土砂埋立て等の規制に関する条例
【全国の制定状況】
〇 土砂埋立て等の規制に関する条例は、残土条例ともいわれる。建設工事で発生した土砂が、他の地域に搬出され、山間部の谷地の埋立てや農地の嵩上げ等に使われ、また、単に投棄され放置され、その結果、土砂の流出や崩壊、自然生態系への影響、土壌汚染や地下水汚染などの問題を引き起こすことがある。
こうした建設発生土(残土)は、通常は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の対象となる廃棄物ではないとされ、また、汚染されていないものは土壌汚染対策法の対象外であり、さらに、砂防法,森林法,宅地造成等規制法等において災害の防止等の観点から一定の規制がなされているが、適用範囲や条件は限定されている。
このように現行法では建設発生土等の土砂の埋立て等に伴う問題に十分対応することができないため、土砂埋立て等の規制に関する条例を制定している自治体が少なくない。
〇 条例制定の動きは、千葉県から始まったとされる。まず,千葉県市川市が,全国で初めて,昭和55年に「市川市土砂等による土地の埋立,盛土及びたい積の規制に関する条例」を制定し, その後千葉県内及び首都圏の市町村を中心に制定の動きが広がり、平成9年には、千葉県が、都道府県としては最初の条例となる 「千葉県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害発生の防止に関する条例」を制定した。
【都道府県の条例】
〇 都道府県の土砂埋立て等の規制に関する条例として、令和2年4月末現在確認できるものは、以下のようなものがある。
千葉県 | 災害の発生の防止に関する条例 | 平成9年7月15日公布 | 平成10年1月1日施行 |
栃木県 | 災害の発生の防止に関する条例 | 平成10年10月25日公布 | 平成11年4月1日施行 |
神奈川県 | 平成11年3月16日公布 | 平成11年10月1日施行 | |
愛媛県 | 災害の発生の防止に関する条例 | 平成12年3月24日公布 | 平成12年5月1日施行 |
福岡県 | に関する条例 | 平成14年3月29日公布 | 平成14年7月1日施行 |
埼玉県 | に関する条例 | 平成14年10月15日公布 | 平成15年2月1日施行 |
兵庫県 | 平成15年3月17日公布 | 平成15年12月15日施行 | |
茨城県 | に関する条例 | 平成15年10月1日公布 | 平成16年4月1日施行 |
広島県 | 平成16年3月26日公布 | 平成16年9月25日施行 | |
徳島県 | 平成17年3月30日公布 | 平成17年4月1日施行 | |
大分県 | 平成18年7月7日公布 | 平成18年11月1日施行 | |
岐阜県 | 平成18年10月12日公布 | 平成19年4月1日施行 | |
山梨県 | 平成19年7月9日公布 | 平成20年1月1日施行 | |
和歌山県 | 不適正処理防止に関する条例 | 平成20年10月3日公布 | 平成21年4月1日施行 |
京都府 | 平成21年3月27日公布 | 平成21年10月1日施行 | |
高知県 | 平成21年3月27日公布 | 平成21年6月1日施行 | |
群馬県 | 平成25年6月21日公布 | 平成25年10月1日施行 | |
大阪府 | 平成26年12月26日公布 | 平成27年7月1日施行 | |
三重県 | 令和元年12月23日公布 | 令和2年4月1日施行 | |
宮城県 | 令和元年12月24日公布 | 令和2年4月1日施行 | |
佐賀県 | の防止に関する条例 | 令和2年3月23日公布 | 令和2年10月1日施行 |
以上の21条例は、いずれも土砂埋立て等の規制に関する単独条例または産業廃棄物処理防止条例(兵庫県条例)や生活環境保全条例(徳島県条例)の中で独立の項目を設けて土砂埋立て等の規制に関する規定を置いているものである。なお、この21条例のほか、東京における自然の保護と回復に関する条例 及び香川県みどり豊かでうるおいのある県土づくり条例は土砂の埋立て等を含む開発行為に対する規制を行い、また、静岡県土採取等規制条例は土の採取と併せて土の埋立て等に対する規制を行っている。
〇 都道府県で最初に制定されたのは、平成9年7月制定の千葉県条例であるが、その後平成10年代から平成21,22年かけて、首都圏、近畿地方、四国、北部九州等の15府県で、制定の動きが広がっていった。その後、平成25年6月に群馬県で、平成26年12年に大阪府で条例が制定されたが、特に大阪府条例は、平成26年2月に発生した大阪府豊能町の残土処分場での崩落事故が契機となっている。
さらに、令和元年12月には三重県と宮城県で、令和2年3月には佐賀県で、条例が制定されたが、三重県条例は「三重県では、港湾を経由して紀北町、尾鷲市地域に都市圏から大量の土砂等が搬入され」ており、さらに「今後、東京2020オリンピック・パラリンピックや大阪万博等の全国的な大規模投資の進展による土砂等の流入の懸念もある」(三重県土砂等の埋立て等の規制に関する条例のあり方(答申)1頁)ことが、宮城県条例は「民有地に積み上げられた土砂が河川区域に押し出され,河川管理や漁業に支障をきたすおそれのある事案が発生し,問題となってい」る(宮城県HP「土砂等の埋立て等の規制に関する条例」)ことが、佐賀県条例は「昨年7月の豪雨では、多久市にある残土処分場が崩落し、下流地域へ大量の土砂が流出(推定21千立方メートル)して、みかん畑、ビニールハウス、市道、里道等に大きな被害が発生したほか、それ以前には、基山町においても、残土処分場から道路や河川に土砂が流出する事案が発生し」た(佐賀県HP「土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例を制定しました」)ことが、それぞれ条例制定の要因となっている。
〇 上記21条例は、いずれも、災害防止や生活環境保全を目的とし、事業者による一定以上の面積の土砂埋立て等(土砂の埋立て、盛土その他の堆積)を知事の許可制とし、違反行為に対しては罰則規定を設けている。許可に当たっては、埋立て等の形状や構造に関する基準等に適合することを要件としている。
許可を要する面積要件としては、茨城県が5000u以上、神奈川県及び広島県が2000u以上、兵庫県が1000u以上としているほかは、他の15府県の条例は3000u以上としている。
また、千葉県、栃木県、愛媛県、大分県及び高知県の条例は、土壌の汚染防止も目的に明記し、この5県並びに兵庫県、徳島県、岐阜県、和歌山県、京都府、群馬県及び三重県の条例は、土壌汚染防止の観点から安全基準に適合しない土砂の埋立て等を禁止している。
多くの条例では、土砂の埋立て等を行う事業者に対して、搬入する土砂の発生場所等の届出、定期的な施工状況の報告、水質調査や土壌調査の実施・報告等を義務付けている。
一部の条例では、住民に対して説明会の実施(神奈川県、京都府、大阪府及び三重県は事業者に義務付け、栃木県、埼玉県、茨城県、広島県及び和歌山県が努力義務)、土砂等搬入禁止区域の指定(神奈川県、福岡県、埼玉県、広島県、大阪府、三重県及び宮城県)、埋立て地の土地所有者による施工状況の確認・報告(千葉県、栃木県、神奈川県、広島県。大阪府及び三重県)、元請業者(建設工事事業者)による土砂搬出の届出(神奈川県、埼玉県及び広島県)等の規定を置いている。
なお、罰則については、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金を上限としているのが10府県(神奈川県、福岡県、埼玉県、兵庫県、茨城県、山梨県、京都府、群馬県、大阪府、三重県、宮城県及び佐賀県)、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金を上限としているのが9県(千葉県、栃木県、愛媛県、広島県、徳島県、大分県、岐阜県、和歌山県及び高知県)となっている。
〇 第1回三重県環境審議会三重県土砂条例(仮称)あり方検討部会(令和元年8月6日)資料4及び第1回大阪府土砂の埋立て等の行為に係る規制のあり方検討部会(平成26年7月24日)資料4−1は、他県の条例制定状況を整理している。また、黒坂則子「土砂埋立て等の規制に関する条例の現状と課題」(日本不動産学会誌第29巻第2号2015.9)は、大阪府条例を中心として、土砂埋立て等の規制に関する条例の内容、課題等について解説している。本稿は、これらの資料・論文を参考にしている。
【市町村の条例】
〇 市町村において制定されている土砂埋立て等の規制に関する条例(現在も施行されているもの)は、環境省水・大気環境局平成30年度土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査・対策事例等に関する調査結果「6.自治体の取組状況等」を参考にしつつ、インターネットにより検索できる全国市区町村の例規集等から調査した結果、令和2年4月末現在、344条例が確認できる。
〇 この344条例を都道府県別に見てみると、千葉県50(54)、埼玉県50(63)、茨城県44(44)、群馬県27(35)、栃木県25(25)、大阪府19(43)、神奈川県19(33)、愛知県16(54)、奈良県11(39)、静岡県9(35)、山梨県8(27)、大分県8(18)、東京都7(39)、京都府6(26)、和歌山県6(30)、福岡県6(60)、兵庫県5(41)、岐阜県4(42)、滋賀県4(19)などとなっており、このほかは、徳島県3、新潟県、三重県及び広島県2、秋田県、福井県、長野県、愛媛県、高知県、島根県、山口県、佐賀県、熊本県、宮崎県及び鹿児島県1となっている(( )は、当該都道府県の市区町村数)。
これによると、関東地方・首都圏の市町村が圧倒的に多く、次いで、中部圏、近畿圏、北部九州(福岡県・大分県)の市町村が比較的多いことがわかる。このうち、茨城県及び栃木県は全ての市町村で条例を制定しており、また、千葉県、埼玉県及び群馬県では大半の市町村で条例を制定している。また、神奈川県では約半数の市町村が、静岡県、山梨県、愛知県、大阪府、奈良県、京都府、大分県では、4分の1以上の市町村が条例を制定している。北海道では制定をしている市町村はなく、東北、北陸、四国、中国、南九州の各地方では、制定している市町村は極めて少ない。
都道府県の条例との関係で見ると、愛知県及び奈良県は、比較的多くの市町村で条例を制定しているが、両県では条例は制定していない。
〇 市町村で最初に制定された土砂埋立て等の規制に関する条例は、千葉県市川市が昭和55年の千葉県市川市の「市川市土砂等による土地の埋立,盛土及びたい積の規制に関する条例」である。千葉県条例が制定された平成9年の17年前であった。
「昭和49年後半から、都内の建設現場から発生する残土によって市内の農地の埋め立てが開始されるようになりましたが、この農地の埋め立てに伴って、産業廃棄物などにより埋め立てられ土壌が汚染されるなどの問題が起きたため、土砂等による農地の埋立て並びに盛り土に関する指導基準を作成し、昭和52年4月から地主及び業者に対する指導を開始し、適正な埋め立てに係る問題解決に努めてまいりました。その後、昭和54年9月に要綱に移行しましたが、昭和55年6月に発生した水田の埋立現場での事故、これは産業廃棄物の残土により埋め立てされた現場の水たまりで幼児2名が水死した事故でありますが、これを契機に、昭和55年10月に要綱から条例に移行いたしました。」(市川市議会会議録 (平成18年12月12日) 環境清掃部長答弁 )とされる。なお、「県条例との整合性を図りつつ、条例の実効性を高めるため、従前の規制に加え、安全基準に適合しない土砂等の埋め立てを禁止するとともに、土地の所有者にも必要な措置を命ずることができるように、現行の条例の全部改正」(市川市議会会議録 (平成15年6月11日) 環境清掃部長答弁) がなされ、現在は、市川市土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例(平成5月25日公布、平成16年1月1日施行)となっている。
〇 建設省建設発生土等の有効利用に関する検討会報告(参考資料の時点修正)参考資料25の市町村盛土規制条例等制定状況(平成14年7月現在)によると、建設発生土に関する条例は平成10年までに255市町村で制定されていた。一方で、上記343条例のうち、平成10年までに制定されたのは、74条例である。調査対象は必ずしも同じではないが、かなり数に差がある。平成15年から平成17年をピークにして平成の大合併が進められたので、合併をした市町村では条例が廃止され、合併後の市町村で改めて条例が制定されたか、または、存続した市町村の条例が継続して施行されたものと考えられる。いずれにしても、都道府県で最初に千葉県が条例を制定したのが平成9年であったことを考慮すると、まさに、市町村先行で条例制定が進められてきたと言える。
〇 344条例について、平成11年以降の制定状況を見ると、平成11年から平成15年までが49条例、平成16年から平成20年までが101条例、平成21年から平成25年までが43条例、平成26年から平成30年までが68条例、平成31年・令和元年から令和2年4月までが8条例となっている。平成20年代に入っても多くの条例が制定されている。この中には、千葉県、茨城県、埼玉県等の市町村において既存の条例を全面改正したものも含まれているが、大阪府、愛知県、群馬県、静岡県、奈良県、山梨県、三重県等の市町村で、新しく条例が制定されている。土砂処理業者が、条例による規制のない市町村に土砂を搬入し、埋立て等を行う状況があり、それに対応するために条例制定が必要になってきているものと考えられる。
北村喜宣「総合的建設残土対策条例の可能性(上)」(自治研究74巻2号(平成10年2月))は、残土条例に関して、「ある自治体で、法律上ないし事実上の規制がされると、そこを避けて規制のない自治体へと処分地探しの手は伸びるから、現在はそれほどでないにしても、中長期的にみれば、とくに東京都周辺の関東地方自治体が問題視している状況は、全国的に拡大するものと推測される。」(64頁)としているが、この論文が記述された平成10年以降の残土条例を巡る動きは、その「推測」通りの状況を呈しており、その動きは20年以上の後の令和の時代に入っても続いていると言える。
〇 市町村の条例も、そのほとんどが、災害防止や生活環境保全を目的とし、事業者による土砂埋立て等(土砂の埋立て、盛土その他の堆積)を市町村長の許可制(一部の市町村では届出制)とし、許可に当たっては、埋立て等の形状や構造に関する基準等に適合することを要件とし、違反行為に対しては罰則規定を設けている。条例の基本的な枠組みは、都道府県の条例と変わらない。
それでは、都道府県の条例と市町村の条例はどう違うのか、どのように棲み分けを行っているのか、以下、具体的に見てみる。
【千葉県の場合】
〇 千葉県においては、市川市が昭和55年に条例を制定したが、昭和62年に県が県内市町村に対して条例等の制定を要請し、県が条例を制定した平成9年7月時点では、当時県内80市町村のうち、55市町村で既に条例が制定されていた。しかし、建設残土等による埋立てが無秩序に行われ、残土処分場から六価クロムが検出されるなど、土壌汚染問題が深刻化してきたが、当時の市町村条例は,土壌汚染等に対応しているものはほとんどなかったため、県として,これらの問題に市町村が単独で対応することは困難であると判断し,千葉県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例を制定するに至った(狩野哲也「都道府県条例と市町村条例との関係に関する一考察」(北大法学研究科ジュニア・リサーチ・ジャーナルNo.7 2000年)157頁以下及び環境省第2回土壌環境施策に関するあり方懇談会(平成19年7月31日)資料4「千葉県における残土問題の現状について」参照)。
〇 新たに制定された県条例と既存の市町村条例との関係については、土砂埋立て等の面積が3000u以上の事業については知事による許可制として県が所管することとし、3000u未満の事業を市町村長の許可制として市町村が所管することとして、棲み分けを図ることとした。また、「県条例で定める以外の事項について,条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない」(県条例 旧30条)とし、横出し規制は可能なものの、県条例で定めている事項については市町村条例で規制することはできないこととした。県は、市町村に対してモデル条例案示すとともに、市町村も県条例との整合性を図るために自主的に条例を改正した。
しかし、平成15年には県条例を改正し、「市町村がその地域の実情に応じて独自に土砂等の埋立て等に対する施策を講じ、又は講じようとする場合」は、市町村長の申出により、県が告示をして県条例の適用が除外できるようになった(新30条)。
令和元年6月1日現在、千葉市、銚子市、船橋市、木更津市、野田市、成田市、佐倉市、東金市、柏市、勝浦市、君津市、富津市、四街道市、八街市、印西市、匝瑳市、山武市、神崎町、多古町、芝山町、大多喜町及び鋸南町の22市町が適用除外とっている(千葉県HP「千葉県土砂等 の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例」)。これらの市町では、3000u以上の埋立て等も市長(町長)の許可制としている。また、県条例にないものとして、周辺住民の同意や事前協議に関する規定などを置いている。
〇 県条例が適用除外されている市町村の条例として、例を挙げると、
千葉県船橋市 | 災害の発生の防止に関する条例 | 平成14年12月27日公布 | 平成15年4月1日施行 |
千葉県銚子市 | 平成17年10月7日公布 | 平成18年1月1日施行 |
両条例とも、500u以上が許可対象としており、特に上限は設けていない。また、県条例と同様に、土壌汚染防止の観点から安全基準に適合しない土砂の埋立て等を禁止している。一方で、船橋市条例は、市長との事前協議が義務付け(11条)、銚子市条例は、周辺住民等の同意(10条)と市長との事前協議(11条)が義務付けられているなど、県条例にはない規定を置いている。
〇 県条例が適用除外されていない市町村の条例として、例を挙げると、
千葉県市原市 | びたい積行為の規制に関する条例 | 平成9年9月17日公布 | 平成10年1月1日施行 |
千葉県鴨川市 | 災害の発生の防止に関する条例 | 平成17年2月11日公布 | 平成17年2月11日施行 |
市原市条例は300u以上3000u未満を、鴨川市条例は500u以上3000u未満を、それぞれ許可対象としている。また、両条例とも、県条例とは異なり、土壌汚染防止に関する規定は特に置いていない。
【神奈川県の場合】
〇 神奈川県では、平成3年1月1日に施行された津久井町住環境条例(なお、津久井町は平成18年3月に相模原市に編入されており、本条例は現在廃止されている)をはじめ、平成10年10月時点で18市町において残土規制条例又は残土規制の内容を含む条例が制定されていた(上記狩野論文)。しかし、「本来、建設工事から発生する土砂を処分するときは、その処分場所により森林法や農地法、市町村条例等の適用がありますが、法令の許可を受けずに、または、基準に違反して土砂の埋立てを行うなどの不適正な処理は、県内でも平成4年度から平成9年度までの間に69件、面積にして約55ヘクタールを数えるほどになっていました。無秩序な埋立てが多いこれらの場所では、土砂の崩壊、流出等による災害発生のおそれがあり、県民生活への不安が生じていたことから、県では、土砂の不適正な埋立て等を行っている者に対する指導や命令を行ってきました。 しかし、既存法令は、適用範囲や条件が限られており、また、土砂の搬入を中止させる規定がないなど、対応できない部分がある」(神奈川県HP「神奈川県土砂の適正処理に関する条例」)ため、平成11年3月に神奈川県土砂の適正処理に関する条例が制定された。
〇 県条例と市町村条例との関係については、2000u以上の土地埋立行為については知事による許可制として県が所管することとし、2000u未満の土地埋立行為を市町村長の許可制として市町村が所管することとした。また、「この条例の規定は、市町村が地域の自然的社会的条件に応じて、土砂の適正な処理を推進するため、この条例で定める事項以外の事項に関し、条例で必要な規定を定めることを妨げるものではない。」(28条1項)とするとともに、「市町村が土砂の適正な処理を推進するために制定する条例の内容が、 この条例の趣旨に則したものであり、かつ、この条例と同等以上の効果が期待できるものと知事が認めて公示したときは、当該市町村の条例に規定する事項に該当するものとして知事が指定する章の規定は、当該市町村の区域には、適用しない。」(28条2項)としている。
〇 令和2年4月末現在神奈川県内の市町村で19の土砂埋立て等の規制に関する条例が制定されているが、このうち、秦野市条例は県条例の3章(土砂埋立行為の許可等)及び4章(土砂搬入禁止区域)が、相模原市、伊勢原市及び南足柄市の条例は3章の規定が適用除外となっている(神奈川県HP「県内市町村条例」)。
〇 県条例の一部が適用除外されている市町村の条例として、例を挙げると、
神奈川県秦野市 | 平成7年10月6日公布 | 平成7年12月1日施行 | |
相模原市 | 平成22年12月24日公布 | 平成23年4月1日施行 |
両条例ともに、原則として500u以上の埋立て等を許可対象としており、特に上限は設けていない。
このうち、秦野市条例は、許可申請時における周辺住民への周知の努力義務(3条)を規定している。また、埋立て等禁止区域を指定することができる(14条の2)としているが、県条例では2000u以上の埋立て等が行われている土地等を対象としているのに対して、500u以上の埋立てが行われている土地等を対象としている。
相模原市条例は、市長との事前協議(9条)と近隣住民等に対する説明会の開催(10条)か義務付けられ、自治会との協定締結について努力義務を課している(11条)。また、3000u以上の埋立て等については、許可に際して保証金の預託を義付けている(31条)。
〇 県条例が適用除外されていない市町村の条例として、例を挙げると、
神奈川県平塚市 | 平成10年3月25日公布 | 平成10年7月1日施行 | |
神奈川県藤沢市 | 平成21年6月25日公布 | 平成21年10月1日施行 |
両条例ともに、原則として500u以上の埋立て等を許可対象としているが、平塚市条例は「他の法令(条例を含む。)の規定による許可、認可等を受け、又は届出等をして行う埋立て等」(6条2項1号)、藤沢市条例は「法令又は条例の規定による許可,認可等を受け,又は届出等をして行う埋立て等」(5条2項1号)はそれぞれ許可不要としており、結果として県条例が対象となる2000u以上の埋立て等は対象外となる。
【茨城県の場合】
〇 茨城県では、平成3年に県において条例準則を示し、市町村に対し制定を指導し、平成15年10月現在、すべての市町村において条例が制定されていたが、「大規模な残土処理計画への対応については、残土の発生場所が茨城県外の複数県にまたがる事案が多いことや土砂の崩落や流出などの安全対策が必要となるため」(茨城県HP「茨城県土砂等による土地の埋立て等の規制に関する条例」)、平成15年10月に茨城県土砂等による土地の埋立て等の規制に関する条例が制定された。
〇 県条例と市町村条例との関係については、5000u以上の土地の埋立て等については知事による許可制とした。また、「この条例の規定は,市町村が,第6条第1項第1号に掲げる土地の埋立て等に関し条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない。」(22条)とし、第6条第1項第1号すなわち「埋立て等区域の面積が5000平方メートル未満である土地の埋立て等」については市町村が条例で定めることができることとした。その結果、5000u未満の土地の埋立ては市町村長の許可制として市町村が所管することが可能となり、令和2年4月末現在、茨城県内の44のすべての市町村が、5000u未満の土地の埋立てを対象に許可制とする条例を定めている。
〇 市町村条例の例を挙げると、
茨城県守谷市 | たい積の規制に関する条例 | 平成3年3月28日公布 | 平成3年7月1日施行 |
茨城県つくば市 | 平成4年1月28日公布 | 平成4年4月1日施行 | |
茨城県牛久市 | 平成28年3月31日公布 | 平成28年5月1日施行 |
守谷市条例は500u以上5000u未満の埋立て等を許可対象とし、つくば市条例と牛久条例は5000u未満の埋立て等を許可対象としている。牛久市条例は、平成15年に制定された「牛久市土砂等による土地の埋立て、盛土及びたい積の規制に関する条例」の全部改正により制定されたものであるが、市長との事前協議を義務付けている(5条)。
【その他の府県の場合】
〇 栃木県については、栃木県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例は、3000u以上の土地の埋立て等について知事の許可制としている。市町村条例との関係については、「市町村が定める土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生を防止するための条例の規定の内容が、この条例の趣旨に即したものとして知事が認めるときは、当該市町村の区域を指定し、この条例の規定の全部又は一部を適用しない。」(30条1項)としている。25市町村すべてが条例を制定しているが、宇都宮市、足利市、栃木市、佐野市、鹿沼市、日光市、大田原市及び野木町は県条例の適用除外となっている(栃木県資料「県内市町における「土砂条例」の制定状況」)。 栃木県条例の内容、運用等については、栃木県HP「栃木県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例について」を参照のこと。
〇 埼玉県については、埼玉県土砂の排出、たい積等の規制に関する条例は、3000u以上の土地のたい積等について知事の許可制としている。市町村条例との関係については、「この条例の規定は、地域の自然的社会的条件に応じて、無秩序な土砂のたい積を防止するため、市町村が条例で必要な規定を定めることを妨げるものではない。市町村が定める無秩序な土砂のたい積を防止するための条例の規定の内容が、この条例の趣旨に則したものであり、かつ、この条例と同等以上の効果が期待できるものとして知事が認めるときは、規則の定めるところにより、当該市町村の条例の規定に相当するこの条例の規定は、当該市町村の区域においては、適用しない。」(35条1項、2項)としており、さいたま市、川越市、川口市、越谷市、桶川市、毛呂山町、嵐山町及び鳩山町が県条例の適用除外となっている(埼玉県HP 「土砂の排出、たい積等の規制」)。
〇 大阪府については、大阪府土砂埋立て等の規制に関する条例は、3000u以上の土地の埋立て等について知事の許可制としている。市町村条例との関係については、「土砂の適正な処理に関して、この条例と同等以上の効果が得られるものとして知事が認める内容を有する条例を制定している市町村であって規則で定めるところにより指定するものの区域については、この条例の規定は、適用しない」(35条)としているが、令和2年4月末時点で、適用除外の規則は制定されていない。大阪府条例の内容、運用等については、大阪府HP「大阪府土砂埋立て等の規制に関する条例」を参照のこと。
〇 三重県については、三重県土砂等の埋立て等の規制に関する条例は、3000u以上の土地の埋立て等について知事の許可制としている。市町村条例との関係については、「土砂等の適正な処理に関して、この条例と同等以上の効果が得られるものとして知事が認める内容を有する条例を制定している市町であって規則で定めるところにより指定するものの区域については、この条例の規定は、適用しない。」(36条)としている。なお、伊賀市土砂等の埋立て等による土壌汚染及び災害の発生の防止に関する条例 (平成30年3月28日公布 平成30年7月1日施行)及び紀北町生活環境の保全に関する条例(平成31年3月20日公布 平成31年7月1日施行)は、 1000u以上の埋立ては市町長に届出を義務付けている。三重県条例の内容、運用等については、三重県HP 「三重県土砂等の埋立て等の規制に関する条例」を参照のこと。