2013年秋号条例制定の事例CASESTUDY「神奈川県地震災害対策推進条例」)とされる。18条から構成され、地震防災に配慮したまちづくりの推進、地震防災に関する知識の普及、物資の備蓄、自主防災組織及びボランティア団体が行う地震防災活動の充実、防災訓練の実施等、避難対策の実施、津波対策の実施、災害応急対策の実施、帰宅困難者対策の実施、復旧及び復興等について規定している。

〇 横浜市条例は、平成10年2月制定の「横浜市震災対策条例」が平成25年2月に全部改正され、制定されている。総則(1章)、市、市民及び事業者の責務(2~4章)、予防対策及び応急対策(5章)、復旧対策及び復興対策(6章)、雑則(7章)の7章、37条から構成されている。平成25年の全部改正の際、東日本大震災を受け、基本理念等(3条)、災害時要援護者対策(12条)、液状化対策(18条)、崖防災対策(19条)、津波避難対策(20条)、帰宅困難者対策(21条)、地震による火災への対策(22条)、空地等の把握及び提供の協力(31条)、復旧対策(34条)、復興対策(35条)に関する規定の追加等がなされている。

 

【静岡県、愛知県、岐阜県の県と市町村の条例】

〇 静岡県、愛知県、岐阜県の県と市町村の条例のうち主なものとしては、以下のようなものがある。

静岡県

静岡県地震対策推進条例

平成8年3月28日公布

平成8年4月1日施行

平成18年7月21日改正施行

平成28年10月25日改正施行

静岡市

静岡市震災による被災市街地復興整備条例

平成20年3月21日公布

平成20年4月1日施行

愛知県

愛知県地震防災推進条例

平成16年3月26日公布

平成16年4月1日施行

令和4年3月25日改正施行

岐阜県

岐阜県地震防災対策推進条例

平成17年3月23日公布

平成17年4月1日施行

平成27年4月1日改正施行

岐阜県各務原市

各務原市地震防災対策推進条例

平成17年3月31日公布

平成17年4月1日施行

〇 静岡県は、東海地震が発生した際に最も被害を受ける地域とされ、従前から大規模地震対策特別措置法等に基づき地震対策を積極的に推進してきたが、阪神淡路大震災の約1年後の平成8年3月に静岡県地震対策推進条例を制定した。総則(1章)、県及び市町の責務等(2章)、県民の責務(3章)、既存建築物等の耐震性の向上(4章)、地震発生時の緊急交通の確保(5章)、被災建築物の応急危険度判定(6章)、復旧及び復興対策(6章の2)、雑則(7章)の7章、38条で構成されている。前文で、「県民は、『自らの命は自ら守る』『自らの地域は皆で守る』という地震対策の基本に立ち、家庭や事業所における地震対策、地域における住民相互の協力による防災活動を行う必要がある。」ことを強調している。そのうえで、特に、既存建築物、広告塔等の落下対象物、ブロック塀及び自動販売機の所有者に対して耐震性の向上・安全性の確保について努力義務を課し、県は必要に応じて指導・助言・指示を行うことができる(15条~18条)とするとともに、地震発生時の交通規制等、道路の迅速な復旧及び陸海空の緊急輸送の確保について具体的に規定し(21条~30条)、応急危険度判定の実施、応急危険度判定士の認定・登録等について定めている(31条~33条)。東日本大震災や平成28年4月に発生した熊本地震を踏まえ、平成28年10月に改正施行され、災害伝承、男女共同参画、津波避難、死体の捜索及び処理、帰宅困難者対策、避難所の安全対策、防災教育、復旧及び復興対策等に関する規定が追加されている。

〇 静岡市条例は、平成20年に制定され、都市復興基本方針の策定、建築制限区域の指定、被災市街地復興対象地区の指定、建築行為の届出等を規定している。

〇 愛知県条例及び岐阜県条例は、平成15年の東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の施行後、平成16年3月、平成17年3月にそれぞれ制定されている。なお、三重県も平成16年3月に三重県地震対策推進条例を制定したが、平成21年3月に三重県防災対策推進条例として全部改正を行っている。

 愛知県条例は、総則(1章)、行動計画(2章)、地震防災に関する啓発活動等(3章)、地震に強いまちづくり(4章)、帰宅困難者等に対する支援等(5章)、地震災害の拡大の防止等(6章)の6章、23条から構成されている。県は、行動計画を策定することとしている(9条)。

 岐阜県条例は、総則(1章)、予防対策(2章)、応急対策(3章)の3章、28条から構成されている。県による行動計画の策定(7条)のほか、予防対策として地域防災力の育成及び強化等、応急対策として緊急輸送対策、帰宅困難者等に対する支援等に関する規定を置いている。

〇 各務原市条例は、岐阜県条例と同時期の平成17年3月に制定されている。岐阜県条例とほぼ同様の内容となっている。岐阜県においては、各務原市以外にも、白川町、七宗町、東白川村、美濃市(以上の市町村は平成17年制定)、八百津町(平成20年制定)でも、同様の条例が制定されている。

 

【高知県、徳島県の条例】

〇 高知県及び徳島県の条例は、以下の通りである。

高知県

高知県南海トラフ地震による災害に強い

地域社会づくり条例

平成20年3月25日公布

平成20年4月1日施行

平成26年4月1日改正施行

平成28年4月1日改正施行

徳島県

徳島県南海トラフ巨大地震等に係る震災に強い

社会づくり条例

平成24年12月21日公布

平成24年12月21日施行

(一部、平成25年4月1日施行)

令和3年10月8日改正施行

令和4年7月12日改正施行

 

〇 高知県条例は、平成15年の東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の施行後、平成20年3月に「高知県南海地震による災害に強い地域社会づくり条例」として制定されが、法律が平成25年に南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法として改正されたことを踏まえ、平成26年4月1日に改正施行され、現行条例名となった。総則(1章)、地震の揺れの被害から生命を守る(2章)、津波から逃げる(3章)、火災から生命を守る(4章)、土砂災害等の危険から生命を守る(5章)、震災から生命を救う(6章)、被災者の生活の安定を図る(7章)、震災からの復興を進める(8章)、震災に強い人づくり、地域づくり及びネットワークづくりを進める(9章)、南海トラフ地震対策を計画的に進める(10章)、雑則(11章)の11章、46条から構成されている。「南海トラフ地震による災害・・・から県民の生命、身体及び財産を守ることを目的として、予防から南海トラフ地震の発生後の応急・復旧・復興までの総合的な対策・・・を計画的に行う」(1条)としている。特に、津波対策については、津波からの避難、地域の津波避難計画の作成の推進、自主防災組織等が行う津波からの避難訓練、津波情報の入手、津波避難場所及び避難路の確保、津波の危険を事前に回避する対策の推進、津波の浸入による被害の軽減等について詳細な規定を置いている(14条~19条)。本条例については、自治体法務研究2013年夏号CLOSEUP先進・ユニーク条例「高知県南海地震による災害に強い地域社会づくり条例について」を参照されたい。

〇 徳島県条例は、平成24年12月に制定された。「命を守るとくしま-0(ゼロ)作戦条例」を愛称としている(徳島県HP「「徳島県南海トラフ巨大地震等に係る震災に強い社会づくり条例(愛称:命を守るとくしま-0(ゼロ)作戦条例」について)」参照)。総則(1章)、予防対策(2章)、応急対策(3章)、復旧及び復興対策(4章)の4章、83条から構成されているが、本条例の特徴として、土地利用の規制に関する規定を置いていることが挙げられる。すなわち、南海トラフ巨大地震に備えた土地利用の規制として、津波防災地域づくりに関する法律に基づき「津波災害特別警戒区域」等を速やかに指定することとする(52条1項)とともに、直下型地震の震源となることが危惧される中央構造線活断層帯に係る土地利用の適正化として、知事は事業者が活断層の調査を行う必要がある区域を「特定活断層調査区域」として指定する(55条)こととしたうえで、「多数の人が利用する建築物」や「危険物を貯蔵する施設」の新築等(新築、改築、移転)をしようとする者は特定活断層の直上への新築等を避けなければならない(56条1項)とし、新築等をする場合は知事に届け出て、協議しなければならない(56条2項)としている。本条例については、自治体法務研究2013年秋号条例制定の事例CASESTUDY「「徳島県南海トラフ巨大地震等に係る震災に強い社会づくり条例」について」を参照されたい。なお、活断層上の建築規制については、田中孝男「活断層直上における条例による建築物の建築規制について~ 活断層直上建築規制条例のベンチマーキング~」(自治体法務NAVI Vol.55 2013年10月)が詳しい。

 

【宮城県の条例】

〇 宮城県は、

宮城県

震災対策推進条例

平成20年10月23日公布

平成21年4月1日施行

平成26年4月1日改正施行

を制定している。

〇 同条例は、平成20年10月にその当時近い将来発生が予想されていた宮城県沖地震を想定して制定されたが、東日本大震災の発生を受けて、平成26年4月に改正施行されている。総則(1章)、予防対策(2章)、応急対策(3章)、復興対策(4章)、雑則(5章)の5章、42条から構成されている。前文で、「東日本大震災・・・は、人知を超えた猛威をふるい、県内で一万人を超える多くの尊い生命を奪うとともに、県土及び県民の財産に甚大な被害をもたらした未曾有の大災害であった。地震や津波の発生を防ぐことはできないが、東日本大震災をはじめとする過去の震災における教訓を踏まえ、衆知を集めて効果的な震災対策を講じるとともに、避難行動をとることの重要性を啓発し、もって県民一人一人の自覚及び努力を促すことによって、震災による被害を軽減することを目指していく。」としたうえで、「そのためには、被害を最小化し迅速な回復を図る『減災』の考え方を基本とし、男女双方の視点に立ち、高齢者、障害者その他特に配慮を要する者への支援に配慮しつつ、震災に強いまちづくりの実現を目指し、住民が自らを守る『自助』、地域社会の住民がお互いを守る『共助』、そして行政の施策としての『公助』の適切な役割分担によって震災対策を講じていくことが重要である。」としている。二次災害(地震又は津波に伴い発生する火災その他の災害)及び複合災害(地震若しくは津波の発生と同時に又はこれらの発生に連続してこれら以外の異常な自然現象等が発生することにより深刻な被害が生じる災害)に対する施策の推進についても規定している(17条)。



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