若者に関する条例
(令和6年10月26日作成)
【はじめに】
〇 本稿では、若者に関する条例を取り上げる。若者が活躍するまちづくりの推進、若者の権利の保障や支援、若者の就職支援、若者の定住促進等を目的とす条例がある。
〇 「若者」とは「年若い人」(広辞苑第7版)とされる。法律では、若者について規定するものとして、「子ども・若者育成支援推進法」や「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律」があるが、これらの法律では「若者」については特に定義規定は置いていない。
下記で具体的に紹介する条例のうち、「若者」について、新城市条例は「おおむね13歳からおおむね29歳までの者」(2条2号)、湯沢市条例は「15歳以上39歳以下である者」(2条)、富田林市条例は「概ね16歳から30歳までの者」(2条)、大分市条例は「おおむね16歳から29歳までの者」(2条2号)、京都府条例は「15歳以上35歳未満の者」(2条1号)、北山村条例は「満45歳までの者」とそれぞれ定義づけており、「若者」の定義は条例によって異なる。なお、道志村条例は「若者等」を「45歳以下の夫婦若しくは50歳以下の者で子ども(中学生以下の者。)がいる世帯、又は35歳以下の者」(2条1号)、永平寺町条例は「若者や学生」を「町内に居住又は町内の事業所に通勤する者及び高等教育機関に在学する者」(2条2号)、多摩市条例は「子ども・若者」を「おおむね30歳代までの市民」(2条1号)、埼玉県条例は「こども・若者」を「新生児期から青年期に至るまでの間にある者で、心身の発達の過程にあるもの」(2条1項)とそれぞれ定義づけている。
なお、条例における「若者」の定義状況については、小西敦「「若者」は条例でどう定義されているか」(「地域社会における連携・協働に関する研究会報告書 ~若者会議:若年層の参画と活躍~(令和5年度)」(令和6年3月自治研修協会)158頁~176頁)が詳しく分析しているので、参照されたい。
【若者に関する条例】
(若者が活躍するまちづくりの推進を目的とする条例)
〇 若者が活躍するまちづくりの推進を目的とする条例がある。以下のような条例である。
愛知県新城市 | 平成26年12月24日公布 | 平成27年4月1日施行 |
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秋田県湯沢市 | 平成29年3月23日公布 | 平成29年4月1日施行 |
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福井県永平寺町 | に関する条例 |
平成29年5月29日公布 | 平成29年5月29日施行 |
大阪府富田林市 | 令和2年12月21日公布 | 令和3年4月1日施行 |
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大分県大分市 | 令和4年12月15日公布 | 令和5年4月1日施行 |
〇 新城市条例は、「多くの若者が思いや意見を伝える機会を確保し、さまざまな場面でこれらを反映する仕組みを新たにつくるとともに、若者も自ら考え、その責任の下、主体的に行動することにより「若者が活躍するまち」の形成を目指すことで、真に市民が主役となるまちと世代のリレーができるまちを実現するために、ここにこの条例を制定する。」(前文)としている。
基本理念(3条)、若者、市民、事業者及び市の責務(4条~7条)、若者総合政策(計画)の策定(8条)、若者議会の設置(10条)、活動等に対する支援措置(12条)等を定めている。若者議会については、別途「新城市若者議会条例」(新城市若者条例と同日公布・同日施行)が制定されている。
新城市の条例の内容等については自治体法務研究2015年夏号CLOSEUP先進・ユニーク条例「新城市若者条例及び新城市若者議会条例」を、若者総合政策については新城市HP「若者総合政策」を、若者議会については新城市HP「若者議会」を参照されたい。
〇 湯沢市条例は、「若者や女性の活躍推進」(1条)を目的としている。基本理念(3条)、市、市民・事業者及び教育に携わる者の責務(4条~6条)のほか、審議会等の委員は若者や女性の委員合計が5割以上となるよう努めること(8条1項)、市民からの意見募集の際には若者については各世代の抽出者の平均と同水準まで抽出数を確保すること(9条2項)、若者女性活動に対して個人市民税の1%に最近の国勢調査における市の人口に占める若者と女性の割合を乗じた額を目途に財政上の措置を講ずるよう努めること(10条1項)、推進協議会の設置(12条)等を定めている。
湯沢市条例の内容等については、自治体法務研究2017年秋号条例制定の事例CASESTUDY「湯沢市若者や女性が輝くまちづくり推進条例」を参照されたい。
〇 永平寺町条例は、「若者や学生が活躍するまちの形成の推進」(1条)を目的とし、基本理念(3条)、若者・学生、町民、高等教育機関、事業者及び町の役割(4条~8条)等を定めている。
〇 富田林市条例は、「若者が活躍できるまちづくりの推進」(1条)を目的とし、基本理念(3条)、若者、市民等及び市の役割(4条~6条)、若者会議の設置(7条)等を定めている。
富田林市条例の内容等については富田林市HP「富田林市若者条例」を、若者会議については富田林市HP「富田林市若者会議」を参照されたい。
〇 大分市条例は、「若者の活躍推進」(1条)を目的とし、基本理念(3条)、若者、市民、地域コミュニティ、学校等、事業者及び市民活動団体の役割(4条~9条)、市の責務(10条)、推進計画の策定(11)、施策の基本となる事項(12条)等を定めている。
大分市条例の内容、制定経緯等については、大分市議会HP「大分市若者応援条例」を参照されたい。
石川県金沢市 | 平成22年3月25日公布 | 平成22年4月1日施行 |
である。
金沢市条例は、「学生のまち」を「固有の自然、歴史、文化等とこれらのもとで醸成されてきた地域コミュニティを大切にする土壌を生かして、学生がまちを学びの場又は交流の場としながら、まちなかに集い、市民と親しく交流し、及び地域における活動等に取り組むほか、市民、町会等、高等教育機関、事業者及び市が一体となって学生の地域における生活、自主的な活動等を支援することにより、学生と市民との相互の交流及び学生とまちとの関係が深まり、にぎわいと活力が創出されるまち」(2条1号)と定義づけたうえで、「学生のまちの推進」(1条)を目的と、学生、市、市民・町会等、高等教育機関及び事業者の役割(4条~8条)のほか、学生は学生会議を組織することができること(15条)、学生、市民、町会等、高等教育機関及び事業者は地域推進団体を組織し、推進計画の策定、市長と協定の締結をすることができること(16条~18条)、推進会議の設置(21条)等を定めている。
金沢市条例の内容等については自治体法務研究2017年秋号条例制定の事例CASESTUDY「金沢市における学生のまちの推進に関する条例」を、金沢市の取組みについては金沢市HP「学生のまち・金沢」を参照されたい。
(若者の権利の保障や支援を目的とする条例)
〇 若者の権利の保障や支援を目的とする条例も制定されている。以下のような条例である。
東京都多摩市 | 令和3年12月23日公布 | 令和4年4月1日施行 |
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埼玉県 | 令和6年10月18日公布 | 令和6年10月18日施行 |
〇 すくなからぬ自治体が子ども条例や子ども権利条例を制定している(制定状況等については、「子どもに関する条例」及び「子どもの権利に関する条例」を参照されたい。)が、両条例は子どもと併せて若者をも対象としている。
〇 多摩市条例は、基本理念(3条)、子ども・若者の権利(4条)、市の役割(5条)、切れ目のない支援のための仕組みづくり(7条)、子ども・若者計画の策定(9条)等を定めている。
〇 埼玉県条例は、基本理念(3条)、県の責務(4条)、保護者・養育者、学校・保育施設等、事業者、民間支援団体及び県民の役割(5条~9条)、体制整備等(11条)、こども・若者等からの意見聴取及び意見反映(12条)、こども・若者の安全・安心の確保、居場所づくりの推進等(15条~18条)等を定めている。
(若者の就職支援を目的とする条例)
〇 京都府は、若者の就職等の支援を目的とする条例を制定している。すなわち、
京都府 | 平成27年7月28日公布 | 平成27年7月28日施行 |
である。
〇 府は、若者就職支援施策等を総合的に策定し、及び実施する(3条1項)ものとし、実施方針を策定する(6条)としたうえで、基礎的就職支援事業(職業生活において自立しようとする若者に対し、当該若者の状況に応じて職業生活に必要な基礎的な知識等を習得させるための講習、実習等を行うことにより、就職に係る支援を講じる事業)や実践的就職支援事業(職業生活においてその能力を発揮しようとする若者に対し、当該若者の状況に応じて実践的な職業能力の開発及び向上を促進することにより、就職に係る支援を講じる事業)を行う事業者が作成する事業計画を認定し、認定計画に基づく事業に対して不動産取得税の不均一課税等を行う(8条~17条)としている。
本条例の内容等については、京都府ひきこもり支援情報ポータルサイト「京都府若者の就職等の支援に関する条例」を参照されたい。
(若者の定住促進を目的とする条例)
〇 若者の定住促進を目的とする条例は、少なくない。例えば、以下のような条例がある。
和歌山県北山村 | 平成元年9月27日公布 | 平成元年9月27日施行 |
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石川県宝達志水町 | 平成17年3月1日公布 | 平成17年3月1日施行 |
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山梨県道志村 | 平成29年3月17日公布 | 平成29年4月1日施行 |
いずれの条例も、若者の定住促進のための財政支援等に関する規定を置いている。
すなわち、北山村条例は事業実施や住宅建築の融資に対する利子補給、協業組織での事業実施に対する財政支援等(3条)、宝達志水町条例はマイホーム取得奨励金、出産祝金、成長祝金及び成婚祝金の支給等(2条~10条)、道志村条例は住宅新築等に対する補助及び利子補給(3条~11条)を定めている。
〇 なお、若者定住住宅の設置・管理等を定める条例は多い。例えば、以下のような条例がある。
愛知県東栄町 | 平成8年7月1日公布 | 平成8年8月1日施行 |
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島根県津和野町 | 平成17年9月25日公布 | 平成17年9月25日施行 |
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福島県湯川村 | 令和元年6月26日公布 | 令和元年6月26日施行 |