土砂埋立て等の規制に関する条例(盛土規制条例)
(令和5年7月10日更新)
【はじめに】
〇 土砂埋立て等の規制に関する条例は、残土条例や土砂条例ともいわれ、また後述する令和3年の熱海市土砂災害発生以降は盛土条例ともいわれる。
建設工事で発生した土砂が、他の地域に搬出され、山間部の谷地の埋立てや盛土、宅地や農地の造成や嵩上げ等に使われ、また、単に投棄され放置され、その結果、土砂の流出や崩壊、自然生態系への影響、土壌汚染や地下水汚染などの問題を引き起こすことがある。こうした建設発生土(残土)は、通常は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の対象となる廃棄物ではないとされ、また、汚染されていないものは「土壌汚染対策法」の対象外であり、さらに、砂防法,森林法,宅地造成等規制法等において災害の防止等の観点から一定の規制がなされているが、適用範囲や条件は限定されている。
このように現行法では建設発生土等の土砂の埋立て、盛土等に伴う問題に十分対応することができないため、土砂埋立て等の規制に関する条例を制定している自治体が少なくない。
〇 条例制定の動きは、千葉県から始まったとされる。まず,千葉県市川市が,全国で初めて,昭和55年に「市川市土砂等による土地の埋立,盛土及びたい積の規制に関する条例」を制定し,その後千葉県内及び首都圏の市町村を中心に制定の動きが広がり、平成9年には、千葉県が、都道府県としては最初の条例となる「千葉県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害発生の防止に関する条例」を制定した。
その後、多くの都道府県や市町村で、土砂埋立て等の規制に関する条例が制定された。この状況については、次項以降で、紹介する。
〇 令和3年7月3日、静岡県熱海市において盛土が原因とみられる土石流が発生し、多数の死者・行方不明者や家屋被害等が生じるなど、甚大な被害が発生した(以下「熱海市土石流災害」という。)。この災害の発生を踏まえ、政府は、令和3年8月に、盛土の総点検と災害防止のための対応方策に関して、関係行政機関相互の緊密な連携と協力の下で推進するため、「盛土による災害防止のための関係府省連絡会議」を設置し、また、同年9月には、盛土による災害の防止に向け、盛土の総点検等を踏まえた対応方策等について検討をするため、「盛土による災害の防止に関する検討会」(以下「盛土検討会」という。)を設置し、盛土検討会は、令和3年12月20日に「盛土による災害の防止に関する検討会 提言」をとりまとめた。
〇 政府は、この提言を踏まえ、法制化を進め、関係法案が令和4年3月1日に閣議決定され、国会に提出され、国会での審議の結果、「宅地造成等規制法の一部を改正する法律(宅地造成及び特定盛土等規制法)」が令和4年5月27日に公布された。同法は、盛土等による災害から国民の生命・身体を守る観点から、盛土等を行う土地の用途やその目的にかかわらず、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制しようとするものであり、通称は「盛土規制法」とされる。令和5年5月26日に施行された。
同法は、①都道府県知事等が、宅地、農地、森林等の土地の用途にかかわらず、盛土等により人家等に被害を及ぼしうる区域を規制区域として指定し、農地・森林の造成や土石の一時的な堆積も含め、規制区域内で行う盛土等を許可の対象とすること、②盛土等を行うエリアの地形・地質等に応じて、災害防止のために必要な許可基準を設定し、許可基準に沿って安全対策が行われているかどうかを確認するため、施工状況の定期報告、施工中の中間検査及び工事完了時の完了検査を実施すること、③盛土等が行われた土地について、土地所有者等が安全な状態に維持する責務を有することを明確化し、災害防止のため必要なときは、土地所有者等だけでなく、原因行為者に対しても、是正措置等を命令できること、④罰則が抑止力として十分機能するよう、無許可行為や命令違反等に対する罰則について、条例による罰則の上限より高い水準(最大で懲役3年以下・罰金1千万円以下・法人重科3億円以下)に強化すること、等を内容としている。
同法の内容等については、国土交通省HP「「宅地造成等規制法の一部を改正する法律」(盛土規制法)が公布されました~危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制します!~」を参照されたい。
同法の施行(令和5年5月26日)後、都道府県、指定都市及び中核市は、基礎調査を行ったうえで、特定盛土等規制区域を指定することとなるが、それに伴い、法の施行条例の制定や既存条例の見直し等が必要となる。これらの動きについても、順次紹介する。
【都道府県の条例ー盛土規制法施行前】
〇 都道府県の土砂埋立て等の規制に関する条例として、令和5年3月31日時点で確認できるものは、以下のようなものがある
千葉県 | 平成9年7月15日公布 | 平成10年1月1日施行 |
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栃木県 | 平成10年10月25日公布 | 平成11年4月1日施行 |
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神奈川県 | 平成11年3月16日公布 | 平成11年10月1日施行 |
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愛媛県 | 平成12年3月24日公布 | 平成12年5月1日施行 令和2年5月1日改正施行 |
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福岡県 | 平成14年3月29日公布 | 平成14年7月1日施行 |
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埼玉県 | 平成14年10月15日公布 | 平成15年2月1日施行 |
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兵庫県 | 平成15年3月17日公布 | 平成15年12月15日施行 |
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茨城県 | 平成15年10月1日公布 令和4年11月21日改正公布 | 平成16年4月1日施行 令和5年6月1日改正施行 |
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広島県 | 広島県土砂の適正処理に関する条例(令和5年7月改正前) |
平成16年3月26日公布 | 平成16年9月25日施行 |
徳島県 | 平成17年3月30日公布 | 平成17年4月1日施行 |
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大分県 | 平成18年7月7日公布 | 平成18年11月1日施行 |
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岐阜県 | 平成18年10月12日公布 | 平成19年4月1日施行 |
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山梨県 | 平成19年7月9日公布 | 平成20年1月1日施行 令和4年4月1日改正施行 |
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和歌山県 | 平成20年10月3日公布 | 平成21年4月1日施行 |
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京都府 | 平成21年3月27日公布 | 平成21年10月1日施行 令和2年6月1日改正施行 |
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高知県 | 平成21年3月27日公布 | 平成21年6月1日施行 |
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群馬県 | 平成25年6月21日公布 | 平成25年10月1日施行 |
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大阪府 | 平成26年12月26日公布 | 平成27年7月1日施行 |
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三重県 | 令和元年12月23日公布 | 令和2年4月1日施行 |
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宮城県 | 令和元年12月24日公布 | 令和2年4月1日施行 |
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佐賀県 | 令和2年3月23日公布 | 令和2年10月1日施行 |
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鳥取県 | (令和5年7月改正前) |
令和3年12月24日公布 | 令和4年5月1日施行 |
新潟県 | 令和4年3月29日公布 | 令和4年7月1日施行 |
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静岡県 | 令和4年3月29日公布 | 令和4年7月1日施行 |
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長野県 | 令和4年7月11日公布 | 令和5年1月1日施行 |
〇 以上の条例は、いずれも盛土を含む土砂埋立て等の規制に関する単独条例または産業廃棄物処理防止条例(兵庫県条例)や生活環境保全条例(徳島県条例)において独立の項目を設けて盛土を含む土砂埋立て等の規制に関する規定を置いているものである。
〇 都道府県で最初に制定されたのは、平成9年7月制定の千葉県条例であるが、その後平成10年代から平成21,22年かけて、首都圏、近畿地方、四国、北部九州等の15府県で、制定の動きが広がっていった。その後、平成25年6月に群馬県で、平成26年12年に大阪府で条例が制定されたが、特に大阪府条例は、平成26年2月に発生した大阪府豊能町の残土処分場での崩落事故が契機となっている。
〇 さらに、令和元年12月には三重県と宮城県で、令和2年3月には佐賀県で、条例が制定されたが、三重県条例は「三重県では、港湾を経由して紀北町、尾鷲市地域に都市圏から大量の土砂等が搬入され」ており、さらに「今後、東京2020オリンピック・パラリンピックや大阪万博等の全国的な大規模投資の進展による土砂等の流入の懸念もある」(三重県土砂等の埋立て等の規制に関する条例のあり方(答申)1頁)ことが、宮城県条例は「民有地に積み上げられた土砂が河川区域に押し出され,河川管理や漁業に支障をきたすおそれのある事案が発生し,問題となってい」る(宮城県HP「土砂等の埋立て等の規制に関する条例」)ことが、佐賀県条例は「昨年7月の豪雨では、多久市にある残土処分場が崩落し、下流地域へ大量の土砂が流出(推定21千立方メートル)して、みかん畑、ビニールハウス、市道、里道等に大きな被害が発生したほか、それ以前には、基山町においても、残土処分場から道路や河川に土砂が流出する事案が発生し」た(佐賀県HP「土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例を制定しました」)ことが、それぞれ条例制定の要因となっている。
〇 令和3年7月に発生した熱海市土石流災害が契機となり、鳥取県条例が令和3年12月に、新潟県条例及び静岡県条例(静岡県盛土等の規制に関する条例)が令和4年3月に、長野県条例が令和4年7月に制定された。この4条例は、それ以前の条例とは異なり、条例名を「盛土等に係る斜面の安全確保に関する条例」又は「(土砂等の)盛土等の規制に関する条例」とし、条例名に「盛土等」との用語を使用している。
静岡県は、後述の通り昭和50年に制定した静岡県土採取等規制条例において土の採取と併せて「埋土又は盛土をする行為」を規制していたが、静岡県条例(静岡県盛土等の規制に関する条例)の施行により、「埋土又は盛土をする行為」は静岡県土採取等規制条例の対象外とした。
山梨県条例は令和4年4月改正施行により採取土砂のみによる埋立て等を許可の適用除外とする規定を削除し、茨城県条例は令和5年6月改正施行により埋立て等の届出、書面交付・携帯義務、土地所有者等責任の明確化、土砂等搬入禁止区域、公表等の制度を新たに導入している。
なお、鳥取県条例は、一定の斜面における盛土・切土の施工と工作物の設置等について規制しており、他の24条例とはやや性格・内容を異にする。
(鳥取県条例を除く24条例)
〇 鳥取県条例を除く24条例は、いずれも、災害防止や生活環境保全を目的とし、事業者による一定以上の面積の土砂埋立て等(土砂の埋立て、盛土その他の堆積)を知事の許可制とし、違反行為に対しては罰則規定を設けている。許可に当たっては、埋立て等の形状や構造に関する基準等に適合することを要件としている。
〇 許可を要する面積要件としては、茨城県条例が5000㎡以上、神奈川県条例及び広島県条例が2000㎡以上、兵庫県条例及び静岡県条例が1000㎡以上としているほかは、他の19府県の条例は3000㎡以上としている。
なお、茨城県(令和5年6月改正施行後)は県条例の許可対象や市町村条例の許可対象等以外の埋立て等については、知事への届出を義務づけている。
〇 千葉県、栃木県、愛媛県、大分県、岐阜県、高知県及び佐賀県の条例は、土壌の汚染防止も目的に明記し、この7県並びに埼玉県、兵庫県、徳島県、和歌山県、京都府、群馬県、三重県及び静岡県の条例は、土壌汚染防止の観点から安全基準に適合しない土砂の埋立て等を禁止している。
多くの条例では、土砂の埋立て等を行う事業者に対して、事業着手の届出、搬入する土砂の発生場所等の届出、定期的な施工状況の報告、水質調査や土壌調査の実施・報告、事業完了の届出等を義務付けている。
一部の条例では、説明会の開催等の周辺住民に対する周知(神奈川県、愛媛県、京都府、大阪府、三重県、静岡県及び長野県は事業者に義務付け、栃木県、埼玉県、茨城県、広島県、和歌山県及び宮城県が努力義務)、土砂等搬入禁止区域の指定(神奈川県、福岡県、埼玉県、広島県、京都府、大阪府、三重県、宮城県、新潟県、静岡県、長野県及び茨城県(令和5年6月改正施行後))、埋立て地の土地所有者による施工状況の確認・報告(千葉県、栃木県、神奈川県、広島県、大阪府、三重県、静岡県、長野県及び茨城県(令和5年6月改正施行後))、元請業者(建設工事事業者)による土砂搬出の届出(神奈川県、埼玉県及び広島県)等の規定を置いている。
すべての条例で、知事は、一定の場合に事業者に対して措置命令、停止命令等を行うことができるとしている。一部の条例では、土地所有者に対する知事の勧告、措置命令等の規定を置いている(千葉県、神奈川県、愛媛県、埼玉県、徳島県、和歌山県、京都府、高知県、大阪府、三重県、静岡県、長野県及び茨城県(令和5年6月改正施行後))。
茨城県(令和5年6月改正施行後)は、県条例や市町村条例で土砂埋立て等の許可を受けた者及び県条例で土砂埋立て等の届出をした者(埋立者)は埋立て等に用いる土砂等を発生させる者(発生者)に書面を交付しなければならず、また、発生者は当該土砂等を埋立て等区域に搬入する者(搬入者)に書面(適合証明)を交付しなければならないとし、さらに、搬入者は適合証明を携行しなければならず、そのうえで、埋立者は適合証明を携行していない者から土砂等の搬入を受け入れてならないとしている。
〇 すべての条例で、条例の違反行為に対して罰則を科すとしている。2年以下の懲役又は100万円以下の罰金としているのが16府県(神奈川県、愛媛県、福岡県、埼玉県、兵庫県、茨城県、山梨県、京都府、群馬県、大阪府、三重県、宮城県、佐賀県、新潟県、静岡県及び長野県)、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金としているのが8県(千葉県、栃木県、広島県、徳島県、大分県、岐阜県、和歌山県及び高知県)である。
(鳥取県条例)
〇 鳥取県条例は、災害防止や生活環境保全を目的とし、事業者による一定の盛土及び切土の施工、斜面地の工作物の設置及び建設発生土の搬出を規制している。これらを知事の許可制とし、違反行為に対しては罰則規定を設けている。
〇 規制の対象となる盛土及び切土については、①2000㎡以上の面積かつ地盤標高差が1m以上のもの又は②地盤標高差が5m以上のものとし、工作物については、地盤標高差が5m以上でかつ傾斜度15度超の土地に設置される面積300㎡以上又は高さ15m以上のものとしている。いずれも一定の斜面であることが前提となっている。また、これらの事業に対する知事の許可は、規則で定める技術基準の適合等を要件としている。
建設発生土の搬出については、体積が500立方m以上のものを対象としている。
〇 事業者に対して、周辺住民への説明会の開催、事業着手の届出、知事による完了検査、定期的な工事状況の報告、一定の場合における保証金の預入及び県との質権設定契約の締結等を義務付け、また、知事は事業者に対して勧告、措置命令等を行うことができるとしている。
〇 条例の違反行為に対して罰則を科すこととし、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金としている。
(その他の条例)
〇 盛土検討会の第1回会議(令和3年9月30日)に提出された「資料5」の「資料5-2」では、盛土等の開発行為の規制に関する条例を定めている都道府県数は26としている。26の都道府県の条例の内訳は明らかにされていないが、令和3年の熱海市土砂災害発生以前に制定された21条例のほか、以下の5条例が含まれるものと考えられる。なお、静岡県土採取等規制条例は令和4年7月1日改正施行前のものである。
岡山県 | 昭和48年3月27日公布 | 昭和48年5月1日施行 |
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沖縄県 | 昭和48年7月23日公布 | 昭和48年10月1日施行 |
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静岡県 | 静岡県土採取等規制条例(令和4年3月改正前) |
昭和50年10月20日公布 | 昭和51年4月1日施行 令和4年7月1日改正施行 |
東京都 | 平成12年12月22日公布 | 平成13年4月1日施行 |
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香川県 | 平成14年3月27日公布 | 平成14年4月1日施行 |
〇 この5条例は、開発行為等を規制する条例(県土保全条例(岡山県、沖縄県、香川県)、土採取規制条例(静岡県)、自然環境保全条例(東京都))において、開発行為等の一つとして土砂埋立て等を規制するものであり、土砂の埋立て等に限定した規制措置を講ずるものではない。
〇 この5条例のうち、東京都条例及び香川県条例は、開発行為に「土砂等による埋立て及び盛土をすること」(東京都条例47条9号)や「土砂等により土地を埋め立てること」(香川県条例3条2号イ)が含まれることを明記し、また、静岡県条例(静岡県土採取等規制条例(改正前))は、土の採取等に「埋土又は盛土をする行為」(2条2号)が含まれることを明記している。
他方、岡山県条例及び沖縄県条例は、土砂の埋立て、盛土等に関する明文の規定はない。開発行為を「土地の区画形質の変更」と定義づけている(両条例とも2条1号)が、「土地の区画形質の変更」に土砂の埋立て、盛土等が含まれているとの解釈をしているものと考えられる。
〇 一定以上の面積の開発行為等に対して、岡山県、沖縄県及び東京都も条例は許可制、静岡県条例(静岡県土採取等規制条例(改正前))は届出制、香川県条例は事前協議制としている。
面積要件は、岡山県条例及び香川県条例は10000㎡以上、沖縄県条例は3000㎡以上、東京都条例及び静岡県の条例は1000㎡以上としている。
〇 5条例ともに、知事は一定の場合に事業者に対して措置命令、停止命令等を行うことができるとしているが、21条例や鳥取県条例のように、事業者に対する搬入する土砂の発生場所等の届出、定期的な施工状況の報告、説明会の開催等の周辺住民に対する周知等の義務付け、土地所有者や元請業者等に対する確認、報告等の義務付け等の規定は置いていない。
〇 5条例ともに、命令違反行為等に対して罰則を科すとしている。東京都条例は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金とし、岡山県、沖縄県及び香川条例は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金とし、静岡県条例(静岡県土採取等規制条例(改正前))は20万円以下の罰金としている。
(参考)
〇 都道府県の土砂埋立て等の規制に関する条例について、「第1回三重県環境審議会三重県土砂条例(仮称)あり方検討部会(令和元年8月6日)」資料4、「第1回大阪府土砂の埋立て等の行為に係る規制のあり方検討部会(平成26年7月24日)資料4-1」及び国土交通省資料「建設発生土の取扱いに関わる実務担当者のための参考資料(国・地方公共団体等内部用)平成29年8月」18頁以下は、都道府県の条例制定状況を整理している。また、黒坂則子「土砂埋立て等の規制に関する条例の現状と課題」(日本不動産学会誌第29巻第2号2015.9)は、大阪府条例を中心として、土砂埋立て等の規制に関する条例の内容、課題等について解説している。本稿は、これらの資料・論文を参考にしている。
〇 地方自治研究機構が令和4年度に実施した「建設発生土規制をめぐる自治体の対応と今後の課題に関する調査研究」は、建設発生土の管理・処分の現状、従前の国の法令や自治体独自の条例による対応状況とその問題点、盛土規制法の制定経緯と内容、盛土規制法の施行に伴う今後の自治体の課題等について調査・研究を行ったものであるので、参照されたい。
【都道府県の条例ー盛土規制法施行後】
〇 令和5年5月26日の盛土規制法施行後、都道府県、指定都市及び中核市は、基礎調査(法4条)を行ったうえで、特定盛土等規制区域を指定する(法26条)こととなるが、それに伴い、法の施行条例の制定や既存条例の改廃等が必要となる。
こうした盛土規制法施行に伴う条例の制定・改廃を全国の都道府県、指定都市及び中核市の中で最初に行ったのが、鳥取県及び広島県である。令和5年7月、鳥取県は既存条例の改正、広島県は法施行条例の制定及び既存条例の改正を、それぞれ行っている。
すなわち
鳥取県 | 条例の一部を改正する条例 |
令和5年7月7日公布 | 令和5年7月7日施行 一部 公布後1年を超えない範囲内で 規則で定める日施行 |
広島県 | 令和5年7月10日公布 | 公布後3月を超えない範囲内で規則 で定める日施行 |
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建築基準法施行条例の一部を改正する条例 |
令和5年7月10日公布 | 公布後3月を超えない範囲内で規則 で定める日施行 |
である。
〇 鳥取県は、法に基づく特定盛土等規制区域は県内全域を指定することとしたうえで、既存条例を改正し、条例による盛土規制は廃止する一方で、法による規制がない「斜面地の工作物設置」及び「建設発生土の搬出」については引き続き条例により規制することとした。
他方、法による盛土の規制が既存条例の規制水準から後退しないよう、法に基づく許可、中間検査、定期点検の対象規模を、法の基準の「3000㎡超」を「2000㎡超」に引き下げている。
改正後の条例は、法の施行条例としての内容と県の自主条例としての内容を両方併せ持つものとなる。
その他改正条例の内容等については、鳥取県HP「鳥取県盛土等に係る斜面の安全確保に関する条例」及び鳥取県資料「「鳥取県盛土等に係る斜面の安全確保に関する条例」の改正案について皆様のご意見をお寄せください」を参照されたい。
〇 広島県は、指定都市お及び中核市(広島市、呉市及び福山市)を除く県内全域を法に基づく宅地造成等工事規制区域及び特定盛土等規制区域に指定することとしたうえで、法の施行条例を制定するとともに、既存条例を改正して、宅地造成等工事規制区域及び特定盛土等規制区域の指定地域を対象外とする一方で、従前条例で規定していた「土砂の搬出届出制度」については引き続き存続させることとした。
特定盛土等規制区域の許可の対象規模については、法の基準は「3000㎡超」、既存条例の基準は「2000㎡超」であるが、宅地造成等工事規制区域の法の基準である「500㎡超」に合わせて、今回の施行条例で「500㎡超」に引き下げている。
その他改正条例の内容等については、広島県HP「広島県では令和5年9月28日から盛土規制法の運用を開始する予定です」並びに広島県資料「宅地造成及び特定盛土等規制法の運用に向けた取組について」及び「広島県土砂の適正処理に関する条例の一部改正について」を参照されたい。
【市町村の条例】
〇 市町村において制定されている土砂埋立て等の規制に関する条例(土砂埋立て等の規制に関する単独条例または環境保全条例、まちづくり条例等において独立の項目を設けて土砂埋立て等の規制に関する規定を置いているもの)は、環境省水・大気環境局「令和元年度土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査・対策事例等に関する調査結果(令和3年6月)」の「6.自治体の取組状況等」78頁、84~88頁を参考にしつつ、インターネットにより検索できる全国市区町村の例規集等から調査した結果、令和5年3月31日時点で施行されていることが確認できるものとしては、378条例を数えることができる。なお、378条例の条例名及び制定市町村名は、別紙資料「「土砂埋立て等の規制に関する条例」のうち市町村の条例の制定状況(令和5年3月31日時点で確認できるもの)」を参照されたい。
〇 この378条例を都道府県別に見てみると、それぞれの条例制定の市町村数は、埼玉県53(63)、千葉県52(54)、茨城県44(44)、群馬県29(35)、栃木県25(25)、大阪府24(43)、神奈川県19(33)、愛知県18(54)、奈良県14(39)、京都府10(26)、静岡県9(35)、山梨県8(27)、大分県8(18)、東京都6(39)、兵庫県6(41)、和歌山県6(30)、福岡県6(60)、岐阜県5(42)、滋賀県5(19)などとなっており、このほかは、岡山県及び広島県4,三重県、徳島県及び佐賀県3、新潟県2、秋田県、長野県、福井県、愛媛県、高知県、島根県、山口県、熊本県、宮崎県及び鹿児島県1となっている(( )は、当該都道府県の市区町村数)。なお、東京都八王子市及び広島県広島市はそれぞれ2条例制定しているため、条例制定市町村の総数は376となる。
これによると、関東地方・首都圏の市町村が圧倒的に多く、次いで、中部圏、近畿圏、北部九州(福岡県・大分県)の市町村が比較的多いことがわかる。このうち、茨城県及び栃木県は全ての市町村で条例を制定しており、また、千葉県、埼玉県及び群馬県では大半の市町村で条例を制定している。また、神奈川県及び大阪府では約半数の市町村が、静岡県、山梨県、愛知県、滋賀県、京都府、奈良県、大分県では4分の1以上の市町村が条例を制定している。北海道では制定をしている市町村はなく、東北、北陸、四国、中国、南九州の各地方では、制定している市町村は極めて少ない。
都道府県の条例との関係で見ると、愛知県及び奈良県は比較的多くの市町村で条例を制定しているが、両県では条例は制定していない。
〇 市町村で最初に制定された土砂埋立て等の規制に関する条例は、千葉県市川市が昭和55年の千葉県市川市の「市川市土砂等による土地の埋立,盛土及びたい積の規制に関する条例」である。千葉県条例が制定された平成9年の17年前であった。
「昭和49年後半から、都内の建設現場から発生する残土によって市内の農地の埋め立てが開始されるようになりましたが、この農地の埋め立てに伴って、産業廃棄物などにより埋め立てられ土壌が汚染されるなどの問題が起きたため、土砂等による農地の埋立て並びに盛り土に関する指導基準を作成し、昭和52年4月から地主及び業者に対する指導を開始し、適正な埋め立てに係る問題解決に努めてまいりました。その後、昭和54年9月に要綱に移行しましたが、昭和55年6月に発生した水田の埋立現場での事故、これは産業廃棄物の残土により埋め立てされた現場の水たまりで幼児2名が水死した事故でありますが、これを契機に、昭和55年10月に要綱から条例に移行いたしました。」(市川市議会会議録 (平成18年12月12日) 環境清掃部長答弁)とされる。なお、平成15年に全面改正され、市川市土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例(平成15年6月25日公布、平成16年1月1日施行)となったが、「県条例との整合性を図りつつ、条例の実効性を高めるため、従前の規制に加え、安全基準に適合しない土砂等の埋め立てを禁止するとともに、土地の所有者にも必要な措置を命ずることができるように、現行の条例の全部改正」した(市川市議会会議録 (平成15年6月11日) 環境清掃部長答弁)としている。
〇 建設省「建設発生土等の有効利用に関する検討会報告(参考資料の時点修正)」参考資料25の市町村盛土規制条例等制定状況(平成14年7月現在)によると、建設発生土に関する条例は平成10年までに255市町村で制定されていた。一方で、上記378条例のうち、平成10年までに制定されたのは、71条例である(378条例の制定年については、現在施行されている条例の公布日の年である。以下同じ)。調査対象は必ずしも同じではないが、かなり数に差がある。平成15年から平成17年をピークにして平成の大合併が進められたので、合併をした市町村では条例が廃止され、合併後の市町村で改めて条例が制定されたか、または、存続した市町村の条例が継続して施行されたものと考えられる。いずれにしても、都道府県で最初に千葉県が条例を制定したのが平成9年であったことを考慮すると、まさに、市町村先行で条例制定が進められてきたと言える。
〇 378条例について、平成11年以降の制定状況を見ると、平成11年から平成15年までが55条例、平成16年から平成20年までが106条例、平成21年から平成25年までが42条例、平成26年から平成30年までが74条例、平成31年以降が30条例となっている。平成20年代に入っても多くの条例が制定されている。この中には、千葉県、茨城県、埼玉県等の市町村において既存条例を全部改正し又は廃止して新規条例を制定したものも含まれているが、大阪府、愛知県、群馬県、静岡県、奈良県、山梨県、三重県、京都府等の市町村で、新しく条例が制定されている。ちなみに、平成31年度以降制定されたことが確認できるのは、平成31年・令和元年は千葉県神埼町(既存条例を全部改正)、茨城県八千代町(既存条例を全部改正)、三重県紀北町、千葉県匝瑳市(既存条例を廃止して新規制定)、群馬県上野村、群馬県神流町、茨城県石岡市(既存条例を全部改正)、三重県尾鷲市、大阪府阪南市、大阪府泉佐野市、京都府京田辺市、愛知県大府市、令和2年は奈良県山添村、埼玉県朝霞市、京都市、奈良県奈良市、岐阜県輪之内町、神戸市、群馬県吉岡町、群馬県榛東村、滋賀県彦根市、佐賀県みやき町、堺市、千葉県旭市(既存条例を廃止して新規制定)、大阪府羽曳野市、令和3年は千葉県長生村(既存条例を廃止して新規制定)、千葉県茂原市(既存条例を廃止して新規制定)、埼玉県寄居町、愛知県知多市、令和4年は奈良県高取町、大阪府箕面市(既存条例を全部改正)、奈良県吉野町である。
北村喜宣「総合的建設残土対策条例の可能性(上)」(自治研究74巻2号(平成10年2月))は、残土条例に関して、「ある自治体で、法律上ないし事実上の規制がされると、そこを避けて規制のない自治体へと処分地探しの手は伸びるから、現在はそれほどでないにしても、中長期的にみれば、とくに東京都周辺の関東地方自治体が問題視している状況は、全国的に拡大するものと推測される。」(64頁)としているが、この論文が記述された平成10年以降の残土条例を巡る動きは、その「推測」通りの状況を呈しており、その動きは20年以上の後の令和の時代に入っても続いていると言える。
〇 市町村の条例も、そのほとんどが、災害防止や生活環境保全を目的とし、事業者による土砂埋立て等(土砂の埋立て、盛土その他の堆積)を市町村長の許可制(一部の市町村では届出制)とし、許可に当たっては、埋立て等の形状や構造に関する基準等に適合することを要件とし、違反行為に対しては罰則規定を設けている。条例の基本的な枠組みは、都道府県の条例と変わらない。
それでは、都道府県の条例と市町村の条例はどう違うのか、どのように棲み分けを行っているのか、以下、具体的に見てみる。
(千葉県の場合)
〇 千葉県においては、上記の通り、市川市が昭和55年に条例を制定している。その後、県は、昭和62年に県内市町村に対して条例等の制定を要請し、その結果、平成9年7月時点では、当時の県内80市町村のうち55市町村で条例が制定されていた。しかし、建設残土等による埋立てが無秩序に行われ、残土処分場から六価クロムが検出されるなど、土壌汚染問題が深刻化してきたものの、当時の市町村条例は土壌汚染等に対応しているものはほとんどなかったため、県は、これらの問題に市町村が単独で対応することは困難であると判断し,平成9年7月に千葉県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例を制定するに至った(狩野哲也「都道府県条例と市町村条例との関係に関する一考察」(北大法学研究科ジュニア・リサーチ・ジャーナルNo.7 2000年)157頁以下及び環境省第2回土壌環境施策に関するあり方懇談会(平成19年7月31日)資料4「千葉県における残土問題の現状について」参照)。
〇 新たに制定された県条例と既存の市町村条例との関係については、土砂埋立て等の面積が3000㎡以上の事業については知事による許可制として県が所管することとし、3000㎡未満の事業を市町村長の許可制として市町村が所管することとして、棲み分けを図ることとした。また、「県条例で定める以外の事項について,条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない」(県条例 旧30条)とし、横出し規制は可能なものの、県条例で定めている事項については市町村条例で規制することはできないこととした。県は、市町村に対してモデル条例案示すとともに、市町村も県条例との整合性を図るために自主的に条例を改正した。
しかし、平成15年には県条例を改正し、「市町村がその地域の実情に応じて独自に土砂等の埋立て等に対する施策を講じ、又は講じようとする場合」は、市町村長の申出により、県が告示をして県条例の適用が除外できるようにした(新30条)。
令和5年3月31日時点で52市町村が条例を制定していることを確認できるが、このうち、千葉市、銚子市、船橋市、木更津市、野田市、成田市、佐倉市、東金市、旭市、柏市、勝浦市、君津市、富津市、四街道市、八街市、印西市、匝瑳市、香取市、山武市、神崎町、多古町、芝山町、長生村、大多喜町及び鋸南町の25市町が県条例を適用除外としている(千葉県HP「千葉県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例」)。これらの市町では、3000㎡以上の埋立て等も市長(町長)の許可制としている。また、県条例にないものとして、周辺住民の同意や事前協議に関する規定などを置いている。
〇 県条例が適用除外されている市町村の条例として、例を挙げると、
千葉県船橋市 | 平成14年12月27日公布 | 平成15年4月1日施行 |
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千葉県銚子市 | 平成17年10月7日公布 | 平成18年1月1日施行 |
両条例とも、500㎡以上が許可対象としており、特に上限は設けていない。また、県条例と同様に、土壌汚染防止の観点から安全基準に適合しない土砂の埋立て等を禁止している。一方で、船橋市条例は、市長との事前協議が義務付けられ(11条)、また、銚子市条例は、周辺住民等の同意(11条)と市長との事前協議(12条)が義務付けられているなど、県条例にはない規定を置いている。
〇 県条例が適用除外されていない市町村の条例として、例を挙げると、
千葉県市原市 | 平成9年9月17日公布 | 平成10年1月1日施行 |
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千葉県鴨川市 | 平成17年2月11日公布 | 平成17年2月11日施行 |
市原市条例は300㎡以上3000㎡未満を、鴨川市条例は500㎡以上3000㎡未満を、それぞれ許可対象としている。また、両条例とも、県条例とは異なり、土壌汚染防止に関する規定は特に置いていない。
〇 なお、千葉県は、「千葉県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例」とは別に、再生土(建設汚泥などの産業廃棄物に、脱水・破砕などの中間処理を施し、資材として再資源化したもの)の埋立て等の適正化を図るため、「千葉県再生土の埋立て等の適正化に関する条例」(平成30年10月19日公布・平成31年4月1日施行)を制定している。
(神奈川県の場合)
〇 神奈川県では、平成3年1月1日に施行された津久井町住環境条例(なお、本条例は、津久井町が平成18年3月に相模原市に編入されたことに伴い、失効している)をはじめ、平成10年10月時点で18市町において残土規制条例又は残土規制の内容を含む条例が制定されていた(上記狩野論文)。しかし、「本来、建設工事から発生する土砂を処分するときは、その処分場所により森林法や農地法、市町村条例等の適用がありますが、法令の許可を受けずに、または、基準に違反して土砂の埋立てを行うなどの不適正な処理は、県内でも平成4年度から平成9年度までの間に69件、面積にして約55ヘクタールを数えるほどになっていました。無秩序な埋立てが多いこれらの場所では、土砂の崩壊、流出等による災害発生のおそれがあり、県民生活への不安が生じていたことから、県では、土砂の不適正な埋立て等を行っている者に対する指導や命令を行ってきました。しかし、既存法令は、適用範囲や条件が限られており、また、土砂の搬入を中止させる規定がないなど、対応できない部分がある」(神奈川県HP「神奈川県土砂の適正処理に関する条例」)ため、平成11年3月に神奈川県土砂の適正処理に関する条例が制定された。
〇 県条例と市町村条例との関係については、2000㎡以上の土地埋立行為については知事による許可制として県が所管することとし、2000㎡未満の土地埋立行為を市町村長の許可制として市町村が所管することとした。また、「この条例の規定は、市町村が地域の自然的社会的条件に応じて、土砂の適正な処理を推進するため、この条例で定める事項以外の事項に関し、条例で必要な規定を定めることを妨げるものではない。」(28条1項)とするとともに、「市町村が土砂の適正な処理を推進するために制定する条例の内容が、この条例の趣旨に則したものであり、かつ、この条例と同等以上の効果が期待できるものと知事が認めて公示したときは、当該市町村の条例に規定する事項に該当するものとして知事が指定する章の規定は、当該市町村の区域には、適用しない。」(28条2項)としている。
〇 令和5年3月31日時点で、神奈川県内の19市町村で条例を制定しているが、このうち、秦野市条例は県条例の3章(土砂埋立行為の許可等)及び4章(土砂搬入禁止区域)が、相模原市、伊勢原市及び南足柄市の条例は3章の規定が適用除外となっている(神奈川県HP「県内市町村条例」)。
〇 県条例の一部が適用除外されている市町村の条例として、例を挙げると、
神奈川県秦野市 | 平成7年10月6日公布 | 平成7年12月1日施行 |
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相模原市 | 平成22年12月24日公布 | 平成23年4月1日施行 |
両条例ともに、原則として500㎡以上の埋立て等を許可対象としており、特に上限は設けていない。
このうち、秦野市条例は、許可申請時における周辺住民への周知の努力義務(3条)を規定している。また、埋立て等禁止区域を指定することができる(14条の2)としているが、県条例では2000㎡以上の埋立て等が行われている土地等を対象としているのに対して、500㎡以上の埋立てが行われている土地等を対象としている。
相模原市条例は、市長との事前協議(9条)と近隣住民等に対する説明会の開催(10条)か義務付けられ、自治会との協定締結について努力義務を課している(11条)。また、3000㎡以上の埋立て等については、許可に際して保証金の預託を義付けている(31条)。
〇 県条例が適用除外されていない市町村の条例として、例を挙げると、
神奈川県平塚市 | 平成10年3月25日公布 | 平成10年7月1日施行 |
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神奈川県藤沢市 | 平成21年6月25日公布 | 平成21年10月1日施行 |
両条例ともに、原則として500㎡以上の埋立て等を許可対象としているが、平塚市条例は「他の法令(条例を含む。)の規定による許可、認可等を受け、又は届出等をして行う埋立て等」(6条2項1号)、藤沢市条例は「法令又は条例の規定による許可,認可等を受け,又は届出等をして行う埋立て等」(5条2項1号)はそれぞれ許可不要としており、結果として県条例が対象となる2000㎡以上の埋立て等は対象外となる。
(茨城県の場合)
〇 茨城県では、平成3年に県において条例準則を示し、市町村に対し制定を指導し、平成15年10月現在、すべての市町村において条例が制定されていたが、「大規模な残土処理計画への対応については、残土の発生場所が茨城県外の複数県にまたがる事案が多いことや土砂の崩落や流出などの安全対策が必要となるため」(茨城県HP「茨城県土砂等による土地の埋立て等の規制に関する条例」)、平成15年10月に茨城県土砂等による土地の埋立て等の規制に関する条例が制定された。
〇 県条例と市町村条例との関係については、5000㎡以上の土地の埋立て等については知事による許可制とした。また、「この条例の規定は,市町村が,第6条第1項第1号に掲げる土地の埋立て等に関し条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない。」(22条)とし、第6条第1項第1号に掲げる「埋立て等区域の面積が5000平方メートル未満である土地の埋立て等」については市町村が条例で定めることができることとした。その結果、5000㎡未満の土地の埋立ては市町村長の許可制として市町村が所管することが可能となり、令和5年3月31日時点で、茨城県内の44のすべての市町村が、5000㎡未満の土地の埋立てを対象に許可制とする条例を定めている。
〇 市町村条例の例を挙げると、
茨城県守谷市 | 平成3年3月28日公布 | 平成3年7月1日施行 |
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茨城県つくば市 | 平成4年1月28日公布 | 平成4年4月1日施行 |
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茨城県牛久市 | 平成28年3月31日公布 | 平成28年5月1日施行 |
守谷市条例は500㎡以上5000㎡未満の埋立て等を許可対象とし、つくば市条例と牛久条例は5000㎡未満の埋立て等を許可対象としている。牛久市条例は、平成15年に制定された「牛久市土砂等による土地の埋立て、盛土及びたい積の規制に関する条例」の全部改正により制定されたものであるが、市長との事前協議を義務付けている(5条)。
(その他の府県の場合)
〇 栃木県は、栃木県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例を制定し、3000㎡以上の土地の埋立て等について知事の許可制としている。市町村条例との関係については、「市町村が定める土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生を防止するための条例の規定の内容が、この条例の趣旨に即したものとして知事が認めるときは、当該市町村の区域を指定し、この条例の規定の全部又は一部を適用しない。」(30条1項)としている。令和5年3月31日時点で、25市町村すべてが条例を制定しているが、宇都宮市、足利市、栃木市、佐野市、鹿沼市、日光市、大田原市及び野木町は県条例を適用除外としている。この適用除外も含め、栃木県条例の内容、運用等については、栃木県HP「栃木県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例について」を参照のこと。
〇 埼玉県は、埼玉県土砂の排出、たい積等の規制に関する条例を制定し、3000㎡以上の土地のたい積等について知事の許可制としている。市町村条例との関係については、「この条例の規定は、地域の自然的社会的条件に応じて、無秩序な土砂のたい積を防止するため、市町村が条例で必要な規定を定めることを妨げるものではない。市町村が定める無秩序な土砂のたい積を防止するための条例の規定の内容が、この条例の趣旨に則したものであり、かつ、この条例と同等以上の効果が期待できるものとして知事が認めるときは、規則の定めるところにより、当該市町村の条例の規定に相当するこの条例の規定は、当該市町村の区域においては、適用しない。」(35条1項、2項)としている。令和5年3月31日時点で53市町村が条例を制定していることを確認できるが、このうち、さいたま市、川越市、川口市、越谷市、桶川市、毛呂山町、嵐山町及び鳩山町が県条例のを適用除外としている(埼玉県HP 「土砂の排出、たい積等の規制」)。
〇 大阪府は、大阪府土砂埋立て等の規制に関する条例を制定し、3000㎡以上の土地の埋立て等について知事の許可制としている。市町村条例との関係については、「土砂の適正な処理に関して、この条例と同等以上の効果が得られるものとして知事が認める内容を有する条例を制定している市町村であって規則で定めるところにより指定するものの区域については、この条例の規定は、適用しない」(35条)としている。令和5年3月31日時点で24市町村が条例を制定していることを確認できるが、適用除外の規則は制定されていない。大阪府条例の内容、運用等については、大阪府HP「大阪府土砂埋立て等の規制に関する条例」を参照のこと。
〇 三重県は、三重県土砂等の埋立て等の規制に関する条例を制定し、3000㎡以上の土地の埋立て等について知事の許可制としている。市町村条例との関係については、「土砂等の適正な処理に関して、この条例と同等以上の効果が得られるものとして知事が認める内容を有する条例を制定している市町であって規則で定めるところにより指定するものの区域については、この条例の規定は、適用しない。」(36条)としている。令和5年3月31日時点で、伊賀市土砂等の埋立て等による土壌汚染及び災害の発生の防止に関する条例 (平成30年3月28日公布 平成30年7月1日施行)及び紀北町生活環境の保全に関する条例(平成31年3月20日公布 平成31年7月1日施行)は1000㎡以上の埋立ては市町長に届出を義務付けており、尾鷲市土砂等の埋立て等の規制に関する条例(令和元年12月23日公布・令和2年4月1日施行)は1000㎡以上3000㎡未満の埋立ては市長の許可が必要としているが、適用除外の規則は制定されていない。三重県条例の内容、運用等については、三重県HP「三重県土砂等の埋立て等の規制に関する条例」を参照のこと。
〇 令和2年に入って、近畿地方の都市で、相次いで土砂埋立て等の規制に関する条例が制定されている。京都市の京都市土砂等による土地の埋立て等の規制に関する条例(令和2年3月30日公布・令和2年6月1日施行)、奈良市の奈良市土砂等による土地の埋立て等の規制に関する条例(令和2年3月31日公布・令和2年4月1日施行)、神戸市の神戸市土砂の埋立て等による不適正な処理の防止に関する条例(令和2年6月20日公布・令和2年11月1日施行)、彦根市の彦根市土砂等による土地の埋立て等の規制に関する条例(令和2年10月1日公布・令和2年12月1日施行)、堺市の堺市土砂埋立て等の規制に関する条例(令和2年12月23日公布・令和3年4月1日施行)及び羽曳野市の羽曳野市土砂埋立て等の規制に関する条例(令和2年12月28日公布・令和3年4月1日施行)、箕面市の箕面市土砂埋立て等の規制に関する条例(令和4年3月30日公布、令和4年7月1日施行、平成26年に制定された箕面市土砂等による盛土等の規制に関する条例を全部改正)である。京都市条例は3000㎡以上の埋立てを、奈良市条例は500㎡以上かつ高さ1m超の埋立てを、神戸市条例は1000㎡以上かつ高さ1m超の埋立てを、彦根市条例は1000㎡以上の埋立て、堺市条例は500㎡以上3000㎡未満の埋立てを、羽曳野市条例は500㎡以上3000㎡未満かつ高さ1m以上の埋立てをの埋立てを市長の許可の対象としている。奈良市及び神戸市の条例は、保証金の預託義務づけの規定を置いている。箕面市条例は、500㎡以上3000㎡未満の埋立てを従前の届出制から許可制に移行するとともに、罰則規定を追加している(箕面市HP「土砂埋立て等に係る規制を強化し罰則を新設~「箕面市土砂埋立て等の規制に関する条例」を令和4年7月1日に施行します~」参照)。
奈良県及び滋賀県は土砂埋立て等の規制に関する条例を制定しておらず、京都府条例は京都市を、兵庫県条例は神戸市を、それぞれ適用除外としている。なお、令和5年3月31日時点で、京都府では10市町村で、奈良県では14市町村で、兵庫県では6市町で、滋賀県では5市町村で、土砂埋立て等の規制に関する条例を制定していることが確認できる。