さまざまな「まちづくり」の条例
(令和6年12月14日更新)
【さまざまな「まちづくり」の条例】
(はじめに)
〇 全国の条例を調べてみると、条例名に「まちづくり」という言葉を使用する条例が実に多くあることに気づく。
単に「まちづくり条例」とするものもあれば、「まちづくり基本条例」とするものもある。他方、「安全で安心なまちづくり条例」、「潤いのあるまちづくり条例」、「きれいなまちづくり条例」、「協働のまちづくり条例」、「福祉のまちづくり条例」、「子育てにやさしいまちづくり条例」、「水と緑のまちづくり条例」、「食と農のまちづくり条例」、「スポーツまちづくり条例」など、「まちづくり」の前に様々な形容詞や修飾語をつけたり、特定分野における「まちづくり」であることを明記したりするものがある。
当然ながら、市区町村のうち、「町」のみならず、「市」、「村」、「区」でも、このような「まちづくり」の条例を制定している。また、市区町村のみならず、都道府県でも、こうした条例を制定している。
〇 それでは、一体、どのような「まちづくり」の条例があるのだろうか。
本稿では、条例名に「まちづくり」という言葉を使用する条例に着目して、半ば興味本位で、半ば物事の整理のつもりで、これらの条例を概観する。
ちなみに、「街づくり」や「町づくり」という言葉を使用する条例、さらには、「都市づくり」、「むらづくり」、「村づくり」などの言葉を使用する条例もある。本稿では、これらの条例は対象としていない。
〇 なお、講学上「まちづくり条例」とされるものがある。「まちづくり条例」の概念は必ずしも明らかでないが、一般的には、土地利用・都市計画・建築行政分野の「まちづくり」の条例とされることが多い(条例名に「まちづくり」という言葉の使用を使用しない条例も含まれる)。こうした「まちづくり条例」、すなわち土地利用・都市計画・建築行政分野の「まちづくり」の条例については、「まちづくり・土地利用関係条例」において概観している。
(主な「まちづくり」の条例)
〇 条例名に「まちづくり」という言葉を使用する条例をいくつかのグループに分けて、その具体例を紹介する。制定年は、公布日を基準としている。
単に「まちづくり条例」 とするもの |
概ね50条例程度 |
(徳島県)小松島市まちづくり条例(昭和57年) | (神奈川県)真鶴町まちづくり条例(平成5年) |
(滋賀県)甲良町まちづくり条例(平成15年) |
(東京都)国分寺市まちづくり条例(平成16年) |
「まちづくり基本条例」 とするもの |
180条例以上 |
(兵庫県)まちづくり基本条例(平成11年) | (北海道)ニセコ町まちづくり基本条例(平成12年) |
(兵庫県)宝塚市まちづくり基本条例(平成13年) |
(福島県)会津坂下町まちづくり基本条例(平成14年) |
安全・安心分野の 「まちづくり」の条例 | 700条例以上 |
(徳島県)鳴門市安全なまちづくりに関する条例(平成6年) | (奈良県大和郡山市)安心と安全のまちづくり条例(平成9年) |
(山形県)高畠町防災まちづくり条例(平成12年) |
(静岡県)富士宮市防犯まちづくり条例(平成16年) |
(熊本県)玉名市犯罪のないまちづくり条例(平成18年) |
環境・景観分野の 「まちづくり」の条例 |
200条例以上 |
(北海道)帯広市緑のまちづくり条例(昭和60年) | (東京都)羽村市美しいまちづくり基本条例(平成2年) |
(奈良県奈良市)なら・まほろば景観まちづくり条例(平成2年) |
(大阪府)松原市きれいなまちづくり条例(平成8年) |
(静岡県)吉田町ごみのないクリーンなまちづくり条例(平成10年) |
(長野県)茅野市環境にやさしいまちづくり条例(平成11年) |
(福島県)相馬市快適なまちづくり推進条例(平成14年) |
福祉・健康分野の 「まちづくり」の条例 |
百数十条例 |
(兵庫県)福祉のまちづくり条例(平成4 年) | (岡山県津山市)人にやさしいまちづくり条例(平成12年) |
(北海道)本別町健康長寿のまちづくり条例(平成13年) |
(鳥取県)北栄町子どもを健やかに育てるまちづくり条例(平成19年) |
新潟市障がいのある人もない人も共に生きるまちづくり条例(平成27年) |
(愛知県)大府市認知症に対する不安のないまちづくり推進条例(平成29年) |
住民参加型の 「まちづくり」の条例 |
百数十条例 |
(北海道)幕別町まちづくり町民参加条例(平成12年) | (高知県)高知市市民と行政のパートナーシップのまちづくり条例(平成15年) |
(岡山県)笠岡市みんなが輝くまちづくり条例(平成15年) |
(山形県)白鷹町協働のまちづくり条例(平成16年) |
(佐賀県)伊万里市民が主役のまちづくり条例(平成18年) |
人権尊重の 「まちづくり」の条例 |
概ね100条例程度 |
(大阪府)泉大津市人権を尊ぶまちづくり条例(平成6年) | (滋賀県)守山市人権尊重のまちづくり条例(平成8年) |
(北海道)豊浦町思いやりに満ちたまちづくり条例(令和3年) |
文化・スポーツ分野の 「まちづくり」の条例 |
概ね50条例程度 |
(東京都)立川市文化芸術のまちづくり条例(平成16年) | 埼玉県スポーツ振興のまちづくり条例(平成18年) |
男女共同参画の 「まちづくり」の条例 |
概ね30条例程度 |
(岡山県)津山市男女共同参画まちづくり条例(平成14年) | (鳥取県)八頭町男女がともに輝くまちづくり条例(平成17年) |
食に関する 「まちづくり」の条例 |
概ね20条例程度 |
(福井県)小浜市食のまちづくり条例(平成13年) | (高知県)南国市食育のまちづくり条例(平成17年) |
(愛媛県)今治市食と農のまちづくり条例(令和18年) |
産業分野の 「まちづくり」の条例 |
概ね10条例程度 |
(東京都)大田区産業のまちづくり条例(平成7年) | (東京都)立川市商業まちづくり条例(平成18年) |
(鳥取県)北栄町農業のまちづくり条例(平成25年) |
歩ける・自転車活用の 「まちづくり」の条例 |
概ね10条例程度 |
(石川県)金沢市における歩けるまちづくりの推進に関する条例(平成15年) | 堺市自転車のまちづくり推進条例(平成26年) |
〇 単に「まちづくり条例」とするものは、概ね50条例程度ある。その多くは、土地利用・都市計画分野に係る「まちづくり」の条例であるが、「甲良町まちづくり条例」のように自治基本条例とみなされるものもある。土地利用・都市計画分野の「まちづくり」の条例については、「まちづくり・土地利用条例」を参照されたい。
〇 「まちづくり基本条例」とするものは、180条例以上ある。その多くは、自治基本条例とみなすことができる。自治基本条例の条例名は、概ね「自治基本条例」とするものと「まちづくり基本条例」とするものとに分かれるが、4割強程度の条例が「まちづくり基本条例」としている(「自治基本条例」及び公共政策研究所HP「全国の自治基本条例一覧(更新日:2024年3月29日)」参照)。一部の条例は、「景観まちづくり基本条例」、「健康なまちづくり基本条例」などとして、特定分野における「まちづくり」の基本条例としている。兵庫県の「まちづくり基本条例」は、それぞれの地域において推進すべきまちづくりの基本理念と基本的な施策を定めている。
〇 安全・安心分野の「まちづくり」の条例は、700条例以上ある。グループとして見た場合、数は最も多い。その多くは、いわゆる生活安全条例といわれるもので、犯罪や事故等のないまちづくりに関して、理念的な規定を置いている。生活安全条例は大半の都道府県や市区町村で制定されており(「平成30年警察白書」参照)、その半数程度が条例名に「まちづくり」という言葉を使用していることとなる。防災分野の「まちづくり」の条例については、「防災対策に関する条例」を参照されたい。
〇 環境・景観分野の「まちづくり」の条例は、200条例以上ある。環境に関する基本条例としての性格を有するもの、自然環境や生活環境の保全のために住民や事業者に対して責務を課し、一定の行為規制を定めるもの、ごみのポイ捨て、犬のふんの放置、落書きの禁止等を定めるもの、緑化の推進等について具体的な施策を定めるものなど、様々である。景観に関する「まちづくり」の条例は、60程度ある。景観に関する「まちづくり」の条例については、「景観条例」を参照されたい。
〇 福祉・健康分野の「まちづくり」の条例は、百数十条例ある。福祉や健康に関する基本条例としての性格を有するもの、高齢者、障害者、子供、子育て家庭、認知症の人など、それぞれに着目した「まちづくり」に関して基本理念や基本的な施策を定めるもの、さまざまな人々に配慮した公共施設等の整備の推進等を定めるものなどがある。「障害者差別解消に関する条例」、「認知症施策に関する条例」、「子どもに関する条例」等を参照されたい。
〇 住民参加型の「まちづくり」の条例も、百数十条例ある。住民参加に関して、基本理念、自治体、住民等の責務、基本的な施策等を規定している。
〇 人権尊重の「まちづくり」の条例は、概ね100条例程度ある。人権の尊重・擁護等に関する条例は、全国で三数十条例制定されており(「人権の尊重と差別の解消に関する条例」参照)、そのうちの約3割が条例名に「まちづくり」という言葉を使用していることとなる。
〇 文化・スポーツ分野の「まちづくり」の条例は、概ね50条例程度ある。これらの条例については、「文化政策に関する条例」及び「スポーツ振興・推進に関する条例」を参照されたい。
〇 男女共同参画の「まちづくり」の条例は、概ね30条例程度ある。男女共同参画条例は、全国で七百数十条例制定されている(内閣府男女共同参画局「地方公共団体における男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策の推進状況(令和5年度)」集計表2-1及び2-2)を参照)が、これらのうち条例名に「まちづくり」という言葉を使用している条例は必ずしも多くないこととなる。
〇 食に関する「まちづくり」の条例は、概ね20条例程度ある。これらの条例については、「地産地消・食のまちづくりに関する条例例」及び「食育・朝ごはんに関する条例」を参照されたい。
〇 産業分野の「まちづくり」の条例は、概ね10条例程度ある。「産業のまちづくり条例」、「商業まちづくり条例」、「農業のまちづくり条例」等であるが、数としては多くない。
〇 歩ける・自転車活用の「まちづくり」の条例は、概ね10条例程度ある。「歩けるまちづくりの推進に関する条例」、「自転車のまちづくり推進条例」等である。
〇 なお、以上のほか、土地利用・都市計画分野の「まちづくり」の条例がある。前述のとおり、単に「まちづくり条例」とするもののうち多くは、土地利用・都市計画分野に係る「まちづくり」の条例である。また、大分県湯布院町の「潤いのある町づくり条例」(平成2年)、静岡県掛川市の「掛川市生涯学習まちづくり土地条例」(平成3年旧掛川市制定、合併後平成17年現条例制定)、大阪府豊中市の「豊中市地区まちづくり条例」(平成4年)、京都市の「京都市土地利用の調整に係るまちづくりに関する条例」(平成12年)、東京都府中市の「府中市地域まちづくり条例」(平成15年)、兵庫県宝塚市の「宝塚市開発事業における協働のまちづくりの推進に関する条例」(平成17年)など、多くの条例がある。こうした土地利用・都市計画分野の「まちづくり」の条例については、「まちづくり・土地利用条例」を参照されたい。
(その他さまざまな「まちづくり」の条例)
〇 上記の条例のほか、さまざまな「まちづくり」の条例がある。例えば、以下のような条例がある。制定年は、公布日を基準としている。
長崎県長崎市 | 平成27年 | |
京都府京丹後市 | 平成27年 | |
北海道厚沢部町 | 平成21年 | |
長崎県松浦市 | 平成27年 | |
島根県飯南町 | 平成27年 | |
福井県永平寺町 | 平成29年 | |
岩手県二戸市 | 平成18年 | |
新潟県柏崎市 | 平成23年 | |
兵庫県三田市 | 平成30年 | |
青森県中泊町 | 平成18年 | |
茨城県下妻市 | 令和3年 | |
高知県須崎市 | 平成17年 | |
福島県大熊町 | 令和3年 | |
兵庫県豊岡市 | 平成24年 | |
埼玉県川口市 | 平成28年 | |
東京都国立市 | 平成30年 | |
兵庫県明石市 | 令和4年 | |
三重県 | 平成11年 | |
愛知県新城市 | 令和3年 | |
北海道東川町 | 平成27年 | |
堺市 | 平成30年 | |
奈良県奈良市 | 平成21年 | |
新潟県 | 平成19年 | |
東京都 | 平成19年 | |
京都市 | 平成12年 | |
石川県加賀市 | 令和5年 |
(同一市町村で多くの「まちづくり」の条例を制定している例)
〇 同一の市町村で、多くの「まちづくり」の条例を制定している団体がある。例えば、以下のような団体である。制定年は、公布日を基準としている。
出雲市は、基金条例や会議設置条例を含めると10条例制定している。金沢市は8条例、さいたま市は6条例制定している。
石川県金沢市 | 平成12年 | 平成12年 |
平成13年 |
平成13年 |
平成13年 |
平成15年 |
平成21年 |
平成24年 |
島根県出雲市 |
平成17年 | 平成17年 |
平成17年 |
平成17年 |
平成18年 |
平成18年 |
平成19年 |
平成20年 |
平成22年 |
平成26年 |
さいたま市 |
平成15年 | 平成16年 |
平成18年 |
平成22年 |
平成24年 |
平成30年 |