太陽光発電設備等の建物への設置を義務づける条例

(令和5年12月4日更新)

【条例の制定状況】

〇 「条例の動き」では、太陽光発電設備の設置を規制する「太陽光発電設備の規制に関する条例」を紹介する一方で、太陽光発電設備等の再生可能エネルギー発電設備の利用促進を図り、また、地球温暖化対策を推進し、さらに脱炭素社会を目指す「再生可能エネルギーの利用促進に関する条例」や「脱炭素社会を目指す条例と地球温暖化対策条例」を紹介している。

 後者の条例群の中には、建築物の新築や増築に際して太陽光発電設備等の再生可能エネルギー発電設備の設置を義務づける規定を持つものがある。令和5年9月1日時点では、次のような条例が確認できる。

京都府

京都府再生可能エネルギーの導入等の

促進に関する条例

平成27年7月13日公布

令和2年12月23日改正公布

平成27年7月13日施行施行

(一部平成28年1月1日改正施行)

令和3年4月1日改正施行

(一部令和4年4月1日改正施行)

京都市

京都市地球温暖化対策条例

平成16年12月24日公布

平成22年10月12日全部改正公布

令和2年12月18日改正公布

平成17年4月1日施行

平成23年4月1日全部改正施行

(一部平成24年4月1日全部改正施行)

令和3年4月1日改正施行

(一部令和4年4月1日改正施行)

福島県大熊町

大熊町ゼロカーボンの推進による

復興まちづくり条例

令和3年9月16日公布

令和3年9月16日施行

一部令和4年4月1日施行

群馬県

二千五十年に向けた「ぐんま5つの

ゼロ宣言」実現条例

令和4年3月15日公布

令和4年3月15日施行

一部令和4年4月1日施行

一部令和4年10月1日施行

一部令和5年4月1日施行

東京都

都民の健康と安全を確保する環境に

関する条例(改正前)

都民の健康と安全を確保する環境に

関する条例の一部を改正する条例

平成12年12月22日公布

令和4年12月22日改正公布

平成13年4月1日施行

一部令和6年4月1日改正施行

一部令和7年4月1日改正施行

川崎市

川崎市地球温暖化対策の推進

に関する条例(改正前)

川崎市地球温暖化対策等の推進

に関する条例(改正後)

平成21年12月24日公布

令和5年3月30日改正公布

平成22年4月1日施行

令和5年3月30日改正施行

一部令和5年4月1日改正施行

一部令和6年4月1日改正施行

一部令和7年4月1日改正施行

 

(京都府条例及び京都市条例)

〇 京都府条例と京都市条例は、太陽光発電設備等の建築物への設置の義務づけについて、規定の仕方は異なるものの、基本的には同様の内容を定めている。

 すなわち、延床面積2000㎡以上の建築物(特定建築物)又は延床面積300㎡以上2000㎡未満の建築物(準特定建築物)の新築・増築に際して、建築主に再生可能エネルギー設備の設置を義務づけ、義務づける再生可能エネルギー量を、規則で定める基準により、特定建築物は1年当たり6万メガジュール~45万メガジュールとし、準特定建築物は1年当たり3万メガジュールとしている。

〇 京都府条例の関係条文については、特定建築物に関して、「特定建築主(対策条例第22条第2項に規定する特定建築主をいう。以下同じ。)は、規則で定める場合を除き、規則で定める基準に従い、特定建築物(同項に規定する特定建築物をいう。以下同じ。)への再エネ設備の導入(その敷地(・・・)に再エネ設備を設置して導入する場合を含む。)をしなければならない。」(7条1項)と規定し、準特定建築物に関して、「特定建築物の規模未満で規則で定める規模の建築物(以下「準特定建築物」という。)の新築又は規則で定める増築をしようとする者(以下「準特定建築主」という。)は、規則で定める場合を除き、規則で定める基準に従い、準特定建築物又は当該増築に係る建築物への再エネ設備の導入(それらの敷地に再エネ設備を設置して導入する場合を含む。)をしなければならない。」(7条の2第1項)と規定している。

 特定建築物及び準特定建築物の定義は、特定建築物について、京都府地球温暖化対策条例22条2項及び京都府地球温暖化対策条例施行規則22条1項により、床面積(増築等の場合、当該増築等に係る部分)の合計が2000平方メートル床面積以上の建築物とし、準特定建築物について、規則で定める規模を「床面積の合計が300平方メートル以上2000平方メートル未満であること」(京都府再生可能エネルギーの導入等の促進に関する条例施行規則3条の2第1項)としている。ただし、いずれも、「建築面積(増築の場合にあっては、当該増築後の建築面積)が150平方メートル未満の場合」又は「再エネ設備を導入することができない建築物として知事が別に定めるものである場合」に該当する場合(規則3条1項、規則3条の2第3項)は除外され、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(以下「建築物省エネ法」という。)第18条各号のいずれかに該当するかに該当する建築物は適用除外(7条の4)としている。

 また、規則で定める再生可能エネルギー義務量に関する基準については、特定建築物に関して、「特定建築物に導入すべき再エネ設備から得られる熱及び電気の量を、それぞれ知事が別に定めるところにより石油等の一次エネルギーの熱量に換算して得られた量の合計が、1年当たり30メガジュールに床面積(増築の場合にあっては、当該増築に係る部分に限る。)の合計の平方メートルで表した数値を乗じて得た量以上(当該量が45万メガジュールを超える場合にあっては、45万メガジュール)であること」(規則3条2項)とし、準特定建築物に関して、「準特定建築物に導入すべき再エネ設備から得られる熱及び電気の量を、それぞれ知事が別に定めるところにより石油等の一次エネルギーの熱量に換算して得られた量の合計が、1年当たり3万メガジュール以上であること」(規則3条の2第4項)としている。

〇 京都市条例の関係条文については、特定建築物に関して、「特定建築主は,特定建築物又はその敷地に,再生可能エネルギー利用設備で,特定建築物からの温室効果ガスの排出の量の削減に寄与するものとして別に定める基準に適合するものを設置しなければならない。」(54条)と規定し、準特定建築物に関して、「温室効果ガスの排出の量が一定の量以上の別に定める建築物(特定建築物を除く。以下「準特定建築物」という。)の新築等をしようとする者(以下「準特定建築主」という。)は,準特定建築物又はその敷地に,再生可能エネルギー利用設備で,準特定建築物からの温室効果ガスの排出の量の削減に寄与するものとして別に定める基準に適合するものを設置しなければならない。」(63条)と規定している。

 特定建築物及び準特定建築物の定義は、特定建築物について、条例49条1項で「特定建築物」を「温室効果ガスの排出の量が相当程度多い別に定める建築物」としたうえで、「条例第49条第1項に規定する別に定める建築物は、その床面積(増築の場合にあっては、当該増築に係る部分の床面積)の合計が2000平方メートル以上の建築物とする。」(京都市地球温暖化対策条例施行規則22条)とし、準特定建築物について、「条例第63条に規定する別に定める建築物は,その床面積(増築の場合にあっては,当該増築に係る部分の床面積)の合計が300平方メートル以上2000平方メートル未満の建築物とする。」(規則34条)としている。ただし、いずれも、建築物省エネ法第18条各号のいずれかに該当する建築物を除外し(規則22条、34条1号)、さらに、準特定建築物については「市長が定めるやむを得ない事由により、第29条第1項第1号アの設備を設置することができず、又は設置することによっては次条に規定する熱量の再生可能エネルギーを利用することができない建築物」も除外している(規則34条2号)。

 また、別に定める再生可能エネルギー義務量に関する基準については、特定建築物に関して、「ア 太陽光発電設備、イ 太陽熱利用設備、ウ バイオマス利用設備、エ 風力発電設備、オ 水力発電設備、カ 地熱発電設備、キ 市長が定めるやむを得ない事由により,アの設備を設置することができず,又は設置することによっては次号に掲げる熱量の再生可能エネルギーを利用することができない特定建築物及びその敷地にあっては,再生可能エネルギー源を電気,熱等に変換せずに直接に利用する設備で,市長が認めるもの」のいずれかの設備であること(規則29条1項1号)及び「別に定める算出基準により熱量に換算して,1年につき,特定建築物の床面積(増築の場合にあっては,当該増築に係る部分に限る。)の合計に1平方メートル当たり30メガジュールを乗じて得た量(当該量が450000メガジュールを超える場合にあっては,450000メガジュール)を利用することができること」(規則29条1項2号)とし、準特定建築物に関して、「第29条第1項第1号アからカまでのいずれかに該当する設備で、同項第2号の算出基準により熱量に換算して,年間30000メガジュール以上の再生可能エネルギーを利用することができるものであること」(規則35条1項)としている。

〇 義務づけに伴う届出等の手続きや実効性の確保についても、京都府条例と京都市条例は、基本的には同様の内容を定めている。

 すなわち、京都府条例は、特定建築物については特定建築主に対して再生可能エネルギー導入計画書の作成、知事への提出を義務づけ(7条3項)、知事は未提出や虚偽記載の提出の場合、基準に適合しない場合は特定建築主に勧告し(32条)、勧告に従わない場合は公表することができる(33条)とし、準特定建築物については準特定建築主に対して工事完了後に知事への届出を義務づけている(7条の2第2項)。

 京都市条例は、特定建築物については特定建築主に対して工事着手前に市長への届出書の提出を義務づけ(55条)、市長は基準に適合しない場合は特定建築主に勧告し、勧告に従わない場合は公表することができる(56条)とし、準特定建築物については準特定建築主に対して工事完了後に市長への届出書の提出を義務づけている(64条)。

〇 また、京都府条例、京都市条例ともに、建築士が特定建築物や準特定建築物の設計を行うときに、建築主に対して再生可能エネルギー設備の設置に関して、書面を交付して説明し、関係書面を一定期間保存することを義務づけている(京都府条例7条の3、京都市条例65条、66条)。

〇 京都府と京都市は、府市協調により相互に密接に連携を図りながら様々な施策を実施しており、その一環として、それぞれ条例で共通の温室効果ガス排出量削減目標(平成22年10月から令和12年度までに平成2年度比で40%削減を目標、令和2年12月から令和12年度までに平成25年度比で40%以上削減を目標)を掲げ、地球温暖化対策の取組みを推進している(「複数自治体が連携して同じ内容を定める条例(統一条例)」参照)。

 そして、太陽光発電設備等の建物への設置の義務づけについても、共通の考え方に立って、同一時期に、同一内容の施策を実施している。

 すなわち、京都府、京都市ともに、平成24年4月1日施行により延床面積2000㎡以上の建築物(特定建築物)への再生可能エネルギー設備の設置の義務づけを行い(京都府は、当初京都府地球温暖化対策条例に規定し、平成28年1月1日からは平成27年7月に制定された京都府再生可能エネルギーの導入等の促進に関する条例に規定し施行、京都市は、当初から京都市地球温暖化対策条例に規定)、その場合の再生可能エネルギー義務量を1年当たり3万MJとしていた。

 さらに、令和4年4月1日施行により規制を強化し、特定建築物の再生可能エネルギー義務量を1年当たり6万MJ~45万MJとするとともに、新たに延床面積300㎡以上2000㎡未満の建築物(準特定建築物)に対して再生可能エネルギー設備の設置の義務づけを行い、再生可能エネルギー義務量を1年当たり3万MJ万MJとした。

 また、設計士に対する建築主への説明の義務づけについては、令和3年4月1日から実施している。

〇 京都府条例と京都市条例の適用関係については、京都府条例34条及び京都府規則22条に基づき、京都市については京都市条例を適用することとしている。

〇 京都府条例の内容等については、京都府HP「京都府再生可能エネルギーの導入等の促進に関する条例」、「特定建築物排出量削減・再生可能エネルギー導入計画・報告・公表制度」、「建築物における再生可能エネルギーの導入等に係る建築士の説明義務制度(令和3年4月1日施行)」を、京都市条例の内容等については、京都市HP「京からCO2ゼロ条例(京都市地球温暖化対策条例)」を参照されたい。

 

(大熊町条例)

〇 大熊町条例は、「特定建築物」を建築物省エネ法11条に定める特定建築物(18条1項)と定義づけたうえで、「特定建築主は、特定建築物又はその敷地に、再生可能エネルギー利用設備で、特定建築物からの二酸化炭素排出量の削減に寄与するものとして別に定める基準に適合するものを設置しなければならない。」(19条1項)と規定している。なお、建築物省エネ法11条に定める特定建築物とは、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律施行令4条1項により、非住宅部分の床面積合計が300㎡以上の建築物とされている。

 別に定める基準については、「ア 太陽光発電設備、イ 太陽熱利用設備、ウ 地中熱利用設備、エ その他再生可能エネルギー等利用設」のいずれかの設備(大熊町ゼロカーボンの推進による復興まちづくり条例施行規則6条1項)としている。

 また、特定建築主に対して工事着手前に町長へ届出書の提出を義務づけ(19条2項)、町長は基準に適合しない場合は特定建築主に対して勧告し、勧告に従わない場合は公表することができる(20条)としている。

 これらの規定は、令和4年4月1日に施行されている。

 

(群馬県条例)

〇 群馬県条例は、「特定建築物」を「規則で定める規模以上の建築物」(28条1項)と定義づけたうえで、「特定建築主は、規則で定める場合を除き、規則で定める基準に従い、特定建築物への再生可能エネルギー設備の導入(その敷地(・・・)に再生可能エネルギー設備を設置して導入する場合を含む。・・・)をしなければならない。」(59条1項)と規定している。

 規則(二千五十年に向けた「ぐんま5つのゼロ宣言」実現条例施行規則)は、特定建築物を床面積の合計が2000㎡以上の建築物(13条1項)とし、特定建築物への再生可能エネルギー設備の導入の義務づけについて、除外対象を建築面積が150㎡未満等の場合(令和5年4月1日改正施行後37条1項)とし、基準を「特定建築物に導入すべき再生可能エネルギー設備から得られる熱及び電気の量を、それぞれ知事が別に定めるところにより石油等の一次エネルギーの熱量に換算して得られた量の合計が、一年当たり六十メガジュールに当該特定建築物の床面積(・・・)の合計の平方メートルで表した数値を乗じて得た量以上であること」(令和5年4月1日改正施行後37条2項)としている。

 また、特定建築主に対して特定建築物再生可能エネルギー設備等導入計画の作成、知事への提出、知事への実施報告を義務づけ(60条、61条)、知事はこれらの提出や公表があった場合はその内容を公表する(62条)ものとし、知事は導入計画の未提出や虚偽記載の提出の場合は特定建築主に対して勧告し(85条)、勧告に従わない場合は公表することができる(86条)としている。

 さらに、建築士が特定建築物の設計を行うときに、建築主に対して再生可能エネルギー設備等の導入に関して、書面を交付して説明し、関係書面を一定期間保存することを義務づけている(63条)。

 59条の規定は令和5年4月1日に施行し、60条から63条、85条及び86条の規定は令和4年10月1日に施行することとされている。

 群馬県条例の内容等については、群馬県HP「2050年に向けた「ぐんま5つのゼロ宣言」実現条例について」及び自治体法務研究2022年秋号CLOSEUP先進・ユニーク条例「2050年に向けた「ぐんま5つのゼロ宣言」実現条例」を参照されたい。

 

(東京都条例)

〇 東京都は、令和4年12月に「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」を改正し、延床面積2000㎡以上の大規模建物(ビル、マンション)の新築等を行う建築主を対象にして太陽光発電等再エネ設備やZEV充電設備の設置の義務づけ等を行うとともに、延床面積2000㎡未満の中小規模新築建物(住宅等)については年間都内供給延床面積が合計2万㎡以上のハウスメーカー等の事業者又は申請を行い知事から承認を受けた事業者(特定供給事業者)を対象にして太陽光発電等再エネ設備やZEV充電設備の設置の義務づけ等を行うこととした。令和7年4月1日に施行することとしている。

 再エネ設置(太陽光発電設備)の義務づけに係る設置基準については、延床面積2000㎡以上の大規模建物(ビル、マンション)は、建築面積×設置基準率(5%)としたうえで、下限及び上限容量を設定することとしている。また、延床面積2000㎡未満の中小規模新築建物(住宅等)は、①設置可能棟数×②算定基準率×③棟当たり基準量とし、①設置可能棟数については算出対象屋根面積が20㎡未満等の場合は設置基準算定から除外可能、②の算定基準率については区域ごとに3段階(85%、70%、30%)の算定基準率を設定、③棟当たり基準量については1棟当たり2kwとするとしている。利用可能な再生可能エネルギーについては、太陽光のほか、太陽熱や地中熱等も可能としている。これらの制度の概要は、東京都資料「カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針」を参照されたい。

〇 条例及び規則(都民の健康と安全を確保する環境に関する条例施行規則(改正前)、都民の健康と安全を確保する環境に関する条例施行規則の一部を改正する規則(令和4年12月22日公布、令和7年4月1日施行))では、再エネ設置(太陽光発電設備)の義務づけに関して、延床面積2000㎡以上の大規模建物(ビル、マンション)については、条例で、「特定建築主」を「規則で定める規模以上の建築物(規則で定める種類の建築物を除く。以下「特定建築物」という。)の新築等をしようとする者」(条例改正後20条)と定義づけたうえで、「特定建築主は、配慮指針で定めるところにより、当該特定建築物(規則で定める種類の建築物を除く。)及びその敷地について、規則で定める再生可能エネルギー利用設備設置基準に適合するよう措置を講じなければならない。」(条例改正後20条の3)と規定し、規則(改正後9条、9条の3)で、具体的な基準等を規定している。

 また、延床面積2000㎡未満の中小規模新築建物(住宅等)については、条例で、「特定供給事業者」を「建設請負事業者又は規格建築物を新築し、これを分譲し、若しくは賃貸することを業として行う者(以下これらを「建物供給事業者」という。)であって、建物供給事業者が一年間に都内において新たに建設し、若しくは新築する当該規格に基づく規則で定める規模未満の建築物(規則で定める種類の建築物を除く。以下「中小規模特定建築物」という。)の延べ面積の合計が規則で定める値以上であるもの又は規則で定めるところにより申請を行ったもの(規則で定めるところにより知事から承認を受けたものに限る。)」(改正後23条の7第1項)と定義づけたうえで、「特定供給事業者は、配慮指針で定めるところにより、当該中小規模特定建築物(規則で定める種類の建築物を除くことができる。次項において同じ。)及びその敷地について、規則で定める再生可能エネルギー利用設備設置基準に適合するよう措置を講じなければならない」(改正後23条の8第1項)、「特定供給事業者は、当該中小規模特定建築物及びその敷地について、配慮指針で定める誘導すべき再生可能エネルギー利用設備設置基準に適合するための措置を講じるよう努めなければならない。」(改正後23条の8第2項)と規定し、規則(改正後13条の5の2、13条の5の3)で、具体的な基準等を規定している。

〇 制度の内容や検討経緯等については、東京都環境局「太陽光ポータル」中「制度改正に関する情報」を参照されたい。

 

(川崎市条例)

〇 川崎市は、令和5年3月に、「川崎市地球温暖化対策の推進に関する条例」を改正し(改正後の条例名「川崎市地球温暖化対策等の推進に関する条例」)、新たに建築物への太陽光発電設備の設置の義務づけ等を行うこととした。令和7年4月1日に施行することとしている。

 すなわち、床面積2000㎡以上の建築物(特定建築物)を新増築する建築主に対しては、太陽光発電設備等(太陽熱利用設備、バイオマス利用設備、風力発電設備、地中熱利用設備等を含む)の設置を義務づけ、その設置基準量は特定建築物の規模に応じた量とすることとした。

 また、延べ床面積2000㎡未満の新築の建築物(中小規模建築物)を市内に年間一定量以上建築・供給する建築事業者(特定建築事業者)に対し、太陽光発電設備の設置を義務づけ、その設置基準量は「年間供給棟数」×「棟当たり基準量(太陽光発電設備の設備容量(Kw))」×「算定基準率(地域特性や住宅事情等を踏まえて設定する補正係数(%))」などとすることとした。

 これらの制度の概要は、川崎市HP「川崎市地球温暖化対策推進条例の改正に向けた重要施策の考え方」を参照されたい。

〇 条例では、「床面積(増築又は改築をする場合にあっては、当該増築又は改築に係る部分の床面積。以下同じ。)の合計が2,000平方メートル以上の建築物(以下「特定建築物」という。)の新築等をしようとする者(以下「特定建築主」という。)は、規則で定める場合を除き、当該特定建築物又はその敷地(・・・)に、太陽光を電気に変換する設備(以下「太陽光発電設備」という。)その他の再生可能エネルギー源を利用するための設備(以下「太陽光発電設備等」という。)であって規則で定める基準に適合するものを設置しなければならない。」(25条1項)、「特定建築事業者(建築事業者(建築物を新たに建設する工事を業として請け負う者又は建築物を新築し、これを分譲し、若しくは賃貸することを業として行う者をいう。・・・)であって、1年間に市内において新たに建設し、又は新築する中小規模特定建築物(床面積の合計が2、000平方メートル未満の建築物をいい、建築事業者が自ら当該工事を行うものに限る。以下同じ。)の床面積の合計が規則で定める値以上であるものをいう。・・・)は、当該中小規模特定建築物又はその敷地に、出力の合計が規則で定める量以上の太陽光発電設備を設置しなければならない。」(26条1項)等と規定している。

 

【国の対応】

〇 令和3年4月に、国土交通省、経済産業省、環境省が連携して、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」が設置され、同検討会は令和3年8月に「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方」(令和3年8月)を取りまとめた。

 同報告書は、「2050年において設置が合理的な住宅・建築物には太陽光発電設備が設置されていることが一般的となることを目指し、また、これに至る 2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指すこととして、将来における太陽光発電設備の設置義務化も選択肢の一つとしてあらゆる手段を検討し、その設置促進のための取組を進めること」(14頁)と記述しており、住宅・建築物の太陽光発電設備の設置義務化はあくまでも将来における選択肢としている。

〇 令和4年6月17日に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」が公布された。同法は、省エネ性能の底上げ・より高い省エネ性能への誘導として①全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務付け、②トップランナー制度(大手事業者による段階的な性能向上)の拡充、③販売・賃貸時における省エネ性能表示の推進を、ストックの省エネ改修や再エネ設備の導入促進として①住宅の省エネ改修に対する住宅金融支援機構による低利融資制度を創設、②市町村が定める再エネ利用促進区域内について、建築士から建築主へ再エネ設備の導入効果の説明義務を導入、③省エネ改修や再エネ設備の導入に支障となる高さ制限等の合理化を定めているが、住宅・建築物への太陽光発電設備の設置の義務づけについては規定されていない(国土交通省HP「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について」参照)。



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